オラリオで好き勝手するのはまちがっているだろうか   作:JP_JK_Loling

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気づいたらめちゃくちゃお気に入り増えてたんだが。
ありがとうございやす!


十一話 プライド

(ヘルメス視点)

 

オレは広場を行き交う冒険者たちを眺めながら、内心で採点をつけていた。トート君を探すついでに、オラリオの現在の戦力を値踏みする。まあ、一種の趣味みたいなものさ。

 

(10点、20点、45点、10点、2点、50点、30点。…うーん♦やっぱり冒険者はゼウス・ヘラの所が飛びぬけてるな♥)

 

そんなことを考えていると、視界の端に、見覚えのある金髪が映った。無骨な戦斧を肩に担ぎ、何やら真剣な顔つきで屋台を眺めている。

 

(…95点! 何だトート君か♠おそらくLv.は2か3でありながらも感じ取れる才能の躍動。やっぱり君は最高だよ、トート君)

 

オレは笑みを浮かべ、その背後に音もなく近づいた。

 

「やあ、トート君。真剣な顔しちゃって、どうしたんだい?」

 

(トート視点)

 

「お、ヘルメスじゃねーか。どうしたんだ? また変なとこにでも連れてく気か?」

俺は警戒しながら答えた。こいつといると、ロクなことにならねえ。

 

「アッハッハ、相変わらずつれないねぇ。オレは、君に前回言われたように、女の子の店を紹介しに来てあげたんだよ。約束は守る男なんでね」

 

「…ああ、その件か。悪ぃが、今はパスだ。俺は強くなるって決めたんだ。女とイチャついてる暇はねぇ」

 

そうだ。俺は覚悟を決めたんだ。あのアルフィアに追いつき、ぶっ飛ばすまでは、女遊びなんて…。

 

「そうかい? 今回行くのは、オラリオでも随一の美女たちが舞い踊るっていう、芸術的なストリップショーだよ。鍛え上げられた肉体美は、君の戦闘の参考にもなるんじゃないかな?」

 

「もちろん行くぜぇ!」

 

俺の覚悟は、0.1秒で崩れ去った。

 

ヘルメスに連れられてやってきたのは、歓楽街の奥にひっそりと佇む、だが中からは異様な熱気が漏れ伝わってくるストリップ劇場だった。

 

重い扉を開けると、そこは野郎どもの汗と酒と欲望でむせ返るような空間だった。薄暗い店内を照らすのは、舞台を彩るけばけばしい魔石灯の光だけ。鳴り響くアップテンポな音楽と、それに合わせて叩かれる手拍子、そして客たちの野太い歓声が渦巻いている。

 

中央の大きな舞台の上では、露出度の高い衣装を身につけた複数の女性たちが、それぞれの魅力を振りまきながら激しく踊っていた。

 

「うおぉぉぉぉすげぇぇ!! これが…大人の世界…! 俺の知ってるどんなエロ本よりもすげえ!」

俺は目を輝かせ、その光景に釘付けになった。

 

舞台の中央では、褐色の肌を持つアマゾネスの女性が、長い手足を獣のようしなやかに動かし、力強くも妖艶なダンスを披露している。汗で濡れた肌が照明を反射して輝き、その葡萄のように豊満な胸は、激しい動きのたびに生命力豊かに揺れていた。時折、客席に向かって挑発的な視線を送り、ニヤリと笑う様は、まさに猛獣使いのいない猛獣そのものだ。

 

その隣では、牛人(カウズ)の女性が、その種族特有の爆乳を誇示するように、おおらかでパワフルに踊っている。母性を感じさせる柔和な笑顔とは裏腹に、そのダイナミックな動きは床を揺るがすほどの迫力があった。時折、恥ずかしそうに頬を染めながら衣装の紐に手をかける仕草に、客席からは割れんばかりの歓声が上がる。

 

そして、少し離れた場所では、小柄なヒューマンの女性が、小悪魔的な流し目で観客の心を鷲掴みにしていた。彼女は激しく動くわけではない。だが、計算され尽くした指先の動き、ゆっくりと衣装をずらしていく焦らしのテクニック、そして時折見せるアンニュイな表情が、他の踊り子たちとは違う洗練されたエロティシズムを醸し出していた。

 

「フフ、これは一種の芸術だね。鍛え上げられた肉体と、それをさらけ出す勇気。種族ごとに異なる表現方法、実に興味深い。素晴らしいじゃないか」

ヘルメスは腕を組んで、なぜか批評家めいた口調で呟いている。

 

