【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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林間合宿③

 林間合宿二日目、夏油たちB組は早朝から起きて集合させられていた。どうやら昨日先に宿泊施設に到着し、就寝も早かったB組から訓練を開始するようだ。

 

「よし!全員揃っているな!眠いだろうが頑張れ!今日から本格的に訓練に入っていくぞ!」

 

 ブラドキングは朝から元気だった。

 

「夏油たちが昨日からやっているからもう知っている者もいるかもしれないが、一応説明しておく。お前たちは前期の間で随分と成長した。だが個性はあまり成長していない……はずなんだが……」

 

 困ったように頭をかきながらブラドキングは言う。

 

「何故かお前たちが放課後に個性伸ばしのようなことを自主的にやっているのでそれの延長線上だと思えばいい。プッシーキャッツの皆さんがフォローして下さる」

 

 そこにプッシーキャッツの4人が登場する。夏油は見覚えのない人は誰だろうとボーっと見ていた。ヒーロー名と個性を紹介し、今回の訓練に最適だと説明される。

 

「前期は話題性でA組に遅れを取ったが、成績では我々は負けていない!後期は我々の番だということだ!」

 

 ブラドキングは話題性でA組に負けていたのを気にしていたようである。体育祭で盛り返したが職場体験で逆転された。

 

「じゃあ順番に呼んでいくからそれぞれ指示通りにやっていけ。夏油は昨日と同じだ。先にやってていいぞ」

 

 夏油はそう言われたため隅っこで呪霊を出していく。彼は昨日全力で個性を使いまくったこともあり、キャパが広がっていることを実感している。

 ただクイーンに関してはプラス名前ありの固有呪霊1体が限界のようだった。体感でわかった。どんだけキャパを圧迫しているんだろうか。クイーンプラス特級なんて呼び出したら脳が破裂するかもしれない。

 

(菜奈さんは出したままにするからやはり固有の呪霊を限界まで出して訓練させよう)

 

 夏油は使用頻度の高い呪霊から優先的に鍛えることにした。特に使用頻度が高いのはダルマ、エイ、虹龍、ワームあたりだと夏油は考える。

 ダルマはサンドバックにするとして、エイにはその辺を飛びながら回復粒子を巻き散らかせる。虹龍は硬化させるのに加えて、結晶の鎧を纏わせて岩山に突っ込ませ、ワームはひたすら毒を吐き出させる。

 

 ここまでやっても存外夏油は平気だった。やはり昨日よりも余裕がある感じがする。調子に乗ってゾンバと一つ目も呼び出したところで頭痛がしてきた。

 今日の訓練はゾンバに重力光の攻撃を当てられながら、その場から動かず一つ目の召喚する骸骨軍団の攻撃をさばきつつ、ダルマをサンドバックにすることにした。

 

 夏油は集中し始め周りが気にならなくなる。そして数時間が経過したとき、午前の訓練が終わった。昼食の為一時訓練を中断する生徒たち。

 問題児4人で集まって昼ご飯を食べる。志村はB組女子と食べるようだ。理解ある彼氏(予定)として快く送り出す。

 

「鉄哲、午後は私から殴られないか?」

 

 夏油は昼ご飯を食べながら鉄哲に尋ねた。

 

「お、それいいな!鎌切に切ってもらってたんだけどよ、打撃系も受けたいと思ってたんだよな!」

「ほう、なら二人がかりでボコボコにしようじゃないか」

「午後も楽しみになってきたな!」

 

 近くに座っておりこの一連の会話を聞いていたA組の生徒はドン引きである。

 

「物間氏はどうするのですかな?」

「僕は色々コピーさせてもらってコピー時間延ばしたり、あとは体鍛えたりしようかな。やっぱり直接殴った方が早いことも多いから」

「そうですぞ!やっぱり物理は正義ですぞ!」

 

 物間と宍田も午後の方針は決まっているようだ。これもいいことだと頷く夏油。

 

 昼食が終わった後も訓練を続行する。鉄哲と訓練していたが怪我させそうになったので中止になった。まさか鉄哲のスティールが割れかけるとは……

 夏油は出す呪霊を変えたりしつつ訓練を続けていく。雑魚呪霊を多く出して操作の練習をするのも忘れない。

 

(呪霊に攻撃させるだけというのも飽きたね。何かいい訓練方法はないものか……)

 

