ハッピーエンドに向かうには   作:内海空洞

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賛否両論あるかと思いますが、ここの彼らならこう動くと思って書いてはいます。おかげでプロットが破壌しました


高速でぶちこむ救助の横槍

子供たちの賑やかな声が遠ざかり、食堂には心地よい静寂と、満腹感からくる穏やかな空気が流れていた。自室である院長室へと戻る。テーブルの上には、先ほどまで優斗くんが腕を振るった料理の皿が、綺麗に空になって並んでいた。

 

マリアには、優斗くんを部屋へ案内させ、そのまま話をさせている。内容は、私たちの現状をより詳しく説明し、少しの間で良いので味方になってくれるよう説得すること。彼の人柄を見るに、力で押さえつけるよりも、誠意をもって対話する方が効果的だと判断したからだ。

セレナは甲斐甲斐しく食器の片付けを手伝い、切歌と調は、優斗くんが特別に作ったという彼のご両親の分の食事を、嬉々として運んでいった。

 

一人、ウェル博士だけは、あの巨大なパフェを驚異的な速度で平らげた後、満足げな溜息一つ残して、そそくさと自身の研究室へと戻っていった。協力者になったとはいえ、あの男の本質は変わらない。純粋な探究心という皮を被った、際限なき欲望の塊。

今頃、優斗くんの能力をどう解析し、どう利用するか、ほくそ笑みながら計画を練っていることだろう。念の為、優斗くんには必ず誰か一人、護衛として付けるようにマリアたちに徹底させねばなるまい。

 

思考を巡らせていると、ふと、ある変化に気づく。

 

身体が、温かい。

 

それは、外的な温かさではない。まるで、長年凍り付いていた身体の芯が、ゆっくりと融解していくような、内側から湧き上がる健やかな温もりだった。そして、心地よい眠気が、穏やかな波のように私を包み込む。

ここ数年、病と心労で、安らかな眠りなど得られた試しがなかったというのに。

 

(……もしや、あの料理が……?)

 

私のこの身体に、本当に効いているというのだろうか。ありえない。何年もの間、あらゆる医療技術を試しても改善の兆しさえ見えなかったこの身体が、たった一度の食事で?

 

……だが、科学者としての私が、この明確な 変化を無視することはできなかった。

明日にでも、精密なメディカルチェックを行ってみよう。それで、もし本当に……。

 

思考は、次の懸案事項へと移る。

フロンティアを、今後どうするか。

 

私の目的は、子供たちの安全な未来を確保すること。その点において、今回の宣戦布告は、予想以上の成果を上げていると言えた。

あの宣言の後、アメリカ政府は国際社会からの説明要求に対し、未だに沈黙を貫いている。

その態度は、マリアの告発が真実であると、自ら認めているようなもの。世論も、当初の「テロリストへの非難」から、「F.I.S.の真相究明を求める声」へと変化し、中にはフィーネの行動を支持する意見さえ出始めている。

目的は、ほぼ達成しつつある。もはやフロンティアという強大なカードを切る必要は、ないのかもしれない。

 

様々な思案を巡らせるうちに、体の温かさはさらに増していく。車椅子のヒーターの暖かさすら煩わしく感じるほどに。ナスターシャ・セルゲイエヴナ・ソコロワの夜は苦しみがなく、穏やかな気持ちで静かに更けていった。

 

 

 

マリアさんに案内された部屋は、とてもシンプルだった。飾り気のないベッドと、年季の入ったタンス、そして小さなテーブルと椅子が一つ。壁には大きな窓が設えられており、そこから差し込む月の光が、部屋の床を白く照らしている。

彼女たちの過酷な生活が垣間見えるような、質素な部屋だった。

 

「ここで、少しの間、過ごしてほしいの」

 

部屋に入ると、マリアさんは僕の背中を優しく押し、ベッドの前まで促した。先にベッドに着いた彼女は、その縁にちょこんと腰を下ろす。そして、悪戯っぽく微笑んで、自分の隣のスペースを手でポンポンと叩いた。ここに座って、と。

 

言われるがまま、僕もゆっくりと彼女の隣に腰を下ろす。二人の重みで、古いマットレスがギシリと軋み、僕たちの身体が自然と中央に傾いた。思ったより柔らかいマットレスだな、と僕はそんなことを考えていた。

 

「……あの、それで、話というのは」

「その前に……一つ、聞いてもいいかしら?」

 

話を切り出したのは、マリアさんの方だった。彼女は、少しおずおずとした様子で、僕の顔を窺うように見つめてくる。

 

「……私のこと、思い出した?」

 

