「こっちが寮棟。俺ら一年もこっちに住んでる。」
校舎の奥、石畳の道を虎杖が先頭に立って歩いている。その後ろを釘崎とキルア、最後尾を伏黒が歩く。
「なんか寺と道場が合体したみたいな場所だな。」
キルアは視線をあちこちに走らせながら、建物の古さと呪術的な気配の混ざった独特の空間を感知していた。
「ま、見た目はね。でも中身は呪霊バスターズよ。」
釘崎が胸を張って言う。
「てかさ、アンタ、呪術も術式もないんでしょ? どうやって呪霊倒したの?」
「触れたから潰しただけだよ。」
「……は?」
釘崎が眉をひそめる横で、虎杖が笑う。
「いや、俺らも最初マジでビビった。ゾルディック、どんだけ強いんだよって話!」
「そんな騒ぐほどのことか?」
キルアが肩をすくめたそのとき――
「――おい、うるせぇぞ。何やってんだ、一年。」
渡り廊下の先から低く鋭い声が響いた。
姿を見せたのは、ジャージ姿に竹刀を背負った長身の女子生徒。
禪院真希――二年の実力者。呪具の扱いに長けた“フィジカルギフテッド”。
「お、真希さん!」
虎杖が手を振るが、真希の視線は一瞬でキルアに突き刺さる。
「……誰だ、そいつ。」
声の調子が一段階低くなる。
「転校生ってやつですかね? でもなぁ……」
釘崎が一歩前に出る。
「ちょっと訳アリなんです。まあ、五条先生に直接聞いた方が早いですね。」
「……」
真希は無言のまま、キルアの全身を値踏みするように見つめた。瞬間、空気が一変する。
(目の動き、筋肉の張り、立ち方……こいつ、まともな奴じゃない)
キルアもまた、気配の変化を敏感に察知していた。
(この人……ただの学生じゃない。殺気と自信の質が、まるで兵士……)
数秒、互いの間に無言の圧力が流れる。
「……気に入らねぇな。妙に余裕かましてる感じ。」
真希がボソリと呟くと、キルアは口角を上げた。
「よく言われる。」
「……ふん。」
真希は鼻を鳴らし、くるりと踵を返す。
「余計なこと起こすなよ。一年ども。」
そう言い残し、廊下の奥へ姿を消した。
「いや〜……真希さん、相変わらず強キャラオーラすごいな……」
虎杖が頭をかきながら笑う。
「アンタ、よくあんな態度取れたわね。あの人、ガチで容赦しないから。」
釘崎がキルアを横目で見つつ言う。
「怖そうなのは伝わった。でも、悪い人じゃなさそうだった。」
「……まあ、あれでも面倒見はいい方だ。」
伏黒がぽつりと呟いた。
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〜寮棟・一年の居住区〜
「ここが寮。俺ら一年はこの廊下に並んで部屋割りされてる。」
虎杖が案内するその先、木製の引き戸が4つ並ぶ廊下を歩いていく。
「で、あそこが釘崎んち。」
最奥の部屋を指差して虎杖が説明する。
「その隣が俺で、さらにその隣が――」
「……俺の部屋だ。」
伏黒が無駄なく指を差す。
「で、ここがゾルディック、アンタの部屋。伏黒の左隣。」
釘崎が最後にそう言い、扉を開ける。
部屋はシンプルな畳敷き。押し入れ付き、窓の外には竹林が見える。
「意外と落ち着く……いいね、ここ。」
「よかったじゃん。明日からお隣さんだな、伏黒!」
「……やかましい。」
「今日のところはここで休め。ベッドも用意されてる。」
「わからないことがあったら、俺か釘崎、伏黒に聞いてよ。」
「じゃ、おやすみ〜!」
三人が順に声をかけ、部屋を出ていく。
キルアはひとり残された室内で、荷物もない自分の身を見下ろし、小さく息を吐いた。
「……異世界、か。とんでもない場所に来ちゃったな。」
その言葉には、怯えも動揺もなかった。
ただ、未知への好奇心と、ほんの少しの期待――それだけが、彼の瞳に宿っていた。