優しい霧雨。ところにより暴雨。   作:柚子餅

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フリッグの舞踏会

 

「あ、れ? ねむ……」

「ルイーズ?」

 

 予備のロープで縛ったフーケを馬車に乗せ、出したついでにナイフの契約をし直し、しまい直した直後、眠気が襲い掛かってきた。【水】のスリーピングクラウドを受けた時でもここまでの即効性はないぐらいの、急激な眠気。抗うことすら許されなかった。

 勝手に落ちてくる瞼、最中、靄がかかる意識で気づく。才人にも現れた、初めてガンダールヴが発動した時の反作用だ。ナイフをしまったことでルーンの効果が切れたのだろう。なるほどこれは耐えられない。

 身体が傾いていく。思考が鈍くなっていく。少ない睡眠時間も手伝って、私の意識はすぐに深くに沈んでいった。

 

 

 次に目を覚ました時、そこはルイズのベッドだった。朝からの睡眠不足特有の倦怠感は取れている。

 部屋の中は薄暗く、窓から覗ける空はもう赤みがかってきている。立ち上がり外を見ると、アルヴィーズの食堂には既に煌々と明かりが灯っていた。

 

 ああ、と直ぐに思い至る。フリッグの舞踏会だ。

 忙しなくメイドが二階のホールのテーブルクロスの上に料理を並べているのが見える。もう二時間もしないうちに準備は終わるだろう。

 

「あ、起きたの。ルイーズ」

「ルイズ」

 

 ドアの軋む音に振り向くと、開いたドアの先にルイズがいた。まだ制服姿だ。オールド・オスマンへの報告を終えて帰ってきたというところだろうか。

 ベッドに腰掛けて、後ろ手にドアを閉めて入室するルイズを眺める。

 

「ええと、どうなったの? あの後」

「何事もなかったわよ。フーケは無事オールド・オスマンに引き渡して、報告して今帰ってきたところ。まったくもう、いきなり倒れるなんてびっくりするじゃない。眠ってるだけってわかった時はどうしてやろうかと思ったわ」

 

 じろ、と睨まれて思わず肩を竦める。こういうところ、お母様やエレオノール姉さまに似てる気がする。逆らえない感じが。

 

「あ、貴女の水竜、心配そうに貴女にくっついてたけど言い聞かせて学院の外の森に帰らせておいたからね。起きられるなら、後で顔だけでも見せてあげたら?」

 

 そう続けるルイズにぺこり、と頭を下げる。

 

「ごめん。ルイズにも心配かけたよね」

「ふん。心配なんて、してないわ。……でも、心臓に悪いから調子が悪かったなら倒れる前に言ってよね」

 

 それを心配っていうんじゃないかな、と思ったけれど口に出したところで否定されるだけだろう。小さく笑って、「わかった」とだけ答えることにした。

 

「あれ? 才人は」

「ご主人様を置いて、オールド・オスマンと話があるんですって」

 

 それでルイズは一人なのか。

 きっと、オールド・オスマンに破壊の杖と地球について訊いているんだろう。できることなら一緒に立ち会いたかったけれど、眠りこけていたんじゃどうしようもない。

 

「……ねぇ、ルイーズ。サイトが他の世界から来たって、本当のことだったのよね。きっと」

「たぶんね。……だって私もそうだもの」

 

 ふと沈んだ様子を見せたルイズだが、あ、と今気づいたように私を見る。

 

「そう、そうなのよね。まだ会って、十日と少ししか経っていないのよね。でもルイーズはずっと前から一緒にいるような気がするのよ。時々ちぃお姉さまみたいだし、なのに姫様みたいだわ」

「私も、同じ。何か、不思議な感じ。ルイズも時々エレオノール姉さまみたいで、なのにアンみたい」

 

 どちらともなく笑みがこぼれる。そしてふと、自然とこんなことが頭に浮かんできた。

 きっと、あの家で育った私たちは姉妹なのだな、と 見た目や対外的なことではなく、同じ故郷を持ち、同じ土地で育った私たち。あの優しい人たちに囲まれ育ったことに変わりはない。

