【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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林間合宿➀

 I・エキスポから帰って来てしばらく。林間合宿当日がやって来た。夏油たちB組は雄英のバス乗り場に集まっていた。

 

「物間、鉄哲、宍田、久しぶりだね」

 

 荷物をバスに積んだ夏油はしばらく会っていなかった友人たちと会話していた。

 

「夏油、久しぶりだね。後で両親から預かったフランス土産渡すよ」

「俺も地元の菓子あるから食おうぜ!」

「夏油氏、I・エキスポでは災難でしたな!」

 

 夏油の友人たちは相変わらず元気そうだった。その姿に一安心な夏油。

 

「土産は有難く貰うよ、鉄哲のも。I・エキスポは最高だったよ。特にホテルがね」

 

 夏油は最後の言葉を特に強調して言った。

 

「ホテル?ベッドが良かったのかい?」

「旅行気分でテンション上がったってやつか?俺たちもこれから似たようなもんだよな!」

「なんか言葉の裏を感じますが、夏油氏が楽しんだなら良しですな!」

 

 いい感じに勘違いし納得してくれる奴らである。まぁ下世話なところまでクズな夏油といえど説明しないが。

 

「ま、そんなところだよ。いい経験だった……」

「良かったじゃないか。僕は休みの間……っておやおや~」

 

 物間は何かを言いかけてやめた。そして悪そうに笑っている。そして歩いて行った。その先にはA組がいた。

 

「おいおいおい!そこにいるのはA組ご一行じゃないか!B組の後にやって来るなんてずいぶん余裕なんだね!それに聞いたよ!A組補習いるんだって?つまり赤点取った人がいるってこと⁉ええ⁉おかしくない⁉おかしくない⁉A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ⁉あれれれれぇ⁉」

 

 物間は早速A組を煽りに行ったようだった。長い事話していたが詰まらず話し終えた。流石の煽りスキルであると夏油も感心する。

 そこに夏油たちも歩いて行くが、その前に拳藤が物間に手刀を叩き込み回収する。

 

「ごめんな」

「拳藤、物間が可哀そうじゃないか。彼はただ、様々なトラブルを乗り越えたA組が、目立たないB組よりも多くの赤点を出したことに驚いただけだよ。私も驚きだなぁ、あの試験で赤点を取るとは……あぁ、安心してよ。B組には赤点はいないから」

 

 夏油もA組に対してしれっと煽っていく。

 

「はぁ……どうしてお前たちは面倒なんだ……ごめんな、A組」

 

 拳藤が謝りながら夏油を回収しようとするが、夏油はデカいだけあって中々動かない。

 

「B組は赤点なしかよ……」

「俺らだけ補習……」

「煽られても言い返せねえ」

 

 A組の赤点組は何も言えなかった。

 

「物間も夏油も怖。やっぱ問題児」

「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まぁよろしくねA組」

「ん」

 

 B組の女子はしっかりと挨拶していた。

 

「物間よりも夏油の方が正論だけあって面倒だな。とにかくB組はバス乗るよ!席は自由で」

 

 拳藤の指示に従いB組はバスに乗る。夏油たち4人は一番後ろの5席並んだところに4人で座った。

 

「後ろの席はヤンキー席って言うけど、私たちには似合わないな」

「だよね!だよね!僕たちは品行方正さ!」

「俺は馬鹿とは言われるが、ヤンキーとは言われねえな!」

「ですな!私たちは真面目な生徒ですぞ!物間氏はテンションが煽りモードのままですな」

 

 真面目な様子で馬鹿な話をしている。デカい声で話していたため委員長として前の方に座っていた拳藤にまで聞こえており、頭を抱えていた。

 他のB組の生徒は4人が問題児なのはいつものことなのでスルーしている。

 

「これが両親がフランス旅行に行ったお土産だよ。はい、前にも回してくれ」

「サンキュー物間!よくわかんねえけど旨いぜ!」

「物間氏、ありがとうございます。鉄哲氏はもう少し綺麗に食べたほうがよろしいかと……」

「これかなり良い所のお菓子じゃないか?わざわざ悪いね、物間」

 

