【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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必殺技

 寮に入居した次の日、B組は教室に集合していた。前日の夏油の教祖発言は「まぁ夏油だしな……」ということでスルーされた。本人がそのうち分かると誤魔化したのもあるが……

 

「今後の目標だが、当面は仮免の取得を目指してもらう!仮免といえど例年5割を切る合格率だ。よってお前たちには一人最低でも二つ、必殺技を作ってもらう!」

 

 ブラドキングがそう言うと、教室内が騒がしくなる。

 

「嬉しいのは分かるが落ち着け。というわけでこちらの先生方に手伝ってもらうことになる。コスチュームに着替えて体育館γに集合してくれ」

 

 続けて、いつの間にか入って来ていたエクトプラズム、セメントス、ミッドナイトを紹介してそう言った。

 必殺技という心惹かれる言葉にわくわくしながらB組は移動を開始する。ちなみに夏油はあまりわくわくしていないがクラスメイトが嬉しそうなので気分が良かった。

 

 

 体育館γに移動してどうして必殺技が必要なのかの説明を受け、早速必殺技開発を始める。それぞれにエクトプラズムの分身がついてくれるので夏油の側にもいる。

 

「先生、とりあえず前々から考えていた物を見てもらってもいいですか?」

「フム、ヤッテミナサイ」

 

 エクトプラズムから了承を受けた夏油は実演する。

 

「私の個性はある意味全てが必殺技みたいなものなんですよね。それを必殺技として昇華する。いやー、面白いなぁ」

 

 夏油はそう言いながら姿を消す。

 

「消エタ?イヤ、ソコニイルガ背景ト同化シテイルナ。コレハドウイウ能力ダ?」

「これはですね、ガンちゃん、眼球呪霊の保護色の性質を使っているんですよ。ほら、保護色を解くと……全身眼球まみれです」

 

 夏油は本人の言う通りガンちゃんを全身に隙間なく纏わせていた。率直に言ってグロい。

 

「泡瀬、吹出、二人のおかげで気づいたよ。ありがとう」

「ん?あ、肝試しのか!」

「心がドキューンとしたよ」

 

 近くにいた泡瀬と吹出に礼を言う夏油。

 

「名前は……目隠地蔵、ですかね。あんまり激しく動けない意味も込めて」

 

 その後も夏油は必殺技を各呪霊ごとに開発する。

 ガンちゃんを使うのは他にも周囲に展開し死角をなくす『万象視界』

 

 イカを使うのは指から銃弾のように撃つ『イガン』、これまでも良く使ってきた弾幕を張るのにも名前を付けて『イガトリング』

 

 ムカデを使う技はシンリンカムイから着想を得て、ムカデで縛って拘束する『百足鎖牢』

 

 虫を使うのは大量の虫で圧殺する『呪蟲嵐』

 

 ダルマは二つあり、ダルマで叩き潰す『ダルマ落とし』、林間合宿でも使った対遠距離攻撃を引き付ける『強制誘引』

 

 エイは高速で飛来し縁で切る『飛翔斬』

 

 ワームは飲み込んで相手を拘束する『蠕虫(ぜんちゅう)呑牢』、地面に空洞を作り足場を崩す『蠕虫空地』

 

 ゾンバは重力で相手を動けなくする『重光牢』

 

 一つ目は空中に召喚し落下で地面を揺らす『地ならし』、召喚した骸骨を爆破させ破片をまき散らす『骨爆連環』

 

 虹龍は結晶のドリルを作り突撃する『晶龍槍』

 

 明王は地鳴らしの強化版である『大地ならし』、刀を振り下ろし真っ二つに斬る『一刀断罪』

 

 夏油はここまでの技をエクトプラズムに見せて行った。

 

「まぁこんなところですかね。一応それぞれの呪霊の特徴・特性に合わせて作りました」

「ドレモ有用デ良イ。特ニ拘束技ガ多イ所ガ良イ。君自身ガ動ク技ハナイノカ?」

「もちろんあります。受けてもらってもいいですか?」

 

 エクトプラズムが了承したので夏油は三節棍を取り出し披露する。

 