 私の役割(ロール)はルイズかもしれない。でも生き方が違うのだから私はルイズじゃないし、そしてルイズは私じゃない。ならば、違いなくルイズと私は姉妹だろう。

 

「でも、ルイーズって危なっかしいところがあるから、妹よね」

 

 同じような発想に至ったのか、ルイズがぽつりと呟いた。その言葉に、私の笑みが更に深まる。

 

「そうね。私は妹でもいいよ。ルイズ姉さま」

「…………やっぱり、私が妹でいいわ。何だか、今の私じゃ貴女には色々と敵いそうにないもの」

 

 ぷい、とそっぽを向くルイズがまたおかしくて、ふふ、と声が漏れてしまう。『今の』、とつけるところがルイズの強いところだと思う。決してめげない、挫けない心。きっと私はこれほどには強くない。

 

「さ、ルイーズも着替えましょう。色々あって忘れてたけど、今日はフリッグの舞踏会よ。ドレスは私のを貸してあげるから、ほら」

 

 照れ隠しなのだろう、ルイズがドレスを押し付けてきた。素直にそれを受け取って私も立ち上がる。今回のことで、少しルイズと仲良くなれた。私にはそれが一番嬉しい。

 

 

 

 着るドレスを選んだ後、私は学院長室へと足を運んでいた。

 どうやらオールド・オスマンが私に報告をしてほしいとのことらしい。私が学院長室へ着いた時、既に才人との話は終わっていたようで才人の姿は見えなかった。

 

 既に私以外の四人から聞き及んでいるだろうから、なぞるだけの報告をする。オールド・オスマンもそれをわかっているが、これも一応の決まりなのだから仕方ない。

 報告を終えると、オールド・オスマンは私の頭を撫で、賛辞の言葉を大げさに述べた。しかし、そこでオールド・オスマンの顔がばつの悪いものに変わる。

 

「すまんの。フーケ捕縛に大きな活躍を見せたミス・ルイーズには本当ならばシュヴァリエの爵位申請をしてやりたいところなんじゃが……」

「ええ、わかっています。爵位申請ということは、アン――姫様のサインが必要になりますから」

「……ヴァリエール公爵家と姫殿下は親交厚く、ミス・ヴァリエールの双子でないことは直ぐに明らかになるじゃろう。かといって、ミス・ルイーズの家名であるラヴァリエールの名を入れればそれはそれで酷似しすぎて問題になる。新たな家名を興すならばいくらか話は簡単なんじゃが、それでも謁見の際にお目見えすることになる」

「それは、仕方のないことです。私は使い魔です。オールド・オスマンのご厚意だけで、私は充分です」

「おお……! そうじゃミス・ルイーズ、何か望みはないかね? 儂に可能なことならば、手を尽くしてみるが」

 

 何やら感動した様子のオールド・オスマンだが、私の言葉の何が彼の琴線に触れたのかわからない。

 まぁそれとして望みと言われても、これといってないのだけれど。しかし何もないといえばオールド・オスマンも退いてはくれないだろう。

 ……そうだ。

 

「ならば、ミス・ヴァリエールの部屋の隣、物置になっている部屋を私に貸し与えていただけませんか?」

 

 ルイズの部屋の隣には、以前住んでいた生徒の家財が置いてある。卒業時に置いていったものを集めて一時的に保管してあるのだけれど、実質的に物置となっている。

 そこを空けて貰えば、本来一人部屋のルイズの部屋で三人も寝起きしなくても済むだろう。何よりも部屋が近いからルイズの部屋に簡単に行き来できる。

 

「何、それぐらいならば直ぐにでも中の物を移すよう言っておこう。明後日にも住めるよう家財も揃えておく。そうじゃ、ミセス・シュブルーズに頼んで、ミス・ヴァリエールの部屋と行き来できるようドアで繋げてもらおうか。しかし、それだけで良いのかね?」

「ええ、オールド・オスマンには日頃からご助力いただいていますから」

 

 ふむ、と頷くとオールド・オスマンは破顔一笑。

 

「今の貴族には珍しく謙虚な心がけ。儂は君を気に入った! そうじゃな、何か困ったことがあるならいいなさい。もし、ここを卒業した後行くところがなければ儂でよければ君を養子に迎えさせてもらいたいぐらいじゃ」

