機動戦士ガンダム 0087 Stardust melody   作:k-suke

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第2話 星屑のような奴ら

サイド7 コロニー グリーンノア1

軍警 取調室

 

 

連邦のパイロットスーツらしきものを着ている金髪の男が、後手で椅子に拘束されていた。

 

何発か殴られたようで顔も少し赤く腫れ上がっていた。

 

 

「で、もう一度聞こうか。 お前さん名前は? あの青いMSはなんなんだ」

 

ドスの効いた声で軍警が男を取り調べていたが、当の男は傲岸不遜な態度で不貞腐れるように返した。

 

 

「だから!!  俺は地球連邦軍特務部隊 ジェリド=メサ少尉だ。新型MSのテスト中にミスって迷い込んだだけだったんだ。 何回おんなじこと言わせんだよ、これだからスペースノイドは…」

 

そこまで怒鳴った瞬間、再び軍警の拳が飛んできた。

 

 

「ああ、何度も何度もそう言うもんだから、こっちも連邦に問い合わせたよ。で、これが返事だ」

 

痛みに顔を顰め、口から血を吐き出しつつも希望に満ちたような表情したジェリドだったが、見せられたメールの写しを見せられてすぐに青くなった。

 

「わかるか? ジェリド=メサという名前の連邦兵は存在しない。現在サイド7宙域にて新型MSのテストなどやっていないとのことだ。 じゃあお前はどこの誰なんだろうなぁ」

 

「う、嘘だ!! もっとちゃんと問い合わせろ!! 上だ、バスク=オム少佐に、いやジャミトフ=ハイマン大佐に連絡を!!」

 

必死にすがるように懇願したジェリドだったが、当の軍警からさらに黙れと言わんばかりに殴られた。

 

 

「往生際が悪いぞ!! こっちはバイトが一人お前に殺されかけたんだ!! 正直に吐くまで当分は出られないと思え!!」

 

(ヘマしたツケがこれか。素直に始末書で我慢してりゃよかったよ)

 

未承認部隊所属の上、極秘新型MSの民間への流出、もみ消しのための殺人未遂。

ことここに至っては、ジェリドも庇いきれないと判断した連邦が自分を見捨てたのだということは薄々理解しており、拘束されたまま力なくうなだれた。

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

音楽ショップ OLD CENTURY

 

 

「おいフィーナ、ハイスクールの友達とかさバイト仲間とかうちに来ないのか。 MS乗ってんだしMAVとかいるだろ」

 

叔父の経営しているうらぶれたこの音楽ショップ兼私の自宅にてパタパタと楽器にはたきをかけている最中に、突然話しかけられた。

 

 

「…はぁ、あのね叔父さん。何回聞いてもおんなじだってば、別に友達もいないし、そもそもバイト先だって仕事の付き合いなだけで、MAVなんて組んだことほとんどないし」

 

自慢じゃないがこの叔父に引き取られて以来、この話題は鉄板ネタである。

 

だが、ここの店に友達が訪れたことは一度もないし、そもそもそう呼べる人がいない。

 

はっきり言ってこの話題に返事をするのも億劫なのだが、バイト先に逃げられない以上仕方がない。

 

なんでも、先日の青いMSとの戦闘で私の使っているザクは修理に時間がかかると言われてしまった。

 

まあ実弾を何発も喰らってボコボコになり、挙句片腕を吹っ飛ばされたのだから仕方がない。

 

他のザクに乗ろうにも、一応バイト先が軍警でいざという時の戦闘を想定していることだけあって、万一に備えてバイトの使うザクは個人の癖に合わせて微調整される。

 

だもんで修理が終わるまでは空いているMSがないのでシフトに入れないのである。

 

 

 

いやまぁ、正確には一つある。

 

その件の青いMSである。

 

 

整備の人がなんかこれガンダムっぽいなとか言っていたそれだけが唯一の空いてるMSであったが、いくらなんでも得体の知れないMSに命を預けるつもりはない。

 

(ガンダムねぇ。 ジオンを勝利に導いた英雄っていう連邦の開発した赤いMS。まぁそれのせいで父親が死んだのもあるけど、連邦のMSなんてやっぱり不気味だよ。安全第一)

 

 

 

「まあまあ、そう言うなってば。 客層を増やす営業みたいなもんだ。声をかけてくれよ」

 

