雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第四章 白銀の実力

夕食を終えた1年ズが部屋へと戻り、それぞれの時間を過ごしていた頃。

伏黒の隣、新しい部屋の中で、キルアは静かに窓際に腰を下ろしていた。

 

外には竹林。虫の声と、どこか懐かしいような風の音が耳に心地よい。

 

「……妙に静かだな。」

 

念の気配も、敵意も、奇襲の気配もない。

だが、それがむしろ落ち着かない。暗殺一家で育ったキルアにとって、完全な“平穏”は最も疑わしい状態だった。

 

(あの女の人――真希って言ったか。あの人も強そうだった……)

 

目を閉じ、思い出す。

 

(この世界、けっこう面白いかもな。)

 

と、不意に扉がノックされた。

 

「……ゾルディック、起きてるか?」

 

伏黒の声だ。

 

「……ああ。」

 

返事をすると、扉が静かに開き、伏黒が顔を見せる。

 

「五条先生が、ちょっと来いって。能力の確認をしたいらしい。」

 

「ふーん。早いな。」

 

「当たり前だ。お前、初見で呪霊潰しただろ。」

 

伏黒はそう言いながら、少しだけ目を細める。

 

「……五条先生も何者なのか分からないお前を、完全に信用してるわけじゃない。」

 

「伏黒も、警戒してるって顔してるよ。」

 

「当然だ。こっちは呪術師の学校だからな。」

 

二人は言葉を選びながらも、どこか似た空気を纏っていた。

 

 

---

 

〜高専・訓練場(夜)〜

 

月明かりの下、訓練場にはすでに人の気配があった。

 

五条悟がゆったりとしたポーズで壁に寄りかかっており、その横では――

 

「おー、ホントに来たな、銀髪のガキ。」

 

――禪院真希が竹槍を肩に担いで立っていた。

 

「五条だと勝負になんないだろうから、代わりに私が見てやる。」

 

「お姉さん、まだ起きてたんだ?」

 

キルアが肩をすくめる。

 

「“見てやる”って何を?」

 

「お前がどんな“強さ”を持ってるか、こっちとしても知っておきたいって話よ。」

 

「真希の言うとおり。」

 

五条が指を鳴らしながら続ける。

 

「いきなり本気の戦闘は無理でもさ、身体能力とか反応速度くらいは見ておこうってことで。じゃ、真希、お願い。」

 

「ったく……」

 

真希が竹槍を軽く回しながら、キルアの前に立つ。

 

「ま、手加減はするけど、逃げんなよ?」

 

「本気で来てくれた方が、俺としては嬉しいけど。」

 

言葉の端に宿る殺気。だが、キルアの表情は穏やかだった。

 

「じゃ、始めようか。」

 

五条がそう言って風が静かに吹いた瞬間、真希の姿が消える。

 

だが――次に瞬きをしたときには、竹槍の一撃が止まっていた。

 

目の前、キルアの右手が竹槍の軌道を押さえ、左足は真希の懐に踏み込んでいた。

 

「……!」

 

真希の目がかすかに見開かれる。

 

「反応早いな、おい。」

 

「力を加減しなきゃいけない方が、やりにくいね。」

 

キルアが手を離すと、真希は一歩距離を取った。

 

「……認める。確かに、普通じゃねえ。」

 

「だろ?」

 

ニッと笑ったキルアの顔に、五条が面白そうに手を叩く。

 

「うんうん。こりゃ将来有望、っていうか今すでにヤバい子だね〜。」

 

「五条先生、こいつ……本当に“術式なし”なんですよね?」

 

伏黒が隣で小さく問う。

 

「ああ、間違いない。でも――この世界には、“術”以外の道もあるってことだよ。ね、キルアくん?」

 

「ま、そういうとこ。」

 

キルアの笑みは、どこか涼しげで、それでいて闇を孕んでいた。

 

「今夜はここまで。明日から本格的にどうするか、考えないとね〜。」

 

五条の言葉に、場の空気が緩む。

 

「じゃあ、俺戻るわ。」

 

「気を抜くなよ、ゾルディック。」

 

「真希こそ。」

 

軽く手を振って、キルアはまた伏黒と共に寮へ戻っていった。

 

その背を見送りながら、真希は竹槍を握り直す。

 

「……あのガキ、まだ何か隠してる。」

 

「だね〜。ま、そこが面白いんだけど。」

 

月は高く、静かに空を照らしていた。

 

――異界の少年は、静かに、高専に“馴染み始めて”いた。

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