機動戦士ガンダム 0087 Stardust melody   作:k-suke

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ジークアクスの世界ではあのキャラはこうなっていたのではと思ったりします。


第3話 ズレる世界

サイド3 ジオン公国 ズム・シティ

 

 

 

独立戦争の立役者にして、スペースノイドの覇者ともいうべきジオン公国。

 

だからと言って、万事うまくいっているというわけではない。

 

戦後に独立した各サイドの戦後復興や安全保障等、財政は火の車であり、そもそも独立当初から戦争で負けていたほうが連邦の庇護を受けられて生活が楽だったのでは、という意見も普通に存在している。

 

決して華々しいとはいえず、どこか重苦しい空気があった。

 

そんなジオン公国にて、もっとも重苦しい顔をしているのはおそらく彼女であろう。

 

 

 

 

(ふぅ… 今更ながら向いている立場じゃないわね。 そもそも敵だった連邦軍の一兵士だった人間をトップに据えるだなんて、非常識にもほどがあるわ)

 

軍の過半数が自分を支持しているおかげで、望まないものの保てている立場。

 

父によく仕え、今も自分を慕って側近として支えてくれているものもいるがやはりそこは軍人。文官としての政治は難しく四苦八苦しているらしい。

 

有能な文官もいるにはいるが、そもそもがザビ家の独裁体制だった中ではごく少数。

その中で自分を本気で信用してくれているものはといえばさらに限られてしまう。

 

 

おまけにザビ家のシンパも今なお普通に存在しており、マ=クベのようにちくちく嫌味を言ってくるぐらいは構わないが、資源衛星であるアクシズと渡りをつけて最後のザビを筆頭に据えようと画策しているものも中にはいると聞く。

 

(ジオンに兵なしとは言われていたものだけど、まともな文官も数少ないとはね。あんな子供をトップにするなんてことをすれば国がどうなるかもわからないとは)

 

そんな国家のトップとして、結局大半の政務を自分が行わねばならず、ただの神輿だったはずの政務経験0の自分が責を背負わなければならない現状には辟易していた。

 

 

相談できる身内でもいればと思うも、すぐにその考えを振り払った。

 

カリスマ性や政治の才能は間違いなく自分より上だろうが、一人の人間としてあんな鬼子に世界の一端を預けるほど無責任にはなれない。

 

地球でひっそりと過ごしているらしいが、そのまま表舞台に立たないでいてくれることが兄としての最大の政治的協力だと感じていた。

 

 

そこまで考えをめぐらしたアルテイシアは、結局は自分がやらなければならないと判断し、雑巾がけでもやるかのように無表情のまま、再び政務に取り組みだした。

 

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

音楽ショップ OLD CENTURY フィーナ自室

 

 

「うっぷ… 気分悪… あのスターダストってやつ加速力ありすぎ… 一晩寝たのにまだ世界が回ってる感じがする…」

 

 

MSのデータ収集という名目で、スターダストガンダムを乗り回すことになった私だが、軽いテストだけだったはずの仕事なのに、急加速やらブレーキやら曲芸飛行まがいのことを散々させられた。

 

学生という身分が幸いしてか深夜時間帯前に解放されたが、その分かなりの詰め込みだった気がした。

 

「バイト代は色つけてくれるみたいだけど、なんで軍警の方でやってくれないのかなぁ…」

 

 

そんな状態でもサボるという発想になれない自分に半ば嫌気が差しながら、キラキラの世界に入って気を紛らせつつ学校へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ハイスクール 教室

 

 

 

「休み前の掃除ってさ、だるいよねぇ」

 

「気分アガらなさすぎ…」

 

「もう帰りたい… いいじゃんこんなことしなくても」

 

 

週末の掃除時間にクラスメイトがだべっているのを聞き、実にもっともだと頷いていた。

 

最悪の気分の中、どうにか一日を過ごし終えた私にとってもこの作業は苦行だったからだ。

 

 

(はぁ、改めて考えると担任含めて気分悪そうだねって声かけてくれた人いなかったなぁ。私って友達いないんだな〜。 アッハッハッハッ!! 涙出そう)

