オラリオで好き勝手するのはまちがっているだろうか 作:JP_JK_Loling
ストリップ劇場を叩き出された後、俺とゼウス、ヘルメスの三人は、結局別の薄汚い酒場で飲み直していた。乱闘騒ぎで昂った熱も、エールの冷たさで少しずつ落ち着いてくる。
「なあ、あんたら神様なんだろ? ちょっと聞きてえんだけどよ」
俺は意を決して、二人に切り出した。
「どうやったら、ヘラ・ファミリアのアルフィアって女に会えるんだ?」
俺の真剣な問いに、ゼウスとヘルメスは顔を見合わせてニヤリと笑った。
「ホッホッホ。ついに儂らの高みにまで来たか、トートよ」
「まあ、気持ちは分かるけどね。ヘラ・ファミリアは基本的に男子禁制の女の園だ。正面から乗り込んでも、門前払いされるのがオチだろうね」
「じゃあ、無理なのかよ!?」
「まあ、待て」とゼウスが俺をなだめる。「確かにファミリアのホームで会うのは難しい。じゃが、冒険者として会うのであれば、話は別じゃ」
ヘルメスが言葉を続ける。
「そう。アルフィアは、その異常な成長速度のせいで、ファミリア内でも釣り合う相手がいないらしい。だから、基本的にダンジョンには一人で潜っていることが多い。特に、中層から深層にかけてね。まあ、今の君がそこまで行けるかは別問題だけど」
「…ダンジョンか。なるほどな」
答えは単純だった。アイツに会いたけりゃ、アイツがいる場所まで、俺が強くなって登りつめればいいだけの話だ。
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それから数日後。俺はアルフィアの影を求め、ひたすらダンジョンを徘徊していた。そして、19階層『大樹の迷宮』の、比較的開けた場所で、ついにその姿を捉えた。
彼女は一人で、複数のバグベアーを相手にしていた。だが、それは戦闘というより、一方的な蹂躙に近かった。魔法【サタナス・ヴェーリオン】の不可視の衝撃波が、モンスターたちを赤子のように吹き飛ばしていく。
「よう。また会ったな、オッドアイ」
俺が声をかけると、アルフィアは驚いたようにこちらを振り返り、最後のバグベアーを仕留めた。
「…トート。お前か」
彼女は少し気まずそうに目を伏せ、俺に向かって深々と頭を下げた。
「この前の件、すまなかった。私の早合点で、お前に一方的な攻撃を加えてしまった。謝罪する」
「へっ、今更かよ。まあ、いいぜ。その謝罪、受け取ってやる」
俺はニヤリと笑い、戦斧を肩に担ぎ直した。
「ただし、条件がある。俺と勝負しろ。そして、俺が勝ったら…お前、俺と付き合え!」
「は…?」
アルフィアは、俺のあまりにも突拍子もない要求に、呆然と口を開けていた。
「なんだよ、文句あんのか? 謝罪の対価としちゃあ、安いくらいだろ?」
「…お前は、本当に馬鹿なのだな」
アルフィアは深いため息をついた後、ふっと小さく笑った。
「いいだろう。その勝負、受けよう。お前がどれだけ成長したのか、この目で見させてもらう」
こうして、俺たちの二度目の戦いの火蓋が切って落とされた。
「――【
先制したのはアルフィアだった。詠唱と同時に、前回俺を蹂躙した不可視の衝撃波が襲い来る。
(真正面からじゃ勝てねえ! なら、この森みてえなダンジョン、利用させてもらうぜ!)
俺は真正面から受けず、即座に横っ飛びで巨大な樹木の陰へと飛び込んだ。ゴッ!と鈍い音を立てて衝撃が幹を揺らすが、直撃は避けられた。ゼウスの所で教わった「足を止めない」戦い方の応用だ。
「小賢しい真似を」
アルフィアが追撃の魔法を放つが、俺は木から木へと飛び移り、遮蔽物を常に確保しながら彼女との距離を詰めていく。直線的な魔法攻撃に対し、地形を利用して死角を作り出す。
「オラァ!」
俺は太い幹を蹴ってアルフィアの頭上を取り、戦斧を振り下ろした。アルフィアはそれを冷静に見上げ、最小限の動きでバックステップしてかわす。空振った俺の戦斧が地面を抉るが、俺は構わずその勢いのまま体を回転させ、足払いを仕掛けた。
「…! 動きが変わったか…!」
アルフィアは俺の予想外の連携に驚きつつも、軽やかに跳んでそれをかわす。だが、彼女の表情から余裕の色が少しずつ消えていく。
「【福音(ゴスペル)】!」
アルフィアは俺を捉えるのではなく、俺の周囲の木々ごと吹き飛ばす広範囲攻撃に切り替えた。凄まじい衝撃と爆風が俺の体を襲う。
「ぐっ…!」
吹き飛ばされながらも、俺は別の木の幹に背中を叩きつけ、無理やり勢いを殺して着地する。【拒却死】がダメージを瞬時に回復させ、【臨死臨界】が俺の闘志をさらに燃え上がらせる。
「まだまだだぜ!」
俺はわざと近くの細い木を戦斧で切り倒し、アルフィアの足元を狙う。彼女はそれを軽々と飛び越えるが、その一瞬、視線が倒木に向いた隙を俺は見逃さなかった。
地面を蹴り、一気に肉薄する。近接戦闘なら、俺の再生能力とパワーが活きる!
