異世界でドルオタしてる俺氏、知らんところで救国の英雄扱いされているらしい 作:パンデュ郞
「なるほど。それでタイラン殿はうちへ来たわけだね」
「メグサさん、ほんとごめん。他に魔法の誓約書とか扱ってるところ心当たりがなかったんだ」
「いやいや、私と君の仲じゃないか。それに、仕事ならば大歓迎だよ」
俺は降伏した連中に誓約書を書かせるため、メグサさんの商会であるファイス商会にやってきていた。
適当な奴に頼む予定だったんだけど、俺が来たと知るなりとメグサさん本人が対応しに来てくれた。ありがてぇありがてぇ。
「ふむ、では後はこちらで処理をしておこう」
「いいんですか?」
「これから用事があるのだろう? なら、急ぐといい」
一応危ない連中だけど大丈夫かな? と思ったけれど、メグサさんは心配ないと言い切った。
「なあに、何かあれば君の代理人だと言っておけば大人しくなるさ」
そういうもんかね。そういうもんらしい。
じゃあ後処理はしてくれるっていうなら任せちゃおう。
俺は諸悪の根源について調べないとな。
と、言うわけでメグサさんに後の事は任せて、話にあった建物にやってきた。
しまった。メグサさんの部下借りればよかったな。調査とか苦手だったの忘れてた。
まーしゃあない。中入るか。最悪書類とかそれっぽい奴持って帰れば何とかなるだろ。
話にあった建物は、一見するとただの民家だ。
しかし、話によると地下に隠し部屋があって、そこに色々と隠されてるらしい。
「ん? 空いてるな……」
鍵は手元にある。他にも鍵を持ってる奴がいたってことなのか?
じゃあ、中にはまだ残党がいる可能性があるってことね。どうせ俺に恨みを持ってるだろうから、そのつもりで動くか。
家の中を進み、地下へ行く。確か、地下の仕掛けをこう動かせば……ああ、開いた開いた。
ただの壁に、人一人が通り抜けられるぐらいの穴が開いたのだ。
謎技術だよなこういうの。魔法か何か使ってんのかなぁ。
ま、考えてもわからんからいっか。
「誰かいる気配がするな。注意しとくか」
やはり、誰かは残ってるようだ。まあ全員出てくるなんてことはそうそうないよな。いくら俺を恨んでても。
どこから探そう。ああ、でも人が残ってるならそいつ捕まえて聞けばいいか。
仲間は既に投降したと聞けば流石に大丈夫だよな?
一応先に制圧だけするか。
方針は決まったので、人の気配がする方へ進む。
よし、この部屋だな。
呼吸を整えて、一息のうちに部屋へ突撃する。
反応する隙すら与えない。背後から一瞬で近づき、片腕で相手の頭を鷲掴みにしたのち、地面に叩きつけるようにして組み伏せる。
よしよし、予定通りだ。
「い、命だけは助けてくださいっす! なんでも話しますんで!」
「ん? 君は……」
「はえ? その声は、タイランさん?」
「ああ、やっぱりメグサさんのとこの」
この前会った、メグサさんとこの人だ。俺が受けた依頼について調査してくれてるという……。
なんでここに?
「あのー、開放してもらってもいいっすか?」
「ああ、申し訳ない」
あいつらの仲間だったのか? って感じではなさそうだけれども。
「ここで何を?」
「何をって、調査っすよ。ここがタイランさんが探してた連中の拠点かどうか調べてたんす」
話を聞いてみると、幾つか候補を見つけていて、ここの連中が今日出払うと知ったから侵入して調べてたらしい。
へぇ、そうなんだ。ストーカーの手下たちの拠点なんだけどな、ここは。
ただまあ、優秀なのと、頑張ってくれているのは分かるので、後でメグサさんに伝えておこう。あの子頑張ってましたよって、外部の人が上司に言うのは結構評価に影響するからな。
「ふーん。ここの連中のボスが誰かみたいな情報ってありました?」
「残念ながら、見つけられてないっすね。ただ、ちょっととんでもないものは見つけちゃったんすけど……」
そう言って、一枚の書類を渡される。どれどれ、見てみるか。
……んんっ!? 嘘だろこれ!
