【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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I・エキスポ

 夏休みのある日、I・アイランドの入国審査を受けていた。

 

『I・エキスポ、楽しみですか?』

 

 夏油が志村に尋ねる。

 

『そりゃもちろん。傑もじゃないのか?』

『私は菜奈さんと旅行気分を味わえるだけで幸せなので』

『傑はいつも通りだね……まぁそうじゃないと心配だけど』

『ただB組の面々がいないのは残念ですね……』

 

 今回は夏油と志村だけで来ている。志村は夏油の個性の一部としているので、見かけ上は夏油一人で寂しく来ているように見えた。

 

『物間くんたちの誰かを連れて来なくて良かったのかい?同伴者は1名までだったんだろう?』

『それも考えましたが、パーティーに菜奈さんと参加したかったので。他の人を連れてくると菜奈さんとパーティーを楽しめなくなってしまいますよ』

 

 夏油はレセプションパーティーに志村と参加する気のようだ。

 

『パーティーねえ……そういえば正装の準備もしてたね』

『ええ。菜奈さんのもばっちり用意してあります。楽しみだ』

『傑さぁ……まぁいいや。言っても無駄そうだし』

『流石は私のことを分かってらっしゃる』

 

 夏油と志村の会話をよそに入国審査も終わりついにI・アイランドに入った。その後二人はコスチュームに着替え、志村も夏油から出てきた。

 

「どこに行きましょうか?色々とパビリオンがあるらしいですが……」

「私はどこでもいいよ。傑が興味あるところで」

「そうですねぇ……なら定番にサポートアイテムの展示から見ていきましょうか」

 

 夏油と志村は並んでI・アイランド内を歩く。ヒーローなんかも多くいたが二人ともあまり興味ないのかスルーした。

 目的のパビリオンに到着し、中を見て周る。

 

「へぇー、今のサポートアイテムってこんなに小さくて軽いんだね。昔はもっと大掛かりで使うのが大変だったんだよ」

「技術の進歩は目覚ましいですね。私もサポートアイテムはあまり使っていないので詳しくありませんが、使い勝手が良さそうなものばかりだ」

「そういえば傑はあんまりサポートアイテムとか使わないよね。どうして?」

「特に理由はないですが……強いて言うなら必要ないからですね。最悪あなたと自分の体さえあれば戦えますし。あなたがいないと精神的に参りそうですが……」

 

 極論を言えば夏油は自身の身体強化だけで並みのプロヒーローくらいの実力はありそうだ。志村は彼の精神安定剤として必要不可欠だが。

 

「ふーん……じゃあ私は傑が死ぬまで一緒にいてやるよ」

 

 志村のまさかの発言に驚く夏油。狐面で志村の表情は分からなかったが声色は真剣そのものだった。

 

「……約束ですよ?」

「うん、約束だ」

「絶対ですよ?」

「うん」

「もう反故にできませんからね?」

「分かったってば!しつこいぞ!あ、でも勘違いするなよ?告白の返事ではないからな?それはまだ決心がつかない」

 

 家族として一緒にいるつもりはあるが、恋愛関係は未だ踏み出せない志村だった。

 

「わかってますよ。それについてはじっくりとね。さて、次はどこに行きますかね」

 

 夏油たちはパビリオンを出て歩いていた。

 

「ねえ傑、あれは?」

 

 志村が指さした先にはヴィラン・アタックというイベントが行われているようだった。

 

「ヴィラン・アタック?仮想ヴィランを倒すタイムを競うイベントみたいですね。興味ありますか?」

「うん、傑でなよ」

「私が?菜奈さんが出るんじゃないんですか?」

「私はいいよ。君の強さを見せつけてくるんだ」

「そういうことなら。必ず1位を取ってきます」

 

 夏油はさっそく受付をして参加することになった。志村は観客席で見ているようだ。

 夏油の出番はすぐに来た。スタッフに呼ばれてスタートの位置に着く。

 

「ヴィラン・アタック、レディ……ゴー!!」

 

 夏油は足元からエイを出しそのまま乗って上空に飛んだ。そして移動しながらイカの弾幕で仮想ヴィランを次々に破壊する。

 最後くらいは派手がいいだろうと考え、一つ目を上空から落下させて圧し潰した。

 

「すごいタイムが出ました!クリアタイム9秒!現在トップです!」

 

 終わったところで司会の声が聞こえてくる。まぁまぁだなと思う夏油。

 観客から大きな歓声が上がるが、夏油にとって大事なのは志村の反応だけである。呪力で視力を上げて志村を探すと、何やら絡まれている。

 