 夏油は考えたが特に見つからず、その日の訓練は終わった。

 午後4時、大量の食材が準備されていた。これでカレーを作れという事らしい。疲れた体に鞭打ってノソノソと食事支度を始める一同。

 

 拳藤の指示でできる仕事ごとに分けられ、調理を始めていく。夏油も調理班に入れられ、慣れた手つきで野菜を切ったり皮をむいて行ったりした。

 

「夏油、流石は何でもできる男だねー。料理も当たり前にできるのか」

 

 横から取蔭が茶化してくる。

 

「これはどちらかというとサバイバルだよ。やる人が自分しかいなかったからできるようになった。それだけさ」

「へー。詳しく聞かないけど、あんたも苦労してんだね。じゃあいい思い出たくさん作っていこー」

 

 何かを感じ取っても必要以上に踏み込んでこない。それは興味の有無ではなく、お互いの信頼関係故だ。やっぱりウチのクラスはいいなと思う夏油である。

 志村の様子を探ると、竈の火をつけているようであった。クラスにも自然と馴染めている。

 その後も女子や夏油のように調理の経験がある生徒を中心に作っていき、少ししてカレーが完成した。匂いは美味しそうである。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 夏油も早速一口食べると美味い!やはり皆で作ったからこその美味しさなのか、志村の炎で作ったからこその美味しさなのか、またはその両方か、とにかく夏油は大満足してカレーを食べ切った。

 

「明日の夜は肉じゃがね」

「うおー!」

 

 肉じゃがも悪くないなと思う夏油。今からすでに楽しみだ。

 

「お肉は豚肉と牛肉だから、A組とB組でどっちがいいか選んどいてね」

 

 マンダレイの言葉に肉じゃがの肉はどっちか論争が起きる。

 

「それでは、今決めてしまおう!いいかい、拳藤くん!」

 

 飯田がそう言って立ち上がる。

 

「あぁいいよ。じゃあジャンケンで勝った方が選ぶってことで」

 

 それに応えて拳藤も立ち上がる。

 

「ちょっと待った!」

 

 それを物間が制止する。

 

「ねえ、ジャンケンなんかで決めるのつまらないだろ。ここはきっちり勝負して決めた方がいいんじゃない?」

「は?別にジャンケンでいいだろ」

 

 物間は憎きA組と直接対決できる機会はそうはないと息巻くがB組女子も男子もいまいち乗ってこない。どっちでもいいという雰囲気が作られる。

 

「私は牛肉がいいな。普段豚だから牛肉で食べてみたい」

 

 突然夏油がそう言いだした。何か物間が面白そうなことをし始めたので全力で乗っかりに行った。

 

「そうかい、夏油?じゃあA組がどっちでもいいならこっちで選ばせてもらおうよ。A組は構わないんだろう?余りものでいいならそれを使えばいいよ。ねえ、爆豪くん?」

「ああ?」

「君は豚肉でも構わないんだろう?ウチの夏油が牛肉がいいって言ってるんだ。勝負を放棄したA組は残りの豚肉でいいだろう?」

 

 物間の明らかな挑発。だが爆豪は哀れにも引っかかる。

 

「……ふざけんな!こっちだって牛肉だ!」

「じゃあ勝負して決めるしかないね」

「あったり前だ!クソB組なんか蹴散らかしてやらあ!」

 

 だがこの言葉にカチンとくるのがB組だ。

 

「クソ?おかしいな……私の耳がおかしくなったのか?私たちB組に対してクソと言わなかったか?」

 

 夏油、ちょっとキレ気味である。

 

「クソにクソって言って何が悪いんだよ!」

「すまねえ!爆豪のクソはなんつーか口癖みたいなもんで」

「クソみてえなフォローするんじゃねえ!クソ髪!」

「爆豪くん!君はまたそんな勝手なことを……今は神聖な合宿中なのだぞ⁉それを勝負とは……」

「カンケ―ねえよ!売られた喧嘩は買うしかねえだろが!」

 

 爆豪の暴言が止まらない。

 

「喧嘩売ってんのはそっちだろーが!」

 

 冷静な骨抜が珍しく食って掛かる。他のB組男子たちもいつの間にか火がつけられている。

 八百万が相澤に制してもらおうとするが静観している。やらせるつもりらしい。

 結局腕相撲で勝負をすることになった。

 

 

