新ファウストローブ
エルフナイン達は天才の技術により、動力源に「ラピス・フィロソフィカス」ではなく「聖遺物」を組み込んで改修された全く新しいファウストローブ。彼女たちの精神的成長や覚悟が、その機能と外見に強く反映されている。
■ サンジェルマン
ファウストローブ名: ガーンデーヴァ
使用武器: エスコペターラ(銃の側面に弦を張った、平和を奏でる楽器としての機能を併せ持つ銃型のスペルキャスター。灼熱の弾丸を放つ)その他に肘・膝のアーマーに備え付けられたバルカンを発射する機構がある。
外見・デザイン:理想に燃える過熱さを体現したような「赤色」を基調とし、清廉さを顕にする「白銀の装甲」を纏う。デザインだけならFGOのモードレッドの鎧を軽鎧にしたもの。踵から出るブースターで空を飛べる。
テーマ・概念:「高潔な魂」「宿命」。支配に抗う「迷いながらも立ち上がる正義」と人類の「革命」の象徴。
■ プレラーティ
ファウストローブ名: フラガラッハ
使用武器: けん玉型の巨大鉄球。持ち手の玉を刺す部分は剣になっている。鉄球は糸などで繋がっていないが、聖遺物の特性により、射出した鉄球は必ず手元へ帰還する。
外見・デザイン:深い「黒」をメインカラーとし、差し色に2種類のダークオレンジを走らせたタイツスーツ。以前被っていた大きな頭巾はなくなり、まるで「黒いレースのヘッドスカーフ」のような、シックで可憐な装いに変化している。見た目はFGOのスカサハ最終再臨をイメージ
テーマ・概念:単なる切れ味や暴力など簡単に傷つけるではなく、己の「意志」と「真実」、そして仲間の声に「応えるもの」を表している。
■ カリオストロ
ファウストローブ名: カエストス
使用武器: 拳(プロテクター内にある皮のバンテージ)特性として左右の拳で交互に攻撃を当て続けると「コンボ数」が加算され、その数に応じて攻撃速度と威力が際限なく上昇していく。
外見・デザイン:以前の露出の激しかったクリーム色の装束から一転し、下に桜のように華やかで美しいピンクのレオタードを着用。その反面、手足や肩、胸の一部には重厚な「プロテクター」が装着されており、戦う者としての強烈な意思を反映させている。イメージは聖闘士星矢の白銀聖衣
テーマ・概念:「覚悟の象徴」。相手の攻撃を受けるリスクを承知で懐に踏み込む、もう自分にも仲間にも嘘を吐かない「真っ向勝負」の体現。
「おおおおおォォォォォォッ!!」
真の姿を解放したアダムが、天地を震わせるほどの咆哮を上げる。
その異形の巨躯から放たれる圧倒的なプレッシャーは、周囲の空気を軋ませるほどだった。しかし、それを前にしても包囲陣は誰一人として一歩も引かない。
「先陣はアタシたちがいただくデスッ!」
「いくよ、切ちゃん!」
先陣を切って飛び出したのは、切歌と調の二人だった。
調が足先のローラーダッシュを展開し、アスファルトを削りながら凄まじいスピードでアダムの側面へと回り込む。
「マスターの前ですからねぇ。ここは一つ、華麗に決めさせてもらいますよぉ」
調の動きに合わせるように、ガリィが優雅にステップを踏んだ。
彼女の足元から瞬く間に極寒の冷気が広がり、戦場の一部がスケートリンクのような分厚い氷へと変貌する。
それをみた切歌も足元をスケート状の刃に変え滑るように氷の上を走る。
ガリィも氷上を滑るように高速移動し、同時に自身の姿を模した『水で形作られた分身』を大量に生み出し、アダムの周囲を幻惑するように飛び回らせた。
「目障りなッ!」
アダムが苛立ちとともに巨大な腕を振り回す。しかし、拳が捉えるのはガリィの水鏡の分身ばかりで、本物には掠りもしない。
「よそ見してる暇はないっ!」
