機動戦士ガンダム 0087 Stardust melody   作:k-suke

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第8話 青い水の星で

 

(…い、おい、しっかり…)

 

 

誰かの声がどこからか聞こえてきた私はゆっくりと目が覚めていった。

 

 

「う… ここ… は…」

 

「おお、気が付いたか。 君、自分の名前はわかるか?」

 

うっすらと開けた目にジオンのパイロットスーツを着た男性が映るも、どこか朦朧とした頭でなんとなく返事をした。

 

 

「名前… フィーナ… ビーダル… です…」

 

コックピットに座っていることはどうにか理解できたためそのまま立ち上がろうとするも、妙に体が重かった。

 

 

「無理をするな。おい、救護班はまだか?」

 

救護班らしき人たちが駆けつけ、私を支える様にしてコックピットから降すと、さっきのジオンのパイロットスーツを着た男性が優しく声をかけてきた。

 

 

「まずはゆっくりしたほうがいい。 安心していい、ここは地球。極東にあるジオン駐屯地だ。 地球に急に降りてきたばかりで疲れもすごいだろう」

 

「は、はい…」

 

正直相当に体が重かったし、随分と熱っぽかった。

 

 

ぼんやりとした頭で目の前のジオンの人の声に聞き覚えがある様な気がした。

 

「あなた… あの金ピカのMSの…」

 

「ああ、エグザベ=オリベ。ジオンのパイロットだ」

 

 

 

 

 

あの後、病院着に着替えて点滴を打たれてしばらく休んだところ、だいぶん気分が良くなってきて、簡単に医師の診察を受けた。

 

 

「うん。 まだ微熱はあるが、体調は問題なさそうだ。 君地球は初めてかね」

 

「あ、はい。ずっとサイド7にいて、生まれたコロニーから出たこともなくて…」

 

 

その言葉に医師はうんうんと頷いた。

 

「そうか。コロニーの擬似重力と違って、少し体が重いかもしれないが、すぐに地球の重力に慣れるさ」

 

 

「はぁ…」

 

 

 

そうして簡単な診察を終えた後、エグザベという人と一緒に現状の報告を軍の人から聞かせてもらった。

 

 

「ひとまず、コロニーパーツは君たちの協力もあって、無事に破壊できた。 地球への被害もほぼほぼ無視できる程度だ。 だが、電波障害が凄いのと落下の破片がスペースデブリになって成層圏にとっ散らかっている。 ただでさえ混乱している状態でコレだからね、しばらくはコロニーに帰ることも連絡を入れることも難しい」

 

 

「えーっと、じゃあ私がここにいる事は誰も知らないって事ですか?」

 

その疑問にエグザベさんが答えてくれた。

 

 

「いや、それは大丈夫だ。 俺が地球に降りるときにジオンの部隊にガンダムと一緒に地球に降りたと伝えている。 サイド7にも連絡が行くと思うから、時間はかかるが無事は伝わるはずだ」

 

 

それを聞いてひとまず私はホッとした。

 

「無事を伝えたい家族や友達がいるんだな」

 

その言葉に私はこくりと頷くと、エグザベさんがなんともいえない様な顔をした。

 

 

「ただなんにせよ、当面の間はここで過ごしてもらうことになる。 事態が落ち着き次第サイド7まで送るから、すまないがしばらく辛抱してくれ」

 

状況が状況なのは重々承知しているため、私としては頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ… 初めての地球行きがこんな形になるとはねぇ」

 

正直、地球のことなんかまるで興味なかったし、本や動画なんかで見てても物語の中の世界に近かった。

 

体調が落ち着くまで休んだほうがいいと言われたため軍の病院施設で横になっていたが、なんとも手持ち無沙汰であったので、なんとなく廊下をぶらついていた。

 

「あまり無理はするなと言われたけど、ちょっと外でも」

 

なんともなしに窓を開けて外を眺めてみると、そこには信じられない光景があった。

 

 

「すごい… あの青いのが全部水… あれが海…」

 

頭では知っていた光景だったが、実際に見てみると凄いものであり、憧れる人たちがいるのもなんとなくわかった。

 

だが

 

 