 物間がくれたお菓子は甘くて美味しかった。きっと高級なやつだろう。

 

「じゃあ俺からは煎餅だ!めちゃくちゃ硬くて歯の修行になるぞ!」

 

 鉄哲から煎餅を貰い食べてみる夏油。たしかにとんでもなく硬い。でも美味しい。

 

「硬いけどその硬さがいいね。これ鉄哲の地元で有名なのかい?」

「そうだぜ!昔からおやつはこれだ!」

 

 その後もわちゃわちゃ話していたが、鉄哲が寝てしまった。昨日の夜楽しみで眠れなかったと言っていたからそれのせいだろう。

 

「私もお昼寝がいつできるのか分からないので、先に寝させてもらいますぞ」

 

 宍田もお昼寝の時間らしい。まだ朝なのだが……

 起きているのは物間と夏油になってしまった。そこで夏油は志村も出てこないか聞く。

 

『菜奈さん、出てきます?見ての通り二人は眠ってしまいましたし遠慮することないですよ』

『そう?なら私も出ようかな。お菓子も気になるし』

 

 夏油の中から志村が出てきた。

 

「あ、ご無沙汰してます。これ良かったらどうぞ」

「物間くん、久しぶりだね。いただくよ。おいしい……」

 

 夏油の好きな人を喜ばせる物間は夏油の中でまたも評価を上げていた。いい友人をもって嬉しい夏油。

 

「I・エキスポ、二人で行ったんだろう?今時間あるし詳しい所を聞いてみたいけど、どうだった?」

 

 物間はI・エキスポの様子が気になるみたいだ。

 

「社会のゴミによるトラブルもあったけど私は楽しめたかな?なにより彼女の色々な姿を見せてもらえたからね。それだけで私は幸せさ。レヴナント、あなたはどう思いましたか?」

 

 夏油は志村に話を振る。

 

「私?私は……そうだな、最近のサポートアイテムの小型化に驚いたな。物間くんなんかは個性柄連携を取らないと戦いづらいだろう?そういう時にサポートアイテムがあればかく乱出来たりしそうだと思ったね。物間くんはどういうヒーローを目指しているの?」

 

 志村の問いに物間は考え込む。

 

「そうですねぇ……どういうヒーローか……僕はこの個性じゃあスーパーヒーローには成れないよって言われて来ました。時間も個数も制限があるコピーなんてただの劣化コピーだ。だからこそ目立ちたい。目立ってスーパーヒーローになりたい。そう思いますね」

 

 夏油は少し驚いた。物間のA組への対抗心はB組を大切に思っているのもあるが、目立ちたいという物間の奥にしまっていた欲求から来るものだったようだ。

 

「じゃあ物間、個性を鍛えて鍛えて鍛えぬこう。そもそも思ってたんだ、コピーってどこまでだってね。鍛え抜けば君は全ての個性が使えるようになるポテンシャルがある」

 

 夏油は物間を重点的に鍛えて行こうと決めた。他のB組を邪険にするわけではないが。

 

「全ての個性……いい響きだ。いいね!いいね!楽しくなって来たよ!つまり僕は個性マスターになるんだね!素晴らしいじゃないか!」

 

 物間は大興奮しているようだ。前の席の小大と塩崎がどん引きしているようだが夏油たちは気にしない。

 

「物間くんも傑もそろそろ静かにした方がいいんじゃないか?前の方で拳藤さんが怒っているよ。あと個性マスターはちょっとダサいよ」

 

 志村が指さした先では拳藤が「またお前らか!静かにしてろ!」とお怒りの様子。夏油はそれを見てもニヤニヤしただけだ。物間に至っては視界に入っていなさそうだ。

 

「物間、私たちと天に立とうじゃないか。そうすれば目立って目立って仕方がないだろうさ」

「あぁ、夏油。僕たちでてっぺんを取ろう!アハハハハハ!」

 

