【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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トーナメント 二回戦

 夏油はA組の席から去った後、B組にも軽く挨拶してから保健所に戻って来た。

 

「おや、戻って来たね。もっとゆっくりしてても良かったんだよ」

「気分転換は出来ましたから。それにそろそろ二回戦が始まります。初戦は荒れそうですね」

 

 リカバリーガールの気遣いに夏油は気にした様子もなく答えた。

 

「緑谷対轟か……これは怪我人が出るね。夏油の力も借りることになるかもしれないからよろしく頼むよ。試合を控えている生徒を頼みにするのは心苦しいけどね」

「この役割を聞いた時から織り込み済みですよ。それに少しくらいハンデがなくちゃ相手が可哀そうだ……」

「全く今年の一年はどいつもこいつもクセが強いね……担任の苦労が眼に浮かぶよ」

「私はブラド先生に迷惑をかけたことはないのですが……」

「そうかい。お、来たね」

 

 夏油がモニターを見ると緑谷と轟が入場してきていた。

 

『今回の体育祭、両者優秀な成績!緑谷バーサス轟!!スタート!!』

 

 開始直後に轟が氷結を放つが緑谷は指を破壊しながらそれを打ち消す。それが続くが緑谷の負傷は増えていく。

 

『これは緑谷には辛いですね。個性をまるでコントロールできていない。正直勝ち筋が見えません』

『まだわからないよ。意味もなく耐久戦をするとは思えない。何かしらの狙いがあるはずだ』

 

 志村の言う狙いが何なのか夏油には分からなかったが特に何も言わず戦況を見守る。

 轟が緑谷に接近し氷結が届きそうになると今まで以上のパワーで氷を吹き飛ばす。その代償に緑谷の左腕を自傷している。

 ボロボロの緑谷に轟がとどめの氷結を放つが、壊れた指を使って氷結を打ち消した。

 

『ここまでやるのか。これ体育祭なんだが……というかあれも私が治療しなきゃいけないのか…………』

『流石にここまでの自傷は見る方に恐怖を与えるね……でも緑谷くんが轟くんに何か言っている。彼はどうしたいんだろうね?』

 

 その後緑谷が轟の腹に一撃を入れる。轟も氷結を放つが緑谷は壊した指を使いながら打ち消していく。

 轟は体が冷えたせいか動きが鈍くなり、緑谷は果敢に攻める。

 

『緑谷は全力で掛かって来いって言ってますけど、どういう意味ですかね?』

『事情はわからないが轟くんは何か手加減しているのかな?本気を出せってことだろうね』

『本気ねぇ。それで勝てるなら本気出さなくてもいいような気がしますけどね。プロになったら本気出せば勝ってたなんていう言い訳が通用しないことを理解していればですが……』

『そうだね。彼は被害者の前で、手加減していたから守れませんでしたって言えるのかな?』

 

 夏油たちが見守っていると、轟が炎を出した。それを見たエンデヴァーが騒いでいたところを見るに、何となく親子の確執がありそうだと彼らは察した。

 轟の炎と緑谷の一撃がぶつかる。とんでもない衝撃と爆風が巻き起こり何も見えなくなった。煙が晴れて立っていたのは轟だった。

 

『緑谷くん、場外!轟くん、三回戦進出!』

 

 緑谷は壁まで吹き飛ばされ、意識を失っていた。

 

「こりゃ大怪我だね。夏油、すぐに治療できるように準備しな」

「わかりました。でもあれほぼ自傷ですよね?ポンポン治していると彼の成長に良くないのでは?」

「それは今私も思っていたところさ」

 

 緑谷が搬送用ロボットによって運ばれてきた。特に腕の怪我が酷い。

 その時痩せた姿のオールマイトも来た。

 

「緑谷しょうね……ごほん!緑谷くんは大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないよ。右手の粉砕骨折。もうコレ綺麗に元通りとはいかないよ。破片が関節に残らないように摘出しないと……治癒はその後だ」

 

 リカバリーガールがそう言った時、入り口の扉が開きA組の面々がやって来る。

 

「デクくん!!」

「緑谷くん!!」

「みんな……次の試合は……」

「びっくりした……」

「?初めまして……」

 

 オールマイトは突然A組がやって来たことに驚いた様子だった。麗日はオールマイトが誰かわかっていない。

 

「ステージ大崩壊の為、しばらく補修タイムだそうだ」

「怖かったぜ緑谷ぁ。あれじゃプロも欲しがんねえよ」

「塩塗り込んでくスタイル、感心しないわ」

「でもそうじゃんか」

「君たち、ここどこだかわかってるかい?そういうのは後にしなよ」

 

 騒いでいるA組に夏油が苦言を呈する。

 

「あっ!夏油くんだ!デクくんの治療してくれるんだね!」

「む!夏油くんもいたのか」

「うるさいよ、ホラ!心配するはいいがこれから手術さね」

「「「シュジュツー⁉」」」

 

 手術という言葉に驚くA組。

 