 腕相撲にはレフェリーが必要とのことで飯田が任された。

 

「では早速腕相撲を始めよう」

 

それぞれのクラスの代表が発表される。

A組は尾白、障子、口田、切島、爆豪。

B組は庄田、鉄哲、宍田、夏油、物間。

 

「てめえ、俺が直々にぶっ殺してやるから覚悟しとけよ」

「どうなるだろうね?」

 

 だがここで補習の時間となり、A組の補習組は行かなければならなかった。

 

「それでは早速始めよう!第一回戦、尾白くん対庄田くん!レディー、ゴー!」

 

 勝負は一瞬だった。一瞬で尾白の手がテーブルに着いていた。

 その後の勝負は一進一退だった。障子対鉄哲は鉄哲も健闘していたが、体重差もあってか障子が勝った。

 三戦目の口田対宍田は瞬殺だった。宍田が開始と共に口田を瞬殺した。

 

 いよいよ勝負は四戦目に突入する。補習を抜けてきた切島と夏油が手を組む。

 

「レディー……ゴー!」

 

 勝負は一瞬だった。夏油が切島を腕を一瞬でテーブルに着けていた。

 

「ふー、これで牛肉は私たちB組のものだね」

「しゃー!」

「よくやった!」

 

 B組が喜んでいる一方で、A組はというと……

 

「すまねえ、皆!」

「しょうがねえよ」

「というか肉はなんでもいい」

「見応えあったしな」

 

 普通に慰めていた。というか問題の肉に興味がある者は皆無なので言うこともない。

 

「コラ!クソ髪!お前なにしとんじゃあ!!」

 

 爆豪のブチギレは止まらず、A組総出で止めることになり、慌ただしく外へ行った。誰かが八つ当たりされそうだ。

 

「とりあえずこのテーブルとか片付けようぜ」

 

 まともな感性がある骨抜がそう言う。

 

「そうだね。あー、なんて素晴らしいんだ!これだけでも林間合宿に来た甲斐があったというもの!見たかい、あのキレた爆豪の顔!素晴らしいね」

 

 物間は満足そうだ。

 

「君が楽しそうで良かったよ。これで明日からも楽しめるだろう?」

「ああ」

 

 夏油と物間が楽しく会話しているのをよそに、外から爆発音が聞こえてくる。花火でもやっているのだろうか……?(んなわけ)

 

 

 

※※※

 

 男子たちが馬鹿をやっている頃、女子たちの姿は風呂場にあった。そしてそれを狙う峰田がいた。B組女子が入っていると思われるところを穴をあけて覗いている。

 湯煙でなかなか見えないがもう少しというところで峰田はイヤホンジャックと酸でお仕置きされてしまう。

 

「ぎゃあああ⁉」

 

 そこにはA組とB組の女子が集結していた。ついでに志村もいる。その後の問答でも峰田は全く反省していないことが伺え、変態発言をしようとして拳藤にぶっ叩かれていた。

 

 

 

 その後、風呂を出た後に拳藤、小大、塩崎、柳、志村はA組女子の部屋を訪ねていた。

 

「拳藤だけど、ちょっといいかな」

「ええ、もちろんですわ」

 

 八百万が返事をしてドアを開ける。

 

「さっきはありがとね、これお礼」

「お礼?」

「えー、なになに?お菓子だー!」

 

 拳藤たちは峰田の覗きを防いでくれたお礼にお菓子を持ってきたようだった。

 

「だからさ、これ貰ってよ。ほんの気持ち」

 

 拳藤は貰ってくれと言うが八百万は気が咎める様子。だが芦戸はそんなこともおかまいなく貰おうと言う。それに他の女子たちも貰うのに賛成のようだった。

 

「それじゃ、皆で食べようよ!」

 

 葉隠が突然提案する。

 

「女子会しよー!女子会!せっかくだし」

「さんせー!こういう機会もなかなかないしね」

「まぁ……女子会……」

「え、ホントに良いの?」

「もちろんよ。それに、男子たちも男子たちで集まっているみたいだし」

「ん」

「……じゃ、やっちゃう?女子会」

「やっちゃうー!」

 

 というわけで突然の女子会の開催である。お菓子を広げ、ジュースを片手に車座になった。

 女子会が何をやるのか分からないという八百万に葉隠が恋バナという。その時点で志村には嫌な予感がしていた。

 

