雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第四十七章 穏やかな午後と、五人の時間

保健室での緊張した時間から一夜明け、報告を終えた二人は部屋に戻った。

朝の光がゆっくりと窓から差し込むなか、柔らかな静けさに身を任せていた。

 

ベッドに仰向けで寝転ぶキルアは、天井をぼんやりと見つめていた。

隣のベッドでは三輪が座って読みかけの文庫本をぱらぱらとめくっている。

二人の間には言葉がなくとも、安心と安堵が静かに漂っていた。

 

そんな空気を破ったのは、昼近くになって響いたノックの音だった。

 

「キルアー、三輪さーん、起きてるー? 起きてたら飯いかねー? 伏黒と釘崎も行くんだけどー!」

 

元気な声の主は虎杖。扉越しでもそのテンションははっきり伝わる。

 

キルアと三輪は顔を見合わせ、少しだけ笑って――

 

「行くー」と声をそろえた。

 

支度をして部屋を出ると、廊下には普段着に着替えた一年ズの三人が立っていた。

 

虎杖はゆったりめの白Tシャツにグレーパーカーを羽織り、ダメージジーンズとスニーカーというスポーティな装い。

釘崎はベージュのショートジャケットに黒のフレアスカート、髪をサイドで軽くまとめ、大きめのイヤリングが揺れている。

伏黒はというと、黒のロングカーディガンの下にシンプルな白シャツ、細身のジーンズとブーツ。全体的にモノトーンでまとまり、無頓着ながらも妙に似合っていた。

 

「え、三輪ちゃんは制服のままなの?」

釘崎が気づいて尋ねる。

 

「あ、うん……。制服とジャージしか持ってきてなくて。」

三輪が少し照れたように答えると、

 

「じゃ、せっかくだし三輪ちゃんの服から買いに行きましょ。」

釘崎がぱっと明るく言った。

 

「えっ……!」三輪が驚きの声をあげる。

 

「確かに!それいいね、賛成!」虎杖も満面の笑顔で乗ってくる。

 

「お前さっきまで腹減って死ぬって言ってたろ……」

伏黒が呆れ気味に言うと、

 

「それはそれ! これはこれだ! さて!しゅっぱーつ!」

虎杖はそのまま意気揚々と先頭を切って歩き出した。

 

「ほんっと、ゴンみたいだな……」

キルアが少し笑いながら呆れたようにつぶやく。

 

---

 

街は快晴の青空の下、多くの人でにぎわっていた。

人の喧騒、香ばしい匂い、カラフルな看板……高専の中とはまったく違う、活気ある空気が五人を包む。

 

「うぉ~~。すっげ~~」

キルアは目を丸くして周囲を見回す。

 

「いつ来てもこの雰囲気は慣れないなぁ」

三輪も小さくつぶやいた。

 

「さて、早速行くわよ!」

釘崎は迷いなくショッピングビルの入り口へと向かっていった。

 

四人はそれに続いた。

 

釘崎が案内したのは、落ち着いたナチュラル系のセレクトショップ。

ウッド調の床にグリーンの装飾が映え、並ぶ服はどれも上品で普段使いにもぴったりなものばかり。

 

「三輪ちゃん、これどう?あとはこれとかも合うかも。」

釘崎が選びながら次々と服を手渡す。

 

「わ、ありがとう。じゃあ……ちょっと、試してみる。」

三輪は試着室に入り、数分後――

 

カーテンをそっと開けて出てきた。

 

白地に淡いブルーのワンピース。

ウエストはやや高めの切り替えで、スカートの裾はふわりと揺れている。

黒のカーディガンを肩からかけ、足元はシンプルなフラットシューズ。

 

一瞬、その場の空気が止まった。

 

「……うぁ」

キルアはぽつりと、思わず声を漏らした。

 

「お、見とれてるね?」

虎杖がニヤリと茶化すと、キルアは「うるせーよ!」とそっぽを向いた。

 

釘崎も腕を組み、「うん、やっぱり三輪ちゃんこういうの似合うわね」と満足げに頷いた。

 

---

 

買い物を終えたあとは、近くのレストランで昼食を取り、プリクラやアイスを楽しみながら街を回る。

笑って、走って、語って――その時間は、確かに五人にとって束の間の“休日”だった。

 

夕方になり、高専の門をくぐるころには、空はオレンジ色に染まっていた。

 

「また遊ぼうなー!」と虎杖が手を振り、伏黒と釘崎と共に自室へと帰っていく。

 

キルアと三輪は、二人で部屋へ戻った。

 

---

 

部屋のドアを閉めた瞬間、キルアはベッドにどさりと倒れこんだ。

 

「は~……たのしかったけど、体力けっこう持ってかれたな。」

「うん。でも……なんか、すごくいい日だったね。」

三輪がそっとカーディガンを脱ぎながら微笑んだ。

 

「久しぶりに、何も考えずに笑えた気がする。」

キルアは仰向けのまま、ぽつりとつぶやいた。

 

「私も……今日という日をきっと忘れないと思う。」

三輪はそっと隣のベッドに腰を下ろし、キルアの方を見た。

 

部屋の中には夜の気配がゆっくりと満ちていた。

 

「なあ、三輪」

「ん?」

 

「これからも、また……戻るまではこうして一緒に過ごしてくれたら、嬉しい。」

 

「……うん。」

 

互いに目を見て、そっと笑い合う。

 

カーテンの隙間から差し込む月明かりが、二人の影を優しく重ねた。

 

そのままベッドに横になり、

眠りに落ちるまで、二人は静かに手を繋いでいた。

 

――穏やかで、あたたかい夜だった。

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