「夏油、お前さんは医師免許とって本格的に医療系に進むつもりはないだろう?」

「まぁそうですね。そのつもりはありません」

「じゃあ扉の前で誰か入って来ないように見張ってな。試合時間が来たらそのまま行っていいから」

「わかりました。じゃあ君たちは外に出ようか」

「えー⁉」

「さっさと出る」

 

 夏油は扉の前で仁王立ちになる。

 

「夏油くん、緑谷くんの怪我の様子はどうだった?酷いものなのか?」

「私はあくまで治療ができるってだけで専門家ではないのだが……見た限りでは酷いもんだね。特に指は元に戻らないそうだ。あの戦い方は止めるように本人にも伝えたほうがいい」

「やはりそうか……」

「やっぱこえーよ、緑谷の戦い。見てるこっちが冷や冷やしたぜ」

「心配だわ」

「デクくん……」

 

 やはりクラスメイトは心配なんだなと思う夏油。A組とはいえボロボロにするのはやめようかと考え直す。

 

「飯田は次、塩崎と試合だろう?早く行った方がいいんじゃないのか?」

「そうだった!控室に行かなくては!では皆、また!」

 

 飯田は歩いて行ってしまった。

 

「君たちも席に戻ったらどうかな?緑谷はしばらくは起きられないだろう」

「それもそうね。お茶子ちゃん、心配だろうけど戻りましょう」

「そうだぜ。飯田も応援してやらねえと」

「うん。じゃあ夏油くん、デクくんのことよろしくね」

 

 そう言って麗日、蛙吹、峰田は帰って行った。

 

『菜奈さん、緑谷やオールマイトに対しては極力干渉しないってことで良いんですね?正直あれが後継者となると心配が勝ちますが……』

『そのつもりだ。でも……どうしたらいいか私も迷っている。未だにオールフォーワンの脅威があるのかにもよっても変わる。もう倒されているのなら関わらないつもりだった。

 だがそうでなければ私も戦うべきなのかもしれない。君を巻き込んでしまう上に、死者が出しゃばる真似が倫理的にどうかとも思うが……しばらく考えさせてくれ』

 

 志村は自分がどうするべきか苦悩していた。それに対し夏油も答える。

 

『わかりました。あなたがどんな決断をしようとも私はあなたの考えに従います。なのでゆっくり考えてください』

『前から思っていたがどうしてそこまで言ってくれるんだ?君は私に甘すぎる』

『それはあなたが私を孤独から解放してくれたから。私の世界はあなたがいたことで広がった。だから菜奈さんにぞっこんなんですよ』

『…………本気なんだね?ならそれについても本気で考えるよ。時間は貰うけど』

『ええ、もちろん私はいつまででも待ちます。それに答えが理想と違くても私とあなたがパートナーであることは変わりませんし』

『それはそうだな。私が君の個性である限り離れられないからね』

 

 それからしばらく二人は無言だったが不思議と心地いい間だった。

 アナウンスで塩崎対飯田の対戦が始まったことが告げられたため、夏油は控室に移動した。

 

『塩崎、勝てますかね?』

『直前でも仲間の心配か、君らしいね。飯田くんの機動力をどう封じるかに掛かってるかな。それさえできれば塩崎さんの拘束力なら勝てるだろう。それより常闇くんにはどうするんだい?お互い使役して戦うタイプだけど』

『雑魚呪霊じゃ効果なさそうなんですよね。それと騎馬戦中に監視していたんですが一つ弱点っぽいものを見つけまして……』

 

 夏油は常闇の弱点を話す。

 

『へえー、よく見てたね。流石夜な夜なヴィラン退治してただけはある。それが事実だとするとやり易いね』

『まぁどうなっても勝ちますよ』

『頼もしいことだ』

 

 夏油が志村と話している間に塩崎が勝ったとアナウンスが報せる。夏油は後で知ったが、塩崎は開幕でツルをステージ中に張り巡らせて飯田の動きを封じ、その隙に少しずつ隅に追い詰めて最後は拘束したらしい。

 塩崎は特訓で特に個性の強度とスピードを強化していたからその結果が出た形だ。

 いよいよ夏油の二回戦が始まる。夏油は入場ゲートをくぐりステージに立った。すでに常闇もいる。

 

「よろしくね、常闇」

「こちらこそ」

 

 お互い言葉少なめで冷静だった。

 

『サクサク行くぜ!次の試合もB組対A組の対決!ここまで圧倒的!君弱点ないの?B組夏油傑!バーサス!一回戦は瞬殺!A組常闇踏影!スタート!!』

 

「いけ!ダークシャドウ!」

 

 スタートと共に常闇はダークシャドウを出し夏油に向かわせる。

 

「虹龍、硬化」

 

 それに対し夏油は硬化の個性を使わせた虹龍を呼び出し、正面から襲わせる。虹龍は鱗を光輝かせながら凄まじいスピードを出した。

 

「間違っても殺すなよ」

「ダークシャドウ!ぼうぎ……」

 

 虹龍は常闇をダークシャドウごと壁まで吹き飛ばしていった。

 

