オラリオで好き勝手するのはまちがっているだろうか 作:JP_JK_Loling
歓楽街での一件から数日後。俺は、新スキル【
「とりあえず、手っ取り早く強え奴っつったら、フロアボスだよな!」
俺は意気揚々とダンジョンに潜り、17階層を目指した。ここには「ゴライアス」っていう、クソでけえフロアボスがいるはずだ。そいつ相手に死ぬほど傷を負えば、新スキルの効果でステータスも爆上がりするに違いねえ。
しかし、17階層の広大な大壁にたどり着いた俺の目に飛び込んできたのは、既に討伐され、黒い灰となって崩れ落ちていくゴライアスの残骸だった。
「んだよ、もう誰かに倒されちまったのかよ! チッ、タイミング悪ぃな…」
どうやら、俺より先にどこかのファミリアが遠征に来ていたらしい。当てが外れ、急激に腹が減ってきた。携帯食料の干し肉だけじゃ、もう我慢の限界だ。
「しゃあねえ、18階層に行くか。あそこなら、飯屋くらいあるだろ」
18階層は「安全階層(セーフティポイント)」と呼ばれ、基本的にモンスターが出現しないオアシスだ。俺はそこにあるという冒険者の街「リヴィラ」を目指し、階層を降りた。
リヴィラの街は、想像以上にデカくて活気があった。地上と変わらねえような建物が立ち並び、様々な人種の冒険者たちが行き交っている。
「すげえ…こんなとこがあったのか。よし、まずは飯だ、飯!」
俺は鼻をクンクンさせ、一番うまそうな匂いを放つ店を探して歩き始めた。その時だった。
「よう、新顔。見ねえツラだな。どこのファミリアの所属だ?」
ガラの悪そうな男たち三人が、ニヤニヤしながら俺の前に立ちふさがった。うわ、出たよ。こういう田舎のヤンキーみてえな奴ら。
「……」
(目立たないように言われているからな~)
タナトスの呆れ顔が脳裏をよぎる。ここで騒ぎを起こすのは得策じゃねえ。俺は男たちを完全に無視し、その脇を通り過ぎた。
「おいコラ、無視してんじゃねえぞ!」
だが、二度目の声がかかる。俺の肩を、汚え手が掴んだ。
俺はゆっくりと振り返り、肩を掴んだ男の顔面に、思いっきり拳を叩き込んだ。
「ごべっ!?」
男が綺麗な放物線を描いて吹き飛ぶ。もう一人の男が呆気に取られている隙に、そいつの腹にもう一発。
「食事処を、教えろ下さい」
俺は目立たないようにスマートに地面に転がる男の髪を掴み、笑顔で尋ねた。残った最後の一人は、顔を真っ青にして震えながら、近くの酒場を指さした。
「よし、サンキュー」
俺は礼を言うと、教えられた酒場へと向かった。
酒場でエールと巨大な肉料理を頼み、ガツガツと食っていると、案の定、さっきの奴らが戻ってきた。今度は、さらにデカくて強そうな男を連れている。
「兄貴! こいつです! 俺たちの顔に泥を塗りやがったのは!」
兄貴分と呼ばれた男は、まるで牛みてえなゴツいツラをしていた。
「ほう、テメェがうちの弟分をいじめてくれたって新顔か。なかなか良いツラ構えしてやがる」
「へっ、あんたこそ、ミノタウルスみてえな顔してんな」
俺がそう言うと、意外にも男は「なにっ!?」と目を見開いた後、自らの胸筋を叩いてニカッと笑った。
「ミノタウルスだと!? お前、見る目があるな! この鍛え抜かれた俺の肉体が、あの迷宮の猛者たるミノタウルスのように力強いということか! ハッハッハ! そいつは最高の褒め言葉だ! 俺はバファロ! 気に入ったぜ、お前!」
(マジかよ。こいつ、脳筋かよ)
「でもよぉ、モンスターの中で一番ビジュが良いのは、やっぱアルミラージだろ。あのウサギみてえなフォルムに、一本角なのにまぁまぁ強いってのが良いんじゃねぇか」
俺がそう主張すると、バファロは眉をひそめた。
「いや、筋肉美ならミノタウルスが至高だ!」
「何言ってんだ、ヘルハウンドの口から迸るあの灼熱の炎こそロマンだろうが!」
「ゴブリンのあの素朴な感じがいいんじゃないか…」
