機動戦士ガンダム 0087 Stardust melody   作:k-suke

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第4話 キラキラは繋がる

決められた朝の時間になればコロニー内部に日は差す。

 

そして決められた時刻には夜になる。

 

内部気温は一定に保たれ、天気決定表の通りに雨が降る。

 

それがコロニーという人工都市であり、実に規則正しくできている。

 

 

つまりなにが言いたいのかというと、コロニーには地球同様そこに住んでいる人間一人ひとりの細かい感情など介在する余地なく、日常が続いていくのである。

 

 

そう例え、恋愛に突拍子もない事故が起きたのだとしてもである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

音楽ショップ OLD CENTURY

 

 

 

ここ最近、カミュさんが一向に店に入って来ない。

 

別にテスト期間とかでもないはずなのだが、何かあったのか気になってしまう。

 

 

なんせ彼女が来ないとここの店番が暇で仕方ないからである。

いや、これは強がりだ。

 

なんやかんやで関わりのあった人である、少しいやかなり寂しいのである。

 

 

「なんか、気に触るようなことしたっけ? 確かに学校で避けるようなこと言ったけど、おにーさんとは関係ないはずなんだけど…」

 

 

そうは言っても、もしかしてとも思っている。

 

この店に来ない理由がおにーさんに会いたくないからだとすれば、おそらくそういうことなのだと。

 

(もし、そうならそれでいいのかも… カミュさんがガッカリするとこなんて見たくないよ)

 

そんなことを思いつつも、カミュさんからもらったプレイリストを聴けるほど図太くもなく、消せるほど潔くもない自分にほとほと嫌気が差していた。

 

 

 

 

 

 

カミュはここ最近店の前まで何度も来ていた。

 

なぜなら怒っていたからである。

 

 

自分の好きだった人が自分と同じ制服を着ていた。

 

それはつまり自分が誰なのかを初めからわかっていたということに他ならない。

 

騙されていたと感じ、イライラしていたからである。

 

 

 

それより何より

 

(私みたいなのといると、カミュさんが変な誤解されちゃうと、いけないので…)

 

その言葉がずっと引っかかっていた。

 

 

 

「誤解って何よ。 誰が何を思うってのよ!!  そんな言葉で逃げてんじゃないわよ、臆病者!!」

 

そうやって往来で憤ることはできても、実際に店に行く勇気もなければ、教室で話しかける度胸もなく、自分から連絡すらできない。

 

臆病者はどっちだと涙ぐんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

ハイスクール 教室内

 

 

三人のいかにもギャルといった女生徒が授業前に一見賑やかそうに話をしており、そのすぐ横の机では黒髪メガネの地味な女生徒が空気のように座っていた。

 

一見ありふれた光景だが、その間にはとてつもなく厚い壁があることを当人たちだけが感じ取っていた。

 

 

「ねぇねぇ、最近聞かせてくれないけどさ。 あれからどうなったの、例のおにーさんと」

 

何気なくかけられたその言葉に、黒髪メガネの地味な女生徒はビクリと跳ね、そんな光景を視界の端に収めつつ、ギャルの一人カミュはお茶を濁したような回答をした。

 

「え、あ、うん。まぁ、ね」

 

その回答になんとなく事情を察したか、言葉に詰まってしまった相手を無視してカミュは話を続けた。

 

「やっぱり、ちょっとしんどそうだし、合わない人だったのかなぁって」

 

 

 

その言葉を聞くなり、黒髪メガネの地味な女生徒フィーナは鞄を引っ掴んで教室から飛び出していった。

 

 

その光景にクラスメイトは何があったのかと驚く中、カミュは誰にいうでもなく小さくつぶやいた。

 

「バカ…」

 

 

 

 

 

 

 

欲張った罰だと思っていた。

 

今まで通り誰とも関わらなくてよかった。

 

自分一人でキラキラな世界で楽しんでればよかった。

 

 

元に戻ればいい、何も考えないと。

 

 

そしてそれができないからこそ、私は泣きながら店に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

音楽ショップ OLD CENTURY

 

 

 

泣きじゃくりながら店に飛び込んだら、叔父さんがパニクりながらものすごい形相で何があったか問いただしてきた。

 

嗚咽と鼻声でうまく説明できたか自信はなかったが、幸いにして何があったかだけはなんとか理解してもらえたようだった。

 

 

「よしよし、わかったわかった。とりあえず涙拭け、なっ」

 