幻惑され死角だらけになったアダムの背後から、調がツインテール型のアーマーの先についている丸ノコを激しく回転させる。先端に取り付けられた凶悪な丸ノコを複数飛ばす「α式・百輪廻」で牽制した後、ビームの糸で繋がれたヨーヨーが、変幻自在の軌道を描きながらアダムの黒い装甲に次々と火花を散らした。
「チィッ……! 鬱陶しいッ!!」
「まだまだ、これからデスッ!!」
アダムが反撃の術式を編もうとした瞬間、ガリィが作り上げたジャンプ台から空高く跳躍していた切歌が動いた。
彼女の肩のアーマーから射出された強靭なワイヤーが蛇のようにうねり、アダムの誇る巨大な黄金の角と、太い両腕に幾重にも巻きついてその動きを強引に拘束する。
「なっ……!?」
「今デスッ、ミカッ!!」
切歌の呼びかけに呼応し、後方で待機していたミカがニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。
「アタシも遅れはとらないゾッ!!」
ミカの背部にある縦ロール型のブースターが火を噴き、爆発的な推進力を生み出す。
一瞬にしてアダムの眼前に肉薄した彼女の両手には、六角形のカーボンロッドが展開されていた。
「オリャアッ!! 燃え散るんダゾッ!!」
ワイヤーで拘束され、回避を封じられたアダムの広大な胸部装甲へミカの放つ連撃が決まる。
苦しみ声を上げるアダムにミカの最後の一撃と、鎌の刃の部分を足に装着した状態で 背中から2つのブースターを噴射させ、 勢いよく急降下する切歌の「断殺・邪刃ウォTtKKK」による重い一撃が完璧なタイミングで十字に交差し、叩き込まれた。
「ガァァァァァッ……!?」
戦闘力で劣るはずの少女と人形たちの、息をもつかせぬ連携攻撃。
完全に意表を突かれ、巨体を大きく揺らして後退するアダム。だが、息をつく暇など与えられるはずもない。
「ガラクタと小娘の出来損ないがあっ!!」
ミカと切歌の十字攻撃を食らい、大きくたたらを踏んだアダムだったが、即座に怒号と共に強引に体勢を立て直す。異形の巨躯から赤黒いエネルギーを放射し、周囲の包囲を力任せに吹き飛ばそうとした。
だが、その反撃の出鼻を、白銀の閃光が鋭く削ぎ落とす。
「させませんッ!」
セレナの纏うシンフォギア『アガートラーム』から、眩いエネルギーが放出された。展開させた翼のギアを飛行しながら無数に振るい、 最後は翼から照らすような光線を繰り出す「GREMLIN ROYALE」でダメージ与え、メインウェポンである短剣を瞬時に複製し、無数の刃を宙に浮かせて操り、アダムの巨体へと一斉に射出する。
「無駄だ! そんな玩具など――ッ!?」
弾き落とそうと腕を振り上げたアダムの動きが、ふと、硬直した。
(なんだ……この波動は!? ……間違いない、これは、あの……!?)
セレナ自身は知る由もないが、彼女の纏うアガートラームの聖遺物の正体は、かつて銀に変えられてしまったエンキの左腕そのものだ。
作られたアダムにとって、創造主たる神の気配は、本能的な恐怖と屈辱を同時に呼び覚ますものだった。
「どうしました!? 動きが止まっていますよ!」
アダムが一瞬の隙を見せたのを見逃さず、セレナは手元の短剣の刀身からエネルギーをケープ状に生成。
それを手に持って走りながら長く伸ばし、アダムの巨体を縛り上げた。
「チィッ……! 離せッ!!」
「離すわけないだろォッ!! そのまま、スイカ割りのスイカにでもなってなッ!」
アダムが蛇腹剣を引きちぎろうともがく頭上から、凄まじい銃の駆動音が轟いた。
宙を舞う雪音クリスが、シンフォギア『イチイバル』の装甲を展開。両手のガトリングガンから怒涛の銃弾の雨を降らせる「BILLION MAIDEN」、さらに腰部アーマーから無数の小型ミサイルを一斉にロックオンして発射する「CUT IN CUT OUT」で追撃。
ドドドドドドドッ!! ズガガガガガガッ!!