「うっ!! 何この匂い!? 気持ちわる…」

 

 

嗅いだ事のない不可思議な匂いに吐き気を催した私は近くにあったトイレに駆け込んだ。

 

 

 

 

 

洗面台にかぶりつく様にして、空に近い胃の中のものを全部吐き出していた私だったが、そのせいでますます気分が悪くなってきた。

 

「な、なんなのこれ? 地球ってこんなに臭いの?」

 

 

正直初めてMSに乗った時でもここまで吐き気はしなかった。それでもさっきの匂いを思い出すとまた気分が悪くなり、せめて口を濯ごうとした時だった。

 

 

「ねぇちょっと。 あんまり洗面台で吐かないでくれる、掃除面倒だから」

 

 

 

 

「えっ?」

 

その言葉に振り向くと同年代らしい小柄な女性清掃員がジト目で私を睨んできていた。

 

 

「す、すみません… でも、ちょっとあの海?の匂いで気持ち悪くって…」

 

ただでさえ生まれて初めての地球に慣れていない中、初めて嗅いだ妙な匂いに私は完全に打ちのめされており、それだけ口にするのもやっとだった。

 

だが、その言葉がなにか癇に障ったのか、清掃員は眉をピクピクさせてあからさまに不機嫌そうになった。

 

 

「ずっとコロニーで過ごしてたから地球の空気が合わないってスペースノイドもいるけど、その言い方やっぱり気分悪いよ。 地球の海って私が一番行きたかったとこだから」

 

「え、あ、すみません…  て、あなたもスペースノイド?」

 

「まぁね。2年ほど前に地球に降りてきてからはずっとこっちで暮らしてるけど」

 

 

どこかぶっきらぼうな会話をしてきたかと思ったら、そのままじっと私を見つめてきた。

 

しばしの沈黙が流れ、清掃員の足元の丸いペットロボットがハロハロと電子音を発するだけの中、沈黙に耐えられなかった私が絞り出すように尋ねた。

 

「え…  と…  何か?」

 

 

「どいてくれる?  仕事したいから」

 

その端的なセリフに私は多少ふらつきながら洗面台を離れた。

 

 

 

「…こんなんが今ガンダムに乗ってんだ」

 

「え?」

 

なんとなく聞き覚えのある様な声だったが、正直会ったことがあるわけもない人だし気のせいだと思って病室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

地球連邦軍

 

 

 

「さて、この上申書を上げてきた理由を聞こうか。バスク=オム少佐」

 

上官であるジャミトフとその側近が明らかに自身を冷たく睨みつけていることに気づかないまま、バスクは堂々と答えた。

 

「はっ!! 先日宇宙に巣食うスペースノイドどもは、休戦協定を一方的に破棄するがごとく暴挙に出ました。結果的に地球に被害はありませんでしたが、それも当然でしょう。奴らの自作自演なのですから。 事ここに至っては、連中に本来の立場をわからせるべく行動に移すべきであると思われます」

 

 

用意してあったセリフを読むかのようにとうとうと語るバスクに、ジャミトフはもう一度念を押すように問いかけた。

 

 

「もう一度確認する。先日のコロニー落としの未遂事件はスペースノイドの暴挙だと。それをもって休戦協定の破棄と判断する。君はそう言いたいのだね」

 

「はい、もちろんであります」

 

形だけならば満点というべき敬礼をしたバスクに対して、ジャミトフは一言入れとだけ静かに漏らした。

 

 

直後、数人の衛兵が執務室に飛び込んて来てバスクは拘束された。

 

 

「閣下、これは一体どういうことですか?」

 

心底困惑しているバスクにジャミトフはため息交じりに説明した。

 

 

「すでにジオンからは正式な抗議が来ている。コロニーパーツがあったと思われる宙域付近で連邦の戦艦を拘束したと。 そしてその艦に乗っていた男ジャマイカンからはすべての事情を確認済みだとね。 随分と派手な自作自演をやろうとしたものだね」

 

ギョッとしたような表情を浮かべたバスクだったが、見苦しく言い訳を返した。

 

「そ、それこそ、そのジャマイカンとかいう男の暴走… いえ、スペースノイドの謀です!! 証拠もなしに…」

 

