【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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文化祭

 10月に入っても夏油はインターンを続けていた。しかも授業時間も削って活動することもあったのでかなり忙しい。そんなある日。

 

「今日の連絡は一つ、もうすぐ文化祭がある」

 

 ブラドキングからそんな発言がされる。

 

「文化祭?雄英ってそんな普通の行事もあるんだな……」

「夏油氏、流石に文化祭はどこもやっていますぞ。ですが昨今の情勢を鑑みるとよく決行できましたな」

 

 夏油はそもそも雄英に詳しくないためそう言っていたが、宍田はこのご時世によくやるなと思っていた。

 

「宍田の言うことも分かるが、文化祭は他の科が主役なんだ。安易に中止するわけにもいかん。というわけでこの時間は出し物を決めてくれ。後は拳藤よろしく」

「はい、じゃあ何かやりたいのある人は手を上げて」

 

 ブラドキングから任された拳藤が仕切っていく。色々と候補が出てくるが夏油にはどれがいいのかいまいちわからなかった。

 

「じゃあ他にある人ー、物間」

 

 物間が手を上げていて拳藤に指名される。

 

「僕はやっぱり目立つことをしたいんだ。それでいて不満を持っている他の科にも評判がいいもの。ズバリそれは劇!劇こそが目立てるのさ!」

 

 物間は劇がやりたい様子。それに対してB組の反応は様々だ。

 

「劇?悪くないけど準備がかなり大変だな」

「脚本の問題があるよね」

「演技できるかなー」

「でも他の科にも喜んでもらえるものがいいよね」

「食事系はなんか普通過ぎるし劇いいじゃん」

 

 そんな風に各々反応しているのを拳藤が取りまとめる。

 

「はいはい!それくらいにしてそろそろ決を取りたいと思います。流石に実現不可能なものは消すとして、今ある中で投票しようか」

 

 二十人もいたら意見がまとまらないので投票で決めることとなった。結果は……

 

「ということで圧倒的に票が多かった劇になります」

 

 B組の出し物は劇に決まった。ただ配役や脚本など決めることは山ほどあるが、ここでチャイムが鳴る。

 

「盛り上がっているところ悪いが、続きは放課後や空き時間でやってくれ。それと夏油なんだが……」

「私がどうかしましたか?」

 

 ブラドキングが申し訳なさそうな顔で言い淀む。

 

「お前このままじゃ単位がやばい。インターンに行きすぎて補講地獄になる。文化祭の準備の時間があまり取れないかもしれん……」

 

 なんと夏油は授業を休みまくっているせいで単位がヤバそうなのである。授業時間は決まっているので試験さえ通ればいいわけではないようだ。

 

「そうですか……ある程度それは想定していたので私は問題ないですが、準備にあまり参加できないとは……皆すまないな」

 

 夏油は素直に謝る。

 

「気にすんなよ!」

「まぁ忙しいのはわかってるからな」

「体育祭ではお世話になったから今度はこっちの番だね」

「問題ないさ。夏油の役割はもう決まってるからね!」

 

 心暖かいクラスメイトの言葉に夏油が感動していると、物間が気になることを言う。

 

「役割決まっているのか?」

「そう、夏油の役割は舞台装置さ。動くようなものは夏油に操作して欲しいんだ。それにレヴナントさんが幻影出せるんだろう?背景を作るのにぴったりだ」

 

 物間は既に構想を練っているらしい。

 

「おぉ~。それいいじゃん」

「夏油のビジュなら役者もいいけど色々動かせるのは強いな」

「夏油が表に出ると教祖感強くない?」

「それはたしかに」

 

 結果夏油は舞台装置担当になった。

 

 

 数日後、夏油が補習から寮に戻ったらクラス全員集合していた。

 

「お、夏油も来たか。丁度全員の役割が決まったところだ」

 

 骨抜が声を掛けてくる。夏油は役割分担が書かれた紙を手に取る。

 

