放課後、訓練場。
空は薄曇り。張りつめた空気の中に、少年たちの視線が集まっていた。
「じゃ、今日は僕が相手をするよ、キルアくん。」
笑顔で手を振る白髪の男――五条悟。
その言葉に、呪術高専の一年ズ、そしてパンダや真希も思わず顔を見合わせる。
「……先生が直々にって、どんだけ期待してんのよ。」
釘崎が腕を組みながら呆れたように言った。
「ま、気持ちは分かるけどさ。あの子、普通じゃないし。」
虎杖も緊張と期待の混じった顔で、キルアの様子を見ている。
「ケガだけはさせんなよ、五条先生。」
伏黒が冷静に釘を刺すように言うと、五条は笑いながら手を振った。
「わかってるって〜。“触れられたら終わり”な子相手なんだから、僕もちゃんと準備してるよ。」
五条が立つのは、訓練場の中心。
対するキルアは、いつものように両手をポケットに突っ込んだまま、無言で立っている。
「……最強って自分で言いきれるやつ、初めて見たかも。」
「よく言われるよ。」
五条が目隠しの奥から笑う。
「さ、どうする? 先手、譲ってあげようか?」
「じゃ、遠慮なく。」
キルアがふっと地を蹴った。
一瞬で間合いを詰める。だが――
(!)
届かない。
ほんの数センチ。
まさに目の前にいるはずの五条に、キルアの指先が届かない。
「なっ……!」
キルアはそのまま反転し、別角度から再び踏み込む。
右手が鋭く突き出される――
が、またしても五条に触れる直前で手が止まる。
「……え? 何、これ……」
間合いに入っている。軌道も完璧。
なのに、触れられない。
五条は涼しい顔のまま、口元だけで笑う。
「うんうん、反応はさすがだね。フィジカルもスピードも文句なし。」
「けど、僕に“触れる”ってのは、そんな簡単じゃないんだよね〜。」
「……これが……術式?」
「正解。『無下限呪術』っていってね、僕と相手との間に“無限”を生み出してるの。」
「無限……」
キルアがわずかに眉を動かす。
「つまり、君の攻撃は届きそうで届かない。スローダウンして、ゼロにはならず、ずっと近づかない。……って感じかな?」
「チートじゃん……」
ぽつりと漏れたキルアの言葉に、訓練場の空気が一瞬和んだ。
「でしょ〜?」
五条が得意気に親指を立てる。
「僕、“最強”って言ってるのは冗談じゃないんだよ。ちゃんと理由があるの。」
キルアは一歩、後ずさった。そして静かに息を吐く。
「……でも、触れられないって分かったら、やり方はいくらでもある。」
「そのセリフが聞きたかった。」
五条が楽しそうに言う。
「今日はここまでにしとこう。キルアくん、君は本当に面白い。今後が楽しみだよ。」
そう言って歩き出した五条に、キルアは一瞬、視線を向けた。
(……この世界、思ってたよりずっと広い)
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訓練場の外、見学していた1年ズも、五条とキルアのやり取りにざわついていた。
「今のキルアの踏み込み……見えた?」
「……見えなかった。それでも先生に触れられてなった…。本当に異常だわ。」
釘崎がやや皮肉混じりに呟く。
「それでもキルア、全然怯んでなかったな。」
虎杖が感心したように言うと、伏黒も小さくうなずいた。
「あれだけ動けるってことは……まだ“見せてない”力がある。」
「……マジで、何者なんだろ。」
三人の視線の先で、キルアはただ、黙って拳を握りしめていた。
静かな瞳に宿るのは、挑戦者としての本能。
――まだ、この世界の底は見えていない。
物語の都合上、三輪が登場するのがもう少し先になりそうです…。
三輪の登場を楽しみにしていただいている方いらっしゃいましたら申し訳ないです…。
しばしお待ちください。