 

いかに自分がくだらない人間なのかを改めて思い知らされていると、急に校内放送が流れてきた。

 

 

『今日は週末前の掃除をありがとうございます。 生徒の皆さんには少しでも気分良く作業に取り組んでいただけるよう、元気の出る曲を流します』

 

校長何やってんだという感想が飛び交う中、確かに元気の出る曲が流れてきた。

 

 

「いや、何この曲聞いたことないし」

 

「かなり古い曲じゃない? これ」

 

「校長の年ならって感じだけど、喜ぶ奴がいるか?」

 

 

世間一般の感想としては至極尤もな渋い曲だったが、私の趣味には合ういい曲だった。

 

軽く体を揺すりリズムに乗ることで、気分も少し良くなってきたなと思った瞬間だった。

 

 

「ねぇ!!」

 

 

突如としてカミュさんが私の肩を掴んできたのだった。

 

「これ、いい曲だよね!!」

 

 

「えっ、えっと、えと、な、なにが…」

 

突然のことにどう返していいかわからずにいると、ますますカミュさんが詰め寄ってきた。

 

 

「この曲!! 今体揺すってさ、完全に乗ってたじゃん!!」

 

「いや、ちょっ、ちょっとだけ」

 

「ほらほらほら!!」

 

 

その追求にどう返していいかわからずアタフタしていると担任が教室に入ってきた。

 

「ほらなにやってる、掃除掃除」

 

この一言で、どうにか逃げられたのだった。

 

 

 

 

 

音楽ショップ OLD CENTURY

 

 

掃除時間に流れてきた曲のおかげで、多少気分はマシになったものの、根本的な体調不良は如何ともし難く、半ばふらつきながら店に帰り着いていた。

 

「はぁ〜… ちょっと今日は仕事無理だ。 どうせお客なんてそうそう来ないし、部屋で休んでよ…」

 

 

とてもじゃないが手伝いをする気分になれない。こうなった原因のバイト代でなんとか帳消しにしてもらって… などと考えているとスマホが鳴った。

 

 

「またぁ? ちょっと勘弁してよ。昨日の今日だよ…」

 

またバイトかと思ってスマホを取り出すとカミュさんからのメッセージだった。

 

 

「なにこれ? URLだけ?」

 

不思議に思いつつもタップすると、そこにはプレイリストがあった。

 

 

「あれ… この曲…」

 

さっき学校で聴いた曲を含めて、自分の趣味に合致した曲ばかりのリストだった。

 

 

「カミュさん…」

 

 

当然ながら、これが「私」宛でなく「おにーさん」宛なのは嫌というほどわかっている。

それでも、という気持ちはやっぱりあるものなのである。

 

自分の頬を両手で叩いて気合を入れると、私は仕事着に着替えるのだった。

 

 

 

 

ちなみに週明けにお返しのプレイリストをカミュさんに送ってみた。

 

どんな顔するか見たかったこともあり、ちょっとした悪戯で授業中に送ってやったら、興奮したカミュさんが先生に叱られていた。

 

 

 

 

 

 

サイド7 グリーンノア1 政務室

 

 

 

「で、今回の件についての話がこれかね。 連邦の一部隊とはいえ一国家たるサイドに要求する内容としては無礼にも程があると思うがね」

 

 

応接室にて低い声で問いかけてくる市長を前に、初めて自分が持参した書面内容を見た女性は返す言葉もなかった。

 

「い、いえ、こ、これは…  決して悪意があるわけでは…」

 

隙なくスーツを着込んでいた女性だが、冷や汗を流しつつも必死に取り繕っていた。

 

 

「悪意がない、ねぇ。 コロニーに対する宣戦布告にも等しい書面を、極秘会談とはいえ連邦軍の人間が持参するということがどういう意味かわからないかね」

 

極秘の任務とはいえ、堂々とした態度で連邦のエージェントとして乗り込んできたものの、現実はこれである。

 

なにも言い返せず黙り込んでしまった女性を前に、市長はゆっくりと話しかけた。

 

 

