雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第四十六章 夜明けの報告

朝の光が静かに窓辺を照らしていた。

薄く揺れるカーテン越しに、柔らかな陽射しが部屋の空気を包む。

そんな中、キルアはゆっくりと目を覚ました。

 

「……ん」

 

まばたきを数度繰り返しながら視線を落とすと、自分のすぐ隣――ベッドの中、穏やかな寝息を立てて眠る三輪の姿があった。

 

スースーと規則正しく上下する胸。頬には昨晩の涙の名残がわずかに残り、唇はほんの少し開いている。

 

「……かわいいな……」

思わずこぼれたキルアの声は、小さくて、どこか優しかった。

 

そのとき――

 

「……んっ……」

三輪が微かに体を動かし、まぶたを開けた。

 

「あ……おはよ、キルア」

寝起きの声は少し掠れていて、まだ夢の中にいるような雰囲気を纏っていた。

 

「おはよ」

キルアは急いで顔をそらしながらも、しっかりと返事を返した。

 

コンコン

 

部屋の扉がノックされる音が響く。

続けて、聞き慣れた声が外から届いた。

 

「キルア、三輪、起きてるか?」

 

「うん、起きてるよ」

キルアが応えると、

 

「昨日の任務報告、最優先で頼むって夜蛾学長からの伝言だ。」

伏黒の落ち着いた声が返ってきた。

 

「わかった。すぐ行く」

キルアが布団を抜け出す。

三輪もすぐに後に続き、ふたりで身支度を整えた。

 

短い時間で着替えと身なりを整え、ふたりは並んで学長室へと向かった。

並んで歩く背中には、夜の静けさの名残と、新しい朝の始まりの清々しさが同居していた。

 

---

 

学長室。

中央の机に夜蛾正道が座っており、すでにその正面には夏油傑の姿があった。

資料をまとめていたのか、目線は書類に落とされていたが、ふたりの気配にすぐに顔を上げる。

 

「おはよう。二人とも。体調は大丈夫かい?」

夏油がやさしく問いかける。

 

「うん。おかげさまでほぼ完治」

キルアがさらりと答えた。

 

「私も、問題ないです。」

三輪も、背筋を伸ばして答える。

 

夜蛾は静かにうなずく。

 

「うむ。では昨日の任務報告を頼む。」

 

キルアと三輪は順を追って、現場の状況と戦闘の詳細、蠱紅との遭遇、そして夏油の到着までを簡潔に報告した。

 

報告を終えた後、夜蛾はしばし黙考し、顎に手を当ててうなるように言った。

 

「なるほど。……ありがとう」

 

すると、夏油が静かに視線を三輪に向ける。

 

「驚いたな。特級を、祓ったのか」

 

「ふむ。キルアが多少ダメージを与えていたとはいえ……特級を祓うか」

夜蛾もその目を細めながら感心するように呟いた。

 

「実際、あのときの三輪、マジで速かった。俺の神速並みの速度は出てたよ。」

キルアが少し笑いながら振り返ると、

 

「キルアを守らなきゃって……それだけで動いてた気がする」

三輪は小さくつぶやきながら視線を落とした。

 

「じゃあ、特級を祓ったってことは……三輪も特級?」

キルアが目を輝かせて夜蛾に問う。

 

だが、夜蛾は首を横に振りながら冷静に説明を加えた。

 

「特級術師というのは、どのような条件下でも安定して特級呪霊を祓える力が必要だ。今回、三輪はキルアの与えたダメージと、強い感情の後押しがあったからこそ倒せた。つまり偶然と気迫も加味された結果だろう。」

 

三輪は黙って、ただうつむいた。

 

「だが、特級呪霊を祓ったという事実は変わらない。二級、もしくは準一級への昇級はまず間違いないだろう。」

夜蛾のその言葉に、三輪の顔がパッと明るくなった。

 

「やったじゃん、三輪!」

キルアがにっこりと笑って声を上げる。

 

「うん……!」

三輪も目を輝かせながら、自然と笑顔になっていた。

 

「詳細は追って連絡する。それまでは自由にしていて構わん。」

夜蛾が手元の資料に目を戻しながら言った。

 

「二人とも、本当にお疲れ様。次の任務が入るまで、ゆっくりお休み。」

夏油も優しく声をかけた。

 

「失礼します」

ふたりは礼をして、学長室をあとにした。

 

扉を閉めて廊下に出たとき、ふたりの足取りはどこか軽やかで、心に残るものは確かな充実と、互いへの信頼だった。

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