雷光、呪の渦中へ   作:ぴーまんねこ

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第八章 能力と系統と、そして来訪者

夜の空気は涼しく、少し湿り気を帯びていた。

自販機前の四人は、缶ジュースを手にそのまま腰を下ろし、話に花を咲かせていた。

 

「そういえばさ。」

 

缶を軽く揺らしながら、キルアが言った。

 

「この学校の人って、みんなあの目隠しの先生みたいな力持ってんの?」

 

「まぁ、呪術は使う。」

 

伏黒が静かに答える。

 

「ただ、五条先生の力は……生まれ持ったものだな。別格だ。」

 

「ふーん……伏黒もなんか使えんの?」

 

「……使える。」

 

一拍の沈黙の後、伏黒が答える。

 

「どんなの?」

 

キルアの目が光る。

 

伏黒は缶コーヒーを一口飲み、視線を合わせた。

 

「話してもいいが……まずはお前からだ。」

 

その一言に、虎杖と釘崎が同時に反応した。

 

「おっ、珍しい。伏黒からそんなこと言うなんて。」

 

「興味あるんだな、伏黒も。」

 

キルアは一瞬考えた後、うなずいた。

 

「まぁ、呪術ってやつとは違うけど――俺は雷を使う。」

 

「……雷?」

 

伏黒が少しだけ目を細めた。

 

「うそ、アンタ自分の能力そんなあっさり教えるの?」

 

釘崎が意外そうに眉を上げる。

 

「うん、普通は言わない。でも……なんとなく、あんたたちならいいかなって思った。」

 

キルアはそう言って、再びコーラを口に含む。

 

「……雷って、具体的にはどんな感じなんだ?」

 

虎杖が身を乗り出して聞いた。

 

「そのまんまだよ。足に溜めて加速したり、手から放電したり、対象に雷落としたり。いろいろできる。ちなみに、五条先生の前では使ってないよ。」

 

「……あれより速くなるってのかよ……」

 

虎杖が呆れたように天を仰いだ。

 

「で、伏黒は何使うの?」

 

「……俺は影だ。」

 

その答えに、キルアが即座に反応する。

 

「影! かっけぇ!」

 

「“十種影法術”と言って、俺の影を媒介にして十種類の式神を召喚する。」

 

「なるほどな……具現化系って感じか。」

 

「……具現化?」

 

伏黒が首をかしげる。

 

「“念能力”ってやつの分類。こっちの世界じゃ通じないかもだけど、俺らの世界では能力の性質をタイプ分けしてるんだ。」

 

キルアは簡単に“強化系・変化系・操作系・放出系・具現化系・特質系”の六系統を説明した。

 

「いろいろあるんだな……」

 

虎杖が純粋に感心するようにうなずく。

 

「そういう虎杖は何使うの?」

 

「さっきの分け方で言うなら……俺は“強化系”かな。術式とかは特にないし。パワーで殴る!」

 

「……ゴンみたいだな。」

 

キルアがふっと笑いながら言った。

 

「ゴン?」

 

「あー、友達。似てんだ、ちょっと。」

 

「へー!」

 

「で、釘崎は?」

 

キルアに問われ、釘崎は少し考え込む。

 

「……ま、アンタも教えてくれたし。言ってあげるわ。私は“釘”。」

 

「おお、名前そのまんまじゃん。」

 

「別に名前に合わせたわけじゃないけど。……釘と藁人形を使って呪いを打ち込む術式よ。」

 

「念能力の分け方で言うと……放出系って感じか。」

 

「……そうかもね。」

 

「だな。」

 

虎杖が缶を持ったままうなずいた。

 

「五条先生は完全に“特質系”だろ、あれは。」

 

「……それな。」

 

と、そこへ――

 

「は〜い、みんな楽しそうにしてるとこ悪いけど〜。」

 

軽快な声と共に、五条が現れた。

 

その隣には、スーツ姿の大人の男。七海建人。

 

「あ。」

 

釘崎がすぐに立ち上がる。

 

「ナナミン!」

 

虎杖が手を振ると、七海は無言で軽くうなずいた。

 

「珍しいわね、七海さんがここまで来るなんて。」

 

「いや、五条さんに強引に引っ張られただけです。」

 

七海の冷ややかな声に、五条が肩をすくめて笑った。

 

「だって〜、せっかくの“異世界からのゲスト”だよ? ちょっとくらい顔合わせしておくべきでしょ、ナナミン。」

 

「その“ナナミン”と呼ぶのはやめてください。」

 

「ナナミンの方がみんな親しみやすいでしょ〜。」

 

「…………。」

 

釘崎と虎杖は苦笑い、伏黒はいつも通り黙して見守る。

 

キルアはというと――

 

「……あの人も強いのか?」

 

伏黒が短く答えた。

 

「ああ。七海さんは一級術師だ。」

 

「一級……そっちの世界にも“等級”みたいなのあるんだな。」

 

「ある。強さと任務の危険度に応じてな。」

 

キルアは七海をじっと見つめた。

 

(……この人、スキがねぇ。あの目隠しの先生とは違う意味で)

 

五条がにこやかに言う。

 

「というわけで、明日からキルアくんにはちょっとした“実地研修”してもらおうかな〜って思ってるから。」

 

「実地?」

 

「ナナミンと一緒に、ちょっとした呪霊退治の現場見学。まぁ、様子見ってことで。」

 

「……ふーん。いいよ。」

 

キルアはコーラを飲み干し、空き缶を手の中で軽く回した。

 

「どうせこの世界のこと、もっと知りたいと思ってたとこだし。」

 

「ふふ、頼もしいね。じゃ、明日の準備しといてね〜。」

 

そう言って、五条はくるりと背を向けた。

 

七海も一言だけ残す。

 

「明日、朝八時。正門前に集合してください。」

 

「了解。」

 

静かに答えたキルアの目は、わずかに鋭さを増していた。

 

新たな出会い、新たな戦場――

世界は、また一歩、キルアを呪術の深淵へと誘っていた。

 

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