雄英体育祭の第二種目まで終わり、昼休憩を挟んでレクリエーション種目が行われる。だがその前に最終種目が発表された。
『最終種目は進出16名からなるトーナメント形式!一対一のガチバトルだ!』
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きをしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!レクに関しては進出者16人は参加は自由とします。息抜きしたい人も温存したいん人もいるしね。んじゃ1位から順に引いてね」
ミッドナイトはくじ引きの箱を持って1位のチームを呼ぶ。夏油が最初に引いて宍田も続く。その後も16人全員が滞りなく引いた。
「組はこうなりました!」
そう言って組が前に表示される。夏油の相手はいきなり宍田だった。
「正直いきなり君と当たるとは驚いたよ」
「私もですぞ。でも手加減はしないで欲しいですな。全力の夏油氏と戦いたいですので」
「もとよりそのつもりはないさ。特に君相手には失礼だろう?お互いある程度実力は分かっているのに」
「愚問でしたな」
夏油と宍田が良い感じに高め合ってる間に物間は迷っていた。
「ここはどちらを応援するべきなんだ⁉くそう!くじ運が悪いぞ、二人とも!」
組合わせも決まったのでレクリエーションに移る。その間夏油は観客席に座っていた。
『傑は参加しなくていいのか?』
志村が夏油にレクリエーション種目の参加を促す。
『いやー、興味ないですね』
『楽しそうなのに。それにほら、チアもいるぞ!あっちにもチアの恰好した若い子いるしもっと見なよ』
何故かチアの恰好をしているA組女子を指してそう言う。
『若い子はどうしても子供にみえてしまうんですよね。菜奈さんくらいの見た目が好みなんですよ』
『いい加減諦めないか?私は死んだ身だぞ?普通の子を探しなよ。君カッコイイからモテるんだし』
志村は夏油に普通の恋人を作って欲しいようだ。
『諦めませんよ。あなたは私にとってなくてはならない存在。私が求める女性はあなた以外にはいません』
『どうしてこうなったかな……まぁ今は最終種目に集中しようか。作戦はあるのかい?』
『臨機応変です』
『つまりないんだね。それでも何とかなりそうなのが恐ろしいけど』
『B組相手だとやりにくいですね。心を折るのも怪我をさせるのも申し訳ない。A組相手なら気にしないんですが……』
B組のことは家族も同然と思っている夏油だが、A組相手は同学年としか認識していない。
『A組相手でも酷い怪我は負わしちゃダメだぞ?これは君の為でもあるんだ。全国放送されてるのを忘れるなよ』
『わかってますよ。ヒーローは人気商売ですからね。常に笑顔で、ですよね?』
『わかってるならいいけど、傑の笑顔って胡散臭いんだよなぁ』
『失礼ですね。話している間に始まりますよ』
夏油の言う通りそろそろ試合が始まろうとしていた。
「それじゃあ皆、私は出張保健所に行くからまた後で」
夏油は回復係として保健所に呼ばれているので、B組に挨拶しつつ席を立つ。
「おう、でも無理すんなよ?」
「そうだぜ!お前はトーナメントもあるんだし」
「よく考えたら酷いよな、これから戦うのにその前に個性使わせるなんて」
「なんかあったら私らも抗議しに行くから知らせてね」
皆の気遣いが胸に沁みる夏油。礼を言ってそのままリカバリーガールの元へ。
「悪いね、夏油。私も夏油に個性使わせるのは反対なんだけどね。とりあえず飴をあげよう」
「ありがとうございます。無理しない程度にやりますよ」
そう言って出張保健所にもついているモニターで試合を観戦する。
一戦目は緑谷対骨抜だった。
『この勝負、どう見ますか?』
『骨抜くんは範囲制圧に優れているがタイマン向きの個性ではないね。緑谷くんは個性がわからないからなぁ……』
『緑谷は自壊するほどの超パワーのようですよ。今日は怪我してなさそうなので、今は壊さないのかもしれませんが』
『だとすると緑谷くんの方が有利かな?ん?自壊するほどの超パワー?それってもしかして……』
『あなたの思い浮かべる通り、ワンフォーオールを思い浮かべますよね。成長した個性を受け継いでコントロールできていないのかもしれない、と……』