「おいおい、本当なら相当だぞこれ」
「ですです。これ、俺殺されたりしないっすよね……?」
その書類に書かれていたのは、明らかなこの国の王宮の人間とのやり取りについてだ。
取引をした痕跡と、その条件に付いて記載されている。
おいおい、やばいもんだぞこれ。何せ、国外の厄介ストーカー野郎と王宮の連中が繋がってるって証拠なんだから。俺でもやばいって分かるぐらいにはやばい。
流石に、これは王女様に渡した方が良いよな? 王宮連中にやばい奴が混じってるって教えた方がいいよな?
「他にはなんかあったか?」
「や、やばそうで全部には目を通してないっすけど。一応あっちにまとめてあるっす」
「よし、わかった。後は俺が受け持つ。悪いことは言わないから、ここで見たことは忘れた方がいい」
何せ、ここのボスは国外に逃げた歌姫に向かって、一生刺客を送り続けるぐらい粘着質なんだ。
ちょっとしたことで目をつけられてもおかしくはない。
「なんか危なさそうになったら言ってくれ。できる限りの助けはする。俺が巻き込んだみたいなもんだからな」
「は、はいぃ……」
他の書類も見てみる。ふんふん、よくわからんがなんかの契約書類の類に見えるな。
知らん名前が多いから、何が起きてるのかはわからんが。
……ん? この名前は知ってるぞ。
「『ターマバルス博士の処遇について』……?」
確か、この人はディーナさんから探してくれって頼まれてた人だ。
ストーカー一味と関係があったのか?
ううん、読んでもよくわからんな。具体的な居場所? とかが書いてあるわけじゃないし。
とりあえず関係ありそうな書類を全部持っておいて、他の人に見せて判断を仰ぐか。
王女様にもディーナさんにも関係がありそうだけれど……流石に先に王女様か?
「あ、あのー」
「ん? どうかしたか?」
「タイランさんはこれを見て何とも思わないんですか?」
淡々と集めてたから、なんか怖がられてる? 何だろうな。
何かを思うかどうかで言えば、正直そこまでなんも思ってない。って素直に言うとまずそうな雰囲気なのは分かる。
「んー、まあ思うところはある」
「ですよねですよね。いやー、でもあまりに淡々と作業されてるみたいっすから」
「驚きが強いけどな。でも、判断するのは俺じゃないし」
確かに、たかがアイドルのストーカーが王宮に絡んでくるのは驚いた。それだけアルテシアちゃんの魅力は広く知られているという事なんだろう。素晴らしいことだ。
それで王宮の連中に何か思うかと言うと思わん。ファンであることは自由だ。犯罪に手を貸すのはどうかと思うけれど、それの沙汰を下すのは俺じゃない。
問題は、諸悪の根源の情報が出てこなかったことだな。ちゃんと処分してるのか。
自分自身の手を汚さないあたり、徹底してるな。粘着質でありながらいやらしいやつだ。
「とりあえず書類はこの辺みたいだし、一旦撤収するか」
「は、はいっす! ここの連中が戻ってくる前に……」
「ん? 多分戻っては来ないぞ。また兵士さんらに引き渡したからな」
「え?」
「え?」
いや、襲われたから引き渡したってだけなんだが……。何だその顔は。
軽く経緯を話してみると、驚いた顔をされた後にドン引きしたような表情をされる。なんだその顔は。
別に、ちょっとばかし暴れただけじゃないか。町の外だからいいだろ、何も奪ってないし死人も出してない。あっ、この書類は犯罪の証拠だからノーカンで。
「……メグサ商会長がタイランさんとの関係性を大事にしてる理由がわかった気がするっす」
「そうなのか、それは嬉しいな」
メグサさんとはちょくちょく話す仲ではあるけれど、そっか、一方通行の仲間意識じゃなかったのは嬉しいな。
なんか明らかにこの人からこちらに向けられる視線が変わったけれど、気にしないでおこう。