 三節棍を体の周りで振り回して全方位防御する『呪鎧断壁』

 三節棍を素早く振るい、棍の動きが幻影のように残ることで敵の視覚と感覚を狂わせる『三節幽影』

 ここまでは問題なかった。だが最後に披露した『呪滅砕震』は威力が高すぎてエクトプラズムを貫通してコンクリートの山を破壊してしまった。この技は三節棍を体の周りで振り回し、勢いをつけて必殺の一撃を放つ技だ。ここでは使うなとブラドキングに怒られる夏油であった。

 

 順調そうな夏油にも失敗はあった。それは呪霊を身に纏うことだ。出来そうな気がしたが中々成功しない。それに呪霊を一時的に強化する技は一応成功したが、あまり効果的になっていない。さらなる研鑽が必要だった。

 それもあって夏油は残りの時間はそれと個性伸ばしに専念する。順調に脳のキャパは増えていた。

 

 

 放課後、夏油は志村と耐火設備が整った部屋に来ていた。夏油は志村に必殺技を開発させたいらしい。

 

「で、どうして授業時間じゃなく放課後なんだい?てっきり私は一人でやってくれってことで呼ばなかったのかと思ってたけど」

 

 志村は少し拗ねた様子で言った。

 

「まさか!私がそんなことを思うはずがないでしょう?私はただあなたの技を一番最初に見たい、あわよくばその瞬間を独占したい、そして名前を送りたいと思っただけです。つまり愛ですよ」

 

 夏油は自信満々に言い切った。

 

「自分で言ってて恥ずかしくないのか?まぁいいや、私は名前とか考えるの苦手だから傑に頼むよ」

「お任せください。菜奈さんは美しい人だから……やっぱり花の名前なんかいいですね……うん、美人には花が似合う。そうしましょう」

 

 夏油は勝手に一人納得していた。

 

「面倒だから何でもいいけど、早速必殺技作っていくよ。傑たちがやってる間に考えていたんだ」

 

 志村はそう言って夏油に必殺技を見せていこうとする。

 

「あ、そうだ。菜奈さんに報告があったんだった」

「ん?なんだい?」

「あの人たちから送金が止まりました」

「は?」

 

 夏油は何でもない事かのように言ったが志村としては絶句するしかない。

 

「十中八九あの動画のせいでしょうね。彼らからしたら口止め料込みのつもりだったんじゃないですか?なのに公に認めてしまいましたからね」

「そんな、だからって……それが親のすることか……?いや、私が言っても説得力ないけど……」

「気にしないで下さい。それにあの人たちと菜奈さんは違いますよ。節約してたのでまだ貯金ありますし」

 

 それは本当だった。一人で生きていた夏油は生活費くらいしか使っていなかった。それに授業料は今年の分は既に払っていたのもある。

 それとは別にヴィラン狩りで集めた資金もあった。

 

「ならもし困ったらブラドキング先生に相談すると約束してくれ」

「わかりました。さて菜奈さんの考えた必殺技、見せてもらえますか?」

「うん、じゃあやっていくよ……」

 

 そこから志村は必殺技を実演していった。ヒーローの先輩として良いところを見せようと張り切っており、そんな姿もかわいいと思う夏油であった。

 夏油は一通り見終わって感想を口にする。

 

「いいですねぇ。それに想像よりかなり多くて名づけ甲斐があります。花の名前がいいと思っていましたがそれでいきますね」

 

 夏油は次々に名前を付けていく。

 

 まずは近接技から。

 腕に炎を纏わせる『ブルーデイジー』

 拳で炎を連打する『ムスカリ』

 炎を纏った蹴りを放つ『アガパンサス』

 手を手刀の形にして炎の刃を作る『アイリス』

 対象に触れて内側から焼く『トリカブト』

 

 次に遠距離技。

 拳から炎の熱線を放つ『竜胆』

 指先から熱線を放つ『矢車菊』

 炎を弾を多数放つ『ブルースター』

 炎の花びらが拡散し、当たった対象を燃やす『杜若』

 炎の大きな玉を放つ『ブルーポピー』

 炎の柱を作り上空を攻撃する『ブルーサルビア』

 足元から広範囲を焼く『ネモフィラ』

 