(ナンパか?この不届き者め!成敗して……いや、あれはA組か。まさかこんなところで会うとは)

 

 夏油はそのまま志村のところに行く。

 

「あ、傑、早かったね。流石だよ」

「ありがとうございます。それで彼らにはあなたから話しかけたんで?」

「そりゃこっちは一方的に知っているのに無視するのは失礼だろう?」

「まぁそれもそうですが……やぁA組の皆、久しぶりだね」

 

 夏油は志村からA組の方に向き直った。そこには緑谷、飯田、麗日、八百万、耳郎と見知らぬ外国人風の金髪の女性がいた。

 

「げ、夏油くん⁉久しぶりだね……」

「夏油くん、食堂で会って以来だな!」

「凄かったね!」

「初めてお話しますわ。八百万百です」

「ウチ、耳郎響香。よろしく」

「メリッサ・シールドです。君すごく強いのね!」

 

 夏油は口々に挨拶されるのに返事をしつつ、どうしたもんかと考えていた。ぶっちゃけ志村との二人の時間を邪魔されたくはない。

 

「まぁ私の個性がこのイベント向きだったのが大きいだろうね。君たちは参加しないのかい?」

 

 夏油がそう問いかけるもあんまりやる気はなさそうだったが、麗日が緑谷に勧めたため緑谷が出ることになった。緑谷も中々な好タイムだった。

 

「じゃあ私たちは行こうか。ね、レヴナント」

「そうするか。では皆、また会おう」

 

 その隙に夏油と志村はちゃっかりA組一同から離れることに成功した。

 

「良かったんですか?A組というか、特に彼と接触して」

「それは気になったけど何も感じなかったことを確認できた。どうやら私とワンフォーオールに繋がりは切れているみたいだ。今後どうなるかは分からないが……」

「それは良かった。もし何かあってからじゃ遅いですからね」

「心配しすぎな気もするけどね」

 

 そこからもいくつかパビリオンを巡り、志村も楽しそうに過ごしていた。夏油はその姿を見れただけで大満足だった。

 志村の準備もあるため早めにホテルへと向かった。一室に二部屋ある広めの部屋を予約していたので分かれて正装に着替える。

 夏油は時間を掛けずにさっとスーツに着替えた。そのまま志村の準備を待つ。しばらくしてノックがされ、志村が入って来た。

 

「どうかな?一応着てみたんだが……」

 

 志村は恥ずかしそうに夏油に感想を聞いてきた。志村のドレスは体の線に沿った濃いブルーのロングドレスだった。露出は少なめだが彼女の美しさが映えるものように夏油には感じられた。

 志村は髪をアップにしていて、イヤリングやネックレスなど装飾品も身に着けていた。

 

「綺麗ですよ。とても似合っています。言葉では言い表せないくらいに」

 

 夏油は見惚れながらもなんとか感想を口にできた。

 

「嬉しいよ。でも大げさだな。そういう傑も似合っているね。カッコいいよ」

「ありがとうございます。照れますね」

 

 二人がお互いに褒め合っている間にパーティーの時間が迫っていたため、パーティー会場に移動した。だがそこで二人に予想外のことが起きる。まさかのオールマイトがいたのだった。

 

「まさか俊典がいるとは……帰るか?」

「狐火で誤魔化せませんか?」

「やってみよう」

 

 志村は服を燃やさないように気を付けて顔に狐火を纏わせ、顔を別人に見えるようにした。

 

「これなら大丈夫そうだ」

「もし何かあったらすぐに私の中へ戻ってくださいね」

「了解だ」

 

 食事を食べながらパーティーが始まるのを待っていたら、オールマイトが挨拶をするらしい。彼が話始めようとしたタイミングで警報が鳴った。

 夏油が志村に目で合図すると、志村は夏油の中に戻った。

 

『I・アイランド、管理システムよりお知らせします。警備システムにより、I・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手。I・アイランドは現時刻をもって厳重警戒モードに移行します……』

 

 アナウンスが鳴り響くがパーティーの参加者たちもどうしていいか分からないようだった。そこへ入り口から銃を構えた者たちが侵入してくる。

 

「聞いた通りだ。警備システムは俺たちが掌握した。反抗しようなどと思うな。そんなことをしたら警備マシンがこの島にいる善良な人々に牙をむくことになる。そう、人質はこの島にいる全ての人間だ。当然、お前らもな。やれ!」

 

