咲坂高校冒険部活動報告書   作:ホエール

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   咲坂高校冒険部活動報告書

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 そもそも大事なことを忘れている。何故県警はわざわざ『代々木ダンジョン村』に突撃したのか?

何故『百億万』は終盤やけくそだからと言って『代々木ダンジョン村』を戦場に選んだのか。

1人、忘れられた奴がいる。そう……。

 

「なんで、私が、こんな目に! 役立たずの中国人ども!!」

自称ジャーナリストのレイパー産業スパイだ。女性たちを強姦し時に脅迫してそれを取材活動と言ってのける男だ。

ダンジョン経由で国外逃亡を図る彼を捕まえるために県警は警視庁の要請に応えてダンジョンへと踏み出した。

『女子寮』はその話を盗聴して、キルゼムオールスイッチが入って暴れだしたのが発端だ。

たまたま現場でブラック企業の摘発を別の行政当局が行ってたに過ぎない。

 

「護衛の中国人傭兵どもは全員役立たずだった! 私を救出しに来るはずの部隊だってモンスターだけ連れてきて私のことを探しにも来ない!

全部、『女子寮』とかいう、女どものくせに生意気なブスカスどものせいです!! おとなしくエリート男どもに抱かれてればすべてが安泰だというのに」

人に見られないようにビクビクとしながら拳銃片手に周囲を警戒しながらテントやプレハブ建築やコンテナハウスが並ぶ『代々木ダンジョン村』を彷徨い歩く。

 

と こ ろ で 、 『 女 子 寮 』 に 味 方 は い な か っ た の か ?

 

キルゼムオールスイッチの入った『女子寮』は果たして単独だけで活動していただろうか? 友好勢力は本当にいなかったのだろうか。

答え合わせだ。

 

「!?」

後方から聞こえてきた足音。肩を震わせ一瞬で後ろを振り返る男の視界に入る1人の女。

猫耳尻尾にメイド服、デカい斧。そんな属性山盛りの少女。この場に『川上』がいれば「助けてくれてありがとうございます」とでも声をかけたかもしれない。

 

「この姿をしているから、多分すぐには気づかないだろうけど……声はリアルそのまんまだよ。それともわからない? 『いや、離して、嫌だ』って叫ばないと」

「わか――――」

――――――銃声。男は引き金を引く

 

「――ませんよ!!」

1回ではない。何度も。それが男の答え。そしてこの答えの代償は意外と大きかった。彼の放った銃弾はたやすく防がれ、その大斧が彼の片足を千切るように切断する。

それを理解して、遅れた痛みが男の意識に突き刺さる。

 

「安心して、警察には引き渡すから。でもその前に、お礼参りさせてよ。『通常の現実世界(レベルゼロ)』ではさすがの私も手を出せない。

でももしもあなたが、ダンジョン……このディープ・フロンティアスペースを活用することがあれば……そんああなたを探すためにあちこちに頭を下げて頼んだんだから。

だからさ、今度はあなたが喘いで見せてよ。あの時気色の悪い笑みで人を見降ろしていたように扱ってあげるからさ」

「が……ガ……ッ……」

 

半日ほどたち、警察はちゃんと男を逮捕出来た。ダンジョンアバターであるため、外傷は無かったが、軽度のPTSDらしき症状を発症していたため、対応を検討中だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで退職願が返却されるので? 普通に考えて法令違反になりかねませんが」

労働基準監督署にて、『長谷川』はそんなことを上司に言って

 

「責任をとると称して責任逃れでこんなもん提出してんじゃねえよ。そもそも超本気なら人事院巻き込んでやるだろ」

そう突き返された。

 

「ああそうそう、『川上』のことだが、来年本採用出来ないか検討するからお前が試験突破の勉学をつけてやれ」

「えっ、あいつやめないんですか?」  「誰かさんのせいで変な正義感に燃えてるようでな。どのみち今組織の外に出たらマスコミ対応もあいつ1人でする羽目になるだろ」

そして、いつも通りの業務が始まった。

労基が真っ先に取り締まるべきは労基、労働時間の拘束が労働基準法違反の現場、そんな風に冗談半分に言われるいつもの日々が戻った。

 

 

 

「あのクソガキども!! 今度こそ補導してやる!!」

県警の女性刑事『村井』は目の下にクマを作って荒れていた。『代々木ダンジョン村』の騒動は警察にとってまだ終わっていない。

被疑者を捕まえましたで多くのミステリー作品はハッピーエンドを迎えるが、実際はその後の警察業務の方がはるかに大変だ。

ましてや、県警目線では武装蜂起にも等しい大暴れした『女子寮』を公務執行妨害やその他色々なあれこれで鎮圧し、例の強姦魔のクソ野郎を捕まえたのだ。

 

「泣き言が言える元気があるんだな……」  「あっ、課長。ゆ、許してください!」

「睡眠不足でぶっ壊れた刑事って言うのは、最後は空元気にもなれないんだぞ。おまえ、まだ元気じゃないか」

「ヒィっ!?」  「せんぱーい、お昼ご飯ですよ~担々麺と博多トンコツ、どっちのカップ麺がいいですか~……ぁ~ちょっとお手洗いに」

「『加西』ィ! 逃げんな!」

微妙に手を抜くことを覚え始めた『加西』は先輩と課長の死の視線を前に怯えて逃げ出そうとして、逃げられなかった。

女性刑事2人組は今日も激務である。

 