その問いに、僕は記憶の糸をたぐり寄せ、そして静かに頷いた。

これだけの手がかりが揃って、思い出せないはずがない。六年前、慣れないアメリカの地で迷子になり、途方に暮れてお腹を空かせていた、幼い日の自分。そんな僕に、警戒しながらも手を差し伸べてくれた、美しい姉妹。交番まで案内してくれたお礼に、日本から持ってきた、もしもの為持っていた僕の手作りのクッキーを分け合ったこと。そして、その時の彼女たちの、少しだけ驚いたような、でも、とても嬉しそうな笑顔も。

 

「……はい。思い出しました。あの時の、姉妹達……ですよね」

「! ……そう、よかった……!」

 

僕がそう答えた瞬間、マリアさんの表情が、ぱっと花が咲いたように明るくなった。

 

「あの時のクッキー、本当に美味しかったわ。身体だけじゃなくて、心まで温かくなるような、不思議な味がした」

 

彼女は、少し潤んだ瞳で僕を上目遣いに見つめ、照れくさそうに頬を染めながら、囁くように言った。

 

「……また、作ってくれないかしら?」

「はい、喜んで。今度は、もっとたくさん、皆さんの分も作りますね」

 

友達に「また作って」と頼まれた時と同じように、僕は屈託なく笑って答えた。その純粋な喜びに、マリアさんが一瞬、息を呑んだことなど、鈍感な僕が気づくはずもなかった。

しばらく、心地よい沈黙が流れる。窓から差し込む月明かりだけが、僕たちの間を静かに照らしていた。

 

「マリアさんたちは……これから、どうするんですか?」

 

この穏やかな時間を壊したくはなかったけれど、聞かずにはいられなかった。僕がそう尋ねた、その時だった。

 

「――ゆー」

「え?」

 

不意に、どこからか、か細い声が聞こえた気がした。

 

「どうかしたの?」

「いえ……今、何か聞こえませんでしたか?」

 

話を中断してマリアさんに尋ねるが、彼女は不思議そうに首を傾げるだけだった。

 

「何も聞こえなかったわよ?」

 

気のせい、だろうか。そう思った、直後。

 

「――ううぅぅっ!」

 

今度は、はっきりと聞こえた。うめき声のような、誰かの声。

そして、それと同時に、物体が空気を切り裂いて高速で移動してくる、独特の音。ヒュオッ、と風が鳴る音に、僕の背筋がぞくりと粟立った。

 

「……ッ!」

 

マリアさんの表情が一変する。先ほどまでの甘い雰囲気は霧散し、戦士の鋭い眼光がその瞳に宿った。彼女は素早く立ち上がり、僕を庇うように前に立つと、いつでも戦えるよう身構えながら、周囲への警戒を強めた。

念の為、と彼女が腰に提げた端末でナスターシャ教授に連絡を取ろうとした、その瞬間。

 

「とおおぉぉっっぉおおおお!!!」

 

窓があったはずの壁が、爆発としか形容しようのない凄まじい衝撃と共に、内側へと砕け散った。局地的な地震かと思うほどの激しい揺れが部屋を襲い、立っていることさえままならない。

 

「きゃあッ!?」

 

マリアさんは体勢を崩し、為す術もなく、僕の方へと倒れかかってきた。

もくもくと立ち込める土煙が、月明かりを遮る。壁が一面なくなり、ぽっかりと空いた大穴の向こうに、夜空が広がっていた。そして、その空いた壁の瓦礫の上に、一人の人影が立っていた。

 

そこにいたのは、燃えるような朱色と白の鎧を纏い、その手には神をも貫くという螺旋の槍を携えた、一人の戦士。

 

最強の装者、天羽奏。彼女はガングニールのシンフォギアをその身に纏い、月光を背負いながら、バッチリとキメ顔で佇んでいた。

 

「待たせたな! 優斗。ぶじ……だった……か……」

 

まるでヒーローのように颯爽と登場し、安心させるように笑いかけようとした奏の言葉が、段々と尻すぼみになっていく。

彼女の笑顔が、消えた。表情が、氷のように固まっていく。

 

やがて土煙が完全に晴れ、彼女の目に映った光景――それは。

 

ベッドの上で、バランスを崩して倒れ込んできたマリアが、優斗の上に覆いかぶさり、まるで彼を押し倒しているかのような体勢になっている、あまりにも誤解を招きやすい二人の姿だった。

 

 

 

話は過去に戻る。会場から優斗が連れ去られてから、数時間が経過していた。

 

