お姉ちゃんを自称する年下の幼馴染にお世話される事になった~甘やかされ過ぎて、俺はもう弟で良いやと思えてきた~   作:138ネコ

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第17話「アンちゃん、言っとくけど、今日の事は彩音ちゃんには内緒だよ!」

「トイレについてきてって、言ってて恥ずかしくないのか?」

 

「アンちゃんッ。漏らすのとトイレついて来てもらうの、どっちが恥ずかしいと思う!?」

 

「漏らす方だわな」

 

 もう一度大きなため息を吐いて、布団から身を起こす。

 からかってやりたいところではあるが、暗闇でも分かるくらいに遥の声から切羽詰まったものを感じ、まずはトイレに連れて行くことが優先だと判断する。

 

 布団から出て、電気をつけようとした優斗の手が止まる。

 ここで電気をつけたら、隣で規則正しい寝息を立てている彩音を起こしてしまうかもしれない。流石にこんなアホな事で起こすのは可哀そうだと。

 なので、彩音の顔に光が差し込まないように気を付けながら、スマホのライトを点ける。

 

 

(ここで遥が、明かりがスマホのライトだけだと怖いとゴネたらめんどうだな)

 

 優斗の意図に気づいたのか、遥も電気を点けようとは言わない。もしかしたら単純に早くトイレに行きたいだけかもしれないが。

 だが、そんな遥の考えなど、優斗が知る由もない。

 

「遥、手出せ」

 

「えっ、お金取るの?」

 

「違ぇよ。手を繋いでやる。嫌なら別に構わんが」

 

 ここで遥が怖がって動こうとせず漏らした場合、彩音に何か言われるのは当然。

 しかし、そんな状態と知っておきながら、なんでさっさとトイレに連れて行かなかったとなるだろう。

 まぁ、叱られるとか関係なしに、それは流石に可哀そうだと思う気持ちもある。

 

 差し出された手を見事にスルーして、抱き着く遥。

 手を繋いでやると言ったのに、なぜ抱き着く。そんな問答もきっと無駄なのだろうと、何度目かのため息が自然と零れる。

 言いたい事は山ほどある。だが、恐怖からか、それとも尿意からか、小刻みに震えているのを体越しに感じ、優斗は言葉を飲み込んだ。

 この状態で漏らされたら、被害は自分にも来るので。

 

 リビングを出て、廊下を歩いた先にあるトイレ。

 電気を点け、ドアを開けると怪物が居るなんてこともなく、無事ミッションコンプリート。

 何とか間に合ったと安堵する優斗だが、遥がいまだに抱き着いたまま離れようとしない。

 

「アンちゃん。置いてったりしない?」

 

「トイレの外で待っててやるから安心しろ」

 

 言っておいて「それはそれでヘンタイみたいな発言じゃね?」と困惑する。

 だが、遥はそんな優斗の発言を気にした様子はない。ただただじっと潤んだ瞳で優斗を見つめる。

 そう、じっと見つめて動かない遥。もはや次に言い出す言葉は分かりきっている。

 

「アンちゃん……中までついてきて」

 

 恥じらいはないのかと言いたいが、遥が顔を真っ赤にしているところを見るに、恥じらいはあるのだろう。

 恥じらいよりも、恐怖が勝っているだけで。

 

「ったく、しょうがねぇな」

 

 後ろ頭を掻きむしりながら、めんどくさそうに返事をする優斗。

 このまま漏らされても困るとか、言い合う時間が無駄だとか色々と脳内で自分に言い訳をしているが、彼も思春期のお年頃。

 異性に興味がないわけがないのだ。

 

 2人一緒にトイレの中に入る。

 流石に直視していれば、何か言われるだろうと思い、何か言われる前にくるりと遥から背を向ける。

 

「アンちゃん!?」

 

 が、それは逆効果だったのだろう。

 逃げると勘違いした遥が、優斗の手を握る。

 

「いや、出てかないから」

 

「フフーン。そう言ってボクが手を離した瞬間に逃げるつもりなんだろ? バレバレだぜアンちゃん」 

 

「馬鹿かお前は?」

 

 こんな風に、片手を掴まれたままだと耳を塞ぐ事が出来ない。

 

「手を掴まれたままだと耳が塞げないから、小便してる音聞かれるぞ?」

 

「そ、そんなの気にならないし。アンちゃんだってボクとゲームやってる時、よく屁をこくじゃん」

 

「いや……もういいや、好きにしろ」

 

 コイツはバカなのかと思い、そうかバカだったんだなと遠い目で天を仰ぎ、天井のシミの数を数え始めた。

 後ろでは、ごそごそと布がこすれ合う音がした後に、チョロチョロと水の滴る音が、狭いトイレの中で響き渡る。

 

 音と共に、繋いだ手に力が込められる。

 ここにきて、やっと「コイツにも恥じらいってものがあったんだな」と優斗は理解した。

 

 どれだけの時間が経っただろうか。

 相当我慢していたのだろう、チョロチョロ音はまだ終わらない。

 年頃の少女が同じ室内のトイレで用を足している。優斗にトイレを覗く性癖はないが、思春期にとっては刺激が強すぎる。

 

(まだ終わらないのかな)

 

 チラっと、目線だけを後ろに向けてみようとするが、当然見えるわけがない。

 このまま振り向きたい衝動と必死に戦い続ける事数秒。そうこうしている内に、チョロチョロ音も消える。

 

「ちゃんと拭いたか?」

 

「当たり前だろ!」

 

 ここでドアを開けたら、ドアの前で彩音が立っているのでは?

 そんな不安が的中する事もなく、手を洗い、さっさと寝床に着く。

 

「アンちゃん、言っとくけど、今日の事は彩音ちゃんには内緒だよ!」

 

「分かってるよ」

 

 ホラー映画を見て怖がった遥がトイレについて来て欲しいと言った事は笑い話に出来るし、なんなら翌日彩音に報告しようと思っていた。

 だが、その結果、遥と一緒のトイレに入って、遥が用を足すまで一緒に居ました。などと言えるわけがない。

 今日の事は、2人だけの秘密である。




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