 防御技も開発していた。

 全身を燃やす攻防一体の『エリンジウム』

 炎の壁を作る『桔梗』

 

 移動技もある。

 足から炎を出して速度を上げる、または飛翔する『デルフィニウム』

 

 幻影を使う特殊技もある。

 幻影の分身を作る技で、通常は多数に分裂するように使って攪乱する『紫陽花』

 幻影で周囲に同化させて姿を隠す『ニゲラ』

 

 最後に、切り札となる奥義。

 炎の木を生やし落ち葉が舞い、触れた対象を燃やす対集団技は『ジャカランダ』

 胸に炎を凝縮して解き放つ『朝顔』

 片腕に炎を限界まで凝縮して叩き込む奥義の中でも最強の技『青薔薇』

 

 志村の必殺技に名前を付け終えた夏油は一仕事終えたようにホッとした。本人的には満足みたいだ。

 

「しかし朝顔と青薔薇の威力は凄まじいですね。耐火設備のある部屋なのに温度が上昇しすぎて警報が鳴るとは……」

「うっ、申し訳ない。やりすぎてしまったよ。先生方にも迷惑をかけてしまったし……」

 

 夏油の言う通り、温度が危険水域まで上昇して警報が鳴った。そしてブラドキングたちが確認に来ていたのだった。パワーローダーなんかは改良のし甲斐があると言っていたが。

 

「先生方も笑ってたじゃないですか。気にせず今日は帰りましょう」

「いや、あれは呆れて笑うしかなかっただけだと思うけどね……」

 

 そんなわけでこの日は終わった。

 

 

 

 翌日以降も訓練を続けていっていたある日、今日は午後からB組がTDLを使う予定だった。

 

「そこまでだA組!今日は午後から我々がここを使わせてもらう予定だ!」

 

 ブラドキングに率いられて夏油たちB組は入っていく。早速物間がA組に絡んでいるが夏油は呪霊を身に纏う方法を考えていた。

 

(やっぱり根本的に考え方を変えるか。そもそも私と呪霊は指示が出来たり視界を共有できることから回路があるはず。ならばそこに活路はないか?回路を呪霊が逆流するイメージなら身に纏うのに使える?いいね、考えがまとまって来た)

 

 考え事をしている夏油に話しかけてくる者がいた。

 

「夏油、ちょっといい?」

「お礼を言いたくて!」

 

 それは耳郎と葉隠だった。

 

「お礼……?あぁ、林間合宿のことか」

 

 夏油はすっかり忘れていたが林間合宿で耳郎と葉隠を森から施設まで運んでいた。

 

「そう、あの時はありがとね」

「私なんて戦闘力ない上に服着てて透明なの意味なかったからヤバかったよ!」

 

 改めて俺を言う耳郎と葉隠だった。

 

「気にすることないさ。同じ雄英の仲間だろう?それより怪我がなくて良かったよ」

 

 夏油はそう言って爽やかに笑った。動画投稿をしていることもあって最近はファンサに力を入れている夏油である。

 

「ウチのクラスにいないタイプだな……」

「爽やかイケメン!」

 

 A組にはいないタイプのイケメンに少し興奮する葉隠だった。

 

 

 

 午後になってB組の時間になり夏油は早速先ほどの考えを試すことにし、虹龍でやってみる。

 呪霊との回路を意識して体に戻す様に体に纏わせる。すると、コスチュームの上から全身を龍の鱗のようなものが覆っていた。龍の頭は夏油の肩に乗っている。

 

「ふむ、これは成功かな?ただ呪力の消費は増えたな。その代わり操作が必要ないから脳の負担は少ないか。それに……」

 

 夏油の身に纏う鱗は白く光った。そして結晶を生成する。

 

「硬化も使えるし、晶鎧も使えるな。これは大成功と言っていいのでは?」

 

 夏油はそのまま他の呪霊でも試してみるが、有用だったのは明王だけだった。明王を纏うと甲冑のようなものを身に纏う。

 明王は崩鎧で鎧が壊される程呪力が増し、鍛鎧で鎧を強化して生成するという個性を持つ。それを夏油でも使用可能になった。

 