「あの『冒険部』ども! あいつらも本当は警察的にとっちめないといけないのに、仕事量が、クソガキどもぉぉぉおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

 

目前に控える夏休み。県内ではそこそこの名門進学校。それが咲坂高校だ。でもって、なんだかんだで歴史のある冒険部。

ダンジョン登場以前であれば登山や川下りのような事をしていた。

洞窟探検の記録もあるし、アドベンチャーレース参加を目指していた時代もあるそうだ。

つまり何が言いたいかというと、

 

「あのそのですね!?」  「『部長』、OBOGの電話から解放されませんね」

「いい気味やで……暴れすぎや。結局赤字体質は変わらん。装甲化トロールの素材を山ほど手に入れて捌けたから破産は免れたやけど」

「……対戦車ミサイルはOBOGが残してくれた遺産ですから……1発だけなら何とかなりましたです」

「2発目をユーズしなかったからバットにならなかったおかげで……」

「うるさーーい!! 先輩たちの声を遮って怒らせたらあんたたちのせいだからね!!」

「「「『部長』の自業自得では?」」」

『部長』が昔ながらのサラリーマンを連想させる動き、すなわち電話片手にペコペコと頭を下げながらかかってくるOBOGからのお叱りの電話に応答し

『関西』『いちちゃん』『オキタ』の3人は使用した弾薬の帳簿をつけている。

全員結局±0と言った感じの収益に思わずため息が出そうだ。

 

「ところで、そもそもの最初の目的をみんな忘れてへんか?」  「「「最初の目的……???」」」

「これって、部員募集のために始めたコンテンツやなかったけ」

「「「あっ……」」」

そこにあるのは絶賛色々な意味で炎上中の動画サイトの冒険部公式ページ、いわゆるチャンネルである。

チャンネル名は『咲坂高校冒険部活動報告書』。

良いも悪いも続々とダイレクトメッセージが入ってきてたった4人の高校生たちの対処能力はとっくに飽和している。

かつての名門部活動も今となっては2年生が4人だけ。歴史と伝統があるがゆえに未だ部活動としてカウントされてるだけの弱小部活動である。

 

「収益化の手続きはさっきやったよ」  「あっ、そうなんですか……聞いて無いんですけど『部長』」

「だってぇ……みんなの頑張りの結晶だよ」

そういわれると部員たちは鬼ではない。和やかな空気が流れ、まるですべてが解決したかのような雰囲気に突入して、やはり『部長』のスマホに着信。

 

「は、はひ! わかりました! 今スピーカーにします!」  「「「?」」」

『――みなさーん』  「「「『前部長様』!? いったいどうしましたか!?」」」

何も知らない人が見たら、スマホに対して礼をする怖い体育会系の場面と映るだろう。普段であれば冒険部4人組もここまではしない。

ただ、お叱りが待っていると思うとそうなってしまうのだ。

 

『――いえ、今日は皆さんを叱るのではなく、純粋に気になったことを聞こうと思いまして……確定申告の準備はお済ですか?』

「何を言っているんです? 私たち結局±0で、ろくな収支は」  

『――あー……あのね。例え最終的な結果がそうだったとしても皆さんはダンジョンで稼ぎを得たわけで立派な所得税の課税対象ですよ?

最終的な収支が黒字赤字というのは税金の計算が終わった後の話ですよ? というか、ちゃんと準備してます? 私たちがまだ学校いた頃、私たちが税理士さんに全部

お願いしてたからあなたたちは特に意識すること少なかったと思うけど……なんか活躍したらしいじゃない? ダンジョンの免税措置の枠内を飛び越えてないか確認した?』

「「「……………………………………………………」」」

応えは沈黙と4人の真っ青な顔がすべてを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、本当の意味で忘れられた奴がいる。そもそもなぜ冒険部は焦って動画配信で部員募集とか急に言い出したか。

それは、ダンジョンビギナーズラックで大儲けした『野球部の山本』がいたからだ。

弱小野球部のこれまた初心者程度がダンジョンで1千万円を稼ぐとかいうミラクルを起こして弱小野球部の設備代に寄付するとかいう感動の一場面に

仮にもダンジョン系部活動としてプライドを持ってた冒険部のプライドが……。

 

「『山本』! お帰り!!! どうだったよ! ダンジョン! 今回もまたすごいことをやったんじゃないか?」

「俺たち、お前の後を追いつけるように今頑張って装備を整えて……」

「みんな……………………ダンジョンよりまず練習しよう」

 

 

 

Tips:『野球部の山本』……寄りにもよって、あの日、代々木ダンジョン村にいたらしい。

山本はダンジョンに行くことをやめて、真面目に練習することから始めることにした。

 

 

 

咲坂高校冒険部活動報告書 終

 

 




以上で本作は完結です。ありがとうございました
実のところ2回目の大尉戦はもっと派手にする予定だったので、次回の彼の逆襲にご期待くださいと言いたいですが、今作は今のところここで筆をおかせて頂きます

お付き合いいただきありがとうございました
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