雨音の如く静やかな   作:スナエ

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秘密

 南風月のある日。へし切長谷部は、探していた主の声がした医務室の戸を開いた。

 そこには、薬研藤四郎に膝枕をされている化野雨音がいて。長谷部は、動揺した。

 

「す、すいません!」

 

 見てはいけないものを見てしまった気がして、思わず部屋の戸をぴしゃりと閉める。

 主は、稚児趣味だったのか?

 もし、俺がもっと…………。

 長谷部は、自分が雨音に膝枕をするのを想像して、頬を赤く染めた。

 その頃、審神者と薬研は。

 

「大将、ありゃなんか誤解されたぞ」

「後で、どうにかする」

 

 雨音は、大きな溜め息をついた。

 夜。自室で琴を鳴らしていると、長谷部の声がした。

 

「主。お話があります」

「入っていいぞ」

「失礼します」

 

 長谷部は、素顔の雨音を見て、カッと赤くなる。

 

「どうした? 長谷部」

「あ、あの…………俺を短刀にしてください……!」

「はぁ?」

「主の好みの姿にしてください……」

「あ、あー。なるほどね」

 

 コイツ、完全に誤解してる。

 雨音は、どうしたものかと考えた。

 

「長谷部、ちょっと座れ」

「はい」

 

 雨音は、正座をした長谷部の膝に頭を乗せる。

 

「主…………」

「お前は、そのままでいてくれ」

 

 審神者は、手を伸ばして長谷部の頬を優しく撫でた。

 

「はい…………」

「ちなみに、俺に少年趣味はない」

「すいません……!」

 

 雨音の稚児趣味疑惑が解けた翌日。

 

「たーいしょ」

 

 今日も、雨音は医務室で薬研の膝を借りている。

 

「んー?」

「寝不足か?」

「少しな」

「遠慮なく寝てくれ」

「ああ。お休み」

「お休み、大将」

 

 数分後。すうすうと寝息を立て始めた雨音。その唇に、布越しに口付けを落とす薬研。

 

「愛してるぜ、大将」

 

 一人言のような台詞は、夏の青空に消えていく。

 

「失礼します」

「大将なら、寝てる」

 

 医務室へ来た長谷部に、静かにするように伝えた。

 

「主は、お疲れなのか?」

「寝不足らしい」

「そうか……」

 

 小声で話す長谷部と薬研。

 

「主が起きたら、俺から相談があると伝えてくれ」

「了解」

 

 長谷部が去った後。薬研は、雨音の頭を撫でた。

 今では賑やかになったが、最初は山姥切国広と薬研藤四郎しかいなかった本丸。

 それを少しだけ懐かしく思い、薬研藤四郎は化野雨音の休息を見守り続けた。

 

「……おはよう」

「おはよう、大将」

「夢も見ないで寝てたな」

「長谷部の旦那が相談があるってよ」

「そうか。ありがとう、薬研」

 

 雨音を見送り、薬研は、夏が過ぎれば、彼はここへは頻繁に来なくなるのかもしれないなと寂しく思う。

 

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