差し出されたハンカチで涙を拭き、ついでに鼻を噛むととりあえず少し落ち着いた。

 

 

「で、お前はどうしたいんだ?」

 

優しく問いかけられた答えのわかりきった質問に、それでも私は必死に絞り出すように声を上げた。

 

「カミュさんを傷つけたこと謝りたい… 仲直りしたい… でも、どうしたらいいのか…」

 

 

 

叔父さんはそんな私に対して簡単なことだと言わんばかりに答えた。

 

「一言ごめんと言えば済む話だ。シンプルイズベストだぞ」

 

 

言いたいことはわかるが、かなりややっこしい状況になっていることは間違いないし、大体…

 

「いや、でも、私友達いたことないから… それでうまくいくかどうか… なんかもっといい方法…」

 

ゴニョゴニョと吃ってしまった私の頭を叔父さんは優しくこづいた。

 

「あのな、仲直りに上手いも下手もない。 よく思い出してみな、仲良くなったきっかけをさ」

 

 

その言葉に勇気づけられた私は、力強く頷いた。

 

「叔父さん、ちょっとだけ手を貸してください」

 

 

「元気出たみたいだな、最近全然音楽聴かなくなってたからな。ずっと気にしてたんだ」

 

確かにここ最近、心が重くて全くキラキラな世界に行けなかった。

 

こんなとこでも迷惑をかけてしまったことに反省した。

 

 

「よし、手を貸しついでの景気付けだ。 前から欲しがってただろ、うちのギター一本好きなの持っていけ!!」

 

 

うまくできるなんて毛頭思っていない。

 

でも、私にとって伝えたい気持ちを一番うまく伝える自信があるのは、確かにこれだった。

 

 

ちなみにちゃっかり一番高いものを持って行こうとした私におじさんは少々引き攣っていた。

 

だもんでやっぱりこの件が終わったら返すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド6 イズマ・コロニー

 

 

 

「何、強奪されたハンドメイドMSがコロニーから出ていった?」

 

「ええ、エアロックを強制解除したそうで、多少空気が漏れたそうです」

 

 

ここのコロニーの軍警の中で、そんな報告があがったが誰も焦る様子が見られなかった。

 

 

「で、何か被害は?」

 

「はあ、元々不法移民が多いエリアですからね。 出てるかもしれませんがまあいいでしょう。強奪されたMSもそいつらがクラバかなんかのために不法に所持していたものみたいですし、多分持ち主?も誰か知りませんがダメでしょう」

 

まるで大したことでもないといういい加減な報告をする部下に、報告を受けた上司も顔色ひとつ変えなかった。

 

 

「なら問題なかろう。なんでそんなことをいちいち報告する」

 

むしろ明らかに面倒臭そうな表情を浮かべ、報告してきた部下を叱責した始末である。

 

 

「一応義務なので」

 

部下も部下でやらなければいけないから仕方なしにやったというように肩をすくめ、この話は終わってしまった。

 

 

昨今あまり評判のいいコロニーではないが、今ではもうこの有様である。

 

住民たちも、まともな思考をしているものは少しずつ別のコロニーに移住し始めており、2年前のテロ事件も相まって、だんだんとさびれ始めてきていた。

 

このままでは近いうちに不法移民の方が正規の住民を人数で上回るのではとも噂されているが、コロニー側は特に対策をしておらず、ここの軍警たちにとってもほぼ他人事でしかなかった。

 

 

 

 

 

「キラキラ… キラキラはどこ、キラキラ…」

 

かくて追跡が来るでもなく手配が回るでもない強奪された4本腕のハンドメイドMSには、一人の少女が乗っていた。

 

顔の半分が焼け爛れ全身傷だらけの上、今にも折れそうなほどガリガリに痩せていたが、その目だけは異常なほどギラついており、漆黒の宇宙を何かを探し求めるかのようにふらふらとMSを操縦しつつ、どこへともなく消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

ハイスクール

 

 

 

「はぁ、しんど… やっと一日終わったって感じ…」

 

心身ともに疲れ切ったという様子で、なんとか言葉を絞り出していたカミュに、友人たちが励ますように声をかけた。

 

 

「ほんとほんと、今日の授業特にダルかったよね」

 

「なんか甘いものでも食べて帰る?」

 

 

その心遣いは嬉しかったものの、カミュの疲れは別の所から来ていた。

 

(ちょっと意地悪し返してやりたかっただけなのに、あんな顔見せられたらこっちのダメージの方が大きいって、ほんとバカだ…)