「ぐぉぉぉぉぉぉッ!?」
弾幕の嵐がアダムの黒い装甲を容赦なく削り取っていく。
だが、クリスの攻撃はこれだけではない。ガトリングを投げ捨てた彼女は、ギアのパーツを瞬時に組み替え、自身の最大火力である巨大な『弓』の形態へと変形させた。
「これで……ブチ抜けェェェェッ!!」
つがえられた極太のエネルギーの矢が、夜の闇を真紅に染め上げて放たれ、アダムの強靭な腹部装甲に直撃、大爆発を引き起こした。
「〜〜〜ッッ!! 貴様らァッ……!」
「私のことも忘れないワケダッ!!」
爆炎の中で絶叫するアダムの頭上から、今度はプレラーティが降下してくる。
彼女の手にあるのは、紐の繋がっていない巨大なけん玉型の鉄球だ。新たなファウストローブ『フラガラッハ』の力により、プレラーティの意思に合わせて鉄球はみるみるうちにサイズを拡大し、まるで小型の隕石のような質量へと変貌する。
「改修されたファウストローブ……そして、私の錬金術をミックスさせてやるワケダ!」
プレラーティが指を鳴らすと、巨大な鉄球に鮮烈な風が凄まじい勢いで纏い付いた。
「吹き飛べッ!!」
彼女が腕を振り下ろすと、糸のない巨大鉄球がアダムの顔面目掛けて一直線に射出される。
「フンッ……見え透いた攻撃!図体がデカいだけの!」
アダムは巨体からは想像もつかない速度で上体を逸らし、風を纏った鉄球を間一髪で回避した。
「失ったねぇ!玉一つ!!」
空を切った鉄球がアダムの背後へと通り抜け、彼が不敵な笑みを浮かべた――その時だった。
「見るといいワケダ! 改修されたファウストローブの『特性』を!」
「な、に……!?」
プレラーティがニヤリと笑ってけん玉持ち手を引き寄せた瞬間。
空中でピタリと静止した巨大鉄球が、ブーメランのように凄まじい速度でUターンしてきたのだ。フラガラッハの「必ず手元に戻る」という絶対的な特性に従い、軌道を反転させてプレラーティの元へ帰還しようとする鉄球。
そして、その帰還ルートの線上には、回避したばかりで完全に無防備なアダムの背中があった。
「ぐはァァァァッ!!?」
死角からの不意打ち。風を纏う事で速度を上げた超質量の鉄球がアダムの背中にモロにクリーンヒットし、巨体をド派手な爆発と共に前方へと殴り飛ばした。
そのまま鉄球はスッと元のサイズに戻りながら、プレラーティの手の中へと収まる。
プレラーティの鉄球による不意打ちを背中に受け、巨体を大きく前のめりに崩したアダム。
その無防備な顔面の先で待ち構えていたのは、桜色のレオタードと金属プロテクターを纏ったカリオストロだった。
「よそ見してる場合じゃないわよ! あーしの真っ向勝負、その身体で味わいなァッ!!」
カリオストロが鋭く踏み込み、右の拳をアダムの鳩尾に深々と突き刺す。
さらに間髪入れず、左の拳がアダムの顔面を打ち抜いた。
「オラッ! オラッ! オラオラオラオラオラァッ!!」
右、左、右、左。
流れるような連続攻撃がアダムの黒い装甲を激しく打つ。彼女の纏う新たなファウストローブ『カエストス』の真骨頂は、ここからだった。
左右の拳を交互に当て続けることで『コンボ数』が加算され、その数に比例してカリオストロの攻撃速度と威力が際限なく上昇していくという、まさにインファイト特化の恐るべき特性である。
「なんだ……ッ! 一撃一撃が、みるみる重く、速く……ッ!?」
最初は余裕で耐えられていたはずの打撃が、数十発を超えたあたりからアダムの装甲を確実に軋ませ始めた。目にも留まらぬ乱打の嵐に、アダムは防戦一方へと追い込まれていく。
「乗るんじゃない!!調子にいいぃぃいっ!!」
屈辱に顔を歪めたアダムが、強引にコンボを割り込むように、丸太のような巨大な腕をカリオストロへと振り下ろした。
真の姿の膂力。まともに受ければ、いくらプロテクターがあっても無事では済まない。
だが、その巨大な拳がカリオストロに届く直前。
横から滑り込んできた黒と白の影が、二人の間に割って入った。
