優しい霧雨。ところにより暴雨。   作:柚子餅

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土くれのフーケ①

 

 武器屋から出た後は、三人で私の服を買いに向かった。あんまり遅くなっても宜しくないので、とりあえず以前にも着用していたような下着と寝巻きを優先して購入。

 あとは普段着なのだけれど、対外的には学院生となっているので基本は制服になる。私服を着る予定も特にないのでニーソックスとブラウスの替えを数枚。制服となるテイラー指定のスカートとマントは高いので、オールド・オスマンに用意して頂く事にしよう。

 これで衣服に困ることはしばらくないだろう。ようやく、洗濯を欠かせなかった状態から抜け出せる。……いや、洗濯はまめにはするけれどもね。替えが充分にあるというのは、精神的な余裕が違う。

 

 荷物は才人に持っていってもらうことになり、私は使い魔に乗って帰るために、と二人と別れた。極自然にブルドンネ街から出て行こうとして、肩を掴まれる。……ちぃっ。

 

「ルイーズ、いやね。私はこっちよ」

「何でこんなところにいるのよ、ツェルプストー。生憎、私は貴女に用なんてないのだけれど。さっさと離してくれない?」

 

 このまま何事もなく学院に帰りたかったがそうは行かなかったようだ。咄嗟にルイズの真似で切り抜けようとするも、どうしてかキュルケは私の肩から手を離さない。

 

「何よ!? さっさと離しなさいよ、ツェルプストー! 何のつもりよっ!」

「ふふふ、ダメよ。ルイーズ。演技しても無駄。私には通用しないわ」

「……な、何故? 私がルイズみたいに挨拶した時だって、キュルケ騙されていたのに!」

「恋の前にはなにものも無力なのよ……」

 

 何だか深いお言葉をおっしゃられたキュルケさん。意味はわからないのに、敗北感に打ちのめされた私は一体何なのだろう。

 

「さ、まずはあの武器屋からよ! ついてきなさい、ルイーズ! ほら、タバサも!」

 

 

 先ほど訪れたばかりの武器屋に付き合わされた私は、キュルケに言われるままに才人が欲しがっていた剣を教えた。キュルケを上客と踏んだのだろうけど、私がいるのでふっかけることが出来ない店主は先ほどと同じ値をキュルケに告げる。

 そこで私はタバサと一緒に、キュルケのその天性の才能とも言える値段交渉を目の当たりにすることになった。

 私が到底持ち得ない色気に感服し、驚愕し、戦慄した。普段着でさえあれなのに、あんなに乳を、ふとももを。ひぃ、なんてことなの嫁入り前の娘なのに! あんな真似、私には絶対に出来ない……。キュルケ……恐ろしい子!

 結局気を使って、次回来店する時の事を考えて行った私の値段交渉はふいとなったようだ。男性としての気持ちもわかるが、流石に3000が500になるのはないわ。店主馬鹿すぎる。これだから男は。

 

 無事にシュペー卿の大剣を買ったキュルケは、付き合わせたおわびにと私とタバサに食事を奢ってくれるらしい。

 「流石キュルケ、大好き」と思わず抱きついてしまう。私はかなりお腹が減っていたのだ。奢りひとつでキュルケへの好感度の上下がマイナスからプラスに修正されている辺り、私も相当に駄目だ。

 でも、本当にお腹が鳴る前に食事を摂れるのは嬉しい。もう少しで鳴ってしまう気がしていた。そんな今の私なら、はしばみ草だっていくらでも美味しく食べられる自信がある。

 

 ……そんな風に思っていた時期が、私にもありました。

 

 キュルケとタバサに連れられて来たのは、大通りに面した大きな食堂。他よりも多少値段が張るために貴族の客が集まりやすい店だ。

 その店内で、私たち三人の目の前にはこれでもかと積まれたはしばみ草のサラダ。タバサが注文したものである。シングルでさえ三人前ほどあるというのに、ダブル飛び越えてトリプルサイズの其れは用意しやすいために他の料理よりも早くテーブルに並んだのだ。