特異災害対策機動部二課の施設内は、重苦しい沈黙に支配されていた。ライブ会場を襲撃されただけでなく、協力者である優斗と、その家族まで攫われてしまったという事実は、隊員たちの士気を海の底よりも深く沈ませるのに、十分すぎるほどの破壊力を持っていた。

 

中でも、雪音クリスの状態は、誰の目から見ても深刻だった。 

 

二課の施設の外れ、ほとんど人の寄り付かない廊下の突き当たり。ぽつんと置かれた自販機とベンチ。彼女はそこに一人、項垂れるように座り込んでいた。

 

(あたしの、せいで……)

 

握りしめた拳が、小刻みに震える。

ソロモンの杖。自分が使役し、そして倒された、忌まわしい聖遺物。それがテロリストの手に渡り、今回の事件の引き金になった。そして、その結果、優斗が攫われた。あの優しい男が、またしても誰かの都合で、危険な場所に連れていかれてしまった。

 

また、守れなかった。絶望から救い出してくれた恩人を、この手で守ることさえ、できなかった。

自己嫌悪の渦が、彼女の心を蝕んでいく。

その時、遠くから足音が聞こえた。音は段々と近づき、やがて、彼女の隣で止まる。誰かが、静かに隣に腰を下ろした。

 

「ねえ、クリス」

「……んだよ」

 

投げやりな声で返事をする。今は、誰とも話したくなかった。だが、聞こえてきた声の主は、意外な人物だった。

 

「……先輩」

 

そこにいたのは、風鳴翼だった。思わず顔を上げると、彼女は静かな瞳でこちらを見ていた。

 

「優斗さんが心配?」

「……イヤミかよ。そんなの、当たり前じゃねーか。人質なんて卑怯な真似しやがる奴らを、信用できるわけねえだろ」

「イヤミじゃないわ。確かに、彼らの手法は決して褒められたものではなかった。けれど……マリアたちも、やりたくてやったわけではない。私には、そう見えただけよ」

 

翼の言葉は、クリスを気遣ってのものだったのだろう。だが、今の彼女には、その言葉が「お前のせいだ」と責められているように聞こえてしまった。

「違うわ」と翼は静かに首を振る。

 

「ステージの上で、彼女たちが撤退する時の顔を覚えている? 特に、セレナさんと、あの調という子の……。あの苦悩に満ちた表情は、何か、のっぴきならない理由がある証拠よ」

「……先輩は、心配じゃねーのかよ」

「しているわ。当たり前じゃない」

 

翼はきっぱりと言い切った。そして、少しだけ遠い目をして、ぽつりと呟く。

 

「……私も前に、あなたと似たような状態になったことがあるの」

「……え?」

 

クリスは、驚いて翼の顔を見た。変な言葉がたまに出るが、完璧超人に見えるこの先輩が、自分と同じような後悔を?

 

「昔……奏がまだ、二課に入りたてだった頃のことよ。彼女は、ノイズへの復讐心に身を焦がし、自分の命さえ顧みない、荒れた戦い方をしていたわ。リンカーを過剰投与し、血を吐きながら、それでも怒りだけでノイズを殲滅していく。心配して近づこうとしても、『馴れ合いは要らない』と、全てを拒絶していた」

 

クリスは、今の奏しか知らない。誰よりも強く、太陽のように快活で、懐の深い、頼れる先輩。もし自分に姉がいたなら、きっとあんな人なのだろうと、密かに思うこともある。(優斗に色目を使っている点だけは、少し、いや、かなり許せないけれど)

 

そんな、太陽のような彼女に、そんな過去があったとは、にわかには信じられなかった。だが、先のライブで見せた、あの底知れない怒りを宿した瞳。あれが、過去の彼女の姿なのだと、今なら分かる気がした。

 

翼は、続ける。

 

「私は、そんな奏を……そう、尊敬、していたのね。私は確かに、自分で望んで天羽々斬の装者になった。でも、それは風鳴家としての役目、防人としての使命という、敷かれたレールの上でもあった。私が選んだと思った道は、誰かに作られた道でもあったのよ」

 

彼女は、自嘲するように、ふっと微笑んだ。

 

「もちろん、その道を歩くと決めたのは、私自身。でも、奏は違った。彼女は、自らの道が事故で壊されても、歩くことをやめなかった。血の滲むような、荊でできた道を、己の意志だけで、裸足で歩き続けていた。……これだけの覚悟を、一体どれだけの人間ができると思う?」

 

少し喉が渇いたと言って、翼は立ち上がり、近くの自販機であったかいお茶と、ホットココアを買った。そして、ココアの缶を、そっとクリスの手に握らせる。

 

