お姉ちゃんを自称する年下の幼馴染にお世話される事になった~甘やかされ過ぎて、俺はもう弟で良いやと思えてきた~   作:138ネコ

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第28話「少年、今がチャンスだと思わないか?」

「もうは、遥ちゃんイタズラしちゃダメでしょ『めっ!』」

 

「ピギャー!!!!」

 

 隣の部屋からは、怖いくらいに穏やかな声の彩音と、何が起きてるのか容易に想像できる遥の声が聞こえてくる。

 一定のリズムでパンパンと響く音は、お仕置きとして尻を叩かれている音だろう。

 

「ごめんなさい、もうしません」

 

「もうやっちゃダメだからね? 分かった?」

 

「分かりました。分かりましたから!」

 

 と言いながらも、パンパンという音はいまだ止まず。

 

「ねぇ、分かったって言ったよね。何で手を止めないの? 分かってないの彩音ちゃんじゃない!?」

 

「むぅ、遥ちゃん、まだそんな事言うんだ」 

 

 遥の主張の方はもっともであるが、勝手に部屋を漁り、日記帳を取り出し、ブラジャーを取り出し、それを優斗に見せつけるまでしたのだ。

 ごめんで済む程度の内容ではない。むしろお尻を叩かれているだけで済んでいるだけマシだろう。

 

 だが、と優斗は考える。

 この後自分も同じお仕置きが来るのだろうか。

 初対面の年下の女の子の前で、年下の女の子に年下扱いされながらお尻叩きというお仕置きをされる。

 一部の界隈の人間から見たらご褒美かもしれないが、健全な高校生の優斗にとっては屈辱以外の何物でもない。

 

 緊張で表情が強張る優斗に、彩音の友人がヘラヘラと声をかける。

 

「少年、今がチャンスだと思わないか?」

 

「何を考えているのか分かりませんが、断固拒否します!」

 

 コイツも遥と同じタイプかと思いながら、今度こそ何があってもイタズラは阻止すると心に誓う優斗。

 今の状態でも最悪なのに、これ以上何か変な事を起こせば、どうなったものか想像すらつかない。

 

「安心しろ。私は口が堅いから、少年がタンスからパンツを取り出しニオイを嗅いでも見て見ぬふりをしてやるぞ」

 

「やりませんよ。というか、例え口が硬かろうが、人が居る前でそんな事しないでしょ普通!?」

 

「確かに。少年がそんな事し始めたら、流石にドン引きしてしまうな」

 

 何が面白いのか、優斗の背中をバンバンと叩きながら、目を細める。

 馴れ馴れしく肩を組み「ちょっとくらいは良いんじゃないか?」とそそのかす彩音の友人だが、優斗は聞く耳を持たない。

 何故なら、彩音の友人はおかっぱのような髪型に糸目。どこからどう見ても裏切りキャラの風貌をしているからである。

 

「硬いねぇ、少年は。そんなんだと人生損するぞ」

 

 一切乗ってこない優斗に対し、つまらなさそうな態度を見せるが、そもそも、こんな状況で乗るやつなんていないだろと、優斗は心の底で突っ込む。

 このままほっといても、何かイタズラをしようぜとそそのかしてくるだけ。それならまだ良いが、遥みたいに強行突破をし始めたらめんどくさいことになるだろ

 

「ところで、少年じゃなくて、俺は優斗です。安藤優斗」

 

 なので、変な事に興味が移らないように、会話を試みる。

 

「あぁうん。少年の事は聞いて居るよ。彩音がいつも優斗君優斗君言っているからね」

 

「名前知ってるなら、なんでわざわざ少年って呼ぶんですか?」

 

「そりゃあ、うちの地域って私や彩音が最年少だったから、後輩とか居なかったから。こう年下の男の子に『少年』呼びするの、やってみたかったんだよ」

 

「はぁ……」

 

 物凄くくだらない理由に、思わず呆れた声が出てしまう。そんな態度に気を悪くする事なく、テンション高めに少女が声をかけてくる。

 その態度を見て、優斗も少しだけなるほどなと理解する。彩音と同じく、この少女も年下の面倒を見る事に憧れを抱いているのだろうと。だから変なキャラ付けをしてしまっているのだろうと。

 

「もしかして、普通に名前で呼んだ方が良かった?」

 

「はい、そっちの方がありがたいです」

 

「そうなのか。男の子は年上の女の子に『少年』呼びされるのは好きだと思ったのだけど」

 

「はぁ……」

 

 どんな偏った知識だと思いつつ、優斗の口からまたため息が出る。

 そもそも、本当は自分の方が年上なのだから、目の前の少女がに少年呼びしている事自体が間違っている。

 まぁ、今回は彩音の頼みで弟役を演じているので、その事は口が裂けても言えない。

 

「えっと、それでお姉さんの名前は?」

 

 なので、自分の方が年下の体で話す。

 ちなみに敬語になっているのは、単純に優斗が女の子と会話した事がないので、彼は女の子が相手だったら、誰が相手でも敬語である。

 

「そう言えば名乗ってなかった。その様子だと彩音から教えて貰ってないみたいだね。私の名前は三村 佳代(みむら かよ)、確か彩音の事は彩音お姉ちゃんって呼んでるんだっけ? じゃあ私も佳世お姉ちゃんで良いよ」

 

「はい。佳世さんですね。それと彩姉の事は彩姉って呼んでますよ」

 

「彩音はお姉ちゃんって呼んで貰ってるって嬉しそうに言ってたけど、違うのか。じゃあ私も佳世姉で良いよ」

 

「はい。佳世さんですね」

 

「はー、可愛げないやつー」

 

 なおも「じゃあ、佳世お姉さんでも良いよ?」「それとも私がお姉ちゃんでどうよ?」と食い下がる佳世に「佳世さんですね」を繰り返す優斗。

 そんな応酬をしていると、不意に彩音が遥かに折檻している音が止む。音が止んだ事で、不意に優斗と佳世の会話が止まる。

 

「お待たせ。佳世、優斗君と仲良くしてた?」

 

「彩音~、聞いてよ。優斗君に彩音の下着見ようぜってけしかけても全く反応しないんだよ。ツマンナイ」

 

「優斗君がそんな事するわけないでしょ。ねぇ」

 

「当たり前だろ」

 

 なおも「ちぇ」と言いながら食い下がり、イタズラしようと提案したのに乗ってくれないと彩音に言い続ける佳世。

 彼女が何か口にすればするほど、彩音が笑顔になっていく。

 

 さきほどまでイタズラしようぜと提案してくる佳世にうんざりしていた優斗だが、彼女の意図をここで理解する。

 あえてけしかけた事を話題にする事で、先ほどの遥との一件について彩音からの言及されるのを防ぐためだったのだろう。

 

 事実、彩音は「優斗君はそんな事しないもんね」と言うだけで、遥の事についてそれ以上言及をする事はなかった。

 佳世の配慮に、優斗は心の中で感謝する。

 

「それと私の事もお姉ちゃんって呼んでって言ってるのに、呼んでくれないんだよ」

 

「佳世さん」

 

「ほらまたさん付け!!」

 

 それはそれとして、姉呼びはNG。

 

「だーめ、優斗君のお姉ちゃんは、私だけなんだから。ねっ優斗君?」

 

「そうだね。彩姉」

 

「いつもみたいに彩音お姉ちゃんって呼んでよ!?」

 

 いつもは彩姉だと。あの時はテストのために仕方なく読んだだけ。

 しかしそれを口にすれば説明がめんどくさくなるので「彩姉」と返事をする優斗だった。

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