「未だジオンと連邦は休戦状態だ。戦力確保やMSの開発を進めるのはわかる。 まともな宇宙拠点がないから連邦が極秘で宇宙に上がってMSのテストをするのもな。 そちら側の事情はよく理解している」

 

改めて連邦の窮状を告げられた女性は悔しそうに唇を噛むしかなかった。

 

 

 

「だからと言って、宙域に侵入した警告を無視して、挙句突然コロニー側のMSに攻撃を仕掛けてくるのはいただけない。本来ならば誠意ある謝罪と共にMSとパイロットを引き取らせてくれとくるのが筋だと思うのだがね」

 

明らかに怒気を含んだ物言いは続いた。

 

 

「それを謝罪どころか、こちらが海賊まがいにMS強奪をしたと言いがかりをつけて、返還しないならコロニーに攻撃を加えるなどという内容を軍名義の親書で出すかね。そもそも連邦は一度あんなMSは知らないと公式回答しているね。それでこれでは非常識と言われても仕方がないよ」

 

ここまで来るともう怒りを通り越してあきれたようになっていた。

 

 

 

「わかっていると思うが交戦したコロニーの軍警MSには戦闘記録が残っている。全チャンネル通信で会話もしてくれたから通信記録はあちこちにね。以前の回答は保管しているし、この親書もデータ化して保管してあるからね、次は相応の対応をしてくれることを望むよ」

 

その回答にがっくりと肩を落としそうになるも、最後の矜持で必死に持ちこたえた女性は返された親書を受け取り丁寧な礼とともに引き上げていった。

 

 

エレカで去っていく女性の姿を政務室の窓から見ながら市長は小さくため息をついた。

 

「エマ=シーン少尉か。彼女自身は実直な人物のようだったし、秘書などには向いてそうな人物だっただけに惜しいな」

 

 

 

その言葉に、現行の市長秘書も特に動揺することなくうなずいた。

 

「ええ、連邦にいるのが惜しいですな。 しかし連邦にとって今のサイド群はどういう立ち位置なんでしょうかね。 休戦中とはいえ一独立国家に対する対応ではないですよ」

 

「むろん、まだ戦争中という意識に加えて、負けていないという意識のある者も一部にはいるということだろう。 だからこそそういう連中は、コロニーは連邦の指示に従って当然などという意識が未だむき出しになっている。 今でこれなら、もしジオンが負けていたらと思うとぞっとするよ」

 

肩をすくめた後、ゆっくりと椅子に座ると市長は静かにごちた。

 

 

「とはいえジオン内部も、ザビ家が一掃されたとはいえまだごたついている。 この状況、連邦としてはもしかして、もしかするとだが…」

 

市長はそれ以上何も言わなかったが、秘書も何を言いたいのかは理解している。

この火種が多い世界、暴発しないことを祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

最近は実に気分がいい。

 

無茶な仕事に応えたこともあって、バイト代は妙に弾んでもらえたというのもある。

 

 

だがそれよりなによりこの新しいキラキラだ。

 

カミュさんがおにーさん宛に作ってくれたプレイリストに私は完全にハマっており、暇さえあればあっちの世界に行っていた。

 

 

あっちに行きっぱなしになっている私がさすがに心配になったのか、叔父さんが何があったか聞くほどになっていた。

 

で、このプレイリストを見せるとどこのおっさんが作ったものだとすごい形相で詰め寄ってきた。

 

 

まぁ私の好みとはいえ、めちゃくちゃ渋い曲ばかりであり普通ならそう感じるのもわかる。

 

だからこないだのあの子からもらったものだと言うと混乱したらしく、さらにおかしな顔になっていたが。

 

 

 

ただあのテスト以来、ザクの修理が終わっていないこともあってバイトのシフトが2週間以上入っていなかった。

 

このプレイリストを宇宙で聴けたらと思うと、ちょっとゾクゾクしており、ほんとにあっちに行ったっきりになるかもとゾクゾクしてもいた。

 

そんなこんなで、次のシフトをひそかに心待ちにしていたりする今日この頃であった。

 

 

 

 

 

 

話はフィーナがスターダストガンダムのテストをし終えた翌日に遡る。

 

 

 

