片田舎の剣聖 錬鉄の英霊   作:ナチュル志保

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自分で書いたものを皆様に読んでもらえる経験はなかったので、緊張しますが嬉しいです。
ご感想や誤字修正なども、ありがとうございます。
私がエミヤSSを読みたいが為に始めた作品にはなりますが、どうか温かく見守ってくださると幸いです。


【壱章・第2話】『再会は突然に』

 

百人を超える騎士の視線を、正面から浴びることになるとは思っていなかった。

いや、覚悟はしていた。だが現実にこうして並んで立つと、全身を貫くこの重圧は……やはり慣れない。

私は目の前の騎士団――レベリオ騎士団の面々を一瞥しつつ、横で紹介を受けている男を黙って見守っていた。

 

ベリル・ガーデナント。かつて田舎の道場師範は、今日からこの国の騎士団で特別指南役として迎えられた。

そして、私はその補佐という名目でこの場に立っている。

 

そもそも、王国の騎士である彼らは、一人一人、力のある者たちが集っている。

相応しい環境で日々研鑽を積み、都市の治安維持や王国の軍力として勤めている者たちだ。

こうして直接彼らを見るだけでも、腕の立つ剣士だと分かる。

 

そんな彼らの前に、突如として現れ、騎士団長自ら特別指南役に就く者と紹介されるベリル。

いくら彼が優秀な剣士と言えど、田舎の剣術道場の話など都市には届くわけもないことで、

見た目もただの中年男性といった彼が表に立つのだから、騎士たちも困惑や疑念を感じている。

…どころか、殺気を込めた視線を送る人物もいるようだ。

 

加えて、なんと、この騎士団長殿は、あろうことかベリル紹介の際に、

自身と比にならぬほど実力者、とまで皆の前ではっきり述べている。事前説明もなしに、これは恐ろしい。

見てみろ、ベリルが完全に委縮してしまっている。

 

本人の性格もあり可哀想なことになっているが、助けるつもりもない。

ここで周囲がフォローでもしようものなら、彼への疑いが増してしまうだろう。

なにより…この流れだと、私に対する説明も、恐らく碌なものではないだろう

 

「続いて、こちらの方、エミヤ氏にはガーデナント氏の補佐として皆の指南の一役を担っていただく」

 

ここまでの説明でいい。止まってくれ。

 

「エミヤ氏は、私の剣の師であるガーデナント氏と同じ技量を持つお方だ。

皆、自身より遥か上である2名の実力者に稽古をつけていただく幸運に感謝し、進んで指導を願い出よ」

 

…ここまで煽りを含めた紹介をされるのであれば、せめて事前に伝えてほしいものだ。

 

「……エミヤだ。

剣術に限らず、多少の戦技や戦術も心得ているが、あくまで彼の補助役だ。必要とあれば助力させてもらう。よろしく頼む」

 

声を張る気はなかった。無理に威圧する必要もない。ただ必要な情報だけを、平坦に。

私の言葉に対する反応はまばらだった。こちらにも好奇、懐疑、あるいは敵意。まあ、当然の反応だろう。

いきなり現れた異国の男が、騎士団に帯同しているというだけで、警戒されるには十分だ。

 

ただ、ベリルの時と異なることは、私の振る舞いに戦士であることを感じた者たちもいるため、疑惑の眼はやや少ない。

元より、受肉していても英霊であり一級の戦士だ。

いくら優秀な騎士団といっても、過去対峙してきた実力者たちとは比べるまでもない。

なので、後はベリルに向けられた疑惑を、どこかで解消できればいいのだが、

そこは彼の実力を見てもらう機会が間違いなくあるはずなので、今後に期待しよう。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

その後のやり取りは、淡々と進んだ。アリューシアが式を締めると、広場に集まった騎士たちは散会し始めた。

 

「先生、参りましょう」

 

「ああ」

 

彼らに合わせて歩き出そうとしたその時、別の騎士の声が飛び込んできた。

 

「団長、待ってくださいっす!」

 

小柄な少女――いや、少女と言うには年齢も場違いかもしれないが、見た目も雰囲気も若い。

子犬のような印象を受けるその騎士は、ベリルの方を見て駆け寄ってきた。

 

「先生!お久しぶりっす!」

 

「クルニか!立派になったな。夢が叶って何よりだ」

 

「い、いえっす!まだまだっすから!」

 

聞いたところ、ベリルの道場の門下生だったようだ。

しかしながら、アリューシアといい、クルニといい、弟子たちが役職に就くほど大成しているのだから、

やはりベリルの教えの技術は非常に高いのだろう。

日ごろから近くで見ていたが、こうした出会いがあるとあらためて実感する。

 

