ハッピーエンドに向かうには   作:内海空洞

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今回からGX編に突入します。この話が1番のキャラ崩壊かも。あと、戦闘シーンはほぼ無いです。

他のキャラクターも大概だけど、やっぱり過去があるキャラは描きやすいね。口調の再現は凄くむずいけど

2025/11/03に読み返した所、33話と矛盾する場面を発見しましたので、一部修正しています。


戦姫絶唱シンフォギアGX編
新たな常連客。その名はキャロル


時はアメリカによるノイズ侵攻の後まで遡る。

異空間に浮かぶ巨城、チフォージュ・シャトー。その玉座の間で、オレ、キャロル・マールス・ディーンハイムは一人思考に耽っていた。

 

「ガリィ、報告を」

 

静かに響くオレの声に、オブジェのように佇んでいた四体の人形(オートスコアラー)の一体、青いドレスのガリィが滑るように動き出す。

 

「奴らはどうだった?」

「分かりやすく申し上げますなら、想像以上かと……。装者の奴らは、アルカノイズの分解能力がちっとも聞いてる様子が無いですよ」

「ちっ……そうか」

 

忌々しい。あの程度の成果では、奴らの足止めにさえならないというのか。

やり方を変える必要がある。錬金術の三大要素、分解、解析、そして……。いや、まだだ。まだ、何もかもが足りていない。

 

レイラインのマップは、フロンティアが起動しなかったせいで手に入らず。オートスコアラーのエネルギー源である「思い出」も、忌々しい装者どもが世界中を駆け巡るせいで、思うように収集できない。オレの思い出はまだ無駄に使えない。これでは、チフォージュ・シャトーを完全起動させるための聖遺物の奪取もままならない。

 

もし、コレが全て達成できたとすれば奇跡的確率か?

 

ふん…何が奇跡だ、くだらない。奇跡などに頼らずとも、オレの力で、パパ…の願いは成し遂げてみせる。

だが、現状、手詰まりであることも、また事実。

 

業腹で、屈辱に、腑が煮え繰り返る思いだった。

そんな、苦悩に身を焦がすオレに、面白げにオレを覗き見るガリィが、一つの提案をした。

 

「マスター。例のフィーネ・レポートにあったという、料理を解析してはいかがです?」

「?……ああ。あの胡散臭いレポートの、か」

「新城優斗とかいう、優男がやっている喫茶店ですわ。もし、レポートが真実なら、その力、無視できないのでは?」

「ふん……奇跡を起こす料理、か。ふざけるな、と言いたいところだが……奴らの、あの常軌を逸した力の源泉が、そこにある可能性も、否定はできん」

 

オレは決断した。その「奇跡」とやらの正体を、オレの錬金術で分解し、暴き、そして利

用し尽くしてやる、と。

 

「ガリィ、今からその喫茶店とやらに向かう。用意をしろ」

「はぁい、マスター。……ところでマスター? 現代の喫茶店では注文する時に『いつもの』と言うのが、粋なマナーなんですよ?」

「なに? ……そうだったのか。助かる」

「いえいえ、マスターのためを思って動くのが、私たちオートスコアラーですから………ひひっ」

 

ガリィの含み笑いに気づかぬまま、私たちは、テレポートジェムで、コモドの近くの、目立たない路地裏へと転移した。

 

 

路地裏から歩き、店に前に着いた。外から見た客の数は少なく見える。あまり騒がしいのは好みではないので、ちょうど良かった。

 

「いらっしゃいませ」

 

キッチンに立つ店の主――新城優斗の姿を確認する。優しい目元。その奥に、脳裏に朧げに残る父の面影を一瞬だけ見た気がして、心が揺れる。……気のせいだ。よく見れば奴とパパは似ても似つかない。オレは、オレだ。

 

「こちらがメニューになります」

「――いつもの」

「くひっ」

 

オレは、腕を組み、イメージによる練習通りバッチリと決めた。真向かいのガリィが変な反応をしたが、こいつがおかしいのはいつもの事か。

 

「え?」

「『いつもの』だ。ここでは、そう頼むのが礼儀なのだろう?」

 

戸惑う新城優斗。どうした?マナーなのだろう?明らかに悩むこいつの様子に間違ったとこがあったかと、少し焦る。だが、こいつは何かを察したように穏やかに微笑んだ。

 

「かしこまりました。『いつもの』ですね。少々、お時間がかかりますがよろしいでしょうか?」

「ああ」

 

