雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第四十二章 再生の鼓動

血の気を失った顔色、痙攣の残滓が揺れる四肢。

三輪はキルアの身体を抱きかかえ、繰り返し名を呼んでいた。

 

「キルア……キルア……お願い……!」

 

キルアは白目を剥いたまま、呼吸も浅く、口をパクパクと動かすばかりで何も答えない。

その様子に三輪は顔を伏せ、止めどなく涙をこぼしていた。

 

その場に駆け寄った夏油は静かに膝をつき、キルアの状態を確認すると、短く息を吐いた。

 

「……あれほどの精神的干渉を受けながら、よく生きていた。普通の術師なら……いや、人間ならとうに死んでいた。」

 

その言葉に、三輪が顔を上げる。

 

「夏油さん……っ、お願い……キルアを……助けて……!」

 

三輪の涙に濡れた訴えに、夏油は静かに頷く。

 

「わかっている」

 

その声はまっすぐで、どこまでも確かだった。

そして夏油はゆっくりと片手を前に差し出す。

 

空気が震え、呪力が渦を巻く。

音もなく空間が裂けるように開かれ、その中から一体の呪霊が姿を現した。

 

それは人間のような体格を持ち、白衣を羽織った姿。

顔は包帯で覆われ、ただ二つの瞳だけが異様な光を放っている。

穏やかな佇まいながら、どこか聖性と異質さを併せ持つ雰囲気をまとっていた。

 

「《折翳(せんえい)》だ。呪霊でありながら反転術式を操る。特級呪霊だよ。修復能力は医療術師と比べても遜色ないレベルだ。」

 

夏油が静かに紹介すると、折翳は無言でキルアの頭上に両手をかざした。

 

次の瞬間、淡い緑の光が折翳の手のひらから放たれ、キルアの頭部を優しく包み込む。

その光はまるで命を注ぎ込むようなぬくもりを帯びており、三輪の頬にその暖かさが伝わってくる。

 

「死んでいなければ治せる。……キルアなら、必ず戻ってくるさ。」

 

夏油の言葉を信じて、三輪は祈るようにキルアを抱きしめた。

 

やがて、緑の光が徐々に薄れていく。

 

「……うっ……ん……」

 

小さく、しかし確かに声が漏れた。

 

「キルア……!?キルア!!」

 

三輪が顔を覗き込む。

 

キルアの白目が少しずつ色を取り戻し、焦点が合っていく。

呼吸も安定し、身体の震えがゆっくりとおさまっていった。

 

折翳は指令を果たしたのか、すっと光の粒となって消えていく。

 

「よかった……!ほんとうによかった……!!」

 

三輪がキルアの胸に顔を埋め、声を上げて泣く。

 

「三輪……?ちょっと……苦しい……」

 

キルアがかすれた声で苦笑した。

 

三輪は驚いて顔を上げ、すぐに顔をくしゃくしゃにして笑った。

 

「よかったぁ……よかったぁぁ……!!」

 

「大したものだよ、キルア。あの術を受けて、戻ってくるとは。」

 

夏油がそう言いながら、柔らかく笑みを浮かべた。

 

「……この感じだと、助けてくれたのは夏油さんなんだな。ありがとう。」

 

「私だけの力ではないさ。君の仲間が、君を呼び続けていた。」

 

夏油の言葉に、三輪が顔を伏せる。

 

「私……何もできなかった。泣いて、叫ぶことしか……」

 

キルアはその手を取る。

 

「三輪、違う。俺さ、あのとき、死ぬほど痛くて、心も体も本当に限界だった。でも……」

 

そこでキルアはふっと微笑んだ。

 

「三輪の声が聞こえてきた。『死にたくない』って思えた。……俺、救われたんだ。三輪の声に。」

 

三輪の目に、また涙が浮かぶ。

 

「私……そんな……」

 

「三輪の気持ちがなかったら、俺はここにいないよ」

 

キルアはその手を引き寄せ、ぎゅっと三輪を抱きしめた。

 

「ありがとう。三輪」

 

「……うん……うんっ……!」

 

三輪も力いっぱい、キルアを抱きしめ返す。

 

二人の間に流れる温かな空気を、夏油は静かに見守っていた。

優しい微笑みのまま、腕を組み、黙ってその光景を受け止めている。

 

そして――

 

「そろそろ戻ろうか。伊地知君もきっと心配している。」

 

夏油が静かに言った。

 

キルアと三輪も、ゆっくりと立ち上がる。

 

「あぁ……。帰ろう、三輪」

 

「うん……」

 

三人は、夕暮れの差し込む廃ビルの三階を後にした。

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