【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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体育祭に向けて特訓

 夏油がA組の様子を見に行った日の次の日放課後、夏油たちB組はトレーニングルームに体操服姿で集まっていた。ここでなら個性が自由に使える。

 夏油たちは約束通り希望者で一緒に訓練しようとした。クラスで声を掛けると、結局全員が参加することになった。

 しかしもう雄英体育祭まで2週間を切っており、短期間ではできることも限られてくる。

 

「拳藤、こんなデカいトレーニングルームを借りてくれたのはありがたいが全員来るのは想定外だった。逆に効率悪くないか?」

 

 夏油が拳藤に問いかける。

 

「たしかに……夏油は元々どんな訓練をするつもりだったんだ?」

「個性の強化と素の肉体の強化に分けるつもりだった。例えば鉄哲」

 

 そう言って夏油は鉄哲に目を向ける。

 

「俺か?」

「君は素の肉体もかなり鍛えているだろう?なら個性を鍛えるべきだ。その方があと2週間足らずなら効果的だと思う」

「おう!じゃあそうするぜ!」

「ただね、素の体力、フィジカル不足の人もいると思う。例えば円場ね」

「なに⁉」

 

 急にディスられた円場が驚いている。

 

「その場合は個性を鍛えるか体力を鍛えるか悩ましいね。個性が体育祭でも使えそうなら個性の強化でもいいんだが、例えば小大や柳なんかは物がないと個性が使い辛いだろう?」

「ん」

「たしかに……」

「なら体力強化に努めるのもありではある。悩ましいから各々何が効果的か自分で考えてみよう。練習相手は私が呪霊を出すよ。私の訓練にもなるしね」

 

 B組一同は夏油の言うことに一理あると思ったのかそれぞれ考えている様子。

 

「あぁ、言い忘れていたが増強型の個性は私と強制的に殴り合いだから」

「「「「は?」」」」

「ん?変なこと言ったかな?増強型は個性と肉体両方を一気に鍛えられる。お得な個性だね。該当者は宍田、回原、それに庄田の3人かな?正確には増強型ではないかもしれないが問題ないだろう。あと希望者も殴り合いに参加オーケーだよ」

 

 夏油がそこまで言うと、名指しされた面子の反応は様々だった。

 

「おー、やっと夏油氏と訓練できるのですな!」

「夏油と殴り合い……マジかよ……」

「クラストップの実力者との訓練……僕も頑張らなければ……!」

 

 宍田は単純に喜んでいた。回原はビビっていたが庄田は強者との戦いを糧にしようと意気込んでいる。

 

「夏油!俺も参加したいぞ!」

 

 鉄哲も殴り合いに参加希望のようだ。

 

「鉄哲には特別メニューがあるからそっちだね」

「特別メニュー?」

「出てきてください、レヴナント」

 

 志村が出てくる。

 

「やあ皆、直に会うのは久しぶりかな?いつも傑の中から見させてもらってるよ」

 

 志村が挨拶すると女子が集まる。

 

「レヴナントさん、お久しぶりです!」

「ん」

「中から見るのってどんな感じなの?」

「こんにちは」

「ハロー!」

 

 女子組が話し始めたところで鉄哲がずいっと出てくる。

 

「挨拶はいいけどよ、俺の特別メニューって何なんだ?」

「それはね、焼入れだよ」

「焼入れ?なんだそれ?」

「私もあまり詳しくないけどね、簡単に言えば金属を高温状態にしてから急激に冷却する事らしい。そうすれば金属は固くなるんだと。それと合わせて強力な力で叩いて鍛える。これにはレヴナントが最適なのさ」

「ん?レヴナントさんって熱出せるのか?」

「青白い炎を出せる個性さ。ちょっと見せてくれるかい?」

「わかった」

 

 そう言って志村は体から炎を出す。だがそこでアクシデントが起きる。授業でなくコスチュームを着ていなかったため志村は顔をフェイスベールで隠していたが、そこに引火してしまったのだ。

 

「顔!顔燃えてる!」

「消火だ、消化しなきゃ」

 

 慌てているうちに燃え尽きてしまい志村の顔が露になる。夏油は目線で志村に大丈夫か問いかける。志村はそれに応えるように目線を向ける。

 

「そういえばコスチュームを着ていないのを忘れていたよ。普段は顔を隠しているけど、こんな顔してるんだ。改めてよろしくね」

「レヴナントはシャイでね。あまり大勢に顔を見せたくないんだ。美人で驚いただろう?私が恋してしまうのも納得な人なんだ」

 