軽い口調で笑いながら語る叔父だったが、客足を増やす以上に切実な意味があった。

 

姪であるフィーナだが、引き取ってからいやその以前から友達と遊ぶということをしていた試しがない。部屋にこもって音楽を聴いているだけであり、最初は父親がいなくなって塞ぎ込んでいるのかとも思っていたが、どうも違ったらしい。

 

あまりにも交友関係の少ない姪を気にしていたので、バイトを始めると聞いた時には少し嬉しがったが、実質的にはあまり変わっていない。

 

当然ながら、先日MS戦をやる羽目になり死にかけたと聞いた際には真っ青になったものだが。

ただ、そのバイト代のお陰でなんとかかんとかやっていけている感はあるのでこれまた悩ましいものでもあった。

 

 

そんな中、カランカランと店の扉が開く音がしたので振り向くと珍しい常連客が来ていた。

 

 

 

(ん? カミュさん。どうしたのかな)

 

店に入ってきて辺りを見回していたカミュさんだったが、店内で一つ深呼吸すると意を決したように掃除をしている私に近づいてきて、綺麗にラッピングされた包みを差し出してきた。

 

「あ、あの!! このアルバム、貸してくれてありがとうございました!!  そ、それで感想とか言いたいんですけど…」

 

そこで単にCDを返しに来て、感想を言ってくれるのだと思っていた私が甘かった。

 

 

「その… 連絡先教えてもらえませんかっ!!」

 

見るからに勇気を振り絞ったかのようなセリフだったが、この不意打ちに私はパニックになった。

 

今まで生きてきて、連絡先を友達と交換したことがない。

 

バイトだって業務連絡だけだし、むしろそれ以外でスマホが鳴ったことがない。

 

 

「えっ、いや」

 

「えっ、嫌なんですか」

 

ちょっとショックを受けたようなカミュさんを見て慌てて取り繕うように答えた。

 

「あっ、構わないんですけど、仕事中なので今スマホを持って…」

 

 

なんとか無理のない返しができたと思っていたら、カミュさんはサインペンを取り出して私の手のひらに番号を書き始めた。

 

「メモだと無くされたり、忘れられたりしたら、嫌なので…」

 

頬を赤らめながらのその言葉に、私は後で連絡すると絞り出すように返すしかなかった。

 

 

 

かくして、一部始終を見ていた叔父の、姪の交友関係についての心配事が無駄に増えたのであった。

 

 

 

 

軍警 MS格納庫

 

 

軍警の技術者がMSハンガーに置かれた青いMSのコックピットを解放して内部データを黙々と調べていた。

 

「この青いガンダム… と言っていいのかわからんが、やっぱり連邦の指示で作った奴だな」

 

「そうですねぇ。 コードネームはスターダスト。 ただまぁ妙な装置やシステムはないみたいなのでそれだけはホッとしましたよ。 しばらくここに置いておいても問題はなさそうですね、ただ連邦の開発ってことはやっぱコイツ、アナハイム製ですよね」

 

「そりゃ今どき連邦がMS発注するといえばあそこしかないだろ。べったり仲良しみたいだし。さすが連邦、汚い奴らだよ」

 

 

「ですよね。このMSのパイロットも気の毒なもんですよ、命令されてやっただけだってのにちょっとヘマしただけでMAVからも連邦からも見捨てられて」

 

おそらくは軽キャノンに代わる量産機の試作機だったのだろうが、その計画は今回の件でほぼパァであろう。いろいろな意味で縁起の悪い名前をつけられたMSに同情しつつデータ解析用の端末を閉じた。

 

 「で、こいつどうします? いわくつきですけど死蔵するのも邪魔ですし、捨てるわけにもいかないし」

 

そのセリフに少し考えると、やっぱりというように返した。

 

「まぁ、ジオニックに取りに来てもらうか持っていくしかあるまい。本格的なリバースエンジニアリングはあっちに任せるとして、こっちは簡単なデータだけでも取っとくか」

 

「…いや、データ収集ったってある程度乗り回す必要があるわけで、それは誰が…」

 

なんとなく答えがわかっておりその答えをききたくないかのような質問に、仕方ないというような声がでた。

 

 

「あんまりデータを外に出すわけにもいかないし、暇そうである程度腕のある奴なんてそうそうない。 最終的には彼女に頼むことになるだろうさ」

 