注文が通ったことに満足し、オレは誰にも気づかれぬよう、店全体の解析を始めた。だが、反応がない。キッチン周りを重点的に調べても、異常はない。無為な時間がすぎていく。イライラと眉を顰めるオレと、こっちを見てニヤニヤするガリィの間にやがて一皿の料理が置かれた。作り置きを温めただろうという、それは。

今はもう、焼却された記憶の彼方にあるはずの、父と一緒に作った……はずの「クリームシチュー」だった。

 

解析しても何の異常もない。レポートはやはり嘘だったか。そう思いながら、オレはスプーンでシチューを掬い口に運んだ。

味は……美味い。いや、それだけではない。どこか懐かしい。優しい温かさ。

野菜の甘みと、鶏肉の旨味がクリームと溶け合って……ああ、そうだ。パパが作ったシチューが失敗したから私が作って、パパとも一緒に作った事もあった。パパは何故か錬金術以外は不器用で、一緒に作った時のシチューは少しだけ焦げ付いていて、でも、それがまた美味しくて……。

 

味わい、嚥下したその瞬間。

 

胃の中に温かさが満ちる。いや、体だけではない。それよりも、もっと深い魂の奥底が、満たされていく。

 

忘れていたはずの、父の名が蘇る。

 

――イザーク。

 

とっくに焼却した全ての思い出が、次々と奔流のように蘇っていく。

その愛情が、その温もりが、「世界を知り、人々が分かり合える世界にしたい」という、昔の私の純粋な願いが、オレの心を、満たしていく。

 

「……なんだ、これは……」

 

急激な変化に戸惑い、呆然とする。脳の処理が追いつかず、オレはただ無意識にスプーンを口に運び続けた。

 

意識を取り戻したのは、カチャリ、と空になった皿とスプーンがぶつかる音が聞こえてからだった。見直せば目の前の皿は空になっている。

 

「マスター? マスター?」

 

呆然としたオレをおかしく感じたガリィの呼びかけで、ようやく、オレは我を取り戻した。

オレは、急激に起きた自身の変化を確認するため、急いでチフォージュ・シャトーに戻ることにした。

通り過ぎ様に懐から金貨の入った小袋を新城優斗の手に握らせる。

 

「釣りはいらん。とっておけ」

 

混乱する奴を尻目に、足早に店を出る。路地裏からテレポートジェムで帰還したオレに、ガリィがようやく言える、とばかりに笑いをこらえながら言った。

 

「マスター?」

「なんだガリィ。要件があるなら短く言え。オレはこれから自分に起きたことを調べるつもりだ」

「実は……注文の時に『いつもの』と言うのは……嘘なんですよ」

 

一呆然としたオレの反応で一瞬、間が空いた。

 

「……はぁ!?」

 

待て。ガリィは今なんて言った!?嘘だと!?

 

「くくっ……マスターが、プフッ……ドヤ顔で『いつもの(キリッ)』とか言い出した時は、ひひっ、とっても、可愛かったですよぉ……ブフッ」

 

言いたい事を言ってガリィはその場で大笑いした。オレは先程の喫茶店での行動を思い出し、騙された屈辱と無様な姿を晒した羞恥で顔が赤くなるのがわかった。

 

「ガーリーィー!!……じゃあ、あの金貨も!」

「当たり前じゃないですかぁ。この現代社会、しかも日本で、金貨なんて使うはずないじゃないですか。アッハハハハ!」

「くそッ! 相変わらず、性根の腐ったやつだな、お前は本当にッ!」

 

一度激怒したせいか、先程の混乱が鎮まってく。陥れたガリィは狙ったわけじゃないだろうが。

 

――だが、それよりも。

何があっても戻ることのないはずのない、思い出。その全てが、完璧に戻っている。パパ、イザークの名前から、共に過ごした日々の記憶、そして、その、死に様の記憶さえも。

 

ーーパパは、本当に復讐を望んでいたのか?