 

 

軍警 MS格納庫

 

 

「よく来てくださいました。ジオニックの方々とお会いできることを心待ちにしていました」

 

軍警の技術者が心底待っていたというようにウキウキしつつ、丁寧に礼を尽くしてジオニックの技術者を出迎えていた。

 

 

「ニナ=ガトーです。 丁寧なお出迎えありがとうございます」

 

「いえいえ、ジオニックの技術を間近で見られるだけでなく、こんな美しい方が来られるとは思いませんでしたよ」

 

 

「こちらこそ、まさかスペースノイドの英雄とも言えるガンダムかもしれない機体と関われるなんて感無量です。連絡を受けた時にはもうびっくりしましたよ」

 

その言葉通り、ニナはずっと待ち侘びていたような恋人を見つめるような目で、ハンガーに佇んでいるスターダストガンダムを見上げており、心なしか頬も上気していた。

 

 

「では早速、解析にかからせていただきます。 どんな技術が使われているか楽しみですわ」

 

本来ならば以前のガンダム同様、ジオニックの本社まで輸送した上でリバースエンジニアリングを行いたいのだが、戦時中でもない現状このスターダストガンダムの立場が微妙なこともあって、技術協力の名目でジオニックの人間がサイド7までやってきていたのだ。

 

 

 

「ええ、簡単なテストをしましたが、加速力や運動性は目を見張る素晴らしいものでした。他にどんな秘密があるのか」

 

なにせ、当時のガンダムは連邦の最新鋭試作機。 それを鹵獲した事でジオンのMS技術は大きく向上した経緯がある。

 

そしてこの機体も現在の連邦が極秘に開発していた機体、しかもガンダムである。

 

妙なシステムこそないものの、さぞかし素晴らしい秘密があると皆期待に胸を膨らませており、特にニナは上手くすればジオンのMSパイロットである夫の手助けになると大張り切りで仕事に打ち込んだ結果ハイペースで解析作業は進んでいった。

 

 

 

 

 

 

数日後、スターダストガンダムの解析を終えた面々は一様に渋い顔をしていた。

 

 

「確かにこのバックパックスラスターなら加速性能はいいでしょう。フレキシブルに動くことで運動性の向上にも一役買っています」

 

「…みたいですね。 ただまぁ操縦には癖がありそうですが」

 

 

ニナの言葉に同意した軍警技術者だったが、あからさまにがっかりしているのが見てとれた。

 

 

「まぁ、それだけ(・・)ですし、問題はないでしょう。 特に目を引く新機能があるわけでも、大出力があるでも、珍しい装甲材質や機体構造をしているわけでもなくMSとしてはオーソドックスな作りですし」

 

「まぁ、ザクよりずっと出力があるとは言いますけど、そりゃあるでしょうしね。連邦もなんでこの程度のものを今更…」

 

 

 

なんとなくだが皆意図は理解していた。

 

要するに「ガンダム」が本来連邦のものだとでもアピールしたかったのだと。

 

確かにガンダムは元々連邦の試作機で戦勝への希望だったのに、ジオンに鹵獲されてしまい連邦の敗北の立役者になってしまったのだから気持ちはわかる。

 

ソロモン落下阻止作戦の際に行方不明となったガンダムだが、イオマグヌッソ事変で一時目撃され、同時に大破したとの情報もある。

 

なんにせよ、ガンダムとは連邦のMSでありジオンが勝てたのもそのおかげである。

こっちにあれば負けていなかったとでも言いたいのだと。

 

 

そう考えるとこの青い色も「地球」を比喩しているのではと思ってしまう。

 

 

「後アナハイム製っていうのも大きいのかもしれませんね。連邦との癒着だけで大きくなった例の財団が牛耳ってますからね。 肝心の技術の中身がそんなにないんでしょう」

 

「…まぁ、それでもガンダムですし、バックパックの構造なんかは現在ジオニックで開発中の次期量産機ゲルググIIや新型の参考程度にはなるかもしれません。なんにせよありがとうございました」

 

「いえいえ、こちらこそご足労いただき感謝いたします」

 

 

