カムパネルラの傷跡   作:忘旗かんばせ

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第七章 2

 3

 

然戸(さど)円里(まどり)

 

 苦々しくその名を呼べば、男は小さく鼻を鳴らす。

 

「名前を覚えてもらっていて、嬉しいよ」

 

 皮肉にしては上等だった。

 

「少し話をしないかね」

 

 男は言って、路地の壁面に背をもたれかけた。

 

 路地裏には光が差さない。ただ、その外側に光があることを、暗闇の中に埋まることで理解ができる。そういう場所だ。

 

「私は常々思うのだ。破壊者(ダウナ)という負け犬の哀れさをね」

 

 彼は煽るように言った。こちらの神経を逆撫ですることで、何らかの利益を得られるのだろうか。あるいは、自分が上位に立っている、という錯覚による余裕が、そのような無意味な行動を取らせているのか、後者であればありがたい限りであるけれど、それは楽観的な予測というものだ。

 

「どれだけ世界の破壊者を気取っていても、所詮は人間だ。さもしく馴れ合い、傷を舐め合い、そして時に人を愛し、また愛されることに価値を見出す」

 

 まるっきり普通の人間で、だからこそ。

 

「君たちには、人質が最も有効だ。人間は、得難いものをこそ最も大切に思う」

 

 これが我々のように、()()()()()()()()()()()()()()()、こうは行くまいよ。

 

 くつくつと泡立つように笑いながら、男は言った。

 的外れな言説に、けれどぼくは反応しない。その意味がない。その価値がない。

 

「恨まないでくれよ、カムパネルラ。先に仕掛けたのは君たちの方だ。我々には義務がある。どんな手段を使ったとしても、世界を救うという義務がね」

 

 そのためになら――民間人の一人や二人、殺すことだって厭わない。

 男は言いながら、手を振った。

 

「ウィークポイントをさらしたまま戦い続けるのは、愚かに過ぎたな。初めは、何かの罠かとさえ思ったよ。あまりにも無防備に、人質になり得る人物を放置して戦いに出向いているのだから」

 

 そんなもの、さらってくださいと言っているようなものだろう? と男は笑った。

 

「真貉暫実、だったっけ」

 

 ぼくは言った。

 

「あれは、足止め要因だったわけ?」

「いかにも」

 

 然戸は答える。

 

 なるほど。だから、なぜ、か。本当なら、多分、死ぬよりも前に助けが来る手筈だった。間に合わなかったのか、謀殺か。どちらだったとしても、もう関係はない。重要なのは、すでに、ぼくは後手に回っているということ。

 

「言っておくけど」

 

 ぼくはカムパネルラを出現させた。

 

「あいつに、人質としての価値なんてないよ」

 

 彼が死んだとしても、ぼくは戦う。

 ぼくと彼の間には、関係がない。

 あるとしても、それは世界を壊すことより大切なものではない。

 ぼくはすでに、それを手放している。

 

「嘘が下手だな、カムパネルラ。腹芸の一つもできないのかね?」

 

 然戸は不快な笑顔で言った。

 

「本当にそうだというのなら、早く攻撃するがいい。何を敵と悠長に喋っているのだ? そんな様で世界を壊せるのかね? それでも破壊者(ダウナ)か、カムパネルラ」

 

 プライドの高い男なのだろう、というのが見て取れる。

 意趣返しのつもりなのだろう。受けた屈辱を、何とかして相手に返したい、という思いが、よく見て取れる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 光を放つ。

 然戸円里の体が――一瞬にして、虫食いまみれに変わった。

 

「な、貴様――人質がどうなっても――」

()()()。好きにしな」

 

 ぼくは言って、崩れ落ちた男の頭を蹴り飛ばした。

 いつか見たそれと同じように、然戸だったものは塵と化して消え失せる。その様からして、死んではいないのだろうが、少なくともこの場での脅威は、拭いされた。

 