「黙らんか!!」

 

さすがに我慢の限界を超えたジャミトフが一括した。

 

「コロニーパーツ内部で、下らん策略をべらべらとジオン兵と民間人に対してくっちゃべった自称エリートがいるそうだ。そのエリートは大気圏でなぜか燃え尽きたらしいが、話を聞いた連中は地球に無事落下したそうだ」

 

「…」

 

「で、証拠の音声データの一部はすでにジオンにも送られている。現状オリジナルデータもジオン駐屯地で解析中だろう」

 

「証拠…」

 

確たる証拠があってのことだと怒鳴られたバスクは押し黙るしかなかった。

 

「以前のサイド6でのテロ行為は証拠がなかったし、スケープゴートもいたから黙認してやったが、今回はもうどうにもならん。連れていけ!!」

 

その命令に従い、衛兵はもがくバスクを拘束して執務室を出ていった。

 

 

 

 

「よろしかったのですか、閣下。 あの話に乗ればより大きな力を手にできたかもしれませんぞ」

 

「ふん、あんな稚拙な工作で戦争を仕掛けられるか。 世論の支持が受けられるはずもない」

 

バスクが連行されたことを確認するかのように、側近は問いかけたがジャミトフは一蹴した。

 

 

「そもそも、月以外まともな宇宙拠点もない現状のパワーバランスで、地球と宇宙とで戦争を再開してもよくて共倒れ、悪ければ敗北だ。ただでさえあの財団内部でもう例の箱を開放するべきとの意見も多数派になろうかとしている状況だぞ。時勢というものがあるわ」

 

仕方ないというように漏らしたジャミトフは側近に対して皮肉な問いを行った。

 

 

「それとも何か? 貴公ならこの状況でスペースノイドに戦争を仕掛けて勝利できるか? 木星帰りの天才よ」

 

その言葉に、側近はにやりと笑った。

 

「さぁ、どうでしょうね。私はただの歴史の立会人ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球 ジオン極東駐屯地

食堂

 

 

 

食堂の椅子に腰掛け、腹ごしらえをしようとしていたエグザベが疲れた様に声を漏らした。

 

「ふぅ… かくいう俺も地球に降りるのは初めてだからな。多少体が重い」

 

 

地球に落下してきて以来、今ひとつ体調が芳しくないのはエグザベも同じだったが、フィーナほどでないのはやはり本格的な訓練を積んでいる軍人だからだと思われる。

 

実際軽く肩を回したりしていても、側から見ている分には全く問題なさそうだった。

 

 

「しかしジオニックから話には聞いていたが、本当にガンダムがいるとはな。俺もよくよく妙な縁がある」

 

サイド7にて、連邦から再び鹵獲したという青いガンダム スターダスト。

 

その情報は解析を頼まれたというジオニックを通じて、一応ジオン本国にも連絡が入っており、エグザベも話だけは知っていた。

 

かつてほんの僅か自分も同じ名を冠する機体に乗ったこともあり、さまざまなガンダムのパイロットとも良かれ悪しかれ関わりがあった。

 

それだけにあのフィーナというパイロットにもなんとなく興味があった。

 

「だが、彼女は俺の知ってるガンダムパイロットとはだいぶ違うな。 地球に来ても、コロニーに無事を知らせたい家族や友達がいるとは…」

 

 

そうこぼした瞬間、目の前に料理が乱雑に置かれた。

 

「なんだ乱暴だな。大体カオマンガイなど頼んでないぞ」

 

 

思わず給仕に対して抗議したエグザベに、ぶっきらぼうな返事が返ってきた。

 

「そう?  前食べたがってたから。 ここのメニューにしてるし、ちょうどいいと思って」

 

 

「!! 君は!!」

 

突然のことに絶句したエグザベの前の席に、やや高身長な黒髪のその給仕が襟元の階級章に目をやりながら腰掛けた。

 

「お久しぶりです、エグザベ少尉いえ今は大尉ですか」

 

 

 

 

「ニャアン!! なぜ君がここに!? あの件以来地球に行ったとだけは聞いていたが」

 