「へぇ、見せてもらえるか?どれどれ……あれ?拳藤と柳がいないが何かあったのか?」

 

 夏油が尋ねると拳藤が答える。

 

「勝手にミスコンにエントリーさせられたんだ。で、レイ子はその付き添いをしてくれることになった」

「そいつは酷い。私がそんな勝手なやつ懲らしめてやろう。誰がやったんだ?」

 

 皆の視線が物間に向く。そして拳藤が物間を指さして言う。

 

「こいつだ」

「じゃあ仕方ない。物間も悪気はなかったんだろう。広い心で許してあげよう」

「おい」

 

 夏油はあっさり前言撤回して物間を擁護した。

 

「真面目に話すと拳藤がミスコンに出るのは理にかなっているね。学校でも類を見ない美人だし、CMにも出ていて話題性もある。しっかり応援させてもらうよ」

「そう言われると照れるな……」

 

 夏油は拳藤が本気で怒っていないのを分かってふざけていた。仲がいい証拠である。

 

「私は明日以降も補習続きで練習をちょくちょく休むことになりそうだが、完璧に仕上げるから心配しないでくれ。ガンちゃんを隠しておいて練習は見ておくし、彼女にも頼む」

 

 そう言って夏油の側から志村が出てくる。

 

「こうして皆が揃っているところに出るのは久しぶりかな?私の個性も必要みたいだし、しっかり協力させてもらうよ」

 

 夏油は今回あまり参加出来なそうなので、志村に代わりに練習を見てもらって伝えてもらうことにした。

 

「お久しぶりです」

「俺は訓練で結構会ってるぜ!」

「あ、夏油の彼女さんじゃん!」

「夏油の穴は何とかなりそうだな」

 

 口々に挨拶するB組。ただ中には志村としてはスルーしたかった発言もあった。

 

「取蔭さん、彼女は止めてくれ……恥ずかしい……」

 

 志村は耳を赤くして俯く。

 

「おっと、これは私の恋人の可愛いところがが出てしまった。男子諸君、惚れるなよ」

 

 相変わらずクラスメイトの前でははしゃぎ気味な夏油である。

 その後、配役や役割などを話し合って煮詰めていった。

 

 

 

 夏油が補講地獄を乗り切ったり、劇の準備や練習をしているうちに、とうとう文化祭前日がやって来た。リハーサルで拳藤と柳を観客にして通しでやってみる。

 二人の反応はとても良かった。感動したと言ってくれた。自信を深めて本番当日を迎えることになる。

 

 

 翌日、この季節にしては暑い日、道具などの最終確認をして本番に臨む。本番では様々なことがあった。

 小道具の剣が壊れたり、指輪がなくなったりした。これは代用品を用意して事なきを得た。途中で鉄哲が腹痛で動けなくなり代役で夏油が出る羽目になったり、最後には物間が気絶したりもした。だが最終的にはスタンディングオベーションで大成功と言える出来であった。

 

 好評に終わった劇の片づけを終えて夏油たちはミスコンを見に来た。当然拳藤を応援している。

 

「ミスコン、あなたが出たら優勝間違いなしでしたね」

 

 夏油は横に出ていた志村にそう囁く。志村は仮面で顔を隠しているが、文化祭というお祭りなだけあってあまり違和感はない。

 

「いやいや、ミスコンって……私の歳いくつだと思ってんのさ」

「でも私は投票しますけどね。呪霊も合わせればこの学校の生徒は超えそうだ」

「傑、堂々と不正する気だね。ここまで来るといっそ清々しいよ……」

 

 いつも通りの夏油に志村が呆れていると、ミスコンが始まる。拳藤の出番までは夏油もボーっと眺めていた。

 

(やはり菜奈さんの美しさには敵わないな。どれもこれも見劣りしてしまう)

 

 内心夏油はそんなことを考えていた。

 

「どの子も綺麗だな。傑もそう思うだろう?」

「えぇもちろん。あなたには及びませんが」

 

