そうだ、キヴォトス曇らせよう(唐突)   作:音弧

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筆が乗ったので連続投稿


そうだ……アッ

 

 

アイツの言う通り、ユメ先輩は死にかけていた。

 

重度の栄養失調と脱水症状だ。もしあのまま見つからなかったとすると……ゾッとする。

 

なんとか一命は取り留めたが、まだ油断はできない状態らしい……意識も、戻っていない。

 

そういえば、なんでアイツはユメ先輩の事を私に教えたんだろうか。

 

もしかして…………………なんて、そんなわけないか。

 

もう、希望なんて持たない。

 

だって、私の希望と輝き(クロとの日々)は全部嘘っぱちで、何もかもが空っぽだったのだから。

 

……次会った時には、もう容赦なんてしない。出来ない。

 

ヘイローの無事も、保証できないかもしれな……あぁ、元々アイツのは無事じゃなかったか。

 

……もう、アレのことは忘れないと。アレは私達を裏切っ……あぁ、それも違うんだっけ?最初から仲間ですら無かったんだ。

 

………無理だ

 

………………無理だよ…………

 

私の中で彼はもう大事なものになっていて、居て当たり前の1ピースになってて。

 

それすらも、彼の掌の上だったのだろうか。

 

あぁ…………

 

───空虚(からっぽ)だ。

 

 

 

 

 

 


 

「黒さん……」

 

「どういたしましたか?シシラさん」

 

「あのですね、なんか酷くないですかね」

 

「いえいえ、これもまた実験のために必要なことですから」

 

現在俺はというと………

 

───盛大に人体実験をされている!

 

神秘を与える実験らしい。

 

政府に亜人が捕まった時ってぐるぐる巻きでバラされまくるだろ?

 

アレです。なんも見えねぇ。クソ痛ェ。手足削られた。てか何で神秘与えるのに手足削られんだよ。

 

「そちらの方が早く全身に行き渡るので効率よく実験を進めるためですね」

 

「うわぁ勝手に心読まないでセクハラです」

 

「……おや、今回は相性がいいのでしょうか?思ったよりも持ちますね」

 

「露骨に話逸らさないで貰えません??……っすね……なんかあったけぇっす」

 

「ほう、「暖かい」ですか……興味深い反応です、記録しておきましょう」

 

「ちなみに参考までにどこのどなたの神秘かーとか伺っても?」

 

「『暁のホルス』から採取した毛髪の一部から抽出した神秘ですね」

 

「俺同級生注入されてんのォ???????」

 

「まぁ、そうといえばそうですね」

 

適当だなオイ。

 

というか採取した毛髪って……趣味か?だったら否定はしないが……うん、辞めた方が……うーん……オススメはしないが……」

 

「口から漏れてますよ」

 

「おっと。俺の口が勝手に……」

 

というか、今回は本当に調子がいいな。前ゲヘナの子から抽出したのでやった時とか自分が混ざっているような感覚が気持ち悪くてうっかり自傷で目玉抉っちゃったぐらいなのに、今は……満たされているような?不思議な気分だ。

 

「……実に、興味深い……何故拒否反応を起こさない?何故体が耐えられている?何故落ち着いて……いやそれより暖かい、とは?クックック……実に興味深い」

 

「そっすね……なんなんだろ?…………おごぁっ!?」

 

急に体が内側から弾けるような感覚と共に意識が消え去り───

 

「───え、今何が起こりました?」

 

「急に身体中にヒビが入ったと思ったら内側から破裂しました。実験記録は全て録画していますが見ますか?」

 

「見してください」

 

おぉ?ヒビの奥にピンクの光がチカチカっとして……おおうグロいな。やっぱ即死系は大分楽だけど飛び散ったり潰れたり散々だなぁ……

 

「これは……アレっすかね?親和性としては良好だけど神秘の格と質が俺の器に対して大きすぎて肉体が耐え切れず自壊した、みたいな」

 