 B組一同は当初驚いているようだったが女子組がキャーキャー言い始め男子も回復してきた。

 

「夏油の個性って彼女作れるのか?」

「わからんが美人でびっくりした」

「なんか母性を感じる」

 

 収拾がつかなそうなので夏油が仕切り直す。

 

「おーい、皆そろそろ訓練に入ろう。鉄哲はレヴナントと特別訓練、増強型は私と殴り合い、個性を鍛えたい人は呪霊相手に、体力強化はここじゃなくて筋トレ器具がある部屋に行こう。じゃあ解散!」

 

 というわけで各自の課題に合わせて訓練を始める。

 

「じゃあ始めようか。個性ありの正面からの殴り合いだ。誰からやる?」

「私からいいですかな?夏油氏との訓練を心待ちにしていたので」

 

 宍田が立候補する。

 

「じゃあ宍田からいこうか。先手は譲るよ。かかってきな」

「行きますぞ!」

 

 宍田は個性を使い体が二倍ほどになり瞬時に距離を詰めてくる。そして夏油に殴りかかった。

 だが夏油はそれを真正面から受け、微動だもしなかった。

 

「スピードもパワーもいいね。ただ動きが直線的で読みやすい。もう少しフェイント入れるとか相手を惑わす動きも取り入れよう」

 

 そう言って夏油は宍田を蹴り飛ばす。それに対し宍田はすぐに起き上がる。

 

「結構良いの入ったけどすぐに起き上がるとは。タフネスも申し分ない」

 

 そのまま夏油と宍田は打ち合うが宍田の動きが雑になってきた。

 

「ハハハハハ!楽しくなってきましたなァアア!」

「動きが雑になってるよ。ハイになってるのかな?理性のコントロールはやっぱり課題だね。あとは単純に体の使い方も。じゃあお疲れ様」

 

 夏油の拳が宍田の腹を打ち抜く。

 

「グハッ!」

 

 宍田はうずくまって動けない。

 

「次、回原行こうか?」

「…………はい」

 

 回原は腕や指、足を回転させ夏油に攻撃する。それを防御する夏油。しばらく打ち合う二人。

 

「へえ、見た目以上に威力があるね。それに防御力も高い。ただ……」

 

 夏油は回原の顔面を小突く。

 

「回転させてない部位の防御は考えたほうがいいね。それに加えてもっとごり押しできるように近接格闘を強化しよう。次は庄田行こうか」

「ふぅ、無事に終わった」

「安心してるところ悪いけど2周目以降もあるよ」

 

 夏油が回原に声を掛ける。

 

「ではよろしく頼むよ、夏油くん」

 

 庄田が夏油に拳を叩きこむ。それを夏油は腕でガード。そしてツインインパクトを開放する。夏油にさっきの数倍の衝撃が来た。

 

「やっぱり面白い個性だね。タイミングや使い方を工夫すれば強力だ。それに動きもキレてるね」

「動ける恵体を目指しているのさ!」

 

 庄田は3人の中でも個性を除いた動きが一番良かった。

 

「いいね、私好みの体の使い方だ。ただ個性の使い方に改善の余地ありかな?」

 

 しばらく打ち合ってから夏油は終わりを告げた。

 

「よし、次はまた宍田だ。どんどん行こう」

 

 夏油は順番に三人を相手にしていく。同時に他のB組の様子も見ているが、特に問題なく集中して取り組んでいるようだった。

 何周か対戦していたが3人の動きが疲れて単調になってきた。

 

「今日はこの辺にしとこうか。オーバーワークは怪我の元だ。体育祭までに体を壊しては元も子もないしね」

 

 夏油がそう言うと3人は疲れて地面に寝そべった。

 

「いい経験でしたが疲れましたな……」

「俺もう動けねえよ……このまま寝ていいか?」

「僕ももう限界だ……でも為になったよ」

 

 3人とも限界だったようだ。

 

「続けていくうちに慣れるさ。私は毎日のようにレヴナントと訓練しているよ」

「毎日ですか……それは敵わないはずですぞ……」

「しばらく休憩してなよ。皆の様子も確認していたが直に見てくるよ」

 

 夏油はB組の皆の様子を見て回る。概ね順調そうだった。

 

「夏油、どうしたんだ?そっちはいいのか?」

 

 声を掛けてきたのは拳藤だ。

 