『俊典が選んだかもしれない子か……ワンフォーオールが成長していれば、普通の体じゃ器が壊れるということも十分考えられるね』
夏油と志村の会話の間に選手が入場してきた。
『一回戦!成績のわりになんだその顔!A組緑谷出久!バーサス!柔軟な対応が魅力な推薦入学者!骨抜柔造!そんじゃ早速始めよか!レディイイイイイ、スタート!!』
始まった途端、骨抜はしゃがんで緑谷までの地面を柔化させる。それに対して緑谷は迷わずに中指をデコピンの要領で弾いた。
そうすると風圧で骨抜が吹き飛ばされた。場外ギリギリの所でこらえるが間髪入れずに緑谷は二発目を打つ。骨抜は場外に出された。
『骨抜くん場外!緑谷くん二回戦進出!』
あっさり骨抜は負けてしまった。緑谷は指を怪我しているようで、夏油に早速仕事がありそうだ。
『傑……やっぱりこの感じ……ワンフォーオールだ。間違いない……』
『どうします?接触しますか?』
『いや……いい。私はもう居ないはずの人間なんだ。でしゃばるべきじゃない』
『わかりました。あなたがそう言うのなら』
志村は緑谷に声を掛けないことに決めた。
その後緑谷が保健所にやって来た。
「リカバリーガール、治療を……ってお取込み中でしたか?」
「いいや、この子は治療係さ。それより早く怪我を見せな」
「はい……」
緑谷は夏油がいるのを不思議がっているようだった。それにA組を煽ったり予選でも暴れていたから怖がっているのかもしれない。
「うーん……折れてそうだね。内出血もしてる。でも綺麗に折れてるからこのまま治療して良さそうだ。夏油、やってみな」
「わかりました」
夏油はエイを呼び出し、進化した回復粒子を緑谷に振りまかせる。そうすると緑谷の指が治っていく。
「すごい!エイみたいな生き物の撒く粉を浴びたら痛みが引いて行った!それに指が思う通りに動く……完全に治ったみたいだ……」
「うん、よさそうだね。お疲れ様、夏油。緑谷は一応包帯巻いておくから手出しな」
そこで扉が開いて誰かが入って来る。
「緑谷少年!よくやったな!一回戦突破おめ……ってまずい!」
「ノックしてから入ってきなよ!」
「申し訳ありません、リカバリーガール。慌ててしまって、つい……」
その男はガリガリな骸骨のような男だった。
『俊典……?まさか俊典じゃないか……?』
「は……?」
志村の声につい反応してしまう夏油。
「どうしたんだい、夏油。この男は見覚えないかもしれないけど雄英の職員だよ」
「すまないね、いきなり入ってきてしまって。私は八木という。ここで働いている者だ。緑谷しょ……くんとは何度か会ったことがあってね。怪我をしたというので慌ててきてしまった」
「そ、そうなんだ!八木さんとは入学してから仲良くなってさ、あはははは……」
八木と名乗る男と慌てている緑谷どうも裏がありそうだ。
「私はその辺歩いてきます。ゆっくり話していてください」
「そんな!それは申し訳ないよ!」
「そうだ、追い出すようなことは……」
「いいんですよ。クラスの様子も見たいですし。ここにいても次の試合まで暇なので。では」
引き留める声を無視して外に出る。歩きながら志村と会話する夏油。
『で、ホントなんですか?あれがオールマイト?』
『間違いないだろう……信じたくはないが、俊典の名字は八木なんだ。痩せていたけど面影が僅かにあった。どうしてあんな姿に……うぅ……』
『泣かないで下さい。ここではあなたにハンカチを渡せない。何があったかわかりませんがあれがオールマイトだとしたら相当弱っているように見えますね』
『うぅ、泣いてるわけにはいかないな。俊典と緑谷くんは随分と親しげに見えた。あの個性を鑑みるにワンフォーオールの継承者は緑谷くんで間違いないだろう』
志村はオールマイトが緑谷にワンフォーオールを渡していると確信していた。
『やはりそうですか……ですが私たちから接触する気はないんですよね?』
『そう……だね。死者が生者に干渉するのは良くないと思う。だからこのままでいい』
『じゃあ私は特別というわけだ。菜奈さんの特別になれて嬉しいですね』
『ふふっ、こんな時まで……元気出そうとしてくれてるだろ?』
『いや半分は本気ですけどね。そろそろ戻りましょうか。次の試合が始まります』
夏油は保健所に戻って来たがそこにはリカバリーガールしかいなかった。
「おかえり、夏油。わざわざ悪かったね」