「恐らく。……やはりあなたは良いですね、こうして実体験を交えて意見を交わせるのは非常に稀有なことですから」

 

「そんな褒めても臓器しかあげませんよ……まぁ、自分を知るっていうのは中々いい事ですからね」

 

「もう臓器は要りませんよ……最初はいくらあっても足りないと思っていましたが、まさか各数十個ずつ提供頂けるとは……」

 

「在庫余ってそう」

 

「えぇ有り余ってます」

 

使われなかった内臓達に追悼。

 

「次はどうします?量を減らすか別のを試すか……」

 

「そうですね……相性という意味ではおそらくこれ以上のものは見つからないでしょう。よって次は量の微調節になりますね。……何度も死んでしまうかもしれませんが、大丈夫ですか?」

 

「え今更っすか」

 

「クックック、それもそうですね」

 

クックックックック(だっはっはっはっは)……」

 

「一先ず今日のところはこれで終了ですが、如何なさいますか?」

 

「んー……別にやりたいこともないし昼寝しましょうかね。……あ、出来ればスマホを用意して貰えませんか?ちと()()()()()()()がおりまして」

 

「おや、珍しい。では目覚めるころまでには用意致しましょう」

 

「ありがとうございます……んじゃおやすみなさい。………Zzz……」

 

どこでも何時でも一瞬爆睡。特技です。おやすみなさい。

 


 

ユメ先輩は未だ目を覚まさない。

 

今月の分の借金の支払いは私だけで済ますことになりそうだ。

 

もともと三人でなんとか回していたのだから、たった一人になれば……うぅん、やらなきゃ。あのクズが消えた分をユメ先輩に苦労させる訳には行かない。私が何とかしなきゃ。私が。私で。

 

……正直、全然足りていない。賞金稼ぎにでも行くかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

………なんだろう、か。

 

凄くやりづらい。

 

この程度の賞金首なら被弾することもなく捕獲できたはず───そっか、クロが居ないんだった。

 

ずっと適切にサポートをして、死角をカバーしてくれて……やりやすかったな。

 

……っと、まただ。もうあんな奴のことは忘れないと。

 

 

 

 

 

これで、今月分は集まったかな。早く戻ろう。

 

 

 

「……あ、あのポスター……クロが……って、違う……」

 

消えない。

 

 

「あそこのショッピングモールは、クロと……」

 

消えない。

 

 

「あ、このジュース、クロが好きって言ってた……」

 

消えない。

 

「これはクロが」「あそこはクロと」「クロが言ってた」

 

消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない消えない

 

 

もう、いらないんだよ。

 

 

わたしから……でていけよ……

 

 

おまえなんて、いらないんだよ

 

……………………つらい、だけなんだよ

 

 

 

 

 

 

 

「今月分783万円、確りと受け取りました!残りは三億四六〇三万円になります!」

 

「……何か間違えてるんじゃないですか?残りは8億ほどあったはずですが」

 

「いえ、合っていますよ。それでは」

 

 

 

 

「…………チッ………!!やられた、か……ッ!?」

 

 

 

 


 

 

 

 

「何を企んでいる」

 

「なんの事でしょう」

 

一気にあんなに借金が減るだなんて、有り得ない。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「しらばっくれるなよ。ウチの借金、アレはどういう事だ。まさか勝手にやった癖に対価を要求する、なんてことはしないよな?」

 

脅しや釘を刺す意味で再確認する。

 

「えぇ、勿論。契約も結んでいない他者に一方的に干渉するなど有り得ませんよ」

 

「じゃあアレはなんだ。説明しろ。さもなくば命は保証できないぞ?」

 

「クックック、お手厳しい……契約の内容という物は部外者に本人の許可も得ず言いふらしていいものでは無いのですが?」

 

「部外者ならね。私のことが関係してるんだ、部外者なわけないでしょ」

 

