異世界でドルオタしてる俺氏、知らんところで救国の英雄扱いされているらしい   作:パンデュ郞

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第20話

「……これは」

「ちょっとお知らせしとかないとまずいかなと思って。なんかあったら嫌だから直接お渡ししたくて」

 

 あの後、急いでケイトさんへ連絡を取り、王女様との謁見の日程をまとめた。

 流石になんかの手違いがあって書類が紛失したらまずいのは分かるので、誰かに渡さないで自分で渡すようにした。

 いやー、よく知ってるからな。直接上に持ち掛けないと下の不祥事ってもみ消されるんだよ。

 

「姫様……」

「ええ、間違いありません」

 

 二人からすればショックだろうな。身内の汚職の証拠が出てきたんだから。

 

「ありがとうございます! これぞ、私たちが求めていたものです!」

 

 ……あれー?

 そういえば騎士団が信用できないとかいう話してたっけ? 身内に敵がいるのは想定済みで、その証拠がほしかったのか。それなら納得できる。

 

「まさかこんなにも早く成果を上げてくださるだなんて……タイラン様はなんでも得意でいらっしゃるのですね!」

「いや、俺は何もしてないんですけど……。ただちょっと厄介な連中を殴ってただけで」

「またまたご謙遜を。でなければ、どうしてここにこの書類があるというのですか?」

 

 それはそうなんだけどさぁ。偶然を褒められるのは微妙な気分になる。

 まあ、王女様が喜んでるならいっか。結果が全てよ、結果が。

 

「この資料を見るに、タイラン様が潰してくださったのが、私が依頼した組織で間違いないと思います」

「そうなんですか?」

「ええ。名前に憶えのあるものが幾つも記載されています」

 

 ほーん。そうなんだ。

 そっか、国外からストーカーが追手を差し向けてたわけだからな。国外から色々な奴を侵入させてる組織ってのは当てはまってるわけだ。しかも犯罪者だって? これは元締めも悪なのが確定したな。真っ当な人間ではないとはずっと思っていた。

 本当に悪質ストーカー行為もいい加減にしろ! そのためだけに重大犯罪犯すの本当に頭おかしいぞ!

 

「問題なのは、タイラン様が捕まえてくださっていた人たちが、知らぬところで釈放されてたことですよね……」

「ええ。つまり、かなり上の方に協力者がいるとみてよいでしょう」

 

 なんだ、あいつら刑期を終えて出てきたわけじゃないんだ。

 本当にアルテシアちゃんへの執着具合おかしすぎるだろ。熱狂するのはわかるけどさぁ。彼女がこの世で一番素晴らしい女性だからって、限度がある。

 いや、もはやこれはアルテシアちゃんが罪な女という事か。そこまで人を狂わせるだなんてな。流石ナンバーワンアイドル。一人しかアイドルいないけど。

 

「しかも……ターマバルス博士ですか」

「予想外の大物の名前が出てきましたね……」

 

 大物らしい。何だろう、何した人なんだろうな。

 気にしてるなら情報共有しとくか。

 

「実は、冒険者ギルドからそのターマバルス博士を探すように頼まれたんですよ」

「冒険者ギルドもこの人の存在を掴んでいたんですね。流石の情報網です」

 

 よほどの重要人物らしい。これは、大手柄なのでは?

 ただ、書類を返してくれとは言いづらい雰囲気。やっぱり王女様の方から冒険者ギルドに情報渡してもらう形でよさそうだな。

 

 ということで頼めば、少し考えた後に承諾してもらえた。やったぜ。

 

「冒険者ギルドと協力できるのであれば、喜ばしいことですから」

「そんな危険人物なんですか?」

「そうですね……命を弄ぶ研究をしている危険人物です。隣国ではもちろん、この国でも指名手配されていますね」

 

 ああー、そりゃ大分いかれた人物だ。いかれたストーカーに、いかれた研究者か。マジでぶっ飛んでるな。類は友を呼ぶってことで。

 

「この書類以外に情報はないんですよね?」

「あー、建物全部ひっくり返して探したわけではないので。多分ですけれど」

「そうですか、ありがとう存じます」

 