「カリオストロには指一本触れさせないわッ!」
マリア・カデンツァヴナ・イヴ。彼女の纏うシンフォギア『ガングニール』の背から伸びる純白のマントが、意思を持つように高速で回転を始める。
「はあああっ!」
アダムの渾身の一撃を、ドリル状に回転するマントが強固な盾となって完璧に受け流した。
「マントだと……ッ!?」
「防ぐだけじゃないわよ。貫けェッ!!」
マリアが鋭く叫ぶと、回転していたマントが今度は無数の鋭利な刃へと変形。アダムの振り下ろした腕や巨体に次々と突き刺さり、その動きを完全に縫い留めた。
「ナイスサポート! これで、フィニッシュだァァァッ!!」
動きを封じられたアダムの顎下へ向け、コンボ数によって限界突破したカリオストロの最高速・最大威力の右アッパーが炸裂する。
「ガハァァァァッ!!?」
巨躯が宙に浮くほどの強烈な一撃。
しかし、2人の猛攻はこれで終わらない。
「カリオストロ、下がってッ!」
「ええ!」
カリオストロがバックステップで離脱した瞬間、マリアが動いた。
彼女は自身に繋がるマントを大地に深く突き刺し、アンカーとして自身の身体を地面に完全に固定する。そして、右手に握ったメインウェポンの槍を正面に構えると、その穂先がガシャッと音を立てて展開し、巨大な砲門へと変形した。
「チャージ……ッ!!」
マリアのガングニールが眩い白い色の光を放ち、変形した槍の砲口に莫大なエネルギーが圧縮されていく。大地に固定したマントが、チャージの反動でギリギリと軋む。
「消え飛びなさいッ!!」
マリアの絶叫と共に、限界まで圧縮された最大チャージの極太レーザー砲「HORIZON SPEAR」 が放たれた。
「グォォォォォォォォォッ!!?」
至近距離からアダムの巨体を飲み込む、圧倒的な光の奔流。
マリアの最大攻撃は、カリオストロのコンボでヒビ割れていたアダムの強靭な装甲を完全に粉砕し、彼をホテルの外壁ごと吹き飛ばして瓦礫の山へと叩き込んだ。
『やったか!?』
トレーラーで弦十郎が思わず叫ぶが、アダムが吹き飛ばされた瓦礫の山が、内側からの爆発的なエネルギーによってドーム状に吹き飛んだ。
「舐めるなァァァッ!! 僕は、僕は完全な存在だッ! 倒れるものかァァッ!!この程度でぇぇえッ!!」
全身から赤黒い蒸気を噴き出し、未だ健在であることを誇示するように絶叫するアダム。確かに黒い装甲はひび割れ、満身創痍ではあるが、その瞳には狂気じみた執念と底知れぬ闘志が宿っていた。
だが、その威圧感すらも、次に歩み出た二人の前では無意味だった。
「威勢がいいのは結構だけどよぉ。……少し、頭を冷やしな」
「貴様の言う『完全』など、我らが交わした絆の前では些末な事だ」
燃え盛る戦場に、絶対的な静寂と安心感をもたらす二つの影。
肩に槍を担ぐ天羽奏と、刀をアダムに向ける風鳴翼。
S.O.N.G.最強にして原点のコンビがアダムの前に立ち塞がった。
「まとめて消し飛べェッ!!小賢しいっっ!!」
アダムが両腕から巨大な破壊の光線を放つ。
しかし、翼は動じない。彼女が愛剣『アマノハバキリ』を一閃させると、放たれた巨大な斬撃の波、「蒼ノ一閃」が光線を真っ向から両断した。
さらに翼は、アダムの足元に広がる影に向けて、瞬時に小型の刃を投擲する。
「なっ……!? 体が、動かない……ッ!?」
「忍法、影縫い。……防人の影からは逃れられんぞ」
影を物理的に縫い留められ、アダムの巨躯が完全に硬直する。
その絶対的な隙を見逃す奏ではない。
「ハァァァァッ!!」
奏が地を蹴り、一瞬でアダムの懐へと潜り込む。
彼女の『ガングニール』のメインウェポンは槍。だが、奏の本当の恐ろしさは、多彩なギミック以上に小細工なしの『シンプルで圧倒的な強さ』にあった。
超高水準の体術と槍術、そして研ぎ澄まされた戦闘センスと無駄のない思考回路。
「オラァッ!!」