俺たちの会話に、周りのテーブルで酒を飲んでいた冒険者たちも次々と参戦し、酒場は一瞬にして「どのモンスターが一番イケてるか」という、クソどうでもいい大論争の場と化した。
(ゴブリン!? マジかよ…趣味悪ぃな…)
俺はゴブリン推しの男を一瞥し、心の中で引いた。
「うるせえ! ごちゃごちゃ言ってねえで、どいつが一番か決めようじゃねえか!」
俺はテーブルを叩いて叫んだ。
「決めるって、どうやってだよ!」
「決まってんだろ! じゃぁポ〇モン勝負と行こうじゃねぇか!」
「「「ポ〇モン?」」」
酒場にいた全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「テイムしたモンスター、つまり手にしたモンスターは自分のポケットのなかにいるようなもんだろ、ちじめてポケ〇ンだ! それぞれがお気に入りのモンスターをテイムして戦わせりゃ、どいつが一番かハッキリするだろ!」
俺のデタラメな理論に、冒険者たちは最初こそ呆れていたが、酒の勢いと、その馬鹿馬鹿しい面白さに、次第に「それ、面白そうじゃねえか!」と乗り気になっていった。
こうして、オラリオ史上最もくだらない理由で、五日後にリヴィラの広場で「第一回ポケ〇ンバトル in リヴィラ」が開催されることが決定した。
都合のいいことに、この酒場にいた冒険者の中になんでか知らねぇが、モンスターのテイムの経験があるという奴がいた。
俺の推しであるアルミラージは、人気がないためテイムしようとする者が少なく、少数派だった。モンスターテイムはスキルではなく、経験と知識が物を言う特殊な技術だ。彼の協力を得て、なんとか数匹のアルミラージを捕獲することに成功した。
「よし! こいつを最強に育てるぞ!」
俺は自分のアルミラージに「ポチタ」と名付けた。最強のポケモンにするべく、俺はその日からせっせとダンジョンに潜り、他のモンスターを狩っては魔石を持ち帰り、ポチタに食べさせた。魔石を食うたびに、ポチタは少しずつだが確実に強くなっていくようだった。
少数派であるアルミラージを選んだ他の奴は、それぞれ「ミッ〇ィー」「ティッ〇ー」「ペコー〇」などと名付けた自らのポケモンを、思い思いの方法で育てていた。なんだか、前世の文化祭の準備みてえで、少しだけ楽しかった。
そして、来るバトル当日。リヴィラの広場は、野次馬でごった返していた。
初戦の相手はゴブリン。俺の「ポチタ」は、その素早い動きと鋭い角で、あっさりと勝利した。
二戦目のヘルハウンドも、炎を吐かれて毛が少し焦げたが、根性で勝利。俺とポチタの絆は深まっていく。
そして、決勝戦。相手はバファロのミノタウロス。
「いけーっ! ポチタ!」
「やれーっ! 俺の
激しい戦いが繰り広げられる。だが、その時だった。戦いの熱気と野次馬の興奮、そして密集したモンスターたちの闘争本能が臨界点を超えたのか、ポチタが、ミノタウロスが、そして観客席の近くにいた他のモンスターたちが、一斉に目を赤く光らせ、暴走を始めたのだ。
「モォォォォ!!」
「キュイイイイイ!!」
暴走したモンスターたちは、敵味方の区別なく、近くの冒険者や建物に牙を剥き始めた。リヴィラの街は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「やべ、やりすぎた」
俺は大混乱のどさくさに紛れ、そっとその場を離脱。誰にも気づかれないように、地上へと続く階段を駆け上がった。
後日、地上では「リヴィラの街が、正体不明の冒険者グループが開催した違法なモンスター闘技会のせいで半壊した」という大ニュースが駆け巡っていた。
タナトス・ファミリアの拠点。俺は主神タナトスの前に呼び出されていた。いつものおどけた雰囲気は完全に消え、心底呆れ果てた、冷たい目が俺を射抜いていた。
「……ねえ、トート君」
「な、なんだよ神様…」
「僕、『目立たないように』って、言ったよね?」
俺はバツが悪そうに、そっぽを向くことしかできなかった。
アイデア尽きて捻りだしたら、新スキル放置してた