「結構ハードだったし一旦休憩させてる。私は皆の様子を見ようと思ってね。呪霊で見るのも限界があるし。君は順調かい?」

「いい訓練になってるよ。やっぱりただ的じゃなくて生の生物相手だと実戦的でいいな。それより夏油はこんな数操って大丈夫なのか?負担だったらやり方考えようかと思ってるんだが……」

「問題ないさ。個性がない雑魚呪霊は必要な脳のキャパが極端に少ない。これくらいならまだまだ余裕があるよ」

「そっか。なら良かった。夏油にばっかり負担が行くのは申し訳なくてさ」

「気にするなよ。私がやりたいんだ。様子を見ていて思ったが拳藤も私と組み手するか?君の実力なら雑魚呪霊は相手にならなそうだ」

 

 夏油がそう言うと拳藤は悩んでいた。

 

「どうしようかな……でも今は個性の強化を優先したいから来週あたりの状況次第で参加していいか?」

「もちろん。じゃあ私は鉄哲の様子を見てくるよ」

 

 鉄哲は訓練が特殊なのも相まって高熱に耐性のある防火室で訓練をしていた。夏油が扉を開けると、熱気で喉が焼けそうなほどだった。

 

「これは…………やりすぎでは?」

 

 

 

※※※

志村side

 少し時は遡って訓練開始から志村と鉄哲の二人は防火室に行こうとしたが、

 

「そういえば君、体操着って燃えるよね?許可取ってコスチューム着たほうが良くないか?」

「そうっすね!じゃあ申請書出してきます!」

 

 そう言って鉄哲は走って行った。

 

「若いってのは元気だね。傑が落ち着いてるからあんまり思うことなかったんだけどな……」

 

 志村が部屋の準備をしていると鉄哲が帰って来た。

 

「遅くなりました!じゃあこれで始められますね!」

「ああ。それじゃあ行くよ。個性使ってみて」

 

 鉄哲は個性を使い体を金属にした。それを志村が殴る。鈍い音が部屋に響く。

 

「うん、何となく硬さ把握したよ。今のままでも十分強いけどもっと硬く、頑丈になったら最強の盾になれると思わないかい?」

「最強の盾……いいな、それ!」

「じゃあ私も心を鬼にして君を燃やそう」

「えっ」

「個性を使うんだ、鉄哲くん」

 

 指示に従う鉄哲。

 

「よし、じゃあ行くよ!狐火!」

 

 志村の腕から放たれた青白い炎が鉄哲に襲い掛かる。

 

「へっ!このぐらい余裕だぜ!」

「そうか。じゃあこれは?」

「余裕だぜ!」

「これは?」

「余裕……」

「これは?」

「よ、ゆ、う……」

「よし、ここまで!すぐに冷却しよう」

 

 用意してあった冷水の風呂に鉄哲を浸ける。

 

「あ~涼しいぜ~。今の感じでいいんですか?」

「今のプラスで熱々状態でサンドバックになってもらう」

「よっしゃ!受けて立つぜ!」

「その意気だ」

 

 志村と鉄哲は熱する、叩く、冷やすを繰り返した。冷やすために風呂に入っていた鉄哲は不意に問いかけた。

 

「夏油って家でも同じ感じですか?」

「ん?急にどうしたんだ?」

「いや、夏油って入学当初は暗い空気というか人を寄せ付けない雰囲気出してたなってふと思ったんですけど、今はB組のために色々してるじゃないですか。馬鹿な俺をいつもフォローしてくれてるし。だから家でくらいは楽しそうにくつろいでるのかなーと思ったり」

 

 鉄哲は夏油の忙しさを大変そうだと思っていた。家では流石に休んでるよな?と疑ってもいる。

 

「家事は私と分担してやっているよ。料理はやらせてくれないけどね。あとは個性の訓練とか勉強とかかな?詳細は直接話すのを待ってあげて欲しいんだけど、彼も昔から苦労していたみたいでね。君たちが友達に、仲間になってくれたおかげで元気になったんだ。感謝しているよ」

「でも現実は俺、夏油に頼りっぱなしっす。追いつきてえなぁ……」

「それには限界を超える必要がある。付いてこられるか?」

「もちろんだ!」

 

 それから志村は一気に火力を上げて鉄哲を限界まで追い詰めた。そうすると部屋の中の温度は常人では入ったらすぐに意識を失うほどになっていた。

 

 

 