「だから、私は彼女に憧れた。憧れて、近づいて、その心に触れようとして……でも、得られたのは拒絶だった。私は、彼女の境遇も、その固い意志も考えず、ただ一方的に、私の物差しで言葉をかけてしまった。その言葉が、奏を深く傷つけてしまったの」

 

温かいお茶を一口飲み、翼は息を整える。

 

「あの時の私は、狼狽え、ただ泣くことしかできなかった。追いかけることさえ、できなかったの。司令が奏を迎えに行っている間も、私は後悔で震え、ただ『ごめんなさい』と繰り返しながら、うずくまることしか……」

 

その声は、微かに震えていた。

 

「結局、奏を救ったのは、優斗さんだったわ。……これは、ここだけの話にしてほしいのだけれど。実は、会う前の優斗さんに、ほんの少しだけ、嫉妬したのよ?」

 

悪戯っぽくウインクして、翼はクリスを見た。

 

「……まじか」

「ええ、本当よ。……だから」

 

翼は、クリスに向き直り、その冷たくなった手を、両手で優しく包み込んだ。真剣な眼差しが、クリスの瞳をまっすぐに射抜く。

 

「あの時、動けなかった私からのアドバイスよ。……クリス」

「――動きなさい」

「嫌われるのが怖い、とか。傷つけてしまうかもしれない、とか。そんな後悔や自己嫌悪に、どれだけ身を浸して蹲っていても、何も変わらない」

「自らの手で離してしまった相手は、もう、こちらへは来てくれないの」

「だから、今度はこっちが、勇気を出して、迎えに行くのよ」

「『いつだって、共に在りたい』。その気持ちこそが、必ず、その人との未来に繋がるのだから」

 

翼の言葉が、温かいココアのように、クリスの凍てついた心に、じんわりと染み渡っていく。

 

話が終わり、翼がふっと一息ついた、その時。彼女の携帯が、短く着信を知らせた。緒川さんからの電話だった。

 

「はい、私です。……ええ。……なんですって? ……分かったわ、すぐに」

 

驚きの表情から、やがて、不敵な笑みへと変わっていく。通話を終えた翼は、すっくと立ち上がり、クリスに向かって言い放った。

 

「――朗報よ、クリス」

「優斗さんの居場所が、わかったわ」

 

 

 

深夜。二課の司令室には、緊張した空気が張り詰めていた。

 

弦十郎は、集まった面々を鋭い視線で見渡す。シンフォギア装者の、奏、翼、クリス。特にクリスは、先ほどまでの落ち込みが嘘のように、瞳に闘志を漲らせている。「早く始めろ」と、その全身で語っていた。

そして意外にも、奏が、嵐の前の静けさのように、腕を組んで冷静に話を待っていた。ライブ会場で見せた凄まじい怒りを、完全にコントロール下に置いているようだった。

 

次に、響と未来。本来なら、とっくに寮に帰すべきなのだが、「何か私たちにできることはありませんか」「何でもやります!」と、自ら残ることを志願した。目の前で優斗が攫われたショックと不安で、一人では眠れないのだろう。このまま何もさせずに帰せば、かえって心が参ってしまう。弦十郎はそう判断し、簡単な夜食の準備やお茶汲みといった、ささやかな役割を彼女たちに与えていた。

 

そして、櫻井了子。彼女はテーブル上のホログラムに映し出された、廃病院の立体地図を、冷徹な目で見つめていた。相手の内情を知る彼女には、ライブ会場のデータから敵戦力の分析と、行動予測に基づいた突入経路の割り出しを依頼していた。

 

「みんな、こんな夜分に集まってくれて感謝する。本題に入ろう。――優斗くんの居場所が、判明した」

 

弦十郎の言葉に、クリスが食い気味に尋ねた。

 

「どうやってだ!」

「それは、今回の作戦の立役者、慎次から話してもらおう」

 

弦十郎が合図すると、司令室のモニターが映る。影になっていたる部分にいるのだろうか、暗闇に溶け込み顔がだけが見えている緒川慎次が姿を現した。

 

『優斗さんが拉致される、あの瞬間。全員の意識が、彼と二人の装者に集中していました。その、ほんの一瞬の隙を突いて、発信機を取り付けさせていただきました』

「あの時!? どの時に!?」

 

一番近くにいたはずの響が、驚きの声を上げる。

 

「いつの間に……」

「さすが、緒川さん。仕事が早い」

 

驚く未来と、感心したように頷く奏。

 

「つーか、なんで発信機なんて都合よく持ってんだよ」

『ツヴァイウィングのマネージャーですので』

 

思わず突っ込むクリスに、緒川はふわりと微笑み、煙に巻いた。

 