 夏油は考えていたことを誤魔化してそう答えた。そしていよいよ拳藤の出番がやって来た。

 

「ケンドー!!」

「シュシュっと一吹きケンドー!!」

 

 周りから声援が送られる。やはりCMの知名度はプラスに働いているようだ。

 拳藤が出てきて武道の型を披露し、並んでいる板を一気に割った。そこで一気に歓声が上がる。

 

『華麗なドレスを裂いての演武!強さと美しさの共存、素晴らしいパフォーマンスです!』

 

 司会からも好評だった。

 その後も絢爛崎や波動のパフォーマンスを見てミスコンのパフォーマンスは終わった。

 

「どの子もいいパフォーマンスだったね。思わず見惚れてしまったよ」

「まぁ……そうかもしれません」

 

 夏油はあまり興味がなかったようだ。拳藤の応援がなければ見なかった可能性すらある。

 

「じゃあミスコンも終わったことですし色々周りますか。どこから行きたいですか?」

「え、物間くんたちはいいのか?」

「今日はデートですからね」

 

 夏油は志村の手を引いて歩き出す。

 

「まずどこから行きます?お昼食べてないので何か食べますか?」

「えっと……じゃあ、たこ焼きとか?あとはクレープ食べたいかも」

「いいですね。早速行きましょう」

 

 たこ焼きを食べ、クレープをベンチで座って食べる二人。

 

「ずいぶん本格的なクレープですね。こっちも美味しいですけど一口食べます?」

 

 夏油は美味しそうに食べていた志村に自分のを差し出す。二人はそれぞれ別の味のものを買っていた。

 

「いいのか?じゃあ一口貰うよ」

 

 志村は遠慮がちに食べる。

 

「これも美味しいね。甘さが控えめで食べやすい」

「ですよね。私は普段あんまり甘いものは食べないのですがこれは食べやすい」

 

 そうやって食べているところに声を掛けてくる者たちがいた。

 

「お、夏油じゃん」

「デートノコ?」

「ふしだらなことはダメですよ」

「オゥ!デートですネ!」

「邪魔しちゃ悪いよ」

「ん」

「じゃーねー」

 

 それはB組の女子たちだった。ミスコンが終わって皆で周っているのだろう。

 

「こうして見られると恥ずかしいな……」

「ん?何故です?むしろ関係を見せつけないと。未だに拳藤に私宛のラブレター来てるらしいですし」

 

 体育祭で一気に注目度が上がった夏油は未だアプローチを受けることがあった。ただ恋人を理由に断っているので頻度は減っているのだが。

 

「そういえばそんな話を聞いたような……拳藤さんには迷惑をかけるね」

「拳藤はいい奴ですから。まぁウチのクラスはいい奴しかいいませんがね!」

 

 夏油は胸を張ってそう言う。

 

「クラスのこととなると傑は嬉しそうだ。私も今回の文化祭で話す機会が多くて仲良くなれた気がするよ」

「うんうん、いい事ですね。妻と友人が仲良くしてくれると嬉しいものです」

「妻って……気が早いよ。君は若いんだし、おばさん捕まえて焦ることないだろうに。それに私が結婚ねえ……」

 

 志村は否定するが少し嬉しそうである。ただ自分が幸せになっていいのか迷いがありそうだ。それを感じ取った夏油は立ち上がる。

 

「食べ終わったし次行きましょうか。体験系がいいですかね?お化け屋敷とかは?」

「え、そうだなぁ……じゃあお化け屋敷行ってみようか」

 

 夏油と志村は1年C組の心霊迷宮に行くことにした。夏油は志村と手をつないで歩く。志村は照れ臭かったが振り払いはしなかった。

 

「夏油!どこ向かってるんだ?」

 

 二人はC組に向かっている途中に骨抜、鎌切、庄田、吹出、黒色の5人と出会う。

 

