――接続確立
「……というわけじゃ。あやつも漸くこの世界に根を下ろせるかのぉ」
『そうだね……もしかして、気を遣わせちゃった?』
「構わん、わしも元々あやつには以前の働きに報いるものを渡したかったからの」
「そもそも、自分の店まで与えられたと言うのに、いつまで宿で金を払い続けるつもりかと呆れておったわ」
『彼、物欲とか少ないから、買い物も調理関連以外、必要最低限だものね』
「まったくじゃ。もう少し欲をもって楽しんでる姿を見せてくれれば、わしらも手を焼かずに済むのじゃが……」
『……やっぱり、貴女も面倒見がいいんだね。なんだか友人に少し似てる気がするよ』
「一応、誉め言葉として受け取っとくかの」
「それに、お主からも興味深い話を聞かせてもらっておる。少しばかりの返礼にもなるじゃろ」
『こちらだって、魔術師としては未熟な私だけど、異なる理論の魔術式を知れて楽しいよ』
「お主の世界だと、"コードキャスト"と言うんじゃったな。魔術の発展は様々だと知れると、知への探求心が刺激されるのぉ」
『さすが研究者。すごいね』
「当然じゃ。わしとて今の地位に居るが結局のところ、いつまで経っても魔術が好きなだけじゃからの」
「――して、本題じゃ。聞きたいことがあるのじゃが、良いか?」
『なにかな』
「前から議論しとった話じゃが……今後、あやつと同じケースが発生すると、思うかの?」
『……前と同じ言葉になるけど、可能性としてはあり得ると思う』
『彼は、私が送り届けた。正確に言えば、そのように願望器に出力した結果、そちらの世界に訪れた』
『とはいえ、その縁に触発されたのか、私の意図しない部分で別の世界から、そちらへ繋がる経路が生まれた』
「その結果が、アンブロシアの変化、だったの」
『そうだね。英霊という情報は、本来そちらの世界では発生しないもの。だから間違いなく外の世界からのリンク』
『そちらの世界のアドレスが判明したことで、ルートができた、と言うのかな。一度通過した通信に類似してたから、ブロックされなかったのか……』
「待つのじゃ、お主の世界の用語に変わっていくと、意味を拾いきれなくなるぞ」
『……ごめん、つい思考が固まってしまってたね』
「お主の言いたいことの概要はわかる。つまり、一度確立したパスがあれば――」
『――再び、そちらの世界に、英霊のような存在が出現する可能性がある』
「……そうじゃのぉ。そやつが友好的な者であれば、迎え入れたいのじゃが」
『英霊は、個々の性格差が激しいからね。善き人もいれば、悪しき人もいる』
「となると、やはり対策や調査は欠かせんの」
『……迷惑をかけちゃったね』
「よせよせ、外の世界を知れるだけで、魔術師には十分すぎる価値じゃ」
「それに、お主の動機も、恋する乙女のものじゃろ、かわいいものじゃ」
『…………』
「無言で照れられると、話が進まないじゃろうに」
「そういえば、もう一つ聞きたいのじゃが」
「ベリルが前に、エミヤの過去を夢で見たと言っておったが、理由はわかるかの?」
『おそらく、あの時の治療が原因だと思う』
「治療?」
『ベリルさんが対峙した存在。その魔力を治療に利用したでしょう?』
「……ああ、あの魔力の塊か」
『英霊の魔力には、その存在の情報も含まれている。だから、治療を通じて彼の記憶の一部が残ってしまったのかもしれない』
「なるほどのぉ、そうなると、夢を見るのも一度では済まなそうじゃの」
『彼の人生は、色の濃い歩みだから、影響を受けないか少し心配だね』
「大丈夫じゃろ。あやつらは互いにいい年した男同士じゃ。そこらの小娘でもないし、友達同士で勝手に乗り越えるじゃろ」
『ふふ』
「面白いかの?」
『うん、不器用な彼に、同い年ぐらいの友人ができるなんて、少し感動しちゃった』
「まぁ確かに、お主から聞いた彼の生涯は闘いの日々じゃからの」
『その姿を見られただけで、直接会えなくても、十分だ』
「――いつか、お主のことも、どうにかしてやりたいが」
『ありがとう、遠い世界の私の友人。でも、その温かな気配りだけで、十分だよ』
「……やれやれ、お主も、あやつに似てる部分があるのぉ」
『それにしても、最初は偶然だったのに、こうしてまた話せるようになるなんてね』
「一度繋がった術式じゃ。お主の協力があれば、再現できぬ道理もあるまい」
『それ、簡単に言ってるけど、結構すごいことだからね?』
「……さて、そろそろ切り上げるかの」
『楽しかったよ。こちらでも分かったことがあったら伝えるね』
「うむ、よろしく頼むの」
『それじゃ』
「あやつのことは任せるのじゃ、悪いようにはせん」
『……うん、アーチャーのこと、お願いね』
――通信終了