オレは、善意で人を助け、悪意で全てを返した世界が憎い。理不尽にパパを奪った世界が、憎い。

 

だが、記憶の中のパパは、オレにそんなことを望む人ではなかったはずだ。パパはいつだって優しかった。誰かのために動けることができる強い人だった。

 

パパのための復讐が、いつの間にか、オレ自身の、自己満足のための、憎しみのためだけの復讐になっていた。

記憶の彼方にあったパパの望みと、これまでを過ごしてきたオレの望み、どちらが正しいのか、真逆とも言える願いに心が引き裂かれそうだった。

 

 

 

数日後。オレ一人では答えが出せそうにない。ガリィ達、オートスコアラーも人格データはオレをベースにしている為、話し合ったとしても、それは一種の自問自答にしかならない。

 

しかし、オレはこの世界に復讐を果たすために生きてきたのだ。心の迷いは消してしまいたい、そう考えたオレはパパの面影を一瞬とはいえ感じたあの男に会うために再び、コモドの扉を開けていた。きっと、何かが掴めるだろうと。

 

時間は閉店間際。邪魔な客は、もういない。

 

あいつは、オレの姿を見つけると、驚いた顔をした。でも、何も聞かずに静かにカウンター席へと案内してくれた。

 

「……お前は、人を、何故そこまで信じられる」

 

差し出された紅茶の湯気の向こうに映る新城優斗に、オレは問いかけた。

こいつは、オレの事情を知らない。オレが、彼の仲間の敵になるかもしれない存在だということも。

 

こいつはただ、静かにオレの言葉に耳を傾けていた。まるで私だった頃に楽しかったことを話し、それをゆっくり聞いてくれたパパのような姿にオレの何かが溢れ、衝動に任せあまま、つらつらと想いを少しぼかして吐露した。死んでしまったパパのこと、世界の理不尽さに憎み、そしてパパが、本当は何をしてほしかったのか。

オレの話を聞き終えたこいつは、少しだけ考え、そして、言った。

 

「……きっと、キャロルさんに、生きて、幸せになってほしかったんだと、思いますよ」

「何を……」

「僕は、普通の人間です。力があっても、助けられるのは、手の届く範囲だけ。だからこそ、自分の信じるものを、大切にしていきたいと思っています」

「……」

「キャロルさんも、お父さんにとても大切にされていたんでしょう? 話の端々から、お父さんへの深い信頼と愛情が伝わってきましたから」

 

信頼?愛情?確かにオレはパパを愛していた。しかし…

 

「だが、裏切られたパパは……最後に世界を識ってくれ、と……」

「きっと、キャロルさんのお父さんも、自分がいなくなってしまった後、キャロルさんだけでも幸せな自由を持って生きてほしいんじゃないかと、勝手な想像ですが、僕は思いました」

 

オレはパパの最後を思い出す。あの時パパは確かに微笑んでいた。死ぬ恐怖もあっただろうに。

 

「だからって、無理に答えを出す必要はありませんよ。僕だって何もかもを知っているわけじゃない。日々のなんてことない日常の中で色々なことを体験して、少しずつ自分の中に取り込んでいく。それが、僕にとっての、『識る』っていうことなんです」

 

体験して、識る。錬金術師としての考えではでなく、1人の人間としての考え。

 

「だからキャロルさんも、再び迷いを持ったとしても、ご自身が納得いくまで自分に問いかけていくしかないんだと思います」

「……」

「身勝手な話ですが、僕にできるのはこうして話を聞いて思いやることぐらいです。だから、いつでも来てください。いつだって僕はここにいますから」

 

その、安心させるような笑み。錬金術師としてのオレでも無く、復讐者としてのオレでもない。ただのキャロル・マールス・ディーンハイムとしてのオレに向けた言葉に、オレの心の中で燃え盛っていた復讐の炎が、ほんの少し、少しだけだが、穏やかになった様な気がした。

 

「……気が向いたら、な」

 

解決したわけじゃないが、どこか心がスッキリして席を立ったオレに、こいつが、あの時渡した金貨を返そうとする。

ガリィの言ったことを思い出し、恥ずかしく感じるが、表情には出さないように取り繕う。

 

「それは取っておけ。もう、どうでもいい物だ」

「でしたら、この金貨の分、キャロルさんの飲食代はずっと無料にしておきますね。一年でも、二年でも。この金貨が尽きるまで、毎日来てもらっても、構いませんから」

 

その、オレも身を案じて、引き止める気満々の言葉に私は、呆れて、そして久しく忘れていた、人の温かさに、どうしようもなく、こそばゆい気持ちになった。

 

研究対象のはずだったのに。なんでだろうな。今ではもっと、この男のことを知りたいと思ってしまっている。

この気持ちはきっと、オレの錬金術では解析できないのだろうな。

 

「では、またのご来店をお待ちしています」

「ああ」

 

オレは、夜の街へと消えていった。優斗が、その背中を、見えなくなるまで見送っていることも知らずに。

 

 

 