 

 おまけに、「すっごいお腹減っていたの!」と言っていた私を見かねたタバサが、親切心で私にサラダをよそってくれたのだ。

 ごっそりである。勿論、口に入れたらごっそり苦いのである。口の中も視界的にもごっそりごっそりである。

 でもあんまり話さないタバサが私に気を掛けてくれたことがとても嬉しいのと、空腹とが相まって一気に完食した。

 

「たばさありがとうおいしかったよ」

 

 …………じ、と私を見てくるので、お礼を言ったらまたよそってくれた。

 今度はがっつりである。主食もかくや、と言った具合だ。やっぱり視覚的にもがっつりだ。内心、私はげっそりである。

 

 でもタバサの親切心は純粋に、ただただ嬉しい。食べ切ると、無理矢理笑みを浮かべて「ごちそうさま、おいしかった」と述べた。

 その時、手元にサラダの入っていた皿がなくなっていたことに私は気づかなかった。ほっ、と安堵の息をついた私の目の前に、皿が突き出される。

 

「……美味しいなら、食べて」

 

 盛られて帰って来る大量のはしばみ草。……おかえり、また遭ったね。

 差し出してくれるタバサの姿が歪む。目元を擦った。違う、違うもん。辛くなんてないもの。きっと、これ、嬉し涙だもん。

 

 震える手で差し出された皿を受け取る私。三杯目にもなると舌がちょっと馬鹿になってきて、「なんか草食べてるね私ってば」ぐらいになってきている。こうなるとあんまり苦痛ではなくなっている。

 そこから更に食べ続けているとあら不思議、なんだか気持ちよくなってきた。美味しいわけじゃなくて、気持ちよくなってくるのだ。ちょっとこれは拙い。不味いしマズイ。

 私のクックベリーパイはまだなのか。店員は何をやっている。何か他の味を舌に乗せないと味覚がこのまま固定されてしまう。

 しかし、パイが焼き上がるには時間が掛かる。先にキュルケの食事が届いた。思わず唇を噛む。

 

 でも私挫けなかった。きっとこれ、タバサなりのお友達儀式とかそういうのなんだと思う。儀式じゃなくて、試練でもいいけど。

 これを越えなくてはタバサと仲良くなれないのよ! と根拠の全くない自分への言い訳を支えに、我武者羅にはしばみ草を食べ続けた。

 そうして、高く盛られていたはしばみ草のサラダは、私とタバサの二人によって胃袋に収められた。もう、私自分を褒めてあげたい気分である。ただ、ようやく目の前に置かれたクックベリーパイを美味しく食べられる気はしない。味がわからなさそうだ。

 

「すごぉい、タバサだけならわかるけど、ルイーズも半分食べちゃった……。でも大丈夫ルイーズ? 何か顔青いわよ?」

「だいじょうぶ、だっておいしかったもの。おいしかったのだから、だいじょうぶ。おいしかった」

「…………そ、そう?」

 

 閉口するキュルケに、さめざめとパイを切り分ける私。あ、優しい、とてもいい香り。また涙が出てきそうになった。どんな涙かは言わなくてもいいでしょう?

 

「そう」

 

 その声に顔を上げると、じっとこちらを見つめるタバサと目が合った。見られて、引き攣りながらも笑みを返す私。何やら値踏みするような視線。私は、果たしてタバサの友人としてお眼鏡に適ったのだろうか。

 私の笑みを受けて、タバサは静かに、こくりと頷いた。――もしかして、ついに私の友好の気持ちが伝わったのだろうか?

