雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第二十七章 隣に立つために

倒された呪霊の身体がゆっくりと霧散し、空気に溶ける。

 

やがて帳が解除され、外の光が団地跡に差し込んだ。

 

「……戻ろっか。」

 

ヨーヨーをポケットに収めながら、キルアが三輪にそう声をかけた。

 

「うん。」

 

少し汗ばんだ額を拭き、三輪は小さく微笑んで頷いた。

 

車中。伊地知が運転席、キルアと三輪は後部座席に座っていた。

 

「まさかあれほどの呪霊だったとは……」

伊地知の声には、かすかな震えがあった。

 

「未確認ってのはこういう意味もあるんだね。呪術師って大変だ。」

キルアは窓の外を眺めながら、肩をすくめるように言った。

 

その言葉に、三輪は少しだけ苦笑した。

 

「でも……すごかった。私は……ただ見てるだけで……」

 

「それでいいんだよ。」

キルアは振り返って言う。

 

「今はって意味だけどね。見て、学んで、考えて。それが一番成長する近道だと思うし。」

 

「……うん」

三輪は静かにうなずきながら、その言葉を胸に刻んだ。

 

 

呪術高専・東京校

 

報告を終えたキルアと三輪が学長室を後にする。

報告の大部分はキルアが担い、三輪は横に立って話を聞いていた。

 

廊下に出ると、夕陽が差し込む廊下が橙色に染まっていた。

 

「……ごめん。私、役に立てなかった。」

三輪がぽつりと呟くように言った。

 

「ん?別に怒ってないけど?」

キルアはポケットに手を突っ込みながら、いつものように軽い口調で返す。

 

「でも……私、ずっと見てるだけで……。足手まといにしかなってなかった。」

 

「……でも、逃げなかったじゃん。」

 

その言葉に、三輪の足が止まった。

 

キルアも足を止めて振り返り、真っ直ぐな目で三輪を見る。

 

「怖かったでしょ?でも、そばにいたじゃん。それで十分強いよ。」

 

「……!」

 

「強さって、力だけの話じゃないよ。」

そう言ってキルアはまた前を向き、歩き出す。

 

「俺、そういうの、ちゃんと見てるつもりだからさ。」

 

ぽつりと残されたその言葉は、まっすぐ三輪の胸に届いた。

 

 

その夜、東京校の寮。

 

二人の部屋では、三輪が机に向かって黙々とノートに呪術理論を書き写していた。

 

シャッ、シャッというペンの音だけが部屋に響いていたが、ふとその手が止まる。

 

(私……もっと強くなりたい)

 

(この人と一緒に任務に出るとき、守られるだけじゃなく、隣で戦えるようになりたい)

 

その時、部屋の入り口が開いた。

 

風呂上がりのキルアが、タオルで髪を拭きながら入ってくる。

 

「勉強?真面目だねぇ」

 

「……うん」

 

「明日も訓練つきあおっか?」

 

「……お願い。朝からでいい?」

 

「もちろん。じゃ、俺、先に寝るね~」

 

そう言ってベッドにダイブするキルアの姿を、三輪は横目で見ながら、小さく笑った。

 

(絶対、強くなってみせる)

 

ノートを開き直し、もう一度ペンを走らせた。

 

夜が更けていく中で、小さな決意の灯火が確かに灯されていた――。

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