 ふぅ――と、ため息を吐く。

 

 向こうがどう動くかは、もうわからない。最悪の場合もあり得るだろうが、しかし向こうが守護者(プラスティシ)であることと、プライドの高さにかけるしかないだろう。もし殺すにしても、それはぼくの目の前ででありたいはずだ。

 

 希望的観測。だがしかし、もうそれに縋らなければいけない時間。

 

 ぼくは電話を取り出す。

 かける番号は、一つだけ。

 コール、コール。

 通話は、すぐに繋がった。

 

「もしもし」

『――あなたからの電話を心待ちにしておりましたよ、カムパネルラ』

「そう。待たせて悪かったね――ホワイト・スノウ」

 

 あの日以来のその声を、ぼくは聞いた。

 ホワイト・スノウ。辣腕にして辣舌の虚言士。ぼくが切れる、最強のジョーカー。

 

「単刀直入に、要件を言おう」

 

 ぼくは言って、深呼吸を一つ。

 

「ぼくは()()()()()()()()()()()()()

『ふむ、君たち、と言うのは――』

「もちろん、()()()()()()()()()()

 

 その言葉に。

 電話の向こうのホワイト・スノウは――微かに笑った。

 

『お気付きでしたか』

「そりゃあね」

 

 あの場で吐かれた、ほんの僅かの小さな嘘。それが誰に理したかと言えば、一人だけだ。

 だからこそ。

 だからこそこの盤面に置いて、ぼくと彼女は協力できる。

 

「体制側守護者(プラスティシ)の幹部を殺せるチャンスがある。協力しないか?」

『ふむ』

 

 然戸円里は、メッセンジャーだ。ならば、その主がいる。そしてその主は、少なくとも破壊者(ダウナ)との協力を決定できる――その上戦争での助命なんかまでをも約束できるような立場にあることは間違いない。

 

 尻尾切りでもない限りは、相応の立場の人間のはずだ。

 

 ぼくは包み隠さず事情を話した。隠すことに、意味があるとは思えなかった。

 

『なるほど、いいでしょう。そういうことなら、協力させてもらいますよ』

 

 ホワイト・スノウは言う。その言葉は、予測できたものだった。この共闘には、向こうからすればメリットしかない。つまりは、我々が戦況を有利にコントロールできているのと同じことだ。敵同士が、勝手に潰しあってくれている。どちらが死んでも、それは喜ばしい限りのことなのだ。

 

 そしてぼくは、彼女が知る限り最強の戦士であって――それをコントロールできるのならば、望む結果を自在に齎すこともできるだろう。

 

 こちらとしては、事実上の全面降伏に近いわけだけれど――そこは。

 

 かつての差崎誰の言葉を、信じるしかない。

 

 全く良くできた皮肉だ――と思う。

 

『それでは、カムパネルラ』

 

 電話越しに、雪のような声が言う。

 冷たく、理性的で、固く、降り落ちるような。

 

指令(オーダー)を、下します』

 

 かくして、ぼくは猟犬となる。

 

 人としてのプライドなど、とうに捨てた身。

 ならば奴隷となることにだって、何の躊躇いがあるだろう?

 

 ぼくは全てに頷いた。

 

 それだけが、今ぼくに取ることの許される、ただ一つの方法だった。

 

 4

 

「カムパネルラ」

 

 ドアを吹き飛ばしたその一撃が、開戦の狼煙だった。

 

 駅前の再開発地帯。売り出し中の分譲マンション。その一室が、敵の根城であるようだった。

 

 中に入り込めば、複数方向から一斉に攻撃が降り注ぐ。けれど――すでにぼくは、世界から剥離している。攻撃の全ては無意味に空間を通り過ぎて、ぼくは部屋の中央に躍り出た。

 

 確認できた敵は五人だった。

 

 ざんばらの男――然戸円里。その手には拳銃が握られていた。どうやら、単体で攻撃力のある乖獣(オルターエゴ)ではないらしい。いや、それも当然か。

 その場にいる五人は、()()()()()()()()()()()()