 物間の笑いでバスの車内の空気が凍り付いたところで、バスが停車した。出発して丁度1時間後くらいだ。

 

「ここで休憩とする!持ち物は特にないからそのままバスを降りろ」

 

 ブラドキングの指示に従ってバスを降りるB組。夏油と物間は鉄哲と宍田を起こした。そのままバスから降りる。

 

「ここパーキングじゃなくね?」

「A組もいないし」

 

 B組が困惑していると、そこにやって来る人影が。

 

「猫の手手助けやって来る!」

「どこからともなくやって来る……」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 そこには猫の衣装を着た男性と女性がいた。

 

「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ」

「プッシーキャッツ!知ってる!」

「衣装可愛い」

 

 口々に感想を言うが、それも束の間、よくわからない説明が始まる。

 

「ここら一帯はあちきらの所有地なんだけどね、君たちの宿泊施設はあの山のふもとね」

 

 そう言って指さされたのは遥か遠くだった。

 

「今は9時30分。早ければぁ……12前後かな?12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

「そういうわけだから出来るだけ早く宿泊施設を目指す様に!夏油、お前は免除だ」

 

 ブラドキングはやる気満々だった夏油を止める。

 

「どうしてです?」

「お前にはぬるすぎて訓練にならんだろう。だから我々と共に先に宿泊施設に行くぞ」

「そういうことなら。じゃあちょっとアドバイスだけしてきますね」

 

 夏油は拳藤の元へ行く。

 

「どうした夏油?お前は別行動なんだろ?」

「そうだけどアドバイスをと思ってね。こんな森の中、初めてだろう?」

「まぁそうだけど」

 

 夏油は拳藤の耳に口を近づけて小声で早口に喋った。

 

「まずは役割を決めろ。この森の中、何かいるぞ。前衛、後衛、索敵、防御あたりはすぐに決めろ。あと休憩もローテーションさせるんだ。さっき3時間何て話があったがあれは無視でいい。とてもじゃないがその時間でこの距離は無理だ。まあこれくらいかな?あとは頑張ってくれ、委員長」

「え、ちょ、ちょっと!」

「じゃあ私はお先に失礼。無事に来れるのを楽しみしているよ」

 

 夏油は拳藤に背を向けてブラドキングの方に向かった。

 

「もういいのか、夏油?」

「ええ。言うべきことは言いました」

「じゃあ我々も行くか。ここからはプッシーキャッツの乗って来た車に乗せてもらうからな」

「そうなんですね。わかりました」

 

 すでに志村は夏油の中に戻っている。そのまま車に乗り込む。

 

「プッシーキャッツの皆さん、よろしくお願いしますね」

「よろしくな!我は虎だ」

「よろしく!あちき、ラグドール!」

 

 そこにブラドキングを追加した4名で車に乗り移動を開始した。運転しているのは虎だ。助手席にラグドールが座り、その後ろにブラドキング、その隣に夏油が座っている。

 

「夏油キティ、君のこと個性で見ていい?弱点とか丸わかりになるんだけど」

「もちろん、むしろお願いします。弱点が知れるなんて楽しみですよ」

「じゃあ見るよー……おお?おー、これはこれは……」

「どうです?面白いもの見れました?」

 

 夏油はわくわくしていた。弱点というのは自分では中々発見できない。

 

「うーん……あんま弱点ないね!脳のキャパがいっぱいになるように疲弊させたり、戦闘を続けさせるくらいしか弱点がない。キャパによって一気に出せる限界もあるから、飽和攻撃か複数地点の防御をさせるとか?それにしても……縛り?とやらで強化と制限がされた個性なんて初めて見た!中々珍しい個性だね!」

「流石は夏油!あんまり大っぴらには言えないがウチのクラスでも特に優秀な生徒だ。ただ拳藤にもう少し配慮してやって欲しいが……」

「それは善処します……多分」

 