「それと、隣にいる方がエミヤさんですよね。クルニです!よろしくお願いしますっす!」

 

その明るさに、エミヤは微笑を浮かべた。

 

「エミヤだ。私も一時的だがベリルの道場で協力していた身だ。指導に自信があるわけではないが、微力ながら務めさせていただこう」

 

「……クルニ。我々も暇ではないのです。業務に戻りなさい」

 

ちょうど紹介が落ち着いたタイミングで、アリューシアが会話を切る。

まあ当然か。彼女も忙しい身だ。再会劇に長く付き合っている暇はないだろう。

 

と思ったが、町の案内を進言するクルニに対して、食い気味で止めるアリューシアを見ると、

どうやら理由はそれだけではないようだ。

これは、私もタイミングを見て2人から離れるか。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

その後、ベリル、アリューシアと共に騎士団庁舎を出てしばらく、

馬車の停留所近くの区画に移った後、待ち合わせ場所を決めて私は二人と分かれることにした。

多忙の中、久しぶりに会えた師弟の時間なのだ。

ベリルにその気がなくても、彼女は二人の時間を大切にしたいだろう。

 

一人町中を歩いては、都市の菓子類や食材を品定めしていく。

さすが王国の首都、流通が充実しているからか、村では見かけないものも多い。

記憶にもあるモノも多いが、どのような材料で再現しているのか、

久しぶりの料理に関するアップデートに夢中になったエミヤは、気付けば店主と会話したりと、一人の時間を堪能していた。

 

だからか、後ろからの声掛けがあるまで、気配に気づけなかった。

 

 

 

「貴方は、エミヤ?」

 

背後からの声に、思わず目を細める。

振り返れば、鋭い赤の眼光を放つ長身の女性――肩まで伸びた赤髪、灼熱を思わせる気迫。腰には二本の剣。

そして。

 

――ブラックランク。その証である漆黒のギルドプレートが、彼女の胸元で微かに揺れていた。

 

「……スレナ・リサンデラ」

 

思い返すのは、ビデン村を訪れる前の出来事。

大蛇の群れ。毒に倒れた仲間を守るため、最後まで剣を振るっていた冒険者。

 

「まさか貴方がバルトレーンにいるとは。あの時、助けてくれた貴方に改めて礼をしたいと思ってたんだ」

 

「それは不要な気遣いだ。とはいえ、その姿を見るに、最上位ランクの冒険者は健在のようだ」

 

「当然だ。私とて冒険者である以上、毎回あの時のような窮地には陥らないさ」

 

お互い名前を交わす程度で分かれた女性との予期せぬ再会。

バルトレーンには冒険者ギルドもあると聞く。こうして都市で過ごしていれば、会うのも時間の問題だったのだろう。

…まさか、都市を訪れた初日に再会するとは思っていなかったが。

 

「今日はベリル先生にも会えたし、運のいい日だ」

 

彼女のつぶやきに、思いかげない人物の名前が出てきた。

 

「その様子、君はベリルを知っているのか」

 

「!?エミヤも先生を知っているのか?」

 

聞いたところ、スレナも過去ベリルの元で暮らしていた時期があったようだ。

世界は狭いと言うべきか、この調子では、今後もベリルの弟子たちと出逢うのかもしれないな。

 

スレナからベリルとの過去を簡単に聞いたエミヤは、続けて自分がベリルの家で居候していたこと明かすと

スレナも全く予想しなかったようで驚いていた。

 

「なるほど、この一年、貴方のような実力者が活動している話が出ていなかったのは、そうした理由だったとは」

 

「おかげさまで、穏やかに過ごさせてもらったよ。」

 

「その様子なら、本当に充実した時間を過ごしていたのだろうな。

…もう少し再会の縁を深めたいが、非常に残念なことにギルドから呼ばれている。

しばらくは都市に滞在するから、エミヤも時間がある時にでも、ギルドに顔を出してほしい」

 

「分かった。約束は出来ないが覚えておこう」

 

そうエミヤが返すと、スレナは充分だと言い慌ただしく離れていった。

 

どうやら都市での過ごし方は、思っていたよりも賑やかになるかもしれないな。

 

そう予感したエミヤは、ガーデナント家への土産と日持ちする食材を幾つか購入し、

ベリルとの待ち合わせ場所へ歩き出した。

 

 

 

もっとも、この時のエミヤも、そしてベリルも、村から定期的に通う程度の頻度と聞いていた為、

後に都市で暮らすことになるとは全く考えていなかった。

 




文を書く、物語を書くのも不慣れなので、キャラクターの口調や会話や表現や、気づかなかった難しさを感じます。
世に作品を出してる皆様、本当に凄いですね。
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