アダムの巨体を強烈な蹴りでカチ上げ、体勢を崩したところに目にも留まらぬ槍の刺突を何十発も叩き込む。アダムが硬直を強引に引きちぎって丸太のような腕を振り回しても、奏は最小限の動きでそれを躱し、さらにカウンターの蹴りと斬撃を的確に急所へと沈めていく。
「グァァァッ……! ちょこまかとォッ!!」
「おらおら! 当たんねぇよッ!! 翼ッ!!」
「承知ッ!!」
奏の呼びかけに、翼が空高く跳躍する。
彼女は足先に刃を展開すると、空中で逆さになり、独楽のように超高速で回転しながらアダムの頭上へと落下した。
「断ッ!!」
回転するブレードが、アダムの強固な角と肩の装甲を容赦なく削り切り、鮮血のような流体を飛散させる。
「まだまだァッ!!」
落下してきた翼とすれ違うように、今度は奏が動く。彼女は自身の槍を空中で無数に分裂させ、雨あられのようにアダムへと降り注ぐ「STAR DUST ∞ FOTON 」さらに、その中の一本を巨大化させ、高所からアダムの胸板を貫くように射出する。
「グォォォォォォォォォッ!!?」
息つく暇もない、完璧すぎる波状攻撃。
互いの死角を完全にカバーし合い、次に何をすべきかをテレパシーのように理解し合う奏と翼の連携は、真の姿となったアダムという存在を完全に圧倒していた。どんな強敵を前にしても、この二人が並び立てば『絶対に負ける気がしない』。
「トドメだ、奏ッ!!」
「ああッ! ぶち抜けェッ!!」
よろめきながら後退するアダムへ向け。
翼が空中でアマノハバキリを「天ノ逆鱗」にて巨大化させ、渾身の力で振り下ろす。同時に、奏がその巨大な剣の根元を全力で蹴りつけて凄まじい推進力を上乗せした。
規格外の巨大剣と奏の推進力が合わさった神速の斬撃が、ついにアダムの巨躯を完全に大地へと縫い留め、ホテルの跡地を真っ二つに叩き割った。
大地を割る巨大剣の一撃に縫い留められ、ついにアダムは膝を突いた。
しかし、その瞳に宿る狂気はまだ消えてはいなかった。否、自らのプライドを微塵に打ち砕かれた屈辱が、彼を後戻りのきかない暴走へと駆り立てていた。
「ふざけるな……ふざけるなァァッ!! 」
アダムの異形の巨躯から、これまでとは比較にならないほどの莫大なエネルギーが立ち昇る。
彼の周囲に巨大な黄金の錬成陣がいくつも展開され、空気が異常な熱を帯びて陽炎のように歪み始めた。
「道連れにしてやるッ! 僕の『金』の錬成で……この一帯も、すべて灰燼に帰してやるさ!その過程で生み出される核融合の熱でねえッッ!!」
アダムの頭上に、まるで小さな太陽のような超高熱の火球が生み出される。
ツングースカを消し飛ばしたという、星の瞬きにも等しい究極の破壊の光。それが放たれれば、装者たちといえども無事では済まない――はずだった。
「――その程度の熱で、すべてを焼き払えると思ったか? 浅はかだな」
焦熱の嵐が吹き荒れる中、涼しい顔で前へと進み出たのは、大人の姿へと成長したキャロル・マールス・ディーンハイムだった。
彼女の纏う自前のファウストローブ『ダウルダブラ』。そのアーマーの各所から伸びる弦が、意思を持つように空中でうねり、複雑な軌道を描いて無数の錬成陣を形成していく。
キャロルの操る弦は、単なる物理的な切断や拘束の武器ではない。自在に形を変え、空間そのものを制圧する絶対的な支配の糸。
「消え失せろォォォッ!! 」
アダムが絶叫と共に、核融合の火球をキャロルへと解き放つ。
だが、キャロルはただ一言、冷酷に告げた。
「四大元素を統べるオレの錬金術の前に、ひれ伏せ」
ダウルダブラの弦が火球を包み込むように展開した瞬間。
火、水、風、土――錬金術の基本たる四元素を高次元で完全に支配するキャロルの力が、アダムの放った核融合のエネルギーを真っ向から干渉し、強制的に紐解いていく。
「な、に……っ!?」
アダムが驚愕に目を見開く中、すべてを焼き尽くすはずだった黄金の火球は、キャロルの意思一つであっけなく『分解』され、ただの無害な光の粒子となって夜空に霧散してしまった。
