オラリオで好き勝手するのはまちがっているだろうか   作:JP_JK_Loling

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七話 譲れぬ熱き戦い

歓楽街での一件から数日後。俺は、新スキル【臨死臨界(ヘブン・ダイバー)】を試したくてウズウズしていた。「傷を負うほど強くなる」なんて、まさに俺のためのスキルだ。タナトスからの「目立つな」という忠告? 知るか、そんなもん。強くなるためには、強い奴と戦うのが一番なんだよ。

 

「とりあえず、手っ取り早く強え奴っつったら、フロアボスだよな!」

 

俺は意気揚々とダンジョンに潜り、17階層を目指した。ここには「ゴライアス」っていう、クソでけえフロアボスがいるはずだ。そいつ相手に死ぬほど傷を負えば、新スキルの効果でステータスも爆上がりするに違いねえ。

 

しかし、17階層の広大な大壁にたどり着いた俺の目に飛び込んできたのは、既に討伐され、黒い灰となって崩れ落ちていくゴライアスの残骸だった。

 

「んだよ、もう誰かに倒されちまったのかよ! チッ、タイミング悪ぃな…」

 

どうやら、俺より先にどこかのファミリアが遠征に来ていたらしい。当てが外れ、急激に腹が減ってきた。携帯食料の干し肉だけじゃ、もう我慢の限界だ。

 

「しゃあねえ、18階層に行くか。あそこなら、飯屋くらいあるだろ」

 

18階層は「安全階層(セーフティポイント)」と呼ばれ、基本的にモンスターが出現しないオアシスだ。俺はそこにあるという冒険者の街「リヴィラ」を目指し、階層を降りた。

 

リヴィラの街は、想像以上にデカくて活気があった。地上と変わらねえような建物が立ち並び、様々な人種の冒険者たちが行き交っている。

 

「すげえ…こんなとこがあったのか。よし、まずは飯だ、飯!」

 

俺は鼻をクンクンさせ、一番うまそうな匂いを放つ店を探して歩き始めた。その時だった。

 

「よう、新顔。見ねえツラだな。どこのファミリアの所属だ?」

 

ガラの悪そうな男たち三人が、ニヤニヤしながら俺の前に立ちふさがった。うわ、出たよ。こういう田舎のヤンキーみてえな奴ら。

 

「……」

(目立たないように言われているからな~)

タナトスの呆れ顔が脳裏をよぎる。ここで騒ぎを起こすのは得策じゃねえ。俺は男たちを完全に無視し、その脇を通り過ぎた。

 

「おいコラ、無視してんじゃねえぞ!」

 

だが、二度目の声がかかる。俺の肩を、汚え手が掴んだ。

俺はゆっくりと振り返り、肩を掴んだ男の顔面に、思いっきり拳を叩き込んだ。

 

「ごべっ!?」

 

男が綺麗な放物線を描いて吹き飛ぶ。もう一人の男が呆気に取られている隙に、そいつの腹にもう一発。

 

「食事処を、教えろ下さい」

 

俺は目立たないようにスマートに地面に転がる男の髪を掴み、笑顔で尋ねた。残った最後の一人は、顔を真っ青にして震えながら、近くの酒場を指さした。

 

「よし、サンキュー」

 

俺は礼を言うと、教えられた酒場へと向かった。

 

酒場でエールと巨大な肉料理を頼み、ガツガツと食っていると、案の定、さっきの奴らが戻ってきた。今度は、さらにデカくて強そうな男を連れている。

 

「兄貴! こいつです! 俺たちの顔に泥を塗りやがったのは!」

 

兄貴分と呼ばれた男は、まるで牛みてえなゴツいツラをしていた。

 

「ほう、テメェがうちの弟分をいじめてくれたって新顔か。なかなか良いツラ構えしてやがる」

 

「へっ、あんたこそ、ミノタウルスみてえな顔してんな」

 

俺がそう言うと、意外にも男は「なにっ!?」と目を見開いた後、自らの胸筋を叩いてニカッと笑った。

 

「ミノタウルスだと!? お前、見る目があるな! この鍛え抜かれた俺の肉体が、あの迷宮の猛者たるミノタウルスのように力強いということか! ハッハッハ! そいつは最高の褒め言葉だ! 俺はバファロ! 気に入ったぜ、お前!」

 

(マジかよ。こいつ、脳筋かよ)

 

「でもよぉ、モンスターの中で一番ビジュが良いのは、やっぱアルミラージだろ。あのウサギみてえなフォルムに、一本角なのにまぁまぁ強いってのが良いんじゃねぇか」

俺がそう主張すると、バファロは眉をひそめた。

 

