そうだ、キヴォトス曇らせよう(唐突) 作:音弧
Cryちゃんが帰ってくるまではまだ時間がありますからね……
やっぱり
そうだよサッちゃんだよ。
今回はねー、熟成した甲斐が有るというか……
丁寧に育て上げた食材を使い、コンマ1秒単位での丁重な管理をし、温度から切る大きさまで全て端から端まで丁寧に管理してなにより愛情を込めた料理が最高の逸品になるのって自明の理なわけで。こう言っちゃなんだけどほかのアリスクの子達はあくまで前菜、もしくは主食……僕が丹精込めて作り上げた最強の肉料理、メインディッシュで主菜であるサッちゃんにはさすがに敵わないわけよ。最初は苦労したけどね。下手に素材の味を殺す訳にはいかないけどしっかりとした味付けも欲しい。そんな欲張りな僕だけどサッちゃんならそれを可能にしてくれるのさ。
サッちゃん。あぁサッちゃん。
「聞いているのですか?」
「勿論です、マダム」
「ならばよろしいのですが……次同じようなことがあれば、分かりますね?」
「……イエスマム」
おっと。思考が愉悦の形をとってサッちゃんのもとへ駆け出していた。
今はベアおばから任務の詳細を聞いてから腕を一本提供したところだ。
俺の不死が限定的に再現出来ればロイヤルブラッドをロストする心配が減るから妥当っちゃ妥当。
ゲマトリアの仲間の所有物を勝手に弄ってるってことを除けば一切の問題はない。
ちなみに任務の内容はDUの視察だな。なんでかって?俺が大抵なんでもありの生き物として認識されてるから転生オリ主モノにありがちな言い訳「限定的な未来視」が通用したからさ。
あとはもうお分かりだな?そうだ、俺はそのうちシャーレに潜入する事になる。それまでの期間の時間潰しは色々やらなきゃいけないことがあるが……それなりに好感度は稼いだしそろそろアリウスを一旦離れるのも全然ありだと思っている。
・大切な仲間が何も言わずに消えた
・上司からも何も情報が得られない
・色々あって大変な時にやっと再会出来た……!と思ったら裏切られる*1
・裏切ったのは自分達を守るためだった……!?
・特攻。仲間が死んだ
こりゃ曇るでしょ。間違いなく。
美味しい愉悦をŧ‹”ŧ‹”できる気がする。確信がある。
サッちゃんという最上級の食材を更に熟成して非合法的な旨味を生み出す、そんな予感がヒシヒシと伝わってくる……!!!
感じるだろう、愉悦神が敬虔なる信徒である俺に微笑みかけてくれている……!あぁ愉悦神よ。あなたはその優しさ故に自分を信じるもの全てへと微笑みかけるが、今だけは俺を見ていてくれないか……!あなたにとっておきの愉悦を奉納する、そのために俺を見守っていてくれ……!
(ええで)
!?!?!?!?!?!?!?!?
……なんだ幻聴か。むなし。むなしいたけ。
それは突然だった。
突如マダムから「彼はアリウススクワッドを抜けさせる」とだけ伝えられて、そこから彼に会うことは無かった。
折檻も覚悟して彼がどうなったかを聞いた。
「少し遠い所へと行ってもらっただけですよ。私の指示に意見があるのですか?」と、何の気なしに言われた。
私には学がないからその言葉の真意なんて分からなくて、でもなんとなくマダムの言うことが理解できて。
「あぁ、もう彼に会うことは出来ないのだな」と感じた。
思い返せば私は常に彼に一度でも気を遣った事があっただろうか?
彼は常に私達のために何かをして、私達のために傷付いていた。
それを否定したのは、否定し続けたのは。私だった。
『今日またアイツが馬鹿なことやっててさ───』
そう語るミサキには口調とは裏腹に、かつてのミサキには無かった光を確かに感じた。彼が彼女の光だったからだ。
『えへへ……シシラ兄さんは優しいですねぇ。また雑誌を貰っちゃいました……』
いつものヒヨリならその後に疑心や諦念が溢れた嘆きを上げていただろう。それが無いのは彼がよほど彼女に信頼されているからだろうか?
『……』
姫は言葉を発することは無い。無い、が……行動の節々に希望が感じられた。彼と関わることを日頃から非常に待ち遠しくしていたのは私の勘違いや妄想ではないだろう。
『シシラは、暖かい。全てを諦めなくて良いって、全てが空虚だなんて言うのは嘘だって……そう教えてくれた』
アズサもだ。微笑んで語る彼女を見ると私も満たされたような気になっていた。
そんな彼を、私は遠ざけた。
信用出来ないと。マダムの命令故任務は共に行うが決してお前を信頼しないと。何をされるか分かったものじゃない、近づくなと。
彼はそれを肯定した。
「彼女達にももっと警戒するよう言い聞かせて欲しい、僕のような者を直ぐに信用してはならないと」と言われた。
なんだそれは、と思った。
何が言いたい?
心中に浮き出た醜く汚らわしい感情。
あぁ、そうだ。汚く、惨めで、醜く歪。
私はその私情に身を任せ更に彼を遠ざけた。
家族を守るためだと。彼は害であり毒なのだと。内側に入り込み私達を壊そうとしているのだと。
何が「家族を守る」だ。一番彼女らに必要だったのは私なんかではなく彼だったじゃないか。彼だけだったじゃないか。
「あぁ、それと。彼ですが───」
全てを知ったのは、余りにも遅すぎた。
………………………………………か、はっ……
んぎぼちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぁ!!!!!!!!!!!*2
サッちゃん。
サッちゃんサッちゃんサッちゃん。
その顔。
その瞳。
悔いているが後悔するのが遅すぎて、どうすることも出来ず全てを諦め受け入れるしかない、どうしようもなく自分に絶望するその表情!!!!!!
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!
イッ【規制済み】【規制済み】【規約違反】【規制済み】
ふう。
想像では精々5頂望程度だったがまさか20頂望も食えるとは思わなかった。まさか、まさか!四倍以上のクライズム*3を味わえるとは。
普段は乱数の女神には苦痛に喘がされてばかりだったがよもやまさか!愉悦神が乱数の女神に頼み込んでくれたのだろうか?あぁ、我が主よ!
あなたはなんと美しく、強かで、私めのようなどうしようもない男も愛してくれるのか!!
──────あぁ、女神よ。あなたが私の全てだ。
(ええってことよ)
!?!!??!??!!!?!?!?!?!?
……幻聴かぁ。
暫く(10時間程)サッちゃんの余韻を味わったところで、
【CODE 005:界】、それは遠視機能。こちらも【壊】と同じように組み込まれたものであり、現在の僕の
眼球にこの杭のようなものを突き刺すことによって神経を接続し、座標を指定した位置に
可視率は0%のためどんな場所でも全くバレず監視をする事が可能だ。
……え?女湯?
やだなぁ、なんでそんなことしなきゃいけないのさ。俺の趣味がどうこう以前に覗かれる女の子達が可哀想でしょ。
人の心とか無いんか?自分がやられて嫌なことはせんときや。結局自分に帰ってくるだけやで?
眼から杭を引き抜いてサクッと自害。便利だね、亜人の身体。
次の標的を吟味しながら、夜風に吹かれて俺はビルを飛び降りた。