「いいんですよ。何か込み入った事情がありそうでしたし。それより第二試合始まりますね」
泡瀬と轟が入場してきた。
『泡瀬にとってはきついですね』
『うん。彼の個性は触れなきゃ発動出来ない。接近戦の必要があるが……』
『轟の氷結で凍らされて終わり……ですかね』
『どんでん返しに期待しよう』
『ここまで結構優秀な成績!なのに目立ってない!B組泡瀬洋雪!バーサス!3位・3位と安定して優秀な成績!A組轟焦凍!スタート!!」
この勝負はしばらくかかった。泡瀬がジグザグに動いて的を絞らせないように接近しようとする。それに対し轟も氷結で応戦した。
だがしばらくして泡瀬の体力が尽きてくると、轟の見ている者の度肝を抜く大氷結でステージごと凍らされた。ここで動けず降参した。圧倒的だった。轟が二回戦進出だ。
そこでどこからともなく、ドンマイという声が聞こえてくる。その声は段々と大きくなり、ドンマイコールが起こる。
『はぁ?精いっぱい戦った泡瀬に対してドンマイだと⁉ふざけているのか⁉』
『そんなに怒らないでくれよ。耳がキンキンする』
『すみません……でも失礼にも程がありませんか!確かに実力差はあったかもしれないが相性もある。聴衆のレベルが低すぎる』
『君からするとそうかもしれないね』
夏油は憤慨していた。あれは仲間を笑っているように聞こえたからだ。
「夏油、泡瀬が運ばれてくるよ。凍傷かもしれないから念のためにね」
すぐに泡瀬が運ばれてきた。
「せっかくお前に鍛えてもらったのにダサい姿見せちまったぜ……個性も活かせなかったし」
「かっこよかったさ。これはお世辞じゃないよ。リカバリーガール、もう治療していいですか?」
「いいよ、やってみな」
夏油はエイを呼び出し泡瀬を治療する。
「お?おー!一気に体が楽になったぜ。ありがとな、夏油。やっぱお前の個性カッコいいな」
「カッコいいか?怖がられることはあるけどね。君たちの為になるなら嬉しいな」
「夏油は俺たちB組の兄貴分だからな!いや父親か?面倒見もいいし!」
「兄貴分……か……」
夏油はそんなことを言われるとは思っていなかったので虚を突かれた。
「泡瀬は回復したならもう行きな。次の試合も見たいだろう?」
「そうでした。治療ありがとうございました!夏油もありがとな!無理だけはすんなよ」
泡瀬は観客席に帰って行った。ステージの掃除をしてから次の試合が始まる。
『ステージを乾かして次の対決!綺麗なアレには棘がある⁉塩崎茨!バーサス!スパーキングキリングボーイ!上鳴電気!スタート!!』
夏油は上鳴って誰だっけ?と思い出そうとしていたが思い出せなかった。塩崎はB組でもかなり強いので期待がかかる。
『塩崎なら余裕でしょう』
『電気の子相手なら相性いいね』
『電気?あーそんなのいましたね』
『忘れてただろ……』
『ちんけな電気なんて私には効かないですからね。塩崎にとっても相性がいい。この勝負は一瞬で終わりますね』
瞬殺だった。上鳴は焦って電気をぶっ放したが塩崎のツルで防がれ拘束された。ともかくB組の塩崎が突破できたのは夏油にとって嬉しい。
両者怪我はないようなので夏油は控室に移動する。
「では行ってきますね、リカバリーガール」
「健闘を祈ってるよ」
控室に着くと当然誰もいない。
『控室にはモニターないのかな?まあいいか、一通り参加者の個性は見たし』
『さっき忘れてたくせに』
『……まぁそういう事もあります』
『宍田くんに対してどう戦うんだい?全力でやるんだろう?』
『接近させないように戦います。予想を超えてきたら……どうしましょうかねぇ』
『予想を超えてくるのを期待してるんだろ?』
『そうですね。私が直々に鍛えたので楽しみです』
ずいぶんと長かった第四試合が終わり、夏油は入場するように言われた。入場ゲートをくぐると観衆が歓声を上げて待っていた。それに手を振りながらにこやかに応える夏油。
それに対して宍田は真面目な顔で入場してきた。
「言われた通り本気で行くよ。いいんだね?」
「もちろんですぞ。むしろそうでなければ怒りますぞ」
「そうだな。今のは忘れてくれ」
夏油と宍田が軽く話しているうちに準備が整う。
『それでは第五試合始めるぜ!1位・1位とここまで圧倒的な強さ!強すぎてつまらない!B組夏油傑!バーサス!騎馬戦ではその夏油と唯一騎馬を組んだチームメイト!同じくB組宍田獣郎太!スタート!!』