「ありがとうございます。その際には、お願いさせていただくかもしれません」

 

 社交辞令だろうが、そこまで言っていただいたのだ。笑みで返して、深く頭を下げる。

 

「今日はフリッグの舞踏会。君も主役の一人。大いに楽しみたまえ」

 

 

 

 ルイズの部屋へと帰り、ドレスに着替え終えると寮はもう閑散としていた。書き置きを見ると、ルイズも先に向かったようだ。皆ももうホールへと集まっているのだろう。

 

 歩きながら、考える。一つは、キュルケとタバサに全てを打ち明けるかどうか。フーケが言った「私が使い魔である」という言葉を確かに二人は聞いた。

 といっても悩む必要はない。答えは決まっている。元々二人とも引っかかっていたようだからどちらにせよ近いうちに問われていただろう。隠す理由もないし。

 二つ目に、ガンダールヴのルーンのこと。これについてはデルフリンガーに訊ねてみない事にはどうにもなりそうにない。推察するにも情報が少なすぎる。

 

 そうこうしていると、いつの間にかホールへと続く階段へと着いていた。そこには純白といったようなパーティードレスに身を包み、バレッタで髪をまとめ上げたルイズがこちらを見て立っていた。

 

「遅いわよ」

「ごめんね」

 

 答える私は、ルイズと同じく髪をまとめ、深海を思わせる深い青のパーティードレスを着込んでいる。ルイズの横に並び立つと、横の衛士が高らかに声を上げる。

 

「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢、

 ルイーズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~り~~~~!」

 

 そこで初めて、この世界での私の名前がどうなっているのかを聞いた。はっきり言っちゃうと、ほとんど同じなものだから一回聞いたぐらいじゃ私でもどっちがどっちかわからない。

 まぁ、実際フルネームで名乗るのは初めて会った時ぐらいで、それ以外は家名か名前で呼ばれるから区別は充分つくんだけど。

 

 ホールへと入場していくと、感嘆の声が漏れ、場が私たちに釘付けとなる。追う様に楽士隊が音楽を奏で始めた。

 静かな音楽が流れ出すと、止まり掛けたホールがまた動き出す。周囲の着飾った男子生徒たちがこちらに寄って、ダンスの誘いを投げかけてくる。

 フリッグの舞踏会でダンスをした男女は将来結ばれる、なんて話もあるから一生懸命に誘ってくるのだろうけど、そんな気もない男子生徒に誘われてもこちらは迷惑な話でしかない。

 ルイズはそんな男子には目もくれず、一直線にバルコニーへと向かっていく。そこには、才人がいるのだろう。

 

 邪魔をしてはいけないと、私はホールを改めて見渡す。その間も、ルイズと私の区別がついてないのか男子生徒がファーストネームではなく、当たり障りないファミリーネームで呼んでくる。私とルイズを見分けらずに、よくもまぁダンスに誘おうと思えるものだ。

 それらを半ば無視して視界を巡らせると、私と同じように男子生徒に囲まれているキュルケが見える。うん、とてもじゃないけど、キュルケに話しかけることは出来ないだろう。こちらとあちらと合わさって男子生徒の数がおそろしいことになりそうだ。

 手を上げてウェイトレスを呼び、ワイングラスを受け取るとテーブルで料理相手に格闘しているタバサの姿を見つけた。

 

 話す相手もいないので、これ幸いと同じテーブルへと移ると、タバサも気がついて視線を私に向ける。それでも、手は止まってはいなかったけれど。

 

「タバサ、楽しんでる?」

「…………ん」

「そう」

 

 無視されたかな、と思う一歩手前でタバサはこくり、と頷いた。私はそれに小さく返答してから、テーブルのサラダを小皿に取る。タバサも次の料理へと移る。

 サラダは、やはりというかはしばみ草のサラダだ。タバサが食べているのは極楽鳥を蒸したものでクックベリーソースが添えられているもの。……はしばみ草ばかりを食べているわけじゃないんだ。何だか安心して、私ははしばみ草のサラダを口に運んでいた。

 

 

 

「ルイーズもタバサも、踊らないの? 今日は、私たちが主役なのよ」

 