 

 分身のような能力なのだろうか? いずれにせよ、その手の能力を持つ乖獣(オルターエゴ)は、直接戦闘は苦手であるパターンが多い。ましてや、彼は大人だ。

 

 大人ほど、戦うことには及び腰になる。

 それはもう、疲れ果てているからなのだろう。

 立ち向かうよりも、屈してしまう方が楽だと、思い知らされてしまっている。

 

 だから、大人の破壊者(ダウナ)は、どこにもいない。

 

 破壊者(ダウナ)は誰もが――子供の精神をしている。

 

 それは、ぼくもまた。

 

「鬱陶しいんだよ」

 

 瞬くは光。魚鱗から放たれるプリズムが、形代を殲滅する。

 崩れ去る五人の影。

 部屋の奥に、もう一つドアがある。ぼくはそこへ飛び込んで――

 

「『動くな』」

 

 その言葉に――体が止まった。

 

 まるで見えない鎖に縛られたかのように――ぼくは指一本、動かせなくなる。

 

 そこには、四人の人間がいた。

 

 一人はざんばらの浮浪者――然戸円里。

 

 そして残りの二人は、初めて見る相手だった。

 

 一人は自衛隊のそれのような軍服に身を包んだ比較的若い筋肉質の男。

 

 もう一人は、同じくの服装に身を包む妙齢の女性。

 

 そして最後の一人は――

 

「シロ……」

 

 つぶやく声が、響く。口だけは停止の範囲外なのか、と、今は何の役にも立たない気付き。

 

 目線の先には、彼がいた。椅子に縛り付けられた状態で――意識を、失っている。

 

 きっと、デートの準備をしていたのだろう。

 

 いつよりもめかし込んだ姿で――ああ、ちゃんと、相手に合わせた格好をできているじゃないか、なんて的外れな安心。

 

「やはり来たか、カムパネルラ」

 

 先ほど。

 ぼくに『命令』を下したのと同じ声が言う。

 

 三人の中で、最も部屋の奥に立つ一人――軍服を纏う女。おそらくはこの中で、最も年齢が高いのではないだろうか。

 

 彼女はぼくを睨み付けるように見つめる。

 

「愚かだな。貴様が無理やり彼を助け出そうとすることを考えないとでも思ったのか」

 

 胸につけられた勲章の数々。それは彼女が歴戦の守護者(プラスティシ)であり。また相応の階級にいる人間であることを示している。おそらくは本来、現場に出てくるはずもないレベルの相手なのではないだろうか。

 

 それが引き摺り出されたのは――それだけ、向こうも焦っているということ。

 

 世界の終わりは、着々と進み続けている。阻止する側の勢いが落ちたのだから、当然だ。

 

「さて、カムパネルラ。彼我の戦力差はわかっただろう? 君は私の能力を防ぐ術がない。そして、こちらには人質もいる。君は選択肢を間違えた。が、今からでもその過ちを償うチャンスはある」

 

 彼女はそこで言葉を切って、髪をかきあげた。

 

「自己紹介をしよう。私の名は、静間(しずま)囲子(かここ)と言う。守護者(プラスティシ)第三司令室室長――ま、組織の中では五指以内の階級だと思ってもらえればいい」

 

 予想通りのお偉方。そして階級を明かした、ということは、次に来るのは――

 

「その立場の元に、約束する。君を悪いようにはしない。だから、こちらに付きたまえ」

 

 彼女は真剣な眼差しでぼくを見た。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()守護者(プラスティシ)()()()()()()()()

 

 なんて的外れで、自分勝手な物言いだろう。

 ぼくは彼を守りたいわけではない。ただ。

 果たさなければいけない義務があるだけだ。

 

「私の手を取れ、カムパネルラ」

 

 伸ばされた手に、ぼくは。

 唯一動く口で、唾を吐きかける。

 