 テンションに違いはありつつも話題は恋バナになっていた。

 

「それじゃ付き合っている人がいる人ー!」

 

 だが名乗り出る者はおらず、誰にも彼氏がいないことが確定した。雄英に入るために、そして入った後も忙しい日々を過ごしているから仕方がないのかもしれない。

 芦戸が片思いでもいいと言うと麗日が赤面していた。そして詰め寄られ動揺するが何とか誤魔化す。

 

 結局誰も具体的な話がないので妄想で話すことになった。彼氏にするなら誰がいいかというテーマだ。

 耳郎と上鳴の話題になるが本人は嫌そうだ。峰田の話題からB組の話に飛ぶ。

 

「B組に峰田みたいなのっていないの?」

 

 芦戸がそう拳藤に尋ねる。

 

「いないいない。ウチの男共は割と硬派だよ。あ、でも物間みたいなのもいるし、夏油みたいな問題児もいるし」

「物間はなー……」

「ん」

「物間だなー……」

「ん」

 

 柳の言葉に小大が頷く。

 

「で、我らが問題児夏油は……ねえ?」

「ん」

 

 柳と小大は顔を見合わせる。

 

「夏油くんってイケメンだけどダメなの?」

 

 葉隠は純粋にそう質問するがB組女子は微妙は反応だ。

 

「イケメンではあることは認めるけどね。背も高くてスタイルいいし」

「それに強い」

「ん」

「教養にも富んだお方です」

「実際モテるんだよ。特に上級生からなんて何回告白されてることか……」

 

 総じて夏油の評価は高い。あくまでここまではだが……拳藤は続けて言う。

 

「でも性格がね……悪いわけではないけど、問題児たちの親玉なんだよ。告白の窓口を私にしたりしてるし……」

「一佳いつも抑えるのに苦労してるよね」

「ん」

「夏油さんは仲間には優しいですが、敵対すると暗黒面に堕ちそうになります。そんな彼を救ってさしあげたい」

 

 塩崎は祈りだした。

 

「B組にも問題児はいらっしゃるのですね……」

「あ!そういえば夏油と一緒にいた呪霊さんって夏油とどんな関係なの?」

 

 芦戸が思い出したように尋ねる。

 

「やっぱこの話出るよね……そんな気がしてたよ……でも昨日話した通りだよ。私は傑の呪霊、要は家族さ」

「でも情熱的にアプローチされてるようだったわ。彼は本気なんじゃ?」

 

 蛙吹がそう尋ねる。

 

「んー、まあそうなんだろうけど、私はあくまで呪霊で人間じゃないからなぁ……私でいいのかな、もっと彼には素敵な人がいるんじゃないか、って思うんだよね」

「でもそれってもう好きになってない?」

 

 葉隠がそう言う。

 

「え?」

「だってそこまで夏油くんのことを想えるだなんて、まるでもう恋してるんじゃないかと思うわけですよ!」

 

 葉隠の言う事を志村は考える。いつか夏油の隣に自分の知らない誰かがいる。そして彼はその人と幸せそうに暮らす。自分に向けられていた笑顔が誰かに向かう。それを自分は黙って見ているしかない。

 

(それは嫌だな……)

 

 今でも生前の息子のことは心残りで大きな傷として刻まれている。それでも志村に前に進みたい気持ちが芽生えているのも事実だった。

 

(私、自分の幸せを求めてもいいのかな……もう気持ちに嘘をつき続けるのも限界なのかも)

 

 志村は夏油に対する恋愛感情を自覚した。きっと自分はあの少年に恋している、そう志村は思った。

 

「そうだね。今自覚したけど、私は傑に恋しているのかもしれない」

 

 志村がそう言うと、一瞬静まって甲高い声が部屋に響き渡る。

 

「じゃあじゃあ!もう付き合っちゃうの⁉」

「え、それはどうだろう……あんまり考えてなかったから……」

 

 志村もどうすればいいか混乱している。

 

「ゆっくり考えてもいいと思いますよ。夏油ならいつまででも待っていそうですし」

 

 拳藤はそう言う。その姿が夏油なら容易に想像がつく。

 

「うん、そうかもしれないね」

 

 どこかすっきりした表情で志村は言った。

 

 だがここで話は終わるわけもなく、キュンキュンしたい年頃の女子が根掘り葉掘り聞いてきたため、志村はげっそりと疲れ果てるのだった。

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