世界を分解しようとしたかつての最強の錬金術師にとって、出来損ないの核融合を解体することなど、造作もないことだったのだ。
「馬鹿なッ……あっさりと……こんなッ!?」
「身の程を知れ。オレ以上の錬金術師など、この世に存在しない」
圧倒的な実力差を見せつけられ、絶望に声が震えるアダム。
隙は完全にできている。今、キャロルが弦を振り下ろせば、アダムの命は容易く刈り取れるだろう。
しかし――キャロルは、それ以上の追撃を行わず、ふっと弦の構えを解いた。
「……なぜだ。なぜ、とどめを刺さないッ!?」
「勘違いするな。オレがお前を殺してやる義理はない」
キャロルは腕を組み、背後へと視線を送る。
「オレの役目は、お前の無様な足掻きを潰すことまでだ。……最後の役者が、ずっとお前を待っているぞ」
キャロルの言葉にハッとしてアダムが視線を向けた先。
そこには、赤と白銀の新たなファウストローブ『ガーンデーヴァ』を纏い、銃口をアダムの眉間へとピタリと定めたサンジェルマンが、静かに、そして確かな敵意を持って佇んでいた。
キャロルが静かに道を譲ったその先。
核融合の熱波が霧散し、静寂を取り戻しつつある戦場の中央で、サンジェルマンは静かにアダムを見据えていた。
かつての絶対的な支配者であり、自らの人生を狂わせた元凶との最後の決着。
さぞ激しい怒りが沸き上がるだろうと自分でも思っていたが――不思議なほどに、今のサンジェルマンの心は明鏡止水のごとく澄み渡っていた。
復讐のためではない。隣で背中を預けてくれる仲間たちと共に、明日という未来を切り開くため。その高潔な目的だけが、彼女の心を静かに、そして熱く満たしていたのだ。
「なぜだ……! 神たる僕を見下ろすッ!!出来損ないのお前たちが、この僕を!」
完全に理性を失い、プライドをズタズタにされたアダムが、獣のような咆哮と共に巨大な腕を振り上げて突進してくる。
「過去に囚われたままの哀れな人形よ。……お前の時間は、ここで終わりだ」
サンジェルマンは一切の迷いなく前へと踏み込んだ。
研ぎ澄まされた洗練された動きでアダムの豪腕を紙一重で躱し、懐へと潜り込む。その瞬間、彼女の肘と膝のアーマーに展開された『バルカン』が火を噴いた。
至近距離からの容赦ない銃弾の雨が、アダムの関節や脆くなった装甲の隙間を的確に撃ち抜く。
「ガァァッ!?」と体勢を崩したアダムに対し、サンジェルマンはさらに錬金術で空中に足場を錬成。それを蹴ってアクロバティックに跳躍し、巨体の死角である後ろへと陣取った。
そして、メインウェポンである銃型のスペルキャスター『エスコペターラ』の銃口を、真っ直ぐにアダムへと突きつける。
聖遺物『ガーンデーヴァ』――「高潔な魂」と「宿命」のイメージを宿すその力は、サンジェルマンの胸に燃え盛る『不撓不屈の心』がある限り、限界を超えて無限に威力を上昇させていく特性を持っていた。
決して折れない革命への意志が、エスコペターラの銃身に眩い白銀と真紅の光を収束させていく。
「否定するなァッ!僕をォォォ!!」
「誰も否定などしていない! 我らはただ、お前の身勝手な支配から『自立』するだけだッ!」
エスコペターラの側面に張られた弦を、力強く、そして美しくかき鳴らす。
「これは、我ら人類が明日を生きるための――『革命』の光だッ!!」
極限まで高められたエネルギーが、一条の閃光となって放たれた。
アダムは本能的に死の危険を悟り、攻めの姿勢を完全に放棄した。異形の巨躯に宿るすべての力、すべての錬金術を『防御』のみに回し、眼前に分厚い壁を展開しながら極太の腕を交差させて直撃に備える。
閃光が激突する。
その瞬間、アダムにとっての1秒は、まるで1分にも感じられるほどの濃密で、絶望的で、苦痛に満ちた時間となった。圧倒的な破壊の光が彼の防御陣を次々と削り取り、肉体を容赦なく焼いていく。
(まだだ!成し遂げてはいないッ!アヌンナキと…相対するまではァァァッッ!!)