 突然入って来た親玉がそう言った時、セキュリティ用捕縛装置が会場にいるヒーローを縛り上げてしまった。しかし夏油は拘束されなかった。

 

「いかん!」

 

 オールマイトも捕らわれ、抜け出そうとするがヴィランは銃を発砲する。

 

「動くな。一歩でも動けば即座に住民どもを殺すぞ」

 

 そのままオールマイトは蹴とばされる。

 

「いい子だ。全員オールマイトを見習って無駄な抵抗はやめるんだな」

「ちょっといいですかね?」

 

 夏油は片手を挙げてオールマイトと親玉の方へ歩いて行く。

 

「夏油少年!来ていたのか!」

 

 オールマイトも夏油が参加しているのには気づいていなかったようだ。

 

「なんだ?子供か?大人しくしていろ」

 

 親玉は銃を夏油に向けそう言った。

 

「銃を向けられた。もうこれって正当防衛の範疇ですよね?ね、オールマイト先生?」

「む、たしかにそうだが……」

「何を言っている?いいから大人しくしろ。それ以上近付けば撃つぞ」

「いや、もうチェックメイトだ」

 

 夏油は親玉の足元からワームを出して飲み込ませる。

 

「何だこれは⁉」

「ワーム、即効性麻痺毒」

 

 パーティー会場内が混乱し、銃を持っている敵が夏油に銃を向ける。それを意に介さず夏油は虫とムカデを出し彼らをを襲わせた。ついでにダルマを出し防御も万全だ。

 

「うわあああ!!」

「やめろお!やめてくれええ!!」

「食べるな!頼む!食べないでくれ!」

 

 銃を持った敵、もうヴィランと呼んでもいいかもしれない彼らは、夏油の呪霊に襲われて戦意喪失しているようだった。だが夏油は襲わせるのをやめないが。

 夏油は死ななければいいだろうと判断した。多少腕や足をかじったところで許してくれるだろう。なぜならヴィランは社会のゴミだからだ。

 

「あー、そういえば人質がどうこう言っていたような気がするが……何だっけ?警備システムを掌握した?それって私に関係あるのかな?……おーい、返事がないな。寂しいじゃないか」

 

 ヴィランたちはもう動けないほどの重傷を負い、親玉は痺れて動けない。会場内の人々も座り込んでしまっていた。今会場で立っているのは夏油ただ一人だった。

 夏油はいつも通りに見えてブチぎれていた。せっかくの志村との楽しいパーティーを台無しにしやがって許さないと、(ヴィラン)連合に向ける怒りくらいブチぎれている。

 

「オールマイト先生、抜け出せます?」

「いいや、手を借りたいね。いいかな?」

「もちろん」

 

 夏油はオールマイトを拘束していたものを引きちぎる。

 

「じゃあオールマイトはそのヴィランの仲間をお願いします。私はヒーローじゃないので正当防衛以外は出来ませんし」

「それもそうだな!夏油少年はヒーローたちの拘束を解いてあげてくれ!では私は行ってくる!」

 

 オールマイトはそう言い残して行ってしまった。夏油は引き続きヒーローの拘束を解いて行った。お礼を言われ、ヒーローたちはヴィランの拘束をしていく。

 もうすることはないしパーティーは終わりだと判断した夏油はホテルに帰る。

 

「こんなことになるとは……すみません、菜奈さん」

「君のせいじゃないだろう?謝らないでくれ。それにおしゃれしたのも楽しかったさ」

「そう言ってもらえるありがたいですが……」

「じゃあ……しばらくはこの格好でいるよ。嬉しいかい?」

 

 志村はいたずらっぽく笑いながら言った。

 

「それはもちろん」

 

 夏油としては志村のドレス姿を長く見れるので嬉しい。その日はそれで終わるかと思ったが、しばらくしてから警察が事情聴取に来て時間を取られてしまった。寝たのは夜遅くになった。

 

 

 次の日、夏油と志村は起きるのが遅かった。I・アイランドは混乱が続いているようで特にやることもなかったので、夏油の発案でホテル併設のプールに行くことになった。

 夏油は最初からそのつもりで志村に水着の用意もしてくるように言っていたのだった……恐ろしい執念だ。

 夏油が志村の水着姿に見惚れていたのは当然だが、志村も普段夏油が見せない上半身を見て赤面したのは内緒である。

 

(あまりI・エキスポに興味はなかったが、色々な姿の菜奈さんを見れたのは収穫だった。林間合宿も楽しみだね)

 

 トラブルもあったが夏油にとっては概ね満足のいく小旅行だったらしい。

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