 

「注文。はしばみ草のサラダ、おかわり。あなたも一緒にどうぞ」

 

 …………。大丈夫、これも嬉し涙だから。きっと。

 

 

 タバサの頭の中の私のプロフィールには、好物に『はしばみ草』が記されたのだろう。妙な仲間意識を持ってくれている。

 好物『はしばみ草』だけど、あながち間違いじゃなくなったのが困る。クックベリーパイを食べ終えてから二皿目になったサラダを食べてると、ついに何だかこの独特の苦味が癖になってきた。軽い依存症といってもいいかもしれない。

 好き嫌いに対するショック療法というか、これは下手したらトラウマになるところだった。幸い、伸るか反るかで伸ってくれたみたいだけど。というわけで、美味しくいただけるようになってしまった。

 

「そういえばルイーズ、貴女ここへは馬で来たの?」

「ちがう。うんでぃーなにのってきたの」

 

 街の入り口まで歩いてから、キュルケが訊ねてきた。答えた私だが、まだちょっと声が震えている。恐るべきは、はしばみ草。

 

「こほん、こほん。……そういうキュルケとタバサは?」

 

 私が言うなり、タバサがぴゅー、と指笛を吹いた。その音は空へと高く響き、すぐに風と共に竜が飛んでくる。大きな翼で私たちの前へと降り立った。

 なんというか、完璧な主従、といった形で格好がいい。それにしても、これが風韻竜のシルフィード……かぁ。目がくりくりして可愛いなぁ。

 

 それじゃ私も、と指を咥えて息を吹き出した。ぴょうー、ぴゃいー、と情けない音が響く。すぐにウンディーナは飛んできたけど、口に魚を咥えていた。

 私以外に人がいることがわかると、咥えた魚を慌てて丸呑みにする。喉に詰まったらしく、「くぉぉ」と私の指笛に劣らず情けなく鳴いた。

 

「……ディーナ……」

 

 私もアレだし、ディーナもアレだった。キュルケが顔を背けて肩を震わせている。

 

「か、可愛いのねー。きゅい!?」

 

 キュルケは気づいていないようだけど、シルフィードが言葉を話してタバサに杖で叩かれている。私も気づかない振りをしておいた。気づいたとなるとシルフィードが可哀相な事になるからだ。

 

「でも、壮観よね。竜騎隊でもないのにドラゴンが二頭も並んでいるなんて。しかもその内の一頭は滅多に見られないっていう水竜でしょ」

「……」

「ああ、いえ違うのよタバサ。貴女のシルフィールドが劣っているって言っているわけじゃないわよ」

 

 慌てて弁解するキュルケだけど、タバサは別に気にした様子もなくシルフィールドの鼻先を撫で上げている。むしろ、滅多に見られないのは水竜ではなく風韻竜のシルフィードの方だと思うけど。

 ウンディーナは、シルフィードに興味津々らしくじっと見つめたままだ。シルフィードは見られて落ち着かないらしくそわそわしている。

 

「ええと、それじゃ学院に帰りましょうか?」

「……」

「だね」

 

 キュルケがタバサと私の肩を叩いて声を掛ける。タバサがそれに頷いたので、一緒に同意する。もう街でやることもないしね。

 

「じゃ、行くよ、ディーナ!」

 

 フライを使ってウンディーナへと飛び乗る。タバサとキュルケも続いてシルフィールドに飛び乗った。

 

 学院へと向かって、種族の違う二頭の竜が飛び立った。上昇気流を受けてあっという間に遥か上空へと舞い上がる。今までいた街が、どんどん小さくなっていく。

 けれど、やはりというか風竜の名は伊達ではなく、シルフィードの速度は段違いだ。同じ条件で飛んでいるのに私とディーナはあっという間に大きく遅れることになる。

 それがわかると、タバサはシルフィードに指示して私たちに合わせて前方を先行するぐらいまでに速度を落としてくれた。

 

「ディーナ、シルフィードに会ってみて、どう?」

「なんだかお姉さん、みたい」

「そう。よかったね」

「くぉう」

 

 ディーナも、同種ではないとはいえ同胞に逢えた事に喜びの声を上げている。

 ちなみにディーナの言う「くぉう」は肯定もしくはポジティブな気持ち、「くぁう」が否定もしくはネガティブな気持ち、「くぉ」が疑問また驚愕だ。

 今のところ解読できているウンディーナ語はこれだけである。というより、あんまり長文で話さないからこれぐらいしか聞かなかったり。

 