俺たちがそのショーに見入っていると、店の隅の方から、何やらブツブツと呟く声が聞こえてきた。

 

「88点、96点、91点、84点。うむ、この店はなかなかのクオリティを出してくれるのぉ」

 

その声には聞き覚えがあった。見ると、店の隅の席で、一人静かに酒を飲みながら、舞台上の女性たちを真剣な顔で採点している爺さんがいた。

 

「おい、ヘルメス。あれ、ゼウスのジジイじゃねえか」

「おや、本当だ。オレは誘ってないんだけどね。鼻が利くなぁ、あの神は」

 

俺たちに気づいたゼウスが、嬉しそうな顔でこちらにやってきた。

「おお、トート、ヘルメス! 儂を置いていくとは、薄情なやつらじゃな!」

 

「だって、誘ったらまたヘラにオレらが怒られるじゃないか」

ヘルメスが呆れたように言う。

 

「ふっ。この儂が、そう何度も捕まるとでも思うてか」

ゼウスは胸を張るが、あまり説得力はなかった。

 

「それにしても、この店の女の子の胸は最高じゃのう。見ろ、あのアマゾネスの娘のあのハリ! あの膨らみ! まさに神の造形物じゃ!」

ゼウスが恍惚とした表情で、舞台中央の踊り子を指さす。

 

「いや、ゼウス。お尻の方が最高だよね」

ヘルメスが異を唱えた。

「オレは伝令の神として、多くの道を旅してきた。長旅を支えるのは、強靭な足腰。つまり、キュッと引き締まった尻と、そこから伸びるしなやかな太もものラインこそ、機能美と造形美が融合した至高の部位じゃないかな。ほら、あそこのヒューマンの子の腰つきなんて、まさに芸術の域だよ」

 

「何を言うか! あのカウズの娘の胸の揺れこそが生命の躍動の証じゃろうが!」

「いやいや、あっちのアマゾネスの子のお尻と太もものムチムチ感がたまらないんじゃないか!」

 

神々による、クソどうでもいい論争が始まった。

 

「「トート(君)はどっちだい(だ)!」」

 

二人の視線が、一斉に俺に突き刺さる。

 

「あ? 俺か? 俺は…顔がよければどっちでも良いじゃねぇか」

 

俺がそう答えた瞬間、二人の神の表情が固まった。

 

「「お主(君)は最低じゃな(だね)」」

 

「お前らに言われたくねぇよ‼」

俺は全力でツッコんだ。

 

すると、俺たちの会話を聞いていたのか、近くのテーブルにいた他の冒険者たちが話に加わってきた。

「おいおい、胸の話をしてたか。やっぱおっぱいだよな。ロマンだろ。あのカウズっ娘の爆乳は国宝級だぜ」

「いやいや、あんたは分かってねえな。男は黙ってケツだよ、ケツ。あのアマゾネスの引き締まったケツを見ろよ!」

「……フフ、素人ですね。そのどちらでもありません。やはり、手ですよ。あのヒューマンの娘が、衣装の紐を解く指先の表情、その人の生き様が刻まれる指先の美しさこそが至高なのです」

 

「おいおい、この流れ前にもあったぞ…」

俺はリヴィラの酒場での光景を思い出し、嫌な予感がした。

 

案の定、それぞれのフェチを主張する男たちの口論は、次第にヒートアップしていく。

 

「胸を分からん奴はガキだ!」

「尻の良さが分からんとは、さては童貞だな!」

「手を馬鹿にするな! この変態どもめ!」

 

「ふざけるんじゃねえ!」

「やんのかゴラぁ!」

 

次の瞬間、誰かの拳が飛び、それを合図に店全体を巻き込む大乱闘が始まった。テーブルがひっくり返り、酒瓶が飛び交い、舞台で踊っていたお姉さんたちは悲鳴を上げて逃げていく。

 

俺もゼウスもヘルメスも、その騒ぎの中心で、いつの間にか殴り合いに参加していた。

 

そして数分後。店の屈強な用心棒たちによって、俺たちを含め、その場にいた客のほとんどが、店の外へと叩き出された。

 

「てめえら! 全員、うちの店は永久出入り禁止だ! 二度と来んじゃねえぞ!」

 

女将さんの怒声が響き渡り、俺たちは揃って店の前で伸びていた。

 

「…また、やっちまった…」

 

俺の呟きは、オラリオの夜の喧騒に、虚しく溶けていった。




いや、頑張って良いもの見せたいなと思ったんだよ…
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