かくて、開発元のライバル会社であるジオニックからも別に今更いらないと言われ、入手した経緯が経緯だけに迂闊に廃棄もできずと、スターダストガンダムは完全に持て余すことになってしまったのであった。

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

ハイスクール

 

 

 

最近隣の席の子の様子がなんか変だとカミュは感じていた。

 

いつも休み時間に音楽を静かに聴いているような子で、黒髪メガネの地味な外見と相待って目立たないクラスメイトだったが、時折息継ぎでもしているかのように「プハァッ」と奇声をあげている。

 

音楽を聴いているということはわかるが、気になって仕方がなかった。

 

 

「はぁ、はぁ… あ、危なかった…」

 

おまけにそんな声を度々上げており、なんかヤバいものでもキメているのかと疑い始めていた。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ちょっとあんた…」

 

「ヒャぃっ!!」

 

昼休みにキラキラな世界に行ってしまい、ギリギリで現実に戻ってきた瞬間、カミュさんから声をかけられて奇声をあげてしまった。

 

 

「…あんたさぁ大丈夫? なんかヤバいよ、色んな意味で」

 

そんな私を珍獣でも見るような目で見たかと思うと、色んな意味で心配そうに尋ねてきた。

 

 

「あ、はい、元気です。大丈夫です」

 

「そう? ならいいんだけどさ…」

 

一応、自分のことを心配してくれていそうなのはわかり、ちょっぴり嬉しかったが、正直少し関わり合いたくなかった。

 

 

「あ、あの、あんまり私に話しかけない方が…  私みたいなのといると、カミュさんが変な誤解されちゃうと、いけないので…」

 

「は? なにそれ?」

 

 

私としては精一杯気を遣ったつもりなのだが、なぜか少し空気が悪くなってしまった。

 

なんとかしないとと思っていると

 

 

「あ、いたいた。 フィーナさん、担任が話あるから来てくれってさ」

 

その呼び出しに救われた気がして、逃げるようにして教室を出ていった。

 

 

 

 

(なによ、あいつ私と話すの嫌なワケ?)

 

そんなことを思っていたカミュだったが、ふとフィーナの机に置き忘れられたスマホが目に入った。

 

(一体なに聴いてんの? こないだの掃除の放送で流れてた曲で乗ってたし、趣味が近いと思うから一度ゆっくり話してみたいんだけど)

 

 

明るく社交的なカミュだが、音楽にはずっと救われてきていた。

 

 

弟たちと喧嘩して塞ぎ込んだ時には明るい曲を。

 

寂しい時や疲れた時には元気の出る曲を。

 

その自由でキラキラな世界は彼女に取っての癒しでもあった。

 

だが、曲調はともかく趣味が合う人間がいなかったため、ずっと一人で聴いていたのが少し寂しかった。

 

 

だからこそ、好奇心に負けてフィーナのスマホに手を伸ばしてしまった。

 

(あ、これいいな。 うんうん、あいついいセンスしてるじゃない)

 

 

フィーナの聴いていたであろうプレイリストをスクロールしていたカミュだが、だんだん違和感を感じ始めていた。

 

(あれ? この曲…  え、次は… その次…  まさか、これ…)

 

明らかに見覚えのある曲のラインナップに、疑惑は確信に変わっていった。

 

 

「私がおにーさんにあげたプレイリスト…」

 

 

 

 

 

 

 

(まぁ、担任も心配もするか。 叔父さんにも言われた事だしね)

 

 

担任の呼び出しの理由は私のバイトについてのことだった。

 

 

なんでもなんか最近きな臭いことが起こっていると小耳に挟んだらしい担任が心配して声をかけてきたのである。

 

生活のためにやっているバイトだというのは学校側も分かってはくれているが、あまり危険なことはするなとのことだった。

 

 

(まあおっしゃりたいことはわかりますが、すみません。 多分そのきな臭いことにガッツリ関わってるような気がします)

 

 

きな臭いもの、おそらくはあのスターダストガンダムのことだというのはわかる。

 

ただ、もうあれに関わることはないとは思っているし、そうそう問題にはならないとも。

 

 