汚い大人はこっちも同じかというように、二人の技術者は大きくため息をついた。

 

 

「誰ですかね。彼女をニュータイプだなんて言ったやつは」

 

「そんなもん御伽噺の褒め言葉なのになぁ。気の毒だよほんとに」

 

 

 

「でも実際あの子のザク、相当ピーキーな調整してるんでしょ。だから修理にも時間かかるって」

 

「MS動かす腕がいいだけだよ。どこにでもいるもんだ天才ってのは」

 

 

 

音楽ショップ OLD CENTURY

フィーナ自室

 

 

 

ショップの手伝い仕事を終えて、自室に戻った私だが手のひらに書かれた電話番号を見て途方に暮れていた。

 

(どうすんのこれ? 電話かける? 無視する? いやそれ以前にここまでグイグイくるのってこっわ!!)

 

 

考えが全くまとまらず、あっちの世界に行ってしまおうかとヘッドホンを取り出した時、ドアがノックされた。

 

「おい、飯に行くぞ」

 

この叔父の呼びかけにとりあえずの現実逃避ができるとホッとした。

 

 

 

エレカに乗って食事に行く中、叔父が何を食べるかなんて話しかけてきていたようだったが、どこか私は上の空だった。

 

そんな折、唐突に変わった話題に私は心臓が飛び出しかけた。

 

「あの女の子に連絡しないのか? 友達だろ?」

 

 

「無理無理無理!! 絶対無理!! てか見てたの!?」

 

「店内でやってりゃわかるってば。 それよりなんで無理だ? スマホ壊れてるわけでもないだろ」

 

 

 

「…だって」

 

「だって?」

 

「話すこと何にもないし…」

 

俯きながらボソボソと答えた私だが、それよりもっと大きな理由があった。

 

(怖いよ、実際話してみて失敗したら? つまんない奴だってがっかりされたら? 無理に進んだ先で失敗したくないよ)

 

自分が星屑みたいに小さくて何もないやつなのは自分が一番よく知っている。

自分が他人から好かれることもないということも。

 

 

 

「ばか、うじうじ悩むな。 仮にダメでも、全部がダメになるわけじゃない。お前にはお前の世界がちゃんと残るだろ」

 

叔父の叱責に、確かにと改めて思った。

 

私の耳から聞こえる私だけの世界は、嬉しかった時に気分をもっと盛り上げ、失敗して落ち込んだ時に慰めてくれた。

 

カミュさんもずっと同じように自分だけの世界を聞いて過ごしていたと言っていた。

 

 

 

エレカから降りると、一度深呼吸。

 

スマホで一文字ずつ確かめるように番号を入力し、打つたびに止めるべきかとも考えた。

 

(今ここで電話しなければ、このややこしい関係を清算できる。 でも繋がってみたい世界もある)

 

番号を入力し終えて、震えながら通話ボタンを押した私だったが、まだ勇気が出ききらなかった。

 

コール音が鳴る中、出て、いや出ないでという言葉がぐるぐる回っていた。

 

 

 

カミュ 自室

 

 

推しに電話番号を渡してしまったと言う事実に、スマホと睨めっこしながらもカミュの心臓は爆発しそうになっていた。

 

(かかってきたらなんて言う? いやそれ以前にかかって来なかったら? えっと、かかってきたらアルバムのお礼? いやまず自己紹介? そういえば名前も言ってないし私も知らない)

 

そんなこんなでソワソワしつつ過ごしていると、ついに知らない番号から着信した。

 

 

(落ち着け、深呼吸して。 よし!!)

 

気合を入れて通話ボタンをタップした。

 

『もしも…』

 

「はい!!!! カミュ=メリィです!!!!」

 

 

気合が入りすぎたのか、相手を確かめることもなく言葉を遮るかのように大声で名前を叫んでしまった。

 

(いや何やってんだ私は!!)

 

少し冷静になったことで通話相手の話を聞く精神的余裕ができたカミュは、ここで相手が目当ての人物であることを確認した。

 

(よし、大丈夫。あのおにーさんだ。 まずはお礼を…)

 

「で、電話してくれて、ありがとごじゃいまヒょ!!」

 

 

かなりの大声になりつつ、おまけに噛んでしまったことで、さらにパニックになりドタバタし始めた。

 

(なんでここで噛むんだ私は!?)