「チッ…!」
アルフィアは舌打ちし、魔法から短剣へと切り替えて応戦する。斧と短剣が、ダンジョン内に甲高い音を響かせる。彼女の動きは洗練されていて的確だが、俺の獣のような猛攻と、傷を負っても怯まずに突っ込んでくる異常なタフネスに、確実に体力を削られているのが分かった。
戦いの余波は、周囲のモンスターたちを呼び寄せた。ダークファンガス、ガン・リベルラ、そして新たなバグベアーの群れ。気づけば、俺たちは完全にモンスターに包囲されていた。
「チッ、邪魔が入ったか!」
「だが、好都合だ!」
俺たちは戦闘を止めない。背中合わせになることもあれば、互いに距離を取り、モンスターを盾にしながら相手への攻撃を繰り出す。モンスターを蹴散らし、その死体を足場に跳躍し、相手に一撃を叩き込む。それは、常人には理解しがたい、狂気の乱舞だった。
長い乱戦の末、ようやく周囲のモンスターを殲滅した時、俺たち二人はお互いに満身創痍だった。特にアルフィアの消耗は激しいように見えた。
「はあ…はあ…どうだ! これで、仕切り直しだ!」
俺はチャンスだと思い、彼女の傷を治し、万全の状態で決着をつけるべく、魔法を詠唱した。
「【我が身を捧ぐ、汝の盾とならん】!」
だが、その善意は、最悪の誤解を生んだ。
「…! まだ、何かする気か!」
俺の未知の詠唱を新たな攻撃魔法と判断したアルフィアは、警戒心を最大に引き上げ、迎撃のために最後の力を振り絞った。
「【
至近距離で放たれた不可視の衝撃波が、俺の体を直撃した。
「ぐはっ…!」
だが、それだけではなかった。アルフィアの体から迸る、複数の状態異常のオーラ…彼女のスキル【
「が…あ…体が…動かねえ…」
【拒却死】の再生能力が、未知の状態異常によって阻害される。俺の意識は、そこで途切れた。
どれくらい時間が経ったか。全身を苛む痺れと痛みの中で、俺の意識がゆっくりと浮上する。目を開けると、薄暗いダンジョンの天井がぼんやりと見えた。そして、その視界に、腕を組んで俺を見下ろしているアルフィアの姿が映った。
「…なんで、まだいんだよ…。とどめでも、刺しに来たか…?」
俺は掠れた声で尋ねた。
「馬鹿を言え」
アルフィアは静かに首を振る。
「こんなものは勝利ではない。私のスキルが、意図せずお前を害しただけだ。それに…あの魔法は、攻撃ではなかったのだろう?」
「…ああ。治してやろうと、思っただけだ…」
「…そうか。ならば尚更だ」
アルフィアは真っ直ぐに俺の目を見据えて言った。
「いつか、万全の状態で、もう一度だ、トート」
彼女はそう言い残し、今度こそ背を向けて、迷宮の奥へと去っていった。
遠ざかるその背中を見送りながら、俺は傷の痛みも忘れ、ニヤリと口の端を吊り上げた。
「へへ…もう一回、付き合うチャンスができたってことかよ。上等だぜ…!」
(アルフィア視点)
ヘラ・ファミリアの拠点に戻った私は、主神であるヘラにステイタスの更新を依頼していた。
「…おや、アルフィア。また随分と無理をしたようだな。だが、その経験が、お前に新たな力を与えたようだ」
ヘラがそう言って、私の背中に浮かび上がった神聖文字を読み上げる。
【アルフィア】
Lv.3
力:C618
耐久:D503
器用:D586
敏捷:C674
魔力:B790
《発展アビリティ》
魔導:H
耐異常:I
≪魔法≫
・【サタナス・ヴェーリオン】
・【
≪スキル≫
・【
・【
「…新しい、魔法…?」
【
(あの男の未知の魔法…それへの警戒心と、二度とあのような誤解をせぬようにという思いが、この力を生んだというのか…)
私は、あの金髪の少年の顔を思い浮かべる。無茶苦茶で、野蛮で、それでいて、どこか目が離せない不思議な少年。
「次は、必ず…完璧な形で、私が勝つ」
私は静かに、新たな覚悟を決めた。
才禍代償(ギフ・ブレッシング)
生まれつき患っていた不治の病が影響して、発現したスキル。能力(ステイタス)の常時限界解除(リミット・オフ)を約束する代わり、交戦時及び発作時、『毒』『麻痺』『機能障害』を始めとした複数の『状態異常』を併発し、発動中は半永久的に能力値(アビリティ)、体力、精神力の低下を伴い続ける。
双分運命(アルメー)
詳細不明。
ってことらしい(by Wikipedia)