あれからキャロルちゃんは、気まぐれな猫のように不定期にふらりとコモドへやってくるようになった。

その姿はいつも一人というわけではない。

ある時は前に一緒に来ていた青いドレスの少女――ガリィちゃんを連れて。彼女がいると店の空気が不思議とキャロルちゃんの周りは賑やかになる。

 

またある時は、穏やかで、踊り子のような佇まいのファラさん。どうやらツヴァイウィング、それも翼ちゃんのファンらしい。なのでサービスで緒川さんから善意で貰ったグッズをを見せたら。

 

「あなたが神ですか!?」

「……??」

「ファラ!?」

 

膝をつき、僕の両手を握って祈り出した。どうやら、今はもう生産していないらしい。あの時の驚いたキャロルちゃんの表情は忘れられない。

 

黄色いカジノディーラーのような服を着て、物静かな雰囲気のレイアさん。

 

「地味に所だが、店主。何か派手なメニューはあるのか?」

「ええと…派手で言うなら昔、冗談で考えたフルーツ全盛りバケツパフェがあったりしますが」

「全盛…なかなか派手そうだ。…マスター」

「食べんぞ」

 

ちなみに昔作ったパフェは響ちゃんが一人で食べました。そして一週間後にランニングする未来ちゃんと一緒に走っている姿があったそうです

 

そして、ドリルのようなツインテール、大きな手袋が印象的、元気いっぱいのミカちゃん。

 

「マスター、マスター、お腹すいたゾ。」

「もう少し待っていろ。ここの用事が終わったすぐに満たしてやる」

「なにか用意しましょうか?」

「別にいい。…おいミカ何を見ている」

「我慢できないんだゾ〜……あれ、美味そうだゾ」

「おいミカ、待て。お前に食い物を食べるきの機能はない…待て!食べるんじゃない!というか何故美味しそうに見えるんだ!?」

 

彼女たちは、キャロルちゃんの「家族」なのだろうか。皆、どこか普通ではない雰囲気を纏っているけれど、キャロルちゃんの隣にいる時の彼女たちはとても自然で、楽しそうに見えた。

 

そして、僕が一番気になっていたのは、キャロルちゃんそっくりの儚げな少女、エルフナインちゃんだった。

初めて訪れて緊張しっぱなしの彼女を連れてきた時、僕は思わず尋ねてしまった。

 

「キャロルちゃんとエルフナインちゃんは、姉妹なんですか?」

 

その問いに、キャロルちゃんは一瞬、とても苦い顔つきをして、けれど、静かに頷いた。

 

「……まあ、似たようなものだ」

 

その肯定の言葉が嬉しかったのだろう。隣にいたエルフナインちゃんは目をきらきらと輝かせ、ぎゅっとキャロルちゃんに抱きついた。

 

「きゃ、キャロル……!」

「鬱陶しいぞ、エルフナイン。ひっつくな」

 

キャロルちゃんは、そう言ってエルフナインちゃんを引き剥がそうとしていたけれど、その手つきは驚くほど優しくて、本気で嫌がっているわけではないことが僕にも分かった。

 

そんな彼女の、店での過ごし方は大抵決まっている。

 

カウンターの一番端の席に座り、僕が話す他愛もない日常の話を、時には相槌を打ち、時には静かに、ただ聞いている。僕が今日試作したコーヒーの話、響ちゃんたちが学校でやらかした面白い話、未来ちゃんとお料理教室を開いた話、切歌ちゃんと調ちゃんがナスターシャさん達と来た話、クリスちゃんがインターネット通信でまた奏ちゃんとゲームで対戦した話。そんな、何の変哲もない出来事を、彼女は、まるで初めて聞く物語のように、真剣な眼差しで聞いてくれるのだ。

 

だが、稀に、キャロルちゃんの方から話してくれる時もある。その内容はもっぱら彼女の日常の愚痴が多い。

 

「……いいか、よく聞け、ユウト。あのガリィが最近は、このオレの緻密な分析作業中に、平気で氷の彫刻などを置いていくんだ。『彩りがあった方が、インスピレーションも湧きますわよ?』だと。ふざけるな。オレの思考は、いつだって完璧なんだ」

「あはは、ガリィちゃんは、場を和ませるのが上手なんだね」

「ミカに至っては、もっと酷い。『マスター! 今日のごはん(思い出)はまだか?』と、朝から晩までそればかりだ。ガリィが少しは頭を使えと言っているのに、全く聞きやしない」