「一応気にはしてくれていたんですね。私のこと」

 

イオマグヌッソ事変以来の再会であったが、正直なところ気にはなっていたもののそれどころではなかったというのが本音である。

 

ギレン、キシリアというツートップを失ったジオンの立て直しに、エグザベは四苦八苦する日々であり、彼女については表向きMIA 戦闘中行方不明と処理され、実際は地球に向かったと確認するだけで手一杯になっていた。

 

 

「まぁ仕事しないと生きていけませんし、正直私達みたいなの雇ってくれるとこなんて限られてますから。ここもなんとかコネで雇ってもらえたんです」

 

確かに現状後ろ盾も何もない彼女を雇う場所などそうはない。色々苦労した事はエグザベにも想像に難くなかった。

 

だが、今の会話でふと引っかかる部分があった。

 

「ん? 私達? それにコネ? まさか…」

 

 

慌てるエグザベに、ニャアンは溜息混じりに話した。

 

「監視も兼ねてだそうですが、髭の人のおかげです。 私は元々一人暮らしで料理がそこそこ出来たからここの食堂で働いてるけど、あの子はバイトもした事なかったし料理もまともに出来ないから清掃員やってる。 今の時間なら病棟の方掃除してるかな」

 

「!! それは… まさか君ら知ってるのか!?」

 

 

その問いかけに、ニャアンはこくりと頷きエグザベも息を呑んだ。

 

「うん、見たよ青いガンダム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドの上で横になりながら、私は苦悶の声を漏らしていた。

 

 

 

「おおぅ… 暇だ… 暇すぎる… やることが全くないことがこんなにも苦痛だとは…」

 

地球に落下してきてから数日、初めの二、三日は身体検査やら事情聴取やらで忙しかったものだが、それも一段落してしまうとやることが全くなくなってしまった。

 

コロニーに帰る目途が立つまでと与えられた、駐屯地で働く民間人用住込寮の一室。

 

元々二人用の部屋を一人で使っていいという贅沢に加え、家具も一式そろっており、食事も服も支給され不満はないのだが、それだけだった。

 

唯一の暇つぶしになりそうなテレビはネットが不安定なため動画が見れず、番組は先日のコロニーパーツの落下事件についての報道一色で、今更見ても仕方がなかった。

 

「立場上あちこち出歩けないし、そもそも地球の臭いが合わないからあんまり外に出たくない…」

 

別に軟禁されているわけではないが、軍の施設近くをうろうろするのがよろしくないことぐらいは軍警でバイトしていたからわかっている。

 

昨日からこっち、ベッドでぼんやりと横になっていたのだが、すでにそれぐらいしかやることがなかった。

 

 

「誰か話し相手でもいればいいけど… そんな人もいないしな…」

 

地球に来て唯一の知人ともいえる人があのエグザベという人だけだが、軍人であることもあって忙しく働いているらしくほとんど顔を合わせることもない。

 

普段自分が使っているスマホは、バイト先のロッカーに置いてきているから、叔父さんやカミュさんと連絡も取れない。

 

そもそも現状コロニーとの通信も相当不安定になっているらしいから、仮にあっても連絡はとれないだろう。

 

 

元々あまり人と話すことのない生活を送っていたが、さすがにここまで人と関わらない時間を過ごしたのは初めてだった。

 

 

 

だがそれよりなにより

 

 

 

「ダメだ… この耳鳴り、禁断症状が出てきた… こんなにキラキラがないのって生まれて初めてでは…」

 

物心ついてから事あるごとに音楽を聴いていたため、はっきり言って音楽のないこの数日間は、未知の世界との遭遇に近かった。

 

せめてもの抵抗として、コップに水を入れて叩いたりしてみたものの、気休めにもならなかった。

 

 

 

 

「う~… 完全に気が滅入ってる。外の空気は嫌だけど少しは気分転換になるかな…」

 

せめてもの暇つぶしになるかと、マスクをして嫌な匂いを嗅がない様にして、まだ若干重い体を引きずるようにして廊下をふらふらと歩いていたら、当然のように誰かとぶつかった。

 

「きゃっ!!」

 

「あっ、すみません」

 

 