 後で手配のものを送ったりするんかなぁ。

 メグサさんのところでも紹介してみるか? 信用できる伝手ってことで。

 あー、でも友達だからって勝手に他の人に紹介するのは悪いよな。確認は取らないとだ。

 

「では今回の依頼の報酬についてなのですけれど……」

「あー、そういえば前もって話せてませんでしたね」

「申し訳ありません。私たちも、こんなに早くとは思ってなくてですね。あっ! もちろんタイラン様の事を疑っていたわけではありませんよ?」

「わかってますって。仕事の内容的に、幾ら時間がかかってもおかしくありませんでしたからね」

 

 うんうん。俺も驚いた。

 暗黒面に落ちてしまった仲間を救おうとしたら、その暗闇に住んでいたのは犯罪者だったなんてな。

 

 彼らは更生してくれるだろうか。メグサさんが面倒みるって言ってたけれど、近いうちに様子を見に行こう。どんな風な生活を送るのか気になるし。

 もしもきちんと正しい道に戻ってきてくれるのなら、その時はまた一緒にアルテシアちゃんを応援したい。

 

「それで……このぐらいでいかがでしょうか?」

 

 王女様から出されたのは、小袋いっぱいに詰まった金貨だ。中には時折金貨の上である白金貨も混ざっている。

 おいおいおい、こんな量これまでの仕事でも見たことないぞ!

 どのぐらいの間依頼を受けなくてもやっていけるか? 向こうしばらくはアルテシアちゃんにつぎ込むことができるんじゃないか?

 

「は……? こんなもらえませんよ!」

「いいえ、このぐらいは貰ってくださいませんと。それだけの活躍をなされたのですから。むしろ、これまでがおかしかったのです」

 

 これまでって何!? 俺はこれが王宮での初仕事なんですけど!?

 いや、でもこれは……正直魅力的だ。

 

「受け取って……くださいますよね?」

 

 うっ。そう言われると、とても弱い。

 アルテシアちゃんのファンとして、女性に恥をかかせるわけにはいかないのだ!

 

「……わかりました。ありがたく受け取らせてもらいます」

「ええ! ありがとうございます!」

 

 ああ、顔布の奥がすっごい笑顔なのが伝わってくる。

 そんなに嬉しいのか? そんなに俺が金を受け取るのが嬉しいのか? なんで???

 ひょっとして、王女様の周りは報酬をあまり受け取ろうとしない仕事が報酬のワーカーホリックが多いのか? 苦労しているのはそのせい?

 上に立つ人間として、働きに見合った報酬を渡せないと外からの視線が辛いもんな。

 

「ではでは、それではじっくりお話を……と言いたいのですけれども」

「先日のイリオス殿下の事を考えれば、あまり長く引き留めることも悪いでしょうね」

 

 しょんぼりしてしまった。

 おのれ王子様。こんだけ頑張ってる子を困らせるだなんて。もしかして苦労の原因はお前が一因だったりするのか? だとしたら許せぬ。

 

「また連絡ください。そしたら、話し相手ぐらいにはなりますよ」

「――っ! はい、ありがとう存じます!」

 

 うんうん。やっぱり女の子は笑顔が一番だよ。

 イリオス殿下ねぇ。いい感情は抱いていなかったが、これは少し考えないとかもな。

 場合によっては、少しきつめに脅しとくか……。不敬にならない程度に。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 そうして、タイラン様が退室なさった後です。

 ケイトに案内を任せて、私は一人頂いた書類を再確認していました。

 

「……入国の手続きが明らかに公的なもの。つまり、偽造もされてますね」

 

 思ったよりも、深いところに根が刺さっているようです。

 貴族の中でも有力などこかは関わっていることでしょう。

 

「しっかりこれを使って精査していきましょう。絶対に、タイラン様が作ってくださった機会を無駄にしてはいけません」

 

 この国を守るために。この国に住まう人々を守るために。

 必ずや、敵国と繋がっている人々を日の元に連れ出して見せましょう。

 それが、この国の王女アルテミシアとしての責務ですから。

 

 ……タイラン様。本当に、貴方は私にとって天の使いのようです。

 先ほどのやり取りを思い出して、口元が思わず緩んでしまいました。

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