 

 

こんな時、普段なら何か聴いて気分をあげるのだが今回はとてもそんな気になれなかった。

 

 

(はぁ、もうどうでも…)

 

どうにも投げやりな気分が抜けないカミュだったが、せめて友人の言う通り何か食べにでも行こうかなどと考え、校舎から外に出た時だった。

 

 

 

「ん? 何あの人だかり」

 

「誰かギターで歌ってるみたいだよ、ストリートミュージシャン?」

 

 

(いったい誰よ、こんなとこで非常識な…)

 

かっこいい人だなぁなどとミーハーな生徒がザワザワと見物していたが、カミュにしてみればそんなミュージシャンは非常識な奴でしかなかった。

 

だが一目見てすぐにそれが誰か気がついた。

 

ニット帽を目深に被り顔がほとんど見えない状態であっても、自分の推しを見間違うはずがないのだから。

 

 

 

「えっ、ギター弾けるの!?」

 

ハスキーボイスからなる美しい歌声とロック調のギター。

 

それでいて何処かクラシックな印象を与えるオリジナルの曲と歌詞。

 

それでも集まった生徒たちを魅了するその演奏に、人だかりと歓声は徐々に大きくなっていきカミュもまた魅了されていった。

 

 

 

そうして演奏が進む中、誰かの姿を確認するかのような目線を向けたストリートミュージシャンは、曲を無理矢理打ち切りスモークに包まれた。

 

「うわっ、何?」

 

群衆がざわめく中、スモークが収まったときにはミュージシャンの姿は消えていた。

 

 

今のは誰で、どこに行ったんだと生徒たちがざわめく中、カミュは「おにーさん」に手を引かれて走っていた。

 

 

そしてある程度離れた場所で、改めて自己紹介がなされた。

 

 

「カミュ=メリィさん。あ、あの私、あなたの行きつけの音楽ショップ OLD CENTURYにいるフィーナ=ビーダル、です」

 

必死に言葉を選びながらの自己紹介に続き、ずっと言いたかったと言うよう頭が下げられた。

 

「ずっと隠しててごめんなさい。 それでも、私と友達になってくれますか?」

 

音楽とは残酷であり、一度心にハマってしまったキラキラからは抜け出せなくなる。

 

 

突然の告白に真っ赤になって混乱しつつも、カミュの答えは決まっていた。

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

 

音楽ショップ OLD CENTURY

 

 

 

ここ数日、店内が明るくなったと店の常連たちは告げていた。

 

まぁ常連と言ってもフィーナの叔父の昔仲間ばかりなのだが、当の本人もそれは感じていた。

 

つらつら考えてみると店内にいる二人が原因だと皆気がついていた。

 

 

 

「ねぇ、あの曲また弾いてよ。なんかハマっててさ」

 

「え、あ、いやあれは元々自分の趣味で作ってたやつで、未完成だし本当は人に聞かせたりするようなものじゃ… なんか別の適当に…」

 

 

ギターをねだるカミュに、フィーナが困ったような顔をしてやや吃る。

 

そんなフィーナを見てまたカミュが面白いと言うように揶揄い始めた。

 

 

「いいじゃない、あれ学校でも人気だし、実は動画でも上がってたりしてるよ。 いい曲だった。誰が弾いてたんだとか、女子の間じゃめっちゃカッコいい人だったとかで、コメントも付いてるし、アンタ今モテモテだよ」

 

「ちょっ、ちょっと恥ずかしいこと言わないで!! あのとき後先あんまり考えてなくて… そ、それにあそこまで人が集まってくるのも予想外で…」

 

 

真っ赤になって顔を手で隠そうとしたフィーナに対して、何やってると言わんばかりにカミュは向き合った。

 

 

「それだけいい曲だったってこと。 そもそもなんであんなことしたのよ、え?」

 

「そ、それは、カミュさんと友達になりたいから、です…」

 

改めて面と向かって言われた言葉と推しの顔を間近で見てしまったため、今度はカミュが真っ赤になって俯いてしまった。

 

 

「あ、あの、今ライブのチケット応募してるんです。 一度行ってみたいって言ってたし、これ当たったら一緒に行きませんか?」

 

ややあって少し空気を変えようとしたフィーナの言葉に、カミュは何度も何度もコクコクと頷いていた。

 

 

 

かくて、側から見れば初々しいカップル以外何者でもない二人のやり取りに店内の澱みが浄化されていたのであった。

 

 

 