※※※

夏油side

 

 夏油が入った時には鉄哲は黒焦げだった。

 

「やりすぎだろう……とりあえずこん中入れ」

 

 夏油はエイを出し口に鉄哲を入れた。

 

「菜奈さん、流石にやりすぎでは?」

「これが彼の覚悟だよ。君に追いつくというね」

「そんなこと考えなくてもいいのに。でも気持ちは嬉しい」

 

 夏油は自然と笑顔になっていた。そこに物間がやって来る。

 

「夏油、拳藤が探していたよ。そろそろ終わろうって」

「わかった。ありがとな。それと物間は体鍛える必要あんまりないだろ?明日からは個性の訓練やっていこうか」

「いや、僕のフィジカルじゃもっと体鍛えたほうがいい気がするが」

「基礎的なところは自分でやってたんだろう?」

「どうしてそれを……⁉」

「見てればわかるさ。君の努力は感じ取っていたよ。なら君の強力な個性を使う番ってわけだ。個性自体の強化方法は分からないからそこは相談だがね」

「夏油……君には敵わないね。コソ練がバレていたとは。最初の訓練で君を見て思ったんだ。体も鍛えなきゃこの個性は思う存分使えないってね」

「いいじゃないか。自分で考え行動する。理想的なプロセスだ。一緒に強くなろう、仲間だろう?」

「だね」

 

 この日の訓練はこれで終わった。ほぼ全員がボロボロになりながら更衣室に行く様は異様だっただろう。

 

 翌週も月曜日の放課後から訓練をしていた。その翌日も、その次の日も…………

 

 そしてついに体育祭の前日。訓練の半分が過ぎたくらいにB組担任のブラドキングが大量の荷物と一緒にやって来た。

 

「今日も元気にやってるな!差し入れ持ってきたぞ!」

 

 どうやらブラドキングは差し入れを持ってきたようだった。ジュースやアイスの箱が大量にある。

 

「やったー!」

「休憩時間だー!」

「虫さん生命力ヤバすぎだろ…………」

 

 各々手に取って食べたり飲んだりしている。夏油もジュースだけ飲む。そこにブラドキングがやって来る。

 

「夏油、ちょっといいか?」

「はい、なんですか?ここじゃ不味いなら移動しますか?」

「いや、別にここでいい。業務連絡が三点ある。まず明日の体育祭の選手宣誓を夏油がやってもらうことになった!」

「選手宣誓?何言えばいいんです?」

「何でもいいぞ。雄英は自由が売りだからな」

「いやちゃんとしたこと言えよ、夏油。他クラスに喧嘩を売ったりしちゃダメだからな!この前の騒動忘れてないんだぞ!」

 

 拳藤が忠告する。この前のA組煽り騒動をまだ覚えているようだ。

 

「喧嘩を売る……挑発……いい考えが浮かびそうだ。それで二点目は何です?」

「夏油が持ち込みたいと言っていた三節棍の件だが、却下された」

「まあ仕方ないですね。個性に絶対必要というわけではないですし」

「まぁそういう理由だ」

 

 実際のところは少し違う。格納呪霊がいるならそこに入れておくのは自由なのでは?という意見もでた。

 だがあまりにも強い夏油に武器を装備させたら本格的にどうしようも無くなるという理由が大きい。

 

「最後の連絡が体育祭では多くの負傷者が出る。その治療を手伝って欲しいとの要請だ。もう個性使用許可証は発行されたんだろう?」

「ええ。なので治療行為は問題ないはずです」

「でも先生!選手として参加するのに治療までって夏油の負担が大きくないですか?」

 

 物間が夏油の負担を気遣う。

 

「それは俺も意見したんだが、どうやら公安委員会絡みらしくどうにもな。ただし競技に差し支えるならばすぐに俺に言え。治療行為は取りやめだ。責任は俺が取る」

「ブラド先生…………ありがとうございます」

 

 夏油は感動していた。これが教師の本来あるべき姿かと……ブラドキングに対し好意的であったがその気持ちがより一層強まった。

 

「あとこれはお前たちの担任としてだが、こんなに団結力があるクラスは初めてだ。俺は嬉しい!特に夏油!お前がいなければこんな訓練は出来なかった。ありがとう!このままB組が大活躍する体育祭にするぞ!!」

「「「「「おーー!!!」」」」」

 

 クラスの雰囲気はとても良かった。これなら楽しい体育祭になると期待する夏油であった。

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