「常闇くん、場外!夏油くん、三回戦進出!」

 

 ミッドナイトのコールに会場が沸き立つ。夏油は常闇を弾き飛ばしてしまったので心配して近付く。

 

「すまない、やり過ぎてしまった」

「勝負事ゆえ仕方なし。手加減されるよりマシだ。だが足をくじいたようだ」

「これに乗りなよ」

 

 そう言って夏油はエイを出す。

 

「すまないな」

 

 そう言いつつ常闇はエイに乗る。そのまま夏油と常闇は保健所に直行した。リカバリーガールに診察を受けたが踏ん張った時にねん挫したんだろうとのことだった。

 

「そういえば夏油は俺の個性の弱点を知っていたのか?」

 

 常闇は夏油に尋ねた。

 

「弱点って明るさのことかい?それなら何となく察していたよ。騎馬戦で電撃を受けた時明らかに個性の力が弱まっていた」

「あそこで見ていたのか……完敗だな」

「たまたま光る呪霊がいたから何とかなったけど、そうでなければ私も危なかったかもね」

「そうか。だといいがな」

 

 常闇は夏油に余裕があることを察していそうであった。

 

「俺は席に戻る。お前はここに残るのか?」

「そうだね。次の試合も怪我人が出そうだし」

「ではさらばだ」

 

 常闇は保健所を出て行った。

 

「おめでとさん、夏油。常闇は強敵かと思っていたけど難なく倒したね」

「弱点がハマっただけですけどね。それより次の試合が気になります」

「またA組対B組だね。今度は怪我人があまり出ないといいけど」

「次は正統派の試合が見れると思いますよ。お互い搦め手なしの真っ向勝負でしょうから」

 

 二回戦もこの対戦で終わりになる。鉄哲と爆豪が入場してきた。お互い何か言い合っているようで険悪な雰囲気だ。

 

『何を言い合っているんでしょうね?』

『わからないけど爆豪くんの首を斬る動作はあまりよろしくないね。これ全国放送だよ?』

 

 ヒートアップしそうなところでスタートが宣言される。

 いきなり鉄哲はスティールで全身を鋼鉄にして殴りかかる。だがそれを爆豪は躱しながら爆破を叩きこんだ。

 

 しばらくは鉄哲が攻めて爆豪が避けながらカウンターを入れるということが続く。観客からすると見ごたえがあるからか、実況のプレゼントマイクのテンションも上がっている。

 爆豪の爆破は鉄哲にはあまり効いていない。だが鉄哲の拳は爆豪に時折掠っている。

 

『これ、鉄哲が押しているようで爆豪ペースじゃないですか?』

『鉄哲くんはまずいね。序盤で攻めすぎて体力が続かなくなってる。今日は第一種目、第二種目とやって一回戦でも相手はタフだったし……』

 

 志村の言っていた通り、鉄哲は明らかに疲労が見え始めていた。それに対し爆豪はますます爆破の威力が強くなる。

 

 そして均衡が崩れる時がきた。爆豪が麗日相手に出したような大爆破を繰り出し、鉄哲の個性が解ける。その隙を見逃すはずもなく、爆破を連続して撃ちまくる。

 個性が解けた鉄哲に耐えられるはずもなく意識を失うように倒れた。

 ここでミッドナイトが爆豪の勝利を宣言し、次に夏油と爆豪がぶつかることが確定した。

 

『序盤は鉄哲が押してるように見えたんだけどなー!どうしてやられちまったんだ?』

『鉄哲のペース配分の問題だな。疲れてきたときに大爆破を受けて個性が解けた。試合前から頭に血が上ってたからそれが良くなかったかもしれない。それを見込んで爆豪が挑発したかは分からないが、素の性格のような気もする』

 

 実況のプレゼントマイクの疑問に相澤が答える。

 

『次は爆豪か……強敵だね』

『そうですね。でも負ける気はないですよ。私には勝利の女神がついているので』

『傑……それってもしかして私のこと?恥ずかしくないのかい?』

『いいえ、全く。私は私に正直に生きたいので』

『そ、そうか……私は中々言えないな……それより次の作戦だ。どうするつもりだい?』

『どうしましょうかね……悩ましい……』

 

 そこで鉄哲が運ばれてきた。鉄哲は全身に爆破を受けて傷が多かった。

 

「すまねえ、夏油。負けちまった……お前は勝ってたのに……俺もお前に並びたいと思ってたのに……すまねえ」

「謝るなよ。君が全力で戦ったのはここからしっかり見てたさ。よく戦った。ところでどうしてあんなに攻め急いでたんだい?」

「…………俺が爆豪に勝つって言ったら、「お前も、気色悪い前髪野郎もぶっ殺して俺が1位になる!!」って言われて頭に血が上っちまった。元は俺が話しかけたのが悪い……」

「……そうか、わかったよ。今はゆっくり休め」

 

 夏油は鉄哲に背を向けた。

 

『菜奈さん、次の試合の作戦が決まったよ』

『ん?』

『教導だ』

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