「……それもそうですね。そもそも他者に契約内容を言うな、と口止めされたこともありませんし」

 

「早く重要な情報だけ喋れよ、私がお前を───殺さないうちに」

 

「えぇ、そうさせていただきましょう。」

 

 

 


 

 

こちらが契約内容になります。

 

 

……驚きましたか?そうですね、「臓器の提供」、「生徒としての全権の譲渡」……肉体を捨てて、人権まで捨てたようなものですから。

 

その対価が……えぇ、えぇ。今回の問題である「借金の減額」、「利子の減額」になります。

 

親切な人も居たものですね?

 

そうですね、貴女に声をかけなくなったのはもう貴女よりよっぽど良い「素材」を見つけることが出来、その方は快く契約を結んでいただけたからです。

 

貴女より、よっぽど実験に適していて……やりたい実験を好きにできる……!クックック、この二つが揃っている()()()と契約が出来るなら借金も完全に無くしても良かったのですが……カイザーの理事が納得致しませんでしたので。

 

……結局、()()()とは誰なのか?

 

貴女ならよく分かるでしょう。

 

短いとはいえ濃密な時を共に過ごし、同じ目標のために手を取り合い駆け回った。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

……信じられませんか?

 

では、こちらを。少々ショッキングなものですが……

 

えぇ、そうですね。

 

クロさんの腕です。

 

証拠?掌を見ればわかるでしょう。貴女の付けた銃創です。

 

何も違いません、あなたのやった事です。

 

「ならば何故あんな態度を取ったのか」───ですか。

 

そうですね……彼の話を要約すれば、恐らく「後味の悪い終わりを迎えて欲しくなかったから」……でしょうか?

 

腎臓、肺の片方、一部消化器、左腕、右足……これらが彼が差し出したものです。

 

自分の体を差し出して借金を返済したとしても、「優しい先輩」達は気に病むに違いない。

 

……そうですね、彼は元々私の差し向けたスパイでもなんでもありませんし、記憶喪失というのもまた事実でした。

 

……とまぁ、そこで彼は一芝居打った訳です。

 

「最低最悪の裏切り者」として。

 

オ……いえ、梔子ユメ。彼女は目が覚めましたか?……そうですか。それは何よりです。

 

……おっと、落ち着いてください。なにも意識が戻らないことを喜んだわけではありません。

 

一命を取り留めたことが非常に喜ばしかっただけです。

 

彼の態度で分からなかったでしょうが……最低限の応急処置は施されていますし、何かから攻撃を受けた後があるでしょう。

 

それが、彼の成した事ですよ。

 

聖名十文字……第3セフィラ、ビナー。

 

彼、あるいは彼女……いえ、どちらでもいいですね。「それ」は梔子ユメを執拗に追いかけ、死の淵まで追い込みました。

 

そこで、私が()にその事を伝え……彼がなんとか「それ」を打ち倒し、梔子ユメを病院に運び込もうとした所で……あなたに見つかった。

 

きっといい機会だと思ったのでしょう。貴女は先輩を救った事になる、自分は消えることが出来る……

 

それで今に至る、という訳です。ご理解頂けましたか?

 

……「彼の居場所」?

 

今更なぜそんな事を?

 

……いえ、丁度いい機会ですね。それによって発露するかもしれない恐怖も非常に気になりますし。

 

……いえ、なんでもありません。お気になさらず

 

隠し通路から入れる実験室に彼は居ます。案内しましょう、着いてきてください。

 

 

 

 

 

 

「……この悪趣味な人形、は……」

 

無機質な扉。分厚い強化アクリルの窓、機械の蠢く実験室……

 

「何をおっしゃいますか小鳥遊ホシノさん。貴女も気づいているのでしょう?」

 

「───ソレが、クロさん……シシラさんですよ」

 

………嘘だ

 

だってこんな……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……あのさ、冗談にしても趣味が悪すぎるよ……辞めてくれない?そんなのもう人ですら───「ホシノさん」