 

そんなこんなで時間が経ち、フィーナがバイトに出る時間となり、必然カミュも帰ることになった。

 

「じゃあバイト行ってくるね」

 

「OK、しっかり稼いどいで」

 

 

そんなやりとりでフィーナを見送ったカミュの肩に叔父がポンと手を置き、式はいつがいいなどと本気か冗談かわからない口調で話しかけ、カミュが泡食ったのはどうでもいい余談である。

 

 

 

 

 

軍警

 

 

パイロットスーツに着替えながら、私はここ数日の変化について考えていた。

 

仲直りできただけでなく、自分を許して友達付き合いをしてくれるカミュさんには本気で感謝していた。

 

それが少しズレた自分の趣味と心底共感できる友達なのだから尚更である。

 

「これ、本当に夢じゃないよね。 こんなふうにキラキラを共感できる友達がいるなんて思わなかったなぁ」

 

 

改めて喜びを噛み締めると、今度のライブのチケット代を稼ごうと気合を入れてMSハンガーに向かったその瞬間だった。

 

 

「!! な、何!?」

 

急に目の前に光のようなものが走ったかと思うと、一瞬鋭い頭痛がした。

 

だが一瞬であり軽い立ちくらみかと思ったのだが、続けて何かねっとりとした感覚が全身に襲いかかってきた。

 

 

「え? 何この感じ。 誰かが私をじっと見てるみたいな…」

 

 

直後、緊急警報がけたたましく鳴り響いた。

 

 

『至急!! 至急!! 所属不明のMSがコロニー内に侵入。 直ちに迎撃、確保を行え!! 繰り返す…』

 

その放送に流石に私はギョッとなった。

 

「MSがコロニー内に侵入!? 一体どうなってんの!?」

 

 

驚きつつもMSハンガーに入ると、想像以上に混乱し皆ピリピリしており、迂闊に話を聞けるような状態ではなかった。

 

ひとまずは邪魔にならないようにと、スターダストガンダムに向かうと、整備の人と一緒にいた軍警の人が私に話しかけてきた。

 

「おお、来たか。お前らバイトは民間の避難誘導にあたれ、避難範囲とコースは各機に転送する。 ラムサス、ダンケル、侵入したMSに対しては俺たちで対応にあたるぞ」

 

金髪リーゼントの強面の軍警の人がそれだけ告げると慌ただしく離れていき、私は了承の返事をする暇もなかった。

 

 

 

 

 

 

「まぁしょうがないよね、忙しいみたいだし。 でもこのスターダストも避難誘導でいいんですか」

 

ガンダムに乗り込みながらふとした疑問を整備の人に話しかけるも、当たり前だと言うような返事が返ってきた。

 

「当たり前のこと聞くな。 ヤザンさんのいう通り巡回警備なんかはまだしも本物のテロリストかもしれん相手をバイトに対処させられるわけないだろが。 これはプロの大人の仕事だ」

 

 

その言葉にこれが大人の責任かと思いつつ、私はコックピット内でコンソールを立ち上げた。

 

「了解しました。バイトNo. A-03145。 フィーナ=ビーダル、スターダストガンダム出ます!!」

 

 

 

 

と気合を入れたはいいものの、所詮はコロニー内での避難誘導だけである。

 

MSハンガーからガチャガチャとガンダムを歩いて出動させていった。

 

 

『現在、コロニー内で非常警戒が出ています。 市民の皆様は指示に従って各シェルターに避難してください。 繰り返します…』

 

そんな放送がコロニーに流れる中、私は避難の遅れた人がいないかの声かけを行う仕事が割り振られたのだった。

 

 

 

 

「怪我したりする人がいたら大変だしね。 それに…」

 

軍警の敷地内から出ようとした時、ふと昔自分の父親が亡くなった時のことが頭をよぎり一瞬歩みが止まった。

 

 

そしてその次の瞬間、さっき感じた何かねっとりとした感覚が再び全身に襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「え? また、これは…」

 

その感覚に引きずられるように、ふと上を見上げると軍警のザクに一機のMSが追いかけられていた。

 

 

その追いかけられているMSは四本腕の上かなり不恰好なずんぐりむっくり体型で、遠目にもジャンクか何かの組み合せといったのがわかるものであった。

 

それでも推力や運動性だけはなかなかのようで、コロニー内で迂闊に発砲できないこともあって、軍警のザクからうまく逃げおおせていた。

 

 

