お姉ちゃんを自称する年下の幼馴染にお世話される事になった~甘やかされ過ぎて、俺はもう弟で良いやと思えてきた~   作:138ネコ

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第15話「なぁ、彩姉。映画見ないか?」

 それは、GWの事だった。

 

「優斗君、遥ちゃん。遊ぶのは良いけど、宿題は終わったの?」

 

「俺は授業中に全部終わったから何も残ってないよ」

 

「ボクも全部やった!」

 

 夜になっても、リビングで仲良くソファに座ってゲームをしている優斗と遥を見かねて、彩音が声をかける。

 そんな声がかかる事くらい、優斗も遥も想定済み。なので、宿題はとうの昔に終わらせていた。

 お互いに「コイツ本当に宿題やったのか?」と思ったりしているが、口には出さない。もし口にすれば「宿題をやったかチェックする」と言い始めるだろう。

 

 宿題自体はちゃんとやっているので、見られても問題はない。

 ただ、せっかく白熱してるところをそんな理由で中断させられるのは嫌なので。

 

「むぅ……」

 

 自分だけ宿題がまだ終わっていないので、テーブルに広げた教科書やプリントと向き合い、ちょっとだけ不機嫌そうに口を尖らせる彩音。 

 宿題が終わったからって、ゲームばかりしていないで予習復習しなさいとか、言いたい事はある。だが、それを言える立場ではない。

 なぜならまだ宿題を終わらせていないので。

 

 口うるさく言われない事を良い事に、優斗も遥も大はしゃぎでゲームを続ける。

 この様子なら、今日は夜更かししてゲームが楽しめると。

 

 しかし、そんな気持ちも長くは続かなかった。

 テーブルでうんうん唸りながら彩音が宿題をやっているのに、自分たちだけはしゃぐのは罪悪感が湧いてくるからである。

 言葉少なになり、示し合わせたようにこっそりとテーブルへ視線を向ける。

 

 そこには、さながら家計簿に頭を悩ます母親のような顔で宿題に向き合い続ける彩音の姿がある。

 

「なぁ、彩姉。映画見ないか?」

 

「ごめんね。お姉ちゃんまだ宿題あるから」

 

「GWだってまだ始まったばかりなんだから続きは明日やろうぜ。遥も彩姉と一緒に見たいよな?」

 

「おー。彩音ちゃん。一緒に見ようぜ。まだ見てないオススメがあるんだ!」

 

 可愛い弟(年上)と可愛い妹(年上)に頼まれれば、お姉ちゃんとしてはやぶさかではない。

 早く早くと手を引かれ、しょうがないわねと言いつつも満面の笑みを浮かべる。

 息抜きがしたかったというのもあるが、可愛い弟妹(年上)に誘われたのが嬉しいからでもある。

 

 ソファーの前に置かれた小さなテーブルには、お菓子やジュース。

 普段なら彩音の「ごはん残してたでしょ!」とお叱りが飛んでくるが、よほど上機嫌だったのだろう。

 ニコニコと笑顔で何も言わずにお菓子やジュースに手を付けている。その後、調子に乗って追加を持ってこようとして叱られたが。

 

「それで、映画は何見るの?」

 

「何か怖いホラー映画教えて貰ったんだ。見たら死ぬくらい怖いんだって」

 

「見たら死ぬのに、なんで見た感想があるんだ?」

 

「アンちゃん、そういうツッコミはナンセンスだぜ?」

 

 そうだな。アホの言う事にツッコミを入れるの自体ナンセンスだよな。

 相手をしてもめんどくさくなりそうな気配を察し、ツッコミは一旦放棄し、映画のタイトルで検索する。

 デジタル会員無料で視聴できる事を確認して、いざ再生を押そうとしたところで、止められる。

 

「アンちゃん。部屋暗くしようよ!」

 

「あぁ、そうだな。確かにホラーなら暗くした方が雰囲気出るか」

 

 一旦明かりを消すために優斗が立ち上がり、リビングの入り口にあるスイッチを押して部屋の明かりを消して戻る。

 戻って来たらソファの真ん中が空けられていた事に対してツッコミはしない。キャーとか叫びながら抱き着かれるラッキースケベを期待したので。

 

 映画の方は、一言で言えば面白かった。

 よくあるホラー映画の、急に出てきて驚かすだけではなく、見えないのに近くに存在するのが分かる描写でじっくりとした怖さに重きを置いた作品。

 なので、どのシーンでも怖い。確かにこれだけ恐怖が続けば、見たら死ぬという評価にも納得である。

 ただ一つ、問題があるとすれば。

 

「キャー!」

 

「ギャー!」

 

「うおおおおお!?」

 

 恐怖のあまり、ずっと腕にしがみついてくる彩音と遥。誰がどう見てもラッキースケベにしか見えない。

 だが、そんなラッキースケベよりも恐怖が勝ってしまい、全くそちらに意識が向かない。向けられない。

 なんなら、腕に絡みついてる腕が実はバケモノの腕に変わってないか心配してしまうほどのビビリようである。

 

「今の映画凄かったね。お姉ちゃん怖くてずっとドキドキしてた」

 

「ま、まぁボクからしたら、これくらいは余裕かな!」

 

「そ、そうだな。まぁまぁ良い線いってたんじゃないか?」

 

 素直になれずイキる2人に、そうなんだとニッコリと無邪気な笑顔を見せる彩音。

 映画の最中一緒に絶叫してた口がそれを言うか、などと野暮な事は言わない。何故なら。

 

「あのね。優斗君。お姉ちゃん、怖くなっちゃったから、今日は一緒に寝て欲しいな。なんて、ダメかな?」

 

 どさくさまぎれの、お姉ちゃん弟と一緒におねんね作戦である。

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