雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第二十五章 討伐命令

朝の空気はまだひんやりとし、校庭の片隅には昨日の雨で湿った土の匂いが残っていた。

その静けさの中で、木刀を手にした三輪と、ヨーヨーを両手にぶら下げたキルアが向き合っていた。

 

「いくよ、キルア!」

 

「おー、いいよ。」

 

三輪が踏み込み、鋭い一太刀を放つ。しかし、キルアは一歩も動かず、それを紙一重で見切る。

刹那、ヨーヨーを振るい、三輪の後ろへ回り込んだ。

 

「……おー、今のはちょっとキレてた。昨日よりいいね。」

 

「ほんと?うれしっ……」

 

その時、遠くから走ってくる足音が聞こえた。伝達係の補佐官だった。

 

「キルア君!」

 

「ん?なに?」

 

「至急、学長室へ来てほしいとのことです。」

 

「え、今三輪と訓練してんだけど。」

 

伝達係が困った顔をしていると、三輪がにっこりと笑った。

 

「訓練は後でもできるし、私、待ってるよ。」

 

その言葉にキルアはちら、と三輪を見て、ポケットに手を突っ込んだまま言った。

 

「……三輪も来て。」

 

「えっ?」

 

驚きつつも、すぐに三輪は頷いた。

 

「……わ、わかった。」

 

こうして二人は学長室へ向かった。

 

*

 

東京校の学長室。

重厚な扉を開けると、部屋の中央には机に肘をついている夜蛾学長の姿があった。

資料の山に囲まれながら、渋い顔で視線を向けてくる。

 

「……なぜ、三輪もいるんだ?」

 

夜蛾は一瞥をくれながら、落ち着いた口調で問う。

 

「俺がついて来てって言った。で、話って何?」

 

キルアは淡々とした調子で言い、椅子にも座らず立ったまま机を見下ろしていた。

 

「……まあ、いいだろう。キルア、君には至急特級呪霊の討伐に向かってもらいたい。」

 

「特級?五条先生は?」

 

「すでに神奈川の現場へ向かっている。」

 

「最強なんでしょ?五条先生いればよくない?」

 

「今回はそうもいかない。東京、埼玉、神奈川。三県で同時に特級が出現した。まるで誰かが仕掛けたようにな。」

 

「同時……!?」三輪が思わず声を漏らす。

 

「ふ〜ん。ま、いいけど。三輪も連れてっていい?」

 

夜蛾は表情を険しくして言った。

 

「相手は未確認の特級だぞ。三輪に何かあったらどうするつもりだ。」

 

その言葉にキルアは、すっと目を細めて静かに言う。

 

「……そん時は俺が守る。命かけて。」

 

その言葉に、三輪の胸が熱くなった。視線を落とし、唇を噛みしめる。

 

夜蛾は数秒、沈黙したあと言った。

 

「……いいだろう。時間が惜しい。こうしている間にも、被害は拡大している。三輪を連れて、東京の現場へ向かってくれ。」

 

「了解。行こーぜ、三輪。」

 

「失礼します!」

 

三輪は深く一礼し、キルアの後を追って学長室を出た。

 

*

 

校門前、すでに車が待機していた。補佐官の伊地知が運転席に座っている。

 

歩きながら、三輪が不安げに問う。

 

「……いいの?私、ついて行っても……足手まといになるよ?」

 

キルアは歩きながら少しだけ後ろを振り返り、いつものように柔らかく笑った。

 

「いいよ。なんかあったら俺が守るし。……近くで戦い見たほうが成長するでしょ。」

 

その言葉にまた、三輪の心が揺れた。

この少年は、ただ強いだけじゃない。優しさを、当たり前のように持っている――。

 

「……ありがとう。」

 

助手席に三輪、後部座席にキルアが乗り込むと、車はゆっくりと動き出した。

行き先は、東京郊外にあるとある区画。突如出現した未確認特級呪霊のもとへ。

 

車窓から見える景色が、じわりじわりと都会の喧騒から離れていく。

 

二人は今、自分たちの力で、未知の脅威へと立ち向かおうとしていた。

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