 特に会話もなく二人でテーブルの料理を進めていると、キュルケがこちらへとやってくる。

 傍から見ても、私たちには色気はないだろう。自分ですらそう思うのだから、きっとそれは相当だ。何だかんだで世話好きなキュルケのこと、そんな私たちを見兼ねて来たのだろう。

 

「まったく、楽しまないでどうするのよ。ほら、見なさい。あのルイズだって踊ってるわ。ま、自分の使い魔相手にだけど」

 

 「まったく、ダーリンったら」そう呟くキュルケ。そこで、キュルケの視線がホールでたどたどしく踊るルイズと才人から、私へと移った。

 私とキュルケが来ても食事の手を止めようとしなかったタバサの手が、ここで止まる。二人の視線が、私に集まった。

 

「ややこしいのは苦手だからはっきり訊くけど、ルイーズ、貴女もなの?」

 

 その問いかけがキュルケらしい。トリステイン貴族には不躾に聞こえるだろう言葉だけれど、飾らないその訊き方を、私は嫌いじゃない。

 じ、と見つめてくるのはタバサ。その視線には若干の興味が混じっているような、そんな気がする。

 

「ええ。そう。私も、才人と同じ。ルイズが説明を面倒がったのか知らないけれど、双子ということで通すらしいから」

 

 境遇がややこしいのは確かなのだけれど、そう私が締めるとキュルケは眉根を寄せる。

 

「ふぅん。水臭いわね。せめて私にくらい言ってくれたら良かったのに」

「貴族でも使い魔でも、そのいずれでもなかったとしても、私は私だから。誇りはあるけれど、結局は私が何をするかってことでしょ。肩書き自体にはそんな意味のあるものでもないし」

「……やっぱり、ルイーズはトリステインの貴族にはもったいないわね。ゲルマニアにこない? 貴女ならきっと、楽しく生きていけるわよ?」

「このトリステイン魔法学院にいるのが楽しいから、今はいいわ」

 

 水臭いの辺りでちょっと不機嫌になっていたキュルケだったけど、あっという間に機嫌を戻して、そ、と笑って返す。そして、思い返したように私とタバサを見る。

 いつの間にか、タバサは食事に戻っていた。サラダに取り掛かることにしたようだ。

 

「そう、脱線したけれどね。私が言いたいのは、二人とも、パートナーを見つけて舞踏会を満喫しなさいなってこと。めぼしい相手がいないのなら、ちょっと私が見繕ってきてあげるけど?」

「いい。結構。充分満喫してるので、間に合ってます」

「同じく」

 

 私とタバサの鉄壁ガードに、キュルケは深くため息をついた。実際には予想した答えだったのだろう。今のため息もどこか大げさなものだった。

 

「はいはい、わかったわよ。二人してそんなのだから、男子もこの辺りに寄り付かないのよ? もう、そんなに気が合うならいっそ、貴女たち二人で踊ったらいいじゃない」

 

 キュルケはそれだけ言うと、手をひらひらとさせてまたホールへ戻っていく。あっという間に男子に囲まれていった。なんか、角砂糖に群がる蟻を見ているようだ。

 そして私とタバサはキュルケのその言葉に、思わず顔を見合わせる。その発想はなかったわ。まぁ、その発想は確かになかったけれど、だからといって踊ったりはしないけどさ。

 

 ふ、と風が揺らぐ気配。窓の外を見るとフクロウがこちらへと飛んでくるのが見えた。足には書簡、伝書フクロウか。【風】のメイジであるタバサがフクロウに気づいていない筈もない。

 

「タバサ、頑張ってね」

 

 私はタバサの肩をぽん、と軽く叩いて歩き去る。私がここにいてはタバサもやりずらかろう。ばさばさと、フクロウの羽ばたく音が背後に聞こえていた。

 

 

 

 アルコールが入って、火照った身体を冷ますために私はバルコニーに出ていた。

 気分が高揚していたからか加減しないで飲んでしまった。ハルケギニアではワインは日常的なものだというのに、こんなにも酔ったのは『俺』の大学での飲み会以来かもしれない。ああ、ダメだな。なんか色々ごっちゃになってる。

