お姉ちゃんを自称する年下の幼馴染にお世話される事になった~甘やかされ過ぎて、俺はもう弟で良いやと思えてきた~   作:138ネコ

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第22話「今日はなんで、いきなり遊園地に誘ってくれたのかな?」

 少し時間の遅いランチ。

 だからだろうか、園内の休憩所は混んではいるが座る場所がないというほどではない。

 適当な場所を確保し、お弁当を広げる。気合を入れて来たのだろう、色とりどりのランチボックスが次々と出てくる。

 

(絶叫マシーンを先にやっておいて正解だったかもしれない)

 

 2人で食べるにしても、普段よりもちょっと量が多めのお弁当。

 食べきれなければ、彩音は「無理して食べなくても良いよ」と言うだろう。

 だが、ここまで気合の入れてくれた弁当を残すのは、心が痛む。

 

 量はあるが、遅めの昼食、なので入らない事はない。

 それに、今日は気合が入った分、冷めていても普段より美味しく感じるほど。

 料理に舌鼓を打ち、次々と食べる優斗を、彩音が肘をつきながら穏やかな笑みで見つめる。

 

「お姉ちゃん。意外だなぁ」

 

「何が?」

 

「優斗君、怖がって『やっぱりやめよう』って言いだすと思ってたもん」

 

「お、おう。このくらいなら余裕だぜ」

 

 そんな優斗の返事に「ふふっ」と笑みをこぼす。 

 絶叫マシーンが大好きだが、周りは女の子ばかりで、今日みたいにトコトン付き合ってくれる子はいなかった。

 

 もしかしたら優斗も、どこかで音を上げるかなと思っていたが、むしろ楽しんでいる様子に、強くなったねという関心と、もしかしたらお姉ちゃんが守る必要なくなっちゃったのかなという哀愁の混ぜ合わさった複雑な思いを抱える。

 まぁ、あくまでそれは彩音目線であり、絶叫マシーンで優斗が叫んでたのはガチ悲鳴なのだが。

 

「優斗君も、すっかり男の子になっちゃったんだな」

 

「つまり、その言い方だと、今まで俺は彩姉の妹だったのか」

 

 優斗のくだらないギャグに、一瞬だけ目をぱちくりさせて、すぐに理解し「やだもう」と笑いながらバシバシと背中を叩く。

 せっかく男らしくなったと褒めたのに、子供みたいなバカな事を言っておどける。

 そんな優斗を見て、やっぱりまだまだ弟だなと、少しだけ安心して、また笑みがこぼれる。

 

 昼食を食べおえて、また絶叫マシーンに乗ろうとする彩音に「食後に乗るのは流石に厳しい」と宥めながら、出来るだけゆっくり出来る物を選ぶ。

 楽しい時間というのはあっという間に過ぎていく。

 

「優斗君、今日は誘ってくれてありがとね」

 

 観覧車に乗り込み、外を見ながら彩音がそっとお礼を言う。

 夕暮れの時間まではまだあるが、これ以上アトラクションに並べば陽が落ちてしまう。多分観覧者が1週する頃には、空は赤く染まっている頃だろう。

 

「お礼なんていらないよ。俺も行きたかっただけだし」

 

「フーン」

 

 ニヤニヤとジト目で見つめてくる彩音に、俺もしかして何やっちゃいましたと心で呟く。

 

「な、なにかな?」

 

「ううん。優斗君女の子を扱い慣れてるなと思って」

 

「そうか? そんな事ないと思うけど」

 

「本当に? 実は彼女さんとかいるんじゃないの?」

 

 彩音の言葉に、見栄を張って「さぁどうかな?」と言いたい優斗だが、そんな事を言えば、前の「優斗君童貞じゃないの!?」と詰めてきた時のように彩音がおかしくなるかもしれない。

 

「彼女なんて居たことないし、こうやって女の子と一緒に遊園地に来るのも彩姉が初めてだよ」

 

「そ、そうなんだ。お姉ちゃんが初めてなんだ」

 

 自分が初めてといわれ、嬉しさや恥ずかしさがこみ上げ、俯き顔を赤らめてしまう。

 普段は姉ぶっているのに、そうやって不意に可愛い反応をするのは卑怯だろ。

 思わずドキリとした優斗が、誤魔化すように外を見やる。

 

「あ、彩姉こそ」

 

「うん?」

 

「彩姉こそ、俺以外と一緒に行ったりしたことあるのか? その、俺以外の男とか」

 

 恥ずかしさから誤魔化すように、同じような質問を返した。

 もしここで「他の人と行ってるよ」と言われたら、それはそれでショックだなと思いながらも。

 

「ううん。ないよ。お姉ちゃんも、優斗君が初めて、かな」 

 

 自分が初めてといわれ、安堵を感じるも、それ以上の恥ずかしさがこみ上げる。

 なので、そうなんだと相槌を打って、また外を見やる。

 同じように、言っておいて恥ずかしさがこみ上げてきた彩音も、同じように外を見る。

 

 観覧車はゆっくりと登っていく。

 沈黙からか、観覧者の回る音がひと際大きく聞こえる。

 お互いに窓から外を見て、時折「わぁ」といった感嘆の声が出る程度。

 

「そういえば」

 

 それは、観覧者が丁度頂上に差し当たる時だった。

 いまだ恥ずかしそうに視線を逸らしながら、彩音が口を開く。

 

「今日はなんで、いきなり遊園地に誘ってくれたのかな?」

 

 今日は何かの記念日でもないし、彩音の誕生日でもない。何でもないただの土曜日。

 なんとなく行きたかったからと言われればそうなるのだろうが、それにしても突拍子がなかった。

 

「普段彩姉に家の事色々やって貰ってるだろ? だから何かお礼したくて、遥に聞いたら遊園地が好きだって言ってたからさ」

 

「あっ、そうなんだ。別に家事はお姉ちゃんが好きでやってるだけだから良いのに」

 

 それに、おじさんやおばさんからお礼としてお小遣いも貰ってると笑って言う彩音だが、優斗は首を振る。

 遥の話を聞く限り、お世話をするのが大好きだから、彼女が好きでやっているというのは本当だろう。

 親からバイト代と称してお金を貰っているというが、だからといって自分が何もしない理由にはならない。

 

「それでも、何かお礼したかったから。彩姉の迷惑にならなかったらだけど」

 

「迷惑なんて思ってないよ。また一緒に行こうって約束したでしょ」 

 

「そっか。それじゃあまた行きたくなったらいつでも言ってくれよ」

 

「うん」

 

 それからほどなくして、二人の時間が終わりを迎える。

 観覧車に乗ってた時はまだ明るく感じたが、地上に近づくにつれ、思ったよりも空が夕焼け色に染まっていた。

 

「そろそろ帰ろうか。遥ちゃんがお腹空かせてお家で待ってる頃だし」

 

「そうだな。というかアイツは自分の家で食えよ」

 

 次はいつ行こうか。

 そういえば遥が今日パスした理由は、もしかしたら彩音が絶叫マシーンが好きだから避けたのかもしれない。

 なので、次も絶叫マシーンに乗る約束も取り付けてしまったのだから遥も連れて行ってやろうと画策する優斗。

 

 だけど、出来れば次も二人きりだと良いなと思う。

 だから、次は遥も連れて行こうとは、口に出さなかった。




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