しかし――光が収まり、土煙が晴れた後。アダムは、立っていた。
防御に回した両腕は完全に炭化し、ボロボロと崩れ落ちそうな状態であったが、彼はサンジェルマンの最大の一撃を執念で『耐えきった』のだ。
「フハ……ハハッ!抜けなかったな!僕の防御を!防ぎきったぞ……ッ」
自らの生存を確信し、歓喜に口を歪めたアダム。
しかし、その喜びは一瞬にして絶望へと変わった。
「な……っ!?」
顔を上げた彼の目に飛び込んできたのは、踵のブースターを最大出力で火を噴かせ、猛烈な速度でこちらへと肉薄してくるサンジェルマンの姿だった。
最大の一撃を放ち、スペルキャスターのエネルギーを撃ち尽くした彼女に残されていたのは、己の肉体と、その不屈の意志のみ。
「おおおおおッッッ!!」
サンジェルマンの裂帛の気合いが轟く。
ブースターの凄まじい推進力を乗せた、正真正銘、渾身の『最後の拳』。
それが、両腕が炭化し防御すらできないアダムの顔面に、情け容赦なくクリーンヒットした。
「ガハァァァァァァァッ!!?」
メキィッ!と骨の砕けるような鈍い音と共に、アダムの巨体が無様に宙を舞う。
そのまま背中から大地に激突し、ホテルの跡地に巨大なクレーターを穿って、今度こそアダムは完全に沈黙した。
人間の姿はただの擬態に過ぎない。本来の『真の姿』である異形の怪人のまま仰向けに倒れたアダムには、もう指一本動かす力すら残されていなかった。完全な敗北だった。
「ハァ……ッ、ハァ……ッ」
着地したサンジェルマンは、肩で荒く息を整えながら、倒れ伏すアダムを見下ろした。
そして、かつての主に向けて、痛烈な皮肉と引導を渡す一言を言い放つ。
「今さらだが言っておく。……仕事を!片っ端から人任せにするなっ!!」
1話丸々戦闘シーンは久しぶりな気がする、本話にぶち込む技量がない作者のQ&A
Q、どうしてサンジェルマン達と連携ができたの?
A、アダム戦う時に被害を最小限にする為に必殺のコンビネーション波状攻撃を事前にしてました。
Q、迷いがなさすぎない?
A、アダムの所業はサンジェルマン達から聞いているので、遠慮は要らないと皆は判断しました。しかし奏と翼は一応手加減をしております。こっちでの設定ですが、もしアダムに2人だけで戦ったら、少しケガをしますが奏と翼が勝ちます。
Q、何故サンジェルマンの武器が、楽器なった銃なの?
A、争いの道具が、形を変え平和の象徴に変わる事がサンジェルマンキャラクター性に合うなと思ったことから決めました。
エスコペターラは銃の形を保ったまま音を奏でます。それは「清廉潔白にはなれない泥臭い現実(銃)」を抱えたまま、それでも「美しい理想(音楽)」を響かせようとする「もがき」そのものです。
カリオストロとプレラーティはそこまで考えていませんでした。けん玉はまだ持ち手が管楽器とかにできるんですが、その場合、拳のカリオストロは、体を叩いて演奏するか、リズムよく拍手するしかないです。