「あのMS見た目はともかく、動きはいいな。 パイロットの腕もいいのかな…」

 

そんなことを思っていたら、そのMSがこっちに向かって降下してきた。

 

 

「え、まさかここ?」

 

 

 

確かに何者かは知らないが、所属不明のMSが攻撃してくるなら軍警本部になるかと改めて考えている間にも、そのMSは一直線にこっちに向かってきた。

 

「違う!? 失速してるだけ? なんでこっちに来るのかな、ついてない!!」

 

 

運悪く、軍警の敷地から出ようとしていた私に向かって失速してきたため体当たりをまともに受け、揉み合いになりながら、本部の建物に突っ込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラキラ… ギラギラァアアア!!!!」

 

「うぐっ!! なんなのよ一体!?  こら大人しくしなさい!!」

 

必死に取り押さえようとする私だったが、組み付いてくる装甲部分から接触回線で聞こえる狂ったような声で相手がまともじゃないとも思い始めていた。

 

 

 

そうやって揉み合っている間に、こっちも頭でもぶつけたのか目の前がキラキラし始めた。

 

ただ今はそれどころではなく、なんとか引き剥がそうとガムシャラにMSに向かってガンダムの拳や膝蹴りを叩きつけた。

 

「ビームサーベルなんかで迂闊に攻撃したらコロニーに穴が開きかねないし… いい加減にして!!」

 

殴る蹴るでダメならばとばかりに、私はガンダムで思い切り横投げを決めて相手を地面に叩きつけてやった。

 

落下の衝撃でかなりガタがきていたか、元々出来がそんなに良くないハンドメイドだったのか、その衝撃を受けてどこかが故障したらしく、兎にも角にも動きが止まった。

 

 

 

 

「はぁはぁ、なんなのよ一体…」 

 

コックピット内で息を切らしていた私だったが、動きの止まったMSの外付け型ゴンドラコックピットから這い出してきた相手パイロットを見て唖然となってしまった。

 

 

「え? 女の子?」

 

全裸だったから尚更よくわかったが、しばらく碌に何も食べていないらしくガリガリにやせ細り真っ白の肌とあいまって骸骨みたいになっており、ボサボサの白髪に加えて顔の半分が焼け爛れていた。

 

そんな体でありながら、目だけは異常にギラついているのがモニター越しにもわかった。

 

 

その上、狂ったような笑みを浮かべて、何かをブツブツと呟きながらこちらに向かって手を差し伸ばしてきていた。

 

「キラ…キラ…  キラキラで… 遊ぶ…」

 

 

 

その光景にゾッとしないものを感じていたら、軍警の人たちが一斉にその子を取り押さえていた。

 

 

 

「あんな子相手にちょっと乱暴な取り押さえ方だけど、テロリストかもとか思えば仕方ないか…」

 

 

一方私の方は軍警ザクが近寄ってきて、大丈夫か、バイトなのに無茶するなよ、でもよくやった、すごかったぞと心配と称賛の声を半々に浴びていた。

 

 

しかし、軍警の建物を壊してしまったことに後ろ暗さを感じていた。

 

「あ、ありがとうございます。でもあの建物の方は…」

 

『気にするな、こんなもん不可抗力だ。 人的被害もないしな…』

 

 

そんな言葉にホッとしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

サイド7 コロニー グリーンノア1

軍警 取調室

 

 

 

先のMSに乗っていた少女に対し、簡単な検査後に取り調べが行われていたが、どうにも要領を得なかった。

 

 

なぜこんなことをしたかと尋ねても、キラキラが見えた遊びたかったと壊れたような口調でブツブツと繰り返すだけであり、焦点の合っていない目と併せて明らかに普通じゃないと誰もが判断し始めていた。

 

 

「明らかにまともじゃないな」

 

「ええ、なんか妙な薬物反応も出たみたいですし。 なんとか聞き出せたこのドゥー=ムラサメって名前も本名かどうか…」

 

「ジャンク品の組み合わせみたいだったMSの製造元も所属も不明。だがなんとか素性を調べないとな。 あの勾留してた自称連邦特務部隊のやつがあのどさくさ紛れに逃走したらしいしな。 何か噛んでるのかもしれん」

 

それを聞いた軍警はギョッとなった。

 

 

 

「じゃあなんです? ここ一連の事件連邦の仕掛けたテロだと?」

 

「可能性はある。サイド3、ジオンにも連絡を入れてコロニー全体に知らせて警戒を強めてもらった方がいいかもな」

 

 

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