「断る。一昨日来な、阿婆擦れ」

 

 言えば、彼女は眉を顰めてから、取り出したハンカチで手を拭いた。

 

「残念だ」

 

 ため息をひとつついて、静間は然戸に目を向ける。

 彼は一つ頷くと、その背に己の乖獣(オルターエゴ)を浮かび上がらせた。

 

 鈍色の肌をした、ミイラのような怪人。その両手の五指の先端には、爪の代わりに注射器のようなものが生えていて、鋭い針が――シロの首筋に、向けられる。

 

「何を――」

「『静かに』」

 

 がちん、と音を立てて、ぼくの口が強制的に閉じさせられる。極めて厄介な能力だった。

 

「『愛好館(ハウスホリック)』――彼、然戸円里の乖獣(オルターエゴ)なのだがね。名前はダジャレだが、その能力は非常に優秀だ」

 

 彼女はついと指を刺す。

 

「一言で言えば、彼の分身を生み出す能力でね。分身側は乖獣(オルターエゴ)を出せない代わりに、全身のほとんどを一撃で消し飛ばされるようなことがない限り、ほとんど不死の肉体を持つ」

 

 君の乖獣(オルターエゴ)との相性は最悪だったようだが――と静間は小さく笑う。

 

「あの注射針が見えるだろう? あのシリンダーには、乖獣(オルターエゴ)の体液が入っていてね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ああ、なるほど。

 分身の原材料は――人間なのか。

 外部に材料を用意することで、コストの減少と、現実からの抑圧の低減が行われているのだろう。

 

 セルバンデスの能力が効かなかったのも、それが原因だ。つまり、奴の持つ固有能力は、人間を変質させるところまでであって、変質した後の分身に関しては、もはや能力の対象外、ということ。首を切り離されても生き残れるような不死性が、どうして現実の抑圧を受けずに済んでいるのか不思議だったが、そういうカラクリだったということだ。

 

「さて、もうわかるだろう、カムパネルラ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 もう一度、問おうか。

 彼女は笑った。

 

()()()()()()()()。さもなくば()()()()()()()()()

 

 勝ち誇るようなその言葉に――ぼくは。

 

()()

 

 それでも、NOを突き返した。

 蔑むような瞳。ため息が一つ、つかれて。

 

()()

 

 その指示が、飛ぶ。

 ニタリと笑った然戸は、己の乖獣(オルターエゴ)を操作して、その指の先の注射針を、彼の首筋に突き刺し――

 

「……あ?」

 

 注射器のシリンダーが、()()()()()

 体液はいつまで経っても注入されず――

 見れば。

 

「――()()?」

 

 透明な、ガラスのようなシリンダーの中。波打っていたはずの、濁った赤の液体が――()()()()()()()

 

「どうなってやがる――!」

 

 その凍結は、どんどんと、指先から遡るように侵食していく。パキパキと、音を立てて、氷結は全身へ至り、やがて――今のぼくと全く同じく、指の一本すらも動かせない、哀れな氷像が、その場に生まれた。

 

「――初めまして、皆々様」

 

 瀟洒な声が、響き渡る。

 

 それは、部屋の入り口から。

 誰もが、その姿を見つめる。

 そこには。

 ドレスワンピースの裾を、ちょんと摘み上げ、優雅な一礼を、見せつけるように。

 

「仲間の危機と察し、勝手ながら、駆けつけさせていただきました」

 

 なんて大嘘を、いけしゃあしゃあと宣いながら。

 裏切り者の破壊者(ダウナ)――ホワイト・スノウが、佇んでいた。

 

「何者だ、貴様――」

「さて、何者でしょう。あるいはただの通りすがりかも」

「ふざけるなよ。貴様、『能力を解――』」

「おっと」

 

 能力発動の予兆を見て、ホワイト・スノウは指を振る。それだけで――

 

「カッ――」

 

