【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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雄英入試

 2月26日、とうとう雄英の実技試験の日がやってきた。にもかかわらず夏油は全く緊張していなかった。

 

『そういえば傑、君なら推薦も取れただろう?どうして一般入試にしたんだい?』

 

 雄英に向かう電車に揺られている夏油に志村は問いかけた。志村は他の呪霊と同様に夏油の体内にいる。他の呪霊と違うのは、その状態だと夏油の感覚を志村にも共有できることだ。

 そして会話もできる。夏油が外出するとき、志村は基本的に夏油の体内にいた。

 

『大した理由ではないですよ。ただ今の自分の実力を正確に試したいと思っただけです。推薦は受験者が限られますからね』

 

 あれやこれやと話しているうちに雄英に到着した。そこにはもう多くの受験者であふれかえっていた。

 

『へぇ。こんなに受験者がいるとは……雄英ブランドを舐めていたかもしれないね』

『ちょっとは緊張してきたかい?君は思ってないだろうけど雄英はすごいんだぞ!』

『緊張はしません。ただ久しぶりに全力が出せそうで心躍りますね』

『あんまりやり過ぎるなよ。この前私と呪力ありの体術勝負したときに山を崩しかけたのもう忘れてるだろ』

『そんなこともありましたっけ?そんなことよりもう始まるみたいですよ』

『そんなことって……』

 

 夏油と志村の会話をよそに、サングラスをかけた派手な男が壇上に上がる。彼はプロヒーローにして雄英教師、プレゼントマイクだ。

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!!』

 

 掛け声を求めたようだが静まり返る場内。

 

『こいつぁシヴィ―!受験生リスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ‼アーユーレディ⁉イェーーー!!』

 

 試験は入試要項通り、10分間の模擬市街地演習を行われる。演習場には仮想ヴィランが三種配置してあり、それを行動不能にしてポイントを稼ぐ。そこまで説明されたところで手が上がる。

 

「質問よろしいでしょうか⁉プリントには四種のヴィランと記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!ついでにそこの縮れ毛の君、先ほどからボソボソと……気が散る!物見雄山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

「すみません……」

 

『めんどくさそうな受験生だ。あまり関わり合いになりたくないですね』

『そう言うなよ。真面目でいいじゃないか。ただ他の受験生に対してあれは良くないけどね』

 

 4つ目のヴィランは0ポイントでお邪魔虫との説明がされる。これを聞いて夏油は気になった。呪霊たちがどこまでやれるのかを。

 

(俄然、楽しみになってきたね)

 

 

 試験会場まではバスで移動であった。道中も夏油はリラックスしたまま風景を眺めていた。

 試験会場に着くとそこはまるで一つの町であった。雄英にはこのようなものがいくつもある。

 夏油が試験開始を待っているとそこに話しかけてくる男がいた。

 

「君、さっきから落ち着いているけどよっぽど自信があるのかな?個性が強いとか?」

「ん?どうかな?自信はあるけどそんな風に見えたかい?それは申し訳ないな」

「いいんだ。だけどそれなら僕に協力してくれないか?僕の個性は個性のコピーなんだが、一人ではどうしようもなくてね。黙ってコピーするのもヒーロー志望として良くないかとも思うし、良ければ君の個性をコピーさせてくれないか?」

 

 そう言って彼は頭を下げた。

 

「頭を上げてくれ。私の個性で良ければコピーするといい。どうすればいいんだ?」

「触ればいいだけさ」

 

 そう言って彼は私の腕に触った。

 

「君の個性って増強型?肉体が強化された感覚がある……だけど他のこともできそうだな……」

「君の誠実さに免じてもう一つコピーさせてあげよう」

「え?」

 

 夏油は志村に話しかける。

 

『菜奈さん、いいですよね?』

『もちろん。君が協力したいと思ったんだろう?珍しいじゃないか。私は嬉しいよ』

 

 夏油の横から腕が飛び出した。

 

「なんだい、これ?」

「この人にも触れてみなよ。いいから、騙されたと思って」

 

 彼は言われた通りにした。すると、

 