「ミカちゃんは、元気いっぱいなんだね」

「挙句の果てには、プレラーティとかいう、知り合いの女…がな。『チフォージュ・シャトーのエネルギー効率が悪いワケダ。もっと最適化するワケダ』などと、ワケダワケダとうるさいんだ。オレの城のことに、口出しするなと言いたい!」

「お城……? すごいところに住んでるんだね、キャロルちゃん」

「そ、そういう意味ではなくてだな……! それに、エルフナインだ! あいつは最近オレの後ろを、ずっと、べったりとついてくる。……少しは、一人にさせろというんだ……」

 

自分の世界の事情を、僕に分からないように、でも、誰かに聞いてほしいという気持ちが隠しきれないように、彼女はぽつりぽつりと、その日常を語ってくれた。その横顔は、世界への復讐を誓う者の顔ではなく、ただの賑やかな家族に振り回される、少しだけ素直じゃない少女の顔だった。

 

ちなみに、僕がキャロルちゃんを「ちゃん付け」で呼ぶようになったのには、ちょっとしたきっかけがあった。

ある日、エルフナインちゃんが、不思議そうに僕に尋ねてきたのだ。

 

「ユウトさん。どうして、私のことは『ちゃん』付けで、キャロルは『さん』付けなのですか?」

「え? ああ、それはね。僕は自分より年下の子には、親しみを込めて『ちゃん』を付けることが多いんだよ。もちろん、相手が嫌がらなければだけどね」

 

僕のその説明にエルフナインちゃんは、ぱあっと顔を輝かせ、何かを深く納得したように頷いた。

 

「ああ、そうだったのですね! だから、キャロルは『さん』付けなのですね!」

「……え?」

 

エルフナインちゃんのあまりにも純粋なその言葉に、今度は僕が驚く番だった。

 

「え、年上だったの!? キャロルさんって……!」

 

初対面の印象に引っ張られてそのままだった呼び方だった。僕は、驚いてキャロルちゃんの方を見ると、彼女は、顔を真っ赤にして、エルフナインちゃんの柔らかそうな頬を、むにーっと、つねっていた。

 

「エルフナイン……! 余計なことを言うな……!」

「ふぁ、ふぁい……」

「まあまあ、キャロルちゃん、落ち着いて。エルフナインちゃんも、悪気があったわけじゃ……」

 

僕が慌てて止めると、キャロルちゃんは、ふいっとつねるのをやめた。解放された頬をさするエルフナインちゃんを尻目に、彼女は照れを隠すようにそっぽを向いて、ぶっきらぼうに言った。

 

「……お前が、呼びたいように呼べばいい」

「え?」

「だから、呼び方は、お前に任せると言っているんだ!」

 

その言葉は、拒絶ではなかった。むしろ、少しだけ期待が混じっているような気がした。僕は、少しだけ迷って、おそるおそる彼女の名前を呼んだ。

 

「……じゃあ、……キャロルちゃん?」

 

その瞬間、彼女の肩が、びくりと小さく跳ねた。そして、一瞬だけこちらを向いたその顔は、夕焼けみたいに真っ赤だった。

 

「……ああ」

 

かろうじて、それだけ答えると、彼女はまた、ぷいっとそっぽを向いてしまった。その返事はぶっきらぼうだったけれど、否定ではなかった。

それを見ていたエルフナインちゃんが、また頬をつねられるのも忘れて、満面の笑みで言った。

 

「キャロル! 優斗さんに『ちゃん』付けで呼ばれて、嬉しいんですね!」

「う、うるさいッ! お前は、少し黙っていろ!」

「あうあう…!」

 

再び、むにーっと頬をつねられるエルフナインちゃんと、それを慌てて止める僕。

そんな、他愛なくて温かい時間が、僕と、彼女たちの間でゆっくりと確実に、積み重なっていった。

 




オフラインのXD持ちだけど、本話にぶち込む技量がない作者のQ&A

Q、キャロル丸くない?
A、キャロルの計画は現在、破綻しています。そのせいで若干やけになっています。そもそも計画の要が他任せが多いのが原因だと作者は思っています。

Q、騙されやすいねキャロルちゃん
A、仕事(世界の分解)以外引きこもりで、一般知識の情報は捨てていますから

Q、絆されやすいねキャロルちゃん
A、パパみたく無意識で優斗に甘えているかも

Q、オートスコアラー全機稼働してるけど
A、思い出復活したキャロルで余裕で賄えます。数百年生きた記憶は伊達じゃないです

Q、図々しいなこのエルフナイン
A、本編でもこんなでは?キャロルが歩み寄ったから、というのもありますが
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