碌に前も見ないで歩いていた自分が悪いのはわかっている。

 

ぶつかって倒れこんでしまった女性に謝り、連れていた四角いペットロボットと一緒に散らばった洗濯物を集めていると、じっと見つめられていることに気が付いた。

 

「あの… 何か…」

 

「あなた、最近来た隣の人? 軍の人に連れられてきたの見たから」

 

「え、はい。フィーナ=ビーダルって言います。 あの、挨拶遅れてすみません」

 

 

改めて考えれば隣にあいさつにも行ってなかったなと、今更ながら自分の社交性のなさを反省した。

 

「いえ、私はニャアンです。 暇なら部屋に来ます?」

 

突然の誘いに困惑したが、確かに特にやることもなく断る理由がなかったので了承したが

 

 

「突然で驚いたかもだけど、あなたも本物かなって気になったの」

 

さすがにそのセリフには困惑した。

 

 

「は、本物? そりゃ本物のスペースノイドですけど…」

 

 

 

 

 

訳も分からず隣の部屋に連れられて行った私だったが、そこでまた困惑した。

 

微妙に取っ散らかった部屋にて、扇風機に対してあーあーと叫んでいる同年代の女性がいたからだ。

 

 

「えっと、何してるんです?」

 

いい年して何をしてるのか思わず尋ねてみると、その女性がジト目で暇つぶしとだけ説明してきた。

 

 

何と言っていいかわからない沈黙が流れる中、ふと私は気が付いた。

 

「あ、あなたあの時の清掃の人?」

 

「そうだよ、それよりあんた軍じゃなくてこっちにいるの?」

 

「あ、はい。別に軍人でも何でもないアルバイトなので」

 

 

 

そんな会話をしているとニャアンさんがやっぱりというように漏らした。

 

「やっぱり、二人とも会ってたんだ?」

 

 

「うん、トイレで体調悪そうに吐いてた。 おかげで掃除大変だった」

 

「あ、すみません。地球に来たばっかりで色々慣れてなかったから…」

 

正直まだ地球に慣れたとは言い難いが、仕事を増やしてしまったことは申し訳なかった。

 

 

しかしそこで会話が完全に途切れてしまった。

 

カミュさんたちと話すことが増えたとはいえ、やはり初対面の人との距離感がよくわからず、実際話題もないのだから何を話していいかわからない。

 

しばし沈黙が流れどうしたものかと思っていたら、ニット帽をかぶった丸いペットロボットがハロハロと言いながら足元に転がってきた。

 

「オマエモカー、オマエモカー」

 

どこか愛らしい電子音声とともに目をチカチカさせてきたペットロボットに思わず手を伸ばそうとした瞬間、目の前に突然幻想的な光が一瞬広がった。

 

 

「何? 目眩?」

 

突然のことに瞬きをして目をこすった私だったが、直後がっしりと手を握られた。

 

 

「あなたも見えたんだ、キラキラ」

 

 

さっきまでのどこか気怠そうな雰囲気はどこへやら、突然明るい笑顔が向けられてきた。

 

「は? え? キラキラ?」

 

「そうキラキラ! これが見えるってことはあなたもやっぱり本物だよ! 聞いた通りだ!!」

 

戸惑う私をよそに、一方的にまくし立ててくる脈絡のない話に一層困惑し、救いを求めるようにニャアンさんを見るも静かに笑みを浮かべているだけだった。

 

 

「ちょ、ちょっと。ニャアンさんも言ってたけど本物って何? 誰が何を言ってたの?」

 

「誰って決まってるじゃない」

 

私は当然の質問をしたつもりだったのだが、さらに頓珍漢な答えが返ってきた。

 

 

 

 

 

「ガンダムがそう言ってた」

 

 

 

 

 

 

一瞬脱力した私だったが、はたと気が付いた。

 

「その言い回し… 確か地球に落ちた時に聞こえた声!!」

 

 

コクコクと頷く目の前の小柄な女性に、私は不審な目を向けつつも改めて尋ねた。

 

「私、フィーナ=ビーダルって言います。あなたは?」

 

 

「マチュでいいよ。昔の名前なんて忘れちゃった」

 

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