 

 バルコニーの手すりに手を乗せて、空を仰ぐ。浮かんでいるのは、双月だ。いつしか慣れ親しんだ、ハルケギニアの月たち。

 風が柔らかく吹き、それが涼しくて気持ちがいい。遠くに、シルフィードの羽ばたく姿が見える。にんまり、と自然と笑みが顔に浮かんでくる。何だか踊り出したいような気持ちだ。

 

「お、担い手の娘ッ子、おめさんは踊らないのか?」

「……何だ、デル公か。お前こそ、相棒に置いてかれたのか?」

 

 いくつかバルコニーがあるけれど、どうやらここは才人がいたバルコニーだったようだ。抜き身のデルフリンガーが、手すりに立てかけられていた。かたかたと音を立てている。

 

「俺、担い手の娘ッ子には呼ばれたことなかったけど、実はそんな呼び方されてたのかよ。それに、なんか口調ちがわね? ん? 俺の気のせい?」

「ああ、気のせいじゃねーよ。ちょっと酔ってるのかもな。滅多なことじゃこうはならねーんだけど、今日は何だか、無性に気分がいいからかな」

「そか。剣の俺にはよくわかんねーけど、相棒みてーな話し方するんだな」

「おうとも。二人には内緒だぞ。男と男の約束だ」

「担い手の娘ッ子はどこからどー見ても女だろうが……。お前さん実は相当酔ってるんだな。ま、あんなに落ち込んでふててた相棒もあそこで主人と仲良く踊ってる。気分がいいってのは、いいことだ」

「だな。ははっ」

 

 万事、上手くいっている。ルイズと仲良くなれて、キュルケとタバサと友達になって、才人と一緒に使い魔をやれている。順風満帆というやつだ。

 

「お、そういや、デル公。訊いておきたかったんだけどさ。魔法使うと、ガンダールヴのルーンって弱くなるのか? それとも、ガンダールヴの力を使ってると、精神力を消費するってことか?」

「ん? 今日言ったけどよ、『魔法を使うと、心が震えなくなってルーンが弱まる』のさ。ガンダールヴのルーン自体は、心の震えに反響しているようなもんだから、別に精神力が減るってこともないと思うんだけどよ」

 

 「詳しくはわかんね。だって俺剣だし」そう言って、カタカタとまた音を立てた。

 

 情報が正しいとして、つまりは魔法で戦って接近されたらガンダールヴ発動という戦法は効率的ではないらしい。ガンダールヴ発動中に魔法を使っていくと、ルーンの効果は次第に弱まっていくようだ。

 効率的に運用するなら『ガンダールヴだけで倒す』か、『発動中、魔法を使った際に確実に勝負を決める』ということになる。前者はこの華奢な身体ではたかが知れてるし、後者もガンダールヴ主体で戦うことに変わりない。

 となるとやっぱり魔法主体で戦って、ガンダールヴは悪足掻き程度ってことになりそうだ。そもそも、ナイフじゃ大物相手にはどうしようもないしな。結局は、ないよりはマシって程度に落ち着いてしまいそうだ。伝説のルーンの扱われ方じゃないとは思うが。

 

「そっか、さんきゅな」

「おお。よくわかんねーけど、この程度で役に立ったんならお安い御用だ」

 

 ぼんやりと、ホールで踊るルイズと才人をデルフリンガーと一緒に眺めていると、ルイズがそんな私に気づき、赤い顔しながら何か言っている。

 ここでは聞き取れない。そんな様子を感じ取ったのか、ルイズは私に向かって手招きをし始めた。いくらか酔いが醒めた頭を働かせる。少しふらつく足取りで、ご主人様ともう一人の使い魔とが踊るホールへとゆっくりと歩いていく。

 

 ――はてさてご主人様は、今度はいったい何をこの使い魔に言いつけるのだろうか。

 

 

 

 




ここまでで原作一巻分になります。
当時多忙になり、構想はあれども執筆時間の捻出が出来そうになかった為に一旦ここで完結としてました。
その後多少の時間が出来てここからの続きを何話か書きましたが、また時間を作れなくなってしまった為に未完となった次第です。
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