「コピーできた……どういうことなんだ……?もう一人いるのか……?」

「そんなに悩むなよ。君とは長い付き合いになりそうだ。私は夏油傑。君は?」

「あぁ、先に言うべきだった。物間寧人だ。よろしく」

「そろそろ始まりそうだ。お互い悔いなくやろう」

「あぁ。ありがとう、夏油」

 

 そう夏油と物間が話し終えたとき、アナウンスが流れる。

 

『ハイ、スタートー!』

 

 その瞬間、夏油は足元からエイを出して乗り、ヴィランを探しに向かう。同時に大量の眼球呪霊、ガンちゃんをばら撒き索敵をする。

 

 それに合わせて夏油は多数のムカデと虫を放出した。この呪霊たちであれば3ポイントヴィラン程度であれば倒せる。そう夏油は判断した。

 

 夏油は移動しながらもイカの弾幕で次々に仮想ヴィランを破壊する。出来るだけ纏まっているところに移動してポイントを稼いでいった。

 

「フム。もうほとんどヴィランが見当たらないね。これはどうしたもんか……これ以上やっていいのかな?他の受験生の分がなくなってしまうかもしれない」

 

 当然ながら夏油はそんな殊勝な性格ではない。

 

『傑、君の優しさは美点だが、今は試験だ。容赦しなくていいんだぞ』

「ならば全霊をもってやりましょう!」

 

 そこからの夏油は容赦しなかった。今まで以上に多くのムカデと虫を呼び出した。だがこれで彼の脳のキャパもそろそろ限界になるかというところで、地響きが鳴った。

 

「これは……そうか0ポイントヴィランか」

 

 それは0ポイントヴィランが建物を壊しながら暴れている音であった。

 

「ポイントはないけど……余裕はある。腕試しには丁度いい」

 

 夏油は0ポイントヴィランを倒すことに決めた。そして彼が呼び出したのは鎧武者呪霊、呼称明王だ。

 

「行け、明王。両断しろ」

 

 夏油の命令を受けた明王は0ポイントヴィラン相手に真正面から向かい合い、刀を振りかぶって切り捨てた。

 0ポイントヴィランはあっけなく破壊されてしまった。

 

「この程度か。大したことはなかったな」

『傑、残り時間は?』

「もう終わりですね。それにもうヴィランは駆逐してしまったようだ」

 

 もうこの会場には仮想ヴィランは残っていなかった。夏油の呪霊たちが撃破してしまっていた。

 

『終了!!!』

 

 その時、試験終了のアナウンスが流れ雄英高校ヒーロー科実技試験は幕を閉じた。

 

『雄英、大したことなかったですね』

『それはお前だからだよ……傑ほどの実力者なら当然だ』

 

 そこに見知った顔が近づいてくる。試験前に話した物間だ。

 

「君、大暴れだったね。夏油と反対方向に行って正解だったよ。君のおかげで何とかなった。コピーの時間が切れてからは何もできなかったけど……」

「コピーも君の実力、君が勝ち取ったものさ。猿とは違ってね……」

「猿?何のことだい?」

「何でもないさ。それより次は入学式で会えることを願っているよ」

「あぁ。僕もだ」

 

 その後夏油と物間は別れ、それぞれ家に帰った。

 

 入試が終わって夏油は家のリビングのソファでくつろいでいた。そこに志村が黒い穴から現れた。

 

「どうして他の呪霊は私の意思でないと出入りできないのにあなたは出入りできてしまうのでしょうね?私の周囲限定とはいえ……」

「私に意思があるおかげかな?でもいいことだと思う。君が寝ている間も警戒できるだろう?」

「それはそうですが……菜奈さんにそんなことをさせるのは忍びない」

「そう言うな。私は満足しているんだ。子供はヴィランから遠ざけることができ、弟子は平和の象徴、パートナーは雄英入試で首席間違いなしだ!」

「気が早いですよ。まだ発表もしてないのに」

「あの出来で首席じゃないはずないだろう?首席でなかったら抗議してやる」

「フッ、そうなったら頼みますっ」

「任せておけ!」

 

 志村は思いを馳せた。これから平和な幸せな日々が続くと。

 夏油は夢想した。これから自身の思い描く世界がやって来ると……

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