 

『あ、いえこちらこそ。 それよりアルバムの感想を…』

 

その言葉に我にかえったカミュは感想を言おうとしたのだが、あまりにもドタバタとやっていたことで、母親が部屋に怒鳴り込んできてしまったことで、それも中断してしまった。

 

 

(なんでこんなに… うぅ、カッコ悪い… 消えちゃいたい)

 

 

涙目になり始めたカミュだったが、耳元からの初めての世界が訪れた。

 

「カミュさんって、あなたもお母さんも元気な人なんですね」

 

 

その言葉に心が一気に軽くなったカミュは、ひとまず謝罪しまた改めて電話するということで通話を終えた。

 

 

まぁここで通話が終わったことは、かなり無理をしていた通話相手にとっても都合が良かったようだが。

 

 

 

「は〜あ… 腰抜けそう…」

 

実際道端にへたり込んでしまった私だったが、MSに初めて乗った時以上に汗はびっしょりになっており、すでに喉もカラカラだった。

 

 

「これならこないだの戦いの方がまだ緊張しなかったなぁ… こんな怖い思いしたの初めて」

 

完全にへたりつつ、汗を拭っていた私におじさんは優しく声をかけてくれた。

 

「ったく大丈夫か。ほら、飯に行くぞ」

 

ぐったりしつつもその言葉に頷くと、スマホが再びけたたましく鳴った。

 

 

「えっ、うそ!? もう折り返し!?」

 

さっきの今でもう続けるのかと青くなった私だが、連絡先を見て別の意味で青くなった。

 

 

「あ、はい、お世話になってます。 はい、大丈夫ですが… えっ、今から? そりゃシフトはないですけど… はい、はい、わかりました…」

 

 

通話を切ると、がっくりと肩を落として叔父さんに頼み込んだ。

 

「ごめん、バイト先まで送って。あとコンビニでサンドイッチとジュースでも」

 

 

その言葉に叔父は全てを察したようで、何も言わずにエレカを回してくれた。

 

 

 

 

軍警 MS格納庫

 

 

 

「で、これに私が乗るんですか?」

 

先日私が行動不能にした青いMSを前に力なく尋ねると、力のない返事が返ってきた。

 

「ああ、ちょっと極秘にテストしたいんでな。 お前さん以外に知られたくないし、暇そうなのがお前さんしかいないんだよ」

 

 

がっくりと肩を落としつつも、これも商売かと気持ちを切り替えた。

 

「まぁ、バイト代に特別手当がつくんならいいですけど。 反応とか加速力とかのチェックだけですよね」

 

「そうか助かるよ。まぁ、気休めかもしれんがお前さんなら上手くやれるよ。ここの連中の中じゃ一番腕がいいんだ」

 

 

そのお世辞のような気休めのようなセリフに励まされつつも、私は青いMSに乗り込んだ。

 

 

 

コックピットにてコンソールを弄りながら、このMSについてざざっと把握しつつ通路を進んでいった。

 

「ふんふん。背中のこれがビームサーベルで、頭部のカメラは肩のバルカン砲の照準器も兼ねてるのか。 ザクの6,7倍はエネルギーゲインがあるなぁ。 まぁ7年も8年も前の機体と比べればね」

 

パワーはあるようだが、オートバランサーを始めとした操縦の勝手も大体ザクと同じぐらいだなと感じ、実際に戦うわけでもないし、なんとかはなるかと思い始めていた。

 

 

 

 

 

『データに残らないように一瞬だけエアロックを開く。すぐに外に出たらコロニーの巡回コースを3周してくれ。 今日の所はそのデータだけ取りたい』

 

エアロックの前にいつものように立つとそんな通信が入った。

 

いつもとはちょっと違った出発に加えて、先の電話のせいでちょっとテンションが上がっていた私は、ちょっと気合を入れて叫んだ。

 

「了解!! バイトNo. A-03145。 フィーナ=ビーダル、スターダストガンダム出ます!!」

 

吸い出されるような格好となるいつもと違って、新しい一歩を踏み出すように自分から私は宇宙空間へと飛び出していった。




スターダストガンダムはRX-178をジークアクス風味にした上で青く塗った姿でイメージしてください。
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