「問題は名前か。この呪霊を身に纏う技の名前は……『呪霊装術』だな。虹龍と明王を纏うのはそれぞれ『虹龍転身』と『明王転身』と名付けよう」

 

 夏油は早速名前を付けていた。

 

 次にこの前はあまり意味がないと判断した呪霊の強化も試す。回路を意識して呪力で強化するとそれぞれの呪霊のスピードやパワーが上がった。触れてやった方が効果が大きい。

 ただ呪力が元々大きい個体ほど効果が少ない。呪力が少ない呪霊にはある程度有用であろう。

 夏油はこの技に『過呪増強』と名付けた。

 

 こうして夏油の必殺技開発は順調で個性伸ばしを続けていった。

 

 

 

 圧縮訓練を続けていたある日、夏油は共用スペースのリビングで呪霊玉を飲み込んでいた。

 

「なぁ夏油、それ前から気になってたんだけどよ、美味いのか?ちょっと分けてくれよ」

 

 一緒にくつろいでいた鉄哲にそう言われた。なんと答えようか逡巡した夏油だが嘘は付きたくないので素直に答えることにした。

 

「これは呪霊玉と言ってね、私の個性で雑魚呪霊を生み出すのに使うのさ。他の人が食べたら死ぬかもしれないからあげれない。で、味は……吐瀉物を処理した雑巾みたいな味かな……」

「……は?吐瀉物って……お前そんなの……」

 

 鉄哲は絶句しているようだった。すぐに決意した顔になる。

 

「皆ーー!!!来てくれーー!!!夏油がやべーもん食ってるーー!!!」

 

 滅茶苦茶デカい声で寮中のクラスメイトを呼んだ。

 

「おいおいどうした⁉」

「今もう夜だぞ鉄哲!」

「やべーもんってなんだよ……」

 

 何が起きたのかと集合するB組一同。そこで鉄哲がさっきのことを説明する。

 

「……は?」

「おい、夏油どうして黙ってたんだよ……」

「そんな問題点があったなんて……」

「じゃあ俺らが呪霊倒すたびに飲み込んでたのかよ……」

 

 B組にとってもこの事実はショックだった。

 

「別に皆が気にすることはない。私自身この味とは長い付き合いだ」

 

 夏油としても気を使わせたくなかったから聞かれるまで言わなかったのだが裏目に出たかもしれない。

 

「じゃあ何か甘いものと一緒に飲むとかは?チョコとか」

 

 拳藤が提案するが夏油は試したことがあると言う。

 

「夏油さえ良ければ色々試してみないか?普段の訓練から僕たちは君に世話になりっぱなしだ。少しでも軽減できるようなものがあるかもしれないし」

 

 物間はそう言って夏油を見る。

 

「そうだよね。夏油にばっか負担掛けるのは違うよね」

「俺、お菓子いっぱい部屋にあるから持ってくる!」

「ハチミツとかどうだ?」

「砂糖まぶして焼くか?」

 

 口々に提案してくれるクラスメイトたちに感動を覚える夏油。

 

「皆……」

 

 その後色々と試してみるが中々上手くいくものはなかった。

 

「うーん、じゃあその呪霊玉冷やそうぜ。冷やしたら味感じにくくなるって言うし」

 

 誰かの提案で冷やしてから甘いものを掛けて試していく。すると……

 

「……ん?味がしない……味がしないぞ……!これは……黒蜜か?」

 

 黒蜜を掛けたものを飲んで夏油が味がしないと言ったとき、皆の動きが止まり歓喜の声に変わる。

 

「良かったな、夏油!」

「色々試した甲斐があったね」

「よっしゃー!」

「大変でしたな!」

 

 皆が自分のことのように喜んでくれて嬉しい夏油。だが眠い。もう日付も変わって深夜だ。

 

「皆ありがとう。皆のおかげで不味いものを飲まなくて済みそうだ」

「お礼はいいよ。日頃の感謝の気持ちだし、そもそも仲間だろ?皆、そろそろ寝ないと明日動けなくなるから寝ようか」

 

 急いで片付けてそれぞれの部屋に戻って寝る。やっぱり仲間に恵まれたと感じながら眠る夏油であった。

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