「いや、筋肉美ならミノタウルスが至高だ!」

「何言ってんだ、ヘルハウンドの口から迸るあの灼熱の炎こそロマンだろうが!」

「ゴブリンのあの素朴な感じがいいんじゃないか…」

 

俺たちの会話に、周りのテーブルで酒を飲んでいた冒険者たちも次々と参戦し、酒場は一瞬にして「どのモンスターが一番イケてるか」という、クソどうでもいい大論争の場と化した。

(ゴブリン!? マジかよ…趣味悪ぃな…)

俺はゴブリン推しの男を一瞥し、心の中で引いた。

 

「うるせえ! ごちゃごちゃ言ってねえで、どいつが一番か決めようじゃねえか!」

俺はテーブルを叩いて叫んだ。

 

「決めるって、どうやってだよ!」

 

「決まってんだろ! じゃぁポ〇モン勝負と行こうじゃねぇか!」

 

「「「ポ〇モン?」」」

 

酒場にいた全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

「テイムしたモンスター、つまり手にしたモンスターは自分のポケットのなかにいるようなもんだろ、ちじめてポケ〇ンだ! それぞれがお気に入りのモンスターをテイムして戦わせりゃ、どいつが一番かハッキリするだろ!」

 

俺のデタラメな理論に、冒険者たちは最初こそ呆れていたが、酒の勢いと、その馬鹿馬鹿しい面白さに、次第に「それ、面白そうじゃねえか!」と乗り気になっていった。

 

こうして、オラリオ史上最もくだらない理由で、五日後にリヴィラの広場で「第一回ポケ〇ンバトル in リヴィラ」が開催されることが決定した。

 

都合のいいことに、この酒場にいた冒険者の中になんでか知らねぇが、モンスターのテイムの経験があるという奴がいた。

俺の推しであるアルミラージは、人気がないためテイムしようとする者が少なく、少数派だった。モンスターテイムはスキルではなく、経験と知識が物を言う特殊な技術だ。彼の協力を得て、なんとか数匹のアルミラージを捕獲することに成功した。

 

「よし! こいつを最強に育てるぞ!」

 

俺は自分のアルミラージに「ポチタ」と名付けた。最強のポケモンにするべく、俺はその日からせっせとダンジョンに潜り、他のモンスターを狩っては魔石を持ち帰り、ポチタに食べさせた。魔石を食うたびに、ポチタは少しずつだが確実に強くなっていくようだった。

少数派であるアルミラージを選んだ他の奴は、それぞれ「ミッ〇ィー」「ティッ〇ー」「ペコー〇」などと名付けた自らのポケモンを、思い思いの方法で育てていた。なんだか、前世の文化祭の準備みてえで、少しだけ楽しかった。

 

そして、来るバトル当日。リヴィラの広場は、野次馬でごった返していた。

 

初戦の相手はゴブリン。俺の「ポチタ」は、その素早い動きと鋭い角で、あっさりと勝利した。

二戦目のヘルハウンドも、炎を吐かれて毛が少し焦げたが、根性で勝利。俺とポチタの絆は深まっていく。

 

そして、決勝戦。相手はバファロのミノタウロス。

 

「いけーっ! ポチタ!」

「やれーっ! 俺の筋肉(ミノタウロス)!」

 

激しい戦いが繰り広げられる。だが、その時だった。戦いの熱気と野次馬の興奮、そして密集したモンスターたちの闘争本能が臨界点を超えたのか、ポチタが、ミノタウロスが、そして観客席の近くにいた他のモンスターたちが、一斉に目を赤く光らせ、暴走を始めたのだ。

 

「モォォォォ!!」

「キュイイイイイ!!」

 

暴走したモンスターたちは、敵味方の区別なく、近くの冒険者や建物に牙を剥き始めた。リヴィラの街は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 

「やべ、やりすぎた」

 

俺は大混乱のどさくさに紛れ、そっとその場を離脱。誰にも気づかれないように、地上へと続く階段を駆け上がった。

 

後日、地上では「リヴィラの街が、正体不明の冒険者グループが開催した違法なモンスター闘技会のせいで半壊した」という大ニュースが駆け巡っていた。

 

タナトス・ファミリアの拠点。俺は主神タナトスの前に呼び出されていた。いつものおどけた雰囲気は完全に消え、心底呆れ果てた、冷たい目が俺を射抜いていた。

 

「……ねえ、トート君」

 

「な、なんだよ神様…」

 

「僕、『目立たないように』って、言ったよね?」

 

俺はバツが悪そうに、そっぽを向くことしかできなかった。




アイデア尽きて捻りだしたら、新スキル放置してた
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