「仲良く出来たらいいね」

 

 こくこくと首を振るウンディーナ。首筋を撫でてあげると、一鳴きして大きく羽ばたいた。

 

 

 学院に戻り、ウンディーナを見送ってからルイズの部屋に戻ると中からはもうキュルケの声が聞こえてきた。シュペー卿の大剣を手に才人へと迫っているのだろう。もうすぐ、ルイズの金切り声が聞こえてくるに違いない。

 

 腰に挿したナイフを撫でる。このナイフに杖の契約をしたいところなのだけれど、とてもじゃないけれど騒がしいルイズの部屋では杖の契約をするだけの集中を保てそうにない。

 かといって、集中できそうな、出来るだけ人が来なさそうなところというと……。

 

 

 中庭に出た私は、そこで杖の契約の儀式を始めた。空も暗く染まっていて人の姿も見当たらないし、とても静かだ。こういう時こそ、自分の部屋が欲しいな、としみじみ思う。

 一応、何かの物音がして反応してはよろしくないので、先にサイレントを周囲にかけておく。これで契約中の間は集中していられるだろう。

 

 大き目の紙に魔方陣を描き、その中央に購入したナイフを置く。柄に指先を切って出た血を塗りこみ、朗々と杖契約の呪文を唱えていく。

 これを数日間、十数時間おきにこなすことでこのナイフが私の血に慣れ、精神力を基としたデバイスへとなっていく。ナイフと私が重なり、精神力の通りに阻害がなくなった時初めて、メイジの杖として機能始めるのだ。

 三十分ほどをかけて、一回目の契約を終える。ナイフを魔方陣が描かれた紙で包み、腰の後ろに設えたなめし革のナイフカバーに収める。

 これで後は定期的に血液を塗りこみ、呪文を唱えれば大丈夫な筈。一段落したことに安堵の息を吐き、立ち上がる。サイレントを掛けていた事を思い出して、タクトをとって解除する。

 

 そして、直後に響く爆発音。地面が揺れた。思わずたたらを踏む。

 あ、危ないところだった。杖の契約中だと地面の揺れで集中を切らしてしまっていたところだろう。

 見回すと、本棟から煙が上がっている。……ああ、ルイズか。

 

 とりあえずそこまで走っていくことにした。

 キュルケとルイズがどちらの剣を使うか才人に迫って、勿論才人では決められないから二人が決闘でもしているのだろう。確かそんな話の流れだった筈。相変わらず自信はない。

 

 

 走って向かった先、そこは先ほどの位置から目と鼻の先だったけれど突然何か大きなものが立ち上がった。足を止めないままにその巨大なものを識別する。

 

「でっかい、ゴーレム……」

 

 ずしん、ずしんと本棟の方へと歩いてくる。見れば、ゴーレムの進行方向には才人とルイズ、そしてキュルケがいる。

 

「きゃぁああああああああ!」

 

 何故か縄でぐるぐる巻きに縛られている才人を何とか(ほど)こうとしていたキュルケ。だが現れたゴーレムにその手を止めて、慌ててこちらへと逃げてきた。

 キュルケに捨てられた才人は、陸に揚げられた魚のようにびちびちと跳ねている。どうやら縄は解かれていないらしい。

 

「ルイーズ! 何だか知らないけどゴーレムが!」

「うん。わかってる。ちょっと行ってくる」

「駄目よ! あんなでかいゴーレムが相手じゃあ!」

 

 そうこうキュルケに引き止められて、何とか説得しようとしているうちに、ルイズは才人の元へと駆けつけていた。けれど、あの位置ではルイズも才人もろともゴーレムに踏み潰されてしまう。

 緊急措置、ということで【風】のスペルを唱え始める。踏まれてしまうことを考えたら、ちょっとくらいの怪我なら許してくれるだろう。

 いざ、ウインドブレイクで二人を吹き飛ばそうとしたところで、タバサとシルフィードが割り込んだ。地面を浚うようにしてすれすれまで滑空したシルフィードは上空へとまた舞い上がった。その足には才人とルイズが引っかかっていた。