(そういえば、ザクの修理いつ終わるのかな。ちょっと聞いてみて…)

 

そうしてポケットに手を伸ばしたところで、スマホを教室に忘れてきたことに気がつき、パタパタと教室に戻っていった。

 

 

 

教室の机の上に置き忘れていたスマホを見つけて手に取った瞬間、バイト先から着信が入った。

 

 

「はい、今大丈夫です。 えっ、今夜からですか。はいわかりました、ありがとうございます。これからも頑張ります」

 

今夜からシフトに入ってほしいとの連絡に、私は自分でもわかるぐらいにニヤけていた。

 

これで、このプレイリストを宇宙で聴けると思うとニヤケが止まらなかった。

 

この時点で、私はさっきまで会話していたこのリストをくれた人のことなど頭から飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

軍警 MS格納庫

 

 

「あのう、私のザクはどこに… それになぜこれがここに…」

 

既定のMSハンガーに佇むスターダストガンダムを前にして、答えの分かりきっているような問いかけをしたら、案の定の返事が返ってきた。

 

 

「ああ、結局そいつをこのまま使うことになってな。 どうせなら慣れてるやつに使ってもらおうってことになったんだ」

 

 

「慣れてるって… 一回乗っただけですよ… また吐きそうになる…」

 

以前の吐き気を思い出しつつも、バイトの身の上で勤務先から支給される備品にそこまで文句は言えない。

 

こんなことなら夕飯を減らしてくればよかったと思いつつ、仕方ないというようにスターダストガンダムのコックピットに座った。

 

 

「はぁ、どうせ巡回業務だし、ゆっくり動かせばなんとかなるか…」

 

 

まぁそこまで大したことはないなと思いつつ、コンソールを立ち上げていると緊急警報が鳴り響いた。

 

 

『至急!! 至急!! グリーンノア1外壁部にてMSの戦闘を確認。 直ちに出撃、取締にあたれ!! 繰り返す…』

 

 

その放送に、巡回で音楽が聴けなくなったと分かった私はついカッとなってしまった。

 

「ええぃ、なんでこんな日にクラバなんてやるかな。 バイトNo. A-03145。 フィーナ=ビーダル、スターダストガンダム出撃します!!」

 

 

 

 

スターダストの猛烈な加速力に加えて、せっかく楽しみにしていたキラキラの時間を邪魔された怒りも手伝って、MAVを置き去りにして現場に一瞬で駆けつけることができた。

 

 

「ええぃ、大人しくしなさい。 私の時間を奪って!!」

 

私は、目の前に一瞬光が走ったような感覚も忘れ、クラバをやっているMS4機相手にビームサーベルを抜いて大立ち回りを始めた。

 

 

「何? こいつら素人?  動きのリズムが適当だし何より、見える!!」

 

数こそいるけれど、4機ともなんだかもっさりとした動きをしてる様に感じ、どこで何をしてるかも背中に目がついているかのようにわかり、割とあっさりと取り押さえられそうな気がした。

 

 

 

 

 

私にとって音楽は自分の世界の大半を占めていた。

 

嫌なことがあって塞ぎ込んだ時には明るい曲を。

 

寂しい時や疲れた時には元気の出る曲を。

 

その自由でキラキラな世界は私に取っての癒しでもあった。

 

 

戦闘中にも、このバイトが終わったらストレス解消も兼ねて絶対にその世界にいくと決めていた。

 

 

だけどこの時、大好きなはずの音楽、ずっと救われていた音楽に押しつぶされそうになっている人がすぐ隣にいたことに私は気がついていなかった。

 

 





サイド6 イズマ・コロニー


2年前、ちょっとしたテロ事件が起きたこのコロニーの不法移民街にて、下劣な笑みを浮かべた全裸の男たちが、ベッドの上の一糸まとわぬ一人の少女を見下していた。

顔の半分が焼け爛れ、髪はボサボサの白髪、ガリガリに痩せ異様なまでに色白い肌も火傷や傷だらけ。死んだ魚のような目をして、もはや生きているだけと言ってもいい様な少女だったが、突如として目に光が戻った。


「…キラ…キラ…」

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