「やあ皆。私たちはこれからC組の心霊迷宮に行こうとしてたとこさ」

「お、ちょうど俺ら行ってきたとこなのよ。めちゃくちゃ怖かった。なぁ?」

 

 骨抜が同意を求めると吹出と黒色が答える。

 

「そうだね!心がゾゾゾッとしちゃった!」

「暗黒の宴……ケケケ……」

 

 何だかよくわからないが怖かったらしい。

 

「僕たちはこれからアスレチックに行くんだ」

 

 庄田が夏油に教えてくれる。

 

「俺がアスレチックを切り裂いて1位を取るぜぇ」

「いや、それはダメだから。じゃあ夏油たちはデート楽しんでな!」

「俺も小森とデートしたかった……」

 

 鎌切はアスレチックを切り刻むつもりらしいが普通に怒られるだろう。黒色の小声の呟きを夏油は聞き逃さない。

 

「そう言えば女子組は出店通りにいたな。全員揃って」

 

 夏油は突然思い出した風を装ってそう告げた。

 

「⁉骨抜、俺、腹減ったしなんか買ってくるわ」

「そうか?じゃあ二手に分かれるか。出店とアスレチックとで」

 

 黒色の発言を聞いて骨抜が二手に分かれることを提案する。骨抜も何かを察したのかもしれない。

 

「俺はアスレチックだなぁ」

「僕も」

「ボクは……アスレチックで」

「じゃあ俺らは出店で皆の分も買って待ってるわ」

 

 骨抜たちは行ってしまった。夏油と志村が残される。

 

「ねえ、黒色くんって……」

「まぁそういうことですよ。どうなるかは分かりませんが、アシストくらいしてあげないと可哀そうでしょう?」

「君ホントクラスメイトには甘いよね。そこが良い所だと思うけどさ」

 

 二人はC組に到着し、並んでいなかったのですぐに入れた。

 

「へぇ……中々よくできてますね」

「ホントだね。暗くて普通の人間の視力なら見えにくいかも。私は呪霊になって夜目が利くようになったから見えるけど」

 

 細部までこだわったリアリティのあるお化け屋敷に感心する二人だが、大して怖がらずにどんどん進んでいく。前世で呪霊がいるような廃墟や廃ビルなんかによく行っていた夏油は当然ながら、志村もこういうのは平気なタイプらしい。

 

「こういう時は女性が怖がって男性に抱き着くのが主流らしいですよ」

「そんなこと言われても……私意外とこういうの怖くないみたい」

「まぁ呪霊は本物のお化けみたいなものですからね」

 

 お化け屋敷も終盤に差し掛かって、天井から突然人が出てくる。

 

「オレヲココカラツレダシテクレ……」

「お、確か心操じゃなかったか?体育祭で騎馬戦に出てた」

「え?」

「あれ?違ったかな?」

「いや、あってるけどどうして名前……」

「私はいい個性は覚えているんだ。名前は分からないが精神に干渉するような個性だろう?素晴らしいね。今のヒーロー科にはいないタイプだ」

 

 夏油は自分が妨害したにもかかわらず普通に覚えていた。あの時B組の生徒を洗脳していなければ多分放っておいただろう。

 

「脅かすはずがこっちが驚かされたな……お前に覚えられてるのは正直意外だったけど嬉しいよ。じゃあすぐそこが出口だから」

「そうかい、ありがとう。またね心操」

 

 夏油と志村はお化け屋敷を出た。

 

「怖くはなかったですが、中々面白かったですね。クオリティが高い」

「そうだね。この後どうしようか?」

「あなたが行きたいところ行きましょうか」

「そうだなぁ……じゃあ次は……」

 

 その後も夏油と志村は文化祭を楽しんだ。ただ次に行った人間猫カフェというのは謎だったが……

 

 寮に帰ってからは文化祭の成功を祝って打ち上げをして夏油たちB組の文化祭は幕を閉じたのであった。

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