 

 一安心、といったところだけれど、こちらにも問題が生じた。

 魔法の詠唱がほぼ終わっていて、発動直前でキャンセル出来なかった。このままでは暴発してしまう。

 

「バギ」

 

 言ってみたが、現れた効果はもちろんウインドブレイクだ。とりあえずゴーレムの上体にぶち当ててみる。……予想通りだけれど、びくともしなかった。

 そこで、視界の中にはためくものを見つける。黒いローブの人物だ。こちらに気づきもしない。

 

 私のウインドブレイクを無視して、ゴーレムはその拳を鉄へと変えて本棟へと殴りかかった。先の爆発のときよりも酷い地響き。

 予想していた私はレビテーションを唱えて空に浮いていた。キュルケも同時にかけておいたので無事だ。

 

「ありがと、ルイーズ。……私、先生を呼んでくるわ! 無茶しちゃ駄目よ!」

 

 キュルケは言うなり、走っていった。頷きで返して、私はゴーレムを注視する。

 ゴーレムの腕を伝って、ローブの人物が本棟に壊れた壁から侵入していくのを捉えた。

 

 ゴーレムを使った物取りか……フーケ、か!

 そうだった。土くれのフーケの情報が入ってこないために完全に忘却していた。土で出来たゴーレムを見たならすぐにでも気づいていいだろうに。抜けている。

 ……となると、今学院に侵入したのはミス・ロングビルってことか。

 

 『ゼロの使い魔』だけれど、人名や魔法、種族などハルケギニアで今まで生きてきて聞いたことがあるものは照らし合わせてしっかりと覚えている。

 また、関連したことを知ることで、それがきっかけとなって思い出せたりする。

 

 韻竜とかの伝説は学院にいる間に授業で習った。だから、関連しているシルフィードの正体を今覚えている。

 エレオノール姉さまがバーガンディ伯爵とご結婚されると聞いた時も、あ、離婚するわこれ、と思った。今でもお二人がどうなったのか聞いてないのに。

 ただその直感は、姉さまのきつい性格を知っているからそう感じただけかもしれないので、前世の記憶だけじゃない可能性が高い。まぁ勿論、姉さまが怖くて口には出せなかったけど。

 

 今回のように『土くれのフーケ』という情報が入ってこなかった場合、関連したことは忘れたままなことが多い。

 今更となっては遅いけど、確か、武器屋で得る情報だったという細かい記憶まである。レイピアがどうの、と言ってた時だ。それを聞き逃したために、フーケという存在が学院で物取りする、ということを思い出せなかった。

 ミス・ロングビルを見たときには、『たしかこの女性、盗賊だったような』というところまでは思い出せたのだけど、確証も無くそれだけだった。今はしっかりと繋がっている。

 

 前世を思い出せたのが十年以上も前のことでそれも曖昧模糊。尚且つ、時間の経過と共にぼやけてしまう。

 事実として存在している過去、現在、それにまつわる人物などは『私』が知らなかったことまで思い出せているのだけれど、未来の時系列なんてあやふやなものは覚えているほうが珍しいくらいだ。『俺』は一応文庫もアニメも、漫画も見たけど、そんなに愛読というほどはしていなかったのだから仕方ない。

 

 そして、そう。確か、盗まれるのは前世で兵隊が使っていた兵器だった筈。

 グレネード? RPG-7? スティンガーミサイル? ……違う。確かこれはゲームで有名だった武器の名前だ。でも、確かそんな方向の爆発するような武器が盗まれるのだったと思う。

 

 考え事をしている間に、フーケはゴーレムに乗って学院の敷地から出、タバサやルイズ、才人たちはシルフィードに乗って追っていったようだ。

 ゴーレムの背中と、追いかけるシルフィードが見えるがここからではもう追いつけない。

 どうしようもないので、仰ぎ見る。壁が壊され、教師の声で騒がしくなり始めた本棟を二つの月が照らしていた。

 

 

 

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