東京校・昼休み 訓練場裏のベンチ
「三輪ちゃん、最近よくキルアと一緒にいるよね」
ベンチに腰かけた釘崎は、隣で水筒を手にした三輪に、唐突にそう問いかけた。
「えっ……!?え、えぇっと……その……別に、そんなんじゃ……!」
三輪は手にしていた水筒のキャップを落としそうになりながら、慌てて否定する。だがその反応に釘崎は満足そうににやりと笑った。
「あはは、やっぱそうなんだ。わかりやすすぎるでしょ。そばにいるときの表情、めっちゃ素直に出てるし。」
「っ……!」
三輪の頬がみるみる赤く染まる。まともに顔を上げられない。
そこへ――、
「お?何話してんの、二人で。」
軽い足取りでキルアが姿を現した。
「ひっ……!?」
心臓が跳ねる。目の前に現れたのは、その張本人――。
「な、なんでも……っ!」
三輪はあわてて立ち上がると、そのまま走り去っていった。
「え、あれ?三輪?」
キルアがきょとんとしたまま、逃げる背中を見送る。
「はぁ……」釘崎は呆れたように息をつく。
「アンタ、鈍いのにもほどがあるわね」
「は?なにが?」
「自覚ないの?女の子とあんだけ一緒にいて何も感じてないとか、逆に才能よ」
「なっ……あるし、そういうの、ちゃんと……っ」
言葉につまりながら、珍しく動揺するキルアを見て、釘崎は肩をすくめて笑った。
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夜・東京校の宿舎
机に広げられた呪術理論のノートに、三輪は静かにペンを走らせていた。けれど手は止まる。昼間の釘崎との会話が、何度も頭をよぎる。
(……キルアのこと、好き……か)
自分でも、もう否定できない気持ちが胸を締めつける。顔が熱くなるのを感じたその瞬間――
「三輪。」
近距離で声が聞こえた。
「きゃっ……!?」
驚いて振り向くと、すぐそばにキルアの顔があった。
「びっくりした……!」
「ごめん。なんか苦しそうだったからさ。大丈夫?」
「う、うん……大丈夫。全然……!」
三輪は俯きながら答えるが、胸の鼓動は落ち着く気配がない。
「……嫌いなの?俺のこと。」
その何気ない問いに、反射的に三輪の体がびくりと震えた。
「え……?」
「だって、今朝も逃げられたし……俺、なんかした?」
キルアはベッドに寝転びながら、素直な声色でそう言った。
「ち、ちがう!嫌いなんかじゃ……ない……。むしろ……その……」
三輪の声がしぼんでいく。けれど、もう止まらなかった。
「……むしろ、好き……」
小さな声で絞り出した瞬間、室内に静寂が訪れる。
「え……?」
今度はキルアが戸惑った表情を浮かべて起き上がる。
「い、今のは……その……ちがっ……いや、ちがわなくはないけど……!」
「……あー……」
キルアは後頭部をかきながら、顔を赤く染める。
「……俺も、三輪のこと好きだよ。たぶん、うん……そうだと思う。」
そう呟くように言うと、キルアは布団に顔を埋めて背を向けた。
「もう寝る!おやすみ!!」
「……うん、おやすみ……」
背を見つめながら、三輪も頬を染めたまま、そっと灯りを落とした。
部屋には、お互いの心臓の音だけが、静かに響いていた。