弦十郎は、話を続ける。

 

「慎次には続けて、優斗くんとご両親が幽閉されている部屋の特定と、敵戦力の位置情報をリアルタイムで把握してもらった。分かったことだが……優斗くんのご両親は一室に保護。特に拘束はされておらず、優斗くん本人は、何故か誘拐相手に食事を振る舞っているらしい」

 

緊迫した空気が、一瞬だけ緩んだ。救助対象が、敵地で呑気に料理をしている。その事実に、何人かが思わずため息を吐いた。

 

「何やってんだよ、あいつは……」

「全くもう! 心配したんだから! 帰ってきたら、一週間ご飯タダにしてもらうんだからね!!」

 

クリスは呆れたように頭を抱えるが、その口元は確かに笑っていた。響も、ぷんすかと怒りながらも、その表情は安堵に満ちている。

 

「優斗さんらしい、と言えば、そうですね」

「ただ、もう少し緊張感を持ってほしいものだわ」

 

感心する翼と、苦笑する了子。

 

「……はぁぁ。罰として、優斗にはあたしたちの言うこと、何でも聞いてもらうから。ね、未来」

「はい、奏さん」

 

深い溜息をつきながらも、その目が全く笑っていない奏と、涙の跡が残る瞳で静かに頷く未来が、そこにいた。

 

「では、作戦を説明する! 作戦内容は、優斗くんとその両親の奪還を最優先目標とし、その後、速やかに相手の鎮圧を行う! そして、作戦執行時間は――今すぐだ! これから直ちに開始する!!」

 

弦十郎の宣言に、緒川と了子以外の全員が、驚愕の声を上げた。

 

「今からかよ!?」

「ああ、相手の裏をかく! 誘拐した直後に、まさか位置が割れ、即座に奪還作戦が実行されるなど、夢にも思うまい。時間が経てば経つほど、相手の警戒は厳しくなる。油断している今こそが、奇襲の最大の好機だ!」

 

流石の奏も、その決断の速さに驚きを隠せない。

 

「こちらには、了子くんが解析した建物のマッピングデータがある。慎次からのリアルタイム情報により、敵の配置もほぼ完全に把握できている。であるならば、躊躇う理由はない! 戦力の割り振りは……」

 

「――あたしに、やらせろ」

 

鋭い声が、弦十郎の言葉を遮った。クリスだった。その瞳には、決意の炎が燃えている。

 

「クリス。今回ばかりは、優斗くんの救出は……」

「ちげぇ! あたしが狙うのは、ソロモンの杖だ!」

 

奏が、何か言いたげにクリスを見る。だが、クリスはそれを遮り、続けた。

 

「勝つだけなら、誰でもできるかもしれねえ。でも、『確実に』あいつを助けるなら、あたしより強い先輩の方が適任だ。……癪だけどな」

「……クリス。……わかった、任せろ」

 

真っ直ぐな信頼を込めたクリスの言葉に、奏は力強く頷き、応えた。

 

「では、戦力の割り振りを決定する! 優斗くんの救出は、奏!最速でぶち抜いてこい!」

「おう!」

 

手のひらに拳を打ちつけ、ニヤリと笑う奏。

 

「両親の保護は、慎次が担当。保護しだい、翼とクリスくんが突入する! ウェル博士とソロモンの杖は、クリスくん! 」

「任せろ!」

 

自信満々に、返事を返すクリス。

 

「セレナ・カデンツァヴナ・イヴと暁切歌と月読調の足止めは、翼が抑えてくれ! 」

「任せてください」

 

静かに返した言葉に闘志が混じる翼。

 

「以上! 何か質問は!?」

 

シン、と静まり返る司令室。全員の瞳に、闘志の光が宿っていた。

弦十郎は、無言で号令を待つ仲間たちを一瞥すると、腹の底から声を張り上げた。

 

「――では、作戦を開始するッ!! 全員、必ず無事で戻ってこい!!」

 




プロットが破壌してきた本話にぶち込む技量がない作者のQ&A

Q、世論変わるの早くね
A、アメリカが何も全く声明を出していないから

Q、マリアチョロくね?
A、見ためで1ストライク、性格で2ストライク、家庭的な所で3アウトバッターチェンジ

Q、翼さんってこんな喋り方?
A、奏が生きている。気兼ねなく接してくれる友人がいるなど心に余裕があります。戦場では公私を分けるため防人になります。

Q、行動早くない?
A、原作との違い。人質の有無、居場所の特定、戦闘できるメンバーの疲労がない、こちらの方が戦力が大きい。などがあります。

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