 

「よく見ておいてください。ここから先見れるものが、貴女の求めてやまなかった()()()()です」

 

黒服が、何かのスイッチを入れる。

 

「さぁ起きてくださいシシラさん、来客ですよ」

 

「……おや、失血ですか……では」

 

もう一度、機械を操作する。

 

実験室で、アームが動く。

 

その人形の。喉に。鋭い刃が突き刺さって。

 

 

 

──────私の視界は鮮血で彩られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っはぁ!はぁっ、はぁっ………あれ、黒さん?どうしました?」

 

「シシラさん宛に来客です。どうしても、というので顔を見せてあげてください。包帯も取っていいですよ。それから、事情は既に説明済みですので」

 

おかしな事を言う黒服だ……いや、いつも通りか?

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「……………おっとぉ???」

 

 

 

 

「ホシノ、さん……」

 

「っ!クロ!!クロ……ッ、クロぉ……ッ!!」

 

「……って、違う……おい『暁のホルス』、なんでこんな所に居やがる。俺は顔も見たくねぇよ、さっさと帰れ」

 

「……もう、いいの」

 

「……あ?」

 

「クロがそんな態度を取る理由も……聞きましたから……もう……そんな……そんな顔しながら……」

 

「辛そうな顔しながら罵倒しないでよ……」

 

「……………チッ……恨みますよ黒さん……」

 

「クックック、契約で縛らなかったのは貴方でしょう?」

 

「そりゃあ、そうなんすけど……ホシノさん。借金は、ちゃんと減ってましたか?」

 

「それはっ!減ってた……けど……貴方が犠牲になって……減っても……嬉しくなんて……」

 

「チックショー、だからあくまで匿名の募金にするつもりだったんですけどね……」

 

「……良いですか?聞いてくださいホシノさん」

 

「……うん」

 

「俺はもう、こっちに堕ちちゃいました。そっちはちょっと眩しすぎますわ」

 

「何勝手な……ッ!」

 

「……ベストは尽くしました。もうあとは、部外者の居ないアビドスを二人の力を合わせて存続させる。そういう美談なんです。邪魔者は要らないんですよ」

 

「そんなっ、邪魔者だなんて……ッ!」

 

「いえ、いいんですよ。事実ですから。梔子ユメと小鳥遊ホシノはたった二人で借金を返済し切り、愛する故郷を救ったのだ!……これは、そういう話です。なので、もう僕はここでお別れなんです」

 

「嫌だっ、そんな、自分勝手にっ!」

 

「そこは正直申し訳ないっす……勝手に入学して勝手に退学ですもんね……」

 

「そういう話じゃっ!!」

 

 

「──────でも、もう何もかも終わってるんです。だから、この話もここで終わりなんです」

 

「バイバイ、()()()()()。青春生活、楽しんでね?」

 

「あなたがいなきゃっ!!!」

 

 

「……黒さん、俺だけ別の場所に移せる?」

 

「えぇ。あまり体に負担をかけるのもよろしくないですからね」

 

「やだっ、クロ行かないでっ!!いなくならないでよ、そばにいてよ……っ!!!」

 

「……黒さん、お願い」

 

「えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……さて、改めて語りましょうか、「彼の秘密」を。

 

とはいえ、今は時間も余裕も無いようですし簡潔に……先程ので理解頂けたとは思いますが、彼は不死です。

 

彼は誰よりも脆く、弱い。しかし、「死ぬ度に全てが元通りになる」。

 

誰よりも死が間近にありながら、どれだけ望んでも死にたどり着けない……故に「不知死(ししらず)」、故に「シシラ」。

 

詳しいことは、また機会があれば説明致しましょう。

 

 

 

………それでは、またのお越しをお待ちしております。




雑くて、ごめんね?
誰か文才がある人が受け継いでくれても、良いんだよ?
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