 静間の喉が、()()()()

 

「私の乖獣(オルターエゴ)、ホワイト・スノウはか弱い乙女でしてね――」

 

 ふわりと浮かび上がるのは、赤いドレスの人形。球体関節をたたえる白磁のドールは、光のない瞳でその場の人間を睥睨する。

 

「能力はただ、敵を凍て付かせるだけ。しかも、それは発動している限りの間だけで、能力を止めてしまえば、すぐに溶け消える儚い白雪なのです」

 

 その言葉を聞いて、奥にいた軍服の男が飛び出した。直接戦闘型なのだろう。体に外骨格のような鎧を纏って、ホワイト・スノウへ殴りかかるけれど――

 

「遅いよ」

 

 その拳を、()()()()()()()()()()()()

 喉が凍らされたからか、あるいは単なる時間切れか。

 ぼくはもうすでに――自由を取り戻していた。

 

「ふふ、ありがとうございます、カムパネルラ。――デモンストレーションは、これで十分でしょうか。こんな風に、か弱い力しか持たない私ですけれど――しかし()()()()()()()()()()()()()、この通り」

 

 無敵にも等しい能力であると、自負しております。

 なんて。

 崩れ落ちる男の死体を前にして、彼女は初めて、本音を言った。

 

「貴様ァッ!」

 

 同胞が討たれ、激昂したのだろう。あるいは、そのようなポーズを取りたかったのか。いずれにしても――然戸は拳銃をぼくに向ける。

 しかしその引き金は――凍りついた後。

 

「――っ!」

 

 引くことのできない引き金に、驚く隙に。

 カムパネルラは、彼の頭蓋を噛み砕いた。

 舞い散るのは、塵ではなく、血飛沫。

 不死の怪人、然戸円里。彼は今度こそ、本当の意味で息絶えた。

 

 彼の乖獣(オルターエゴ)が崩れゆくのを尻目に、ぼくらは最後の一人に向き直る。

 

 凍った喉を掻きむしる、彼女の元に。

 

「ふむ、カムパネルラさん。残す順番を間違えていますよ。彼女の能力からして、尋問には最も向かない人材じゃないですか」

「大丈夫だよ。情報の伝達は何も、口でしかできないというわけじゃない」

「ああ、なるほど。つまり口はいらないというわけですか」

 

 その言葉を待っていたわけではないけれど――ぼくは然戸の死体からむしり取った拳銃で、静間囲子の顎を撃ち抜いた。

 

「――――――~~っ!!!!」

 

 声にならない悲鳴が上がる。そんなものが、ぼくらには何の影響も及ぼさないと、わかっているだろうに。

 

「質問に答えてもらうよ、静間さん――」

 

 何も言わず、ホワイト・スノウが彼女にペンを握らせた。

 

 拳銃には、もう弾が残っていない。だから代わりに、ぼくはナイフを取り出した。

 

 その刃を――彼女の指に、突き立てる。

 

「――――っ!」

 

 小指の第一関節。そこから先を、切り落とした。

 

()()()()()()()()()()?」

 

 その情報を欲しているのは、ぼくではないが、しかしそれが間接的に役に立つのも確かだ。

 

 そんな言い訳を脳裏に浮かべながら、ぼくは彼女の尋問を続け――

 

「――何やってんだ、お前」

 

 ――ぼくは。

 

 ぼくはこの期に及んでまだも、全てを楽観していたのだと思い知った。

 

 背筋を、怖気のような何かが走る。

 

 それは恐怖よりもずっと強くて、悲嘆よりもずっと大きい、虚無の濁流。

 

 時にそれは、絶望という名前でも呼ばれる感情だった。

 

「――シ、ロ――」

 

 震える声で、ぼくはその名を呼ぶ。

 

 振り向けば、彼は。

 

 すでにその目を、覚まして。

 

 血に塗れたぼくの姿を――震える瞳で、見つめていた。

 





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