 夏油としては今回知ったことはある程度自分でも意識していた。現状、クイーンを呼び出す場合、雑魚呪霊はまだしも固有の呪霊たちは呼べそうにない。志村のような特殊な呪霊はもっと無理だ。

 

「じゃあ私の訓練はとにかく大量の呪霊を呼び出して脳のキャパを広げることですね」

 

 夏油がそう言うとブラドキングは驚いた様子だった。

 

「夏油、お前林間合宿の目的知ってたのか?」

「予想は付きますよ。昨今のヴィランの動きから先生方は早く仮免を取らせたいのでしょう?なら個性伸ばしは必須ですよ。似たような事はクラスで訓練する時にもやってますし」

「むう……たしかに分かりやすかったか……」

 

 ブラドキングは夏油のことを改めて優秀な生徒だと考える。それはただ単に強いとか頭がいいとかが理由ではない。ブラドキングは期末試験後の職員会議の様子を思い起こす。

 

 

 

※※※

回想

 

「B組の最後は長くなりそうで後回しにしていた彼だ。夏油傑。期末試験では学科試験は優秀、演習試験でも一瞬で終わらせた。座学、実技共に欠点らしい欠点のない優秀な生徒だ。皆さん、どう見ます?」

 

 B組の生徒の話の時間なのでB組の担任のブラドキングが進行していた。

 

「今は特に実技の話をするとして、彼ほど圧倒的に強い生徒は珍しいですね。正直他の生徒とは力が隔絶している」

 

 セメントスからは高評価だ。

 

「それでいながら驕り高ぶったところがないのもいいな。このくらいの年齢で優秀だと周りを下に見る生徒もいるし。彼はクラスメイトと訓練に励んでいるようだ」

 

 スナイプからも高評価。

 

「授業態度も真面目だものね。それでいてカッコいいし。何人にも告白されてるらしいわよ」

 

 ミッドナイトからも評価が高いが顔の評価している。

 

「イレイザーが個性使っても一瞬でやられたんだろ⁉もう生徒のレベルに収まらねえよ!」

 

 プレゼントマイクも大声で発言する。

 

「あれは俺も驚いた。呪霊の個性を消しても呪力とやらで殴られた。ブラド、それにしてもあの人型はなんだ?まるで自我があるみたいな個性だ。というよりも人に近い何かに見えた」

「俺にも詳細はわからん。そもそもあの個性は常人には理解し難い。人型の呪霊の彼女は突然変異ということになっている。今まで一度も祓われていないようだ。あぁ死んでないってことだ」

 

 ブラドキングは相澤の問いにそう答えた。

 

「そうか……まぁそこは置いといて、ウチのクラスでも夏油みたいな奴がいればいいんだがな……夏油はそんなに積極的ではなかったみたいだが他を引っ張るカリスマ性があるように思う。それでいて実力も頭脳もトップクラスとくれば他のレベルも引きあがる」

 

 相澤から夏油への評価はとんでもなく高かった。

 

「イレイザーがそんな褒めるなんて珍しい!明日は槍でも降るのか?」

「俺だって褒めるべきところは褒める。少し気になるのは戦闘経験が多すぎるのが伺えるのことくらいか……」

 

 プレゼントマイクの茶化しに答えながら相澤はそう言った。

 

「それは自分の呪霊と戦いまくっていたからと思われる。資料に書かれているように家庭環境は特殊だからな」

 

 ブラドキングは視線を資料に落としながらそう言った。

 

「この環境でよくまともに育ったわね……」

「これヴィランになっててもおかしくないですね……」

「彼がヴィランになってたらとんでもない被害が出るな。トップヒーローじゃないと対処不可能では?」

 

 雄英の調べでは、小学校途中から育児放棄、学校でも無視などのいじめ、学校側も何の対処もせず。ほとんど一人で生きていた悲しい少年の資料だった。

 

「今の所目立ったメンタル面の問題は見当たりませんが、そこにも注視して育てていきたいと考えております」

 

 ブラドキングがそう締めくくって夏油に関する話は終わったのだった。

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