文化祭も終わり、11月も下旬に差し掛かる頃、来賓があるとのことでB組は寮で待機していた。来たのはプッシーキャッツであり、活動を見合わせていたが再開するとのことであった。
夏油は被害を抑えてくれたことを感謝された。仲間のためにやった事なのでそんなことを感謝されることもなかったが素直に受け取っておいた。
そして下半期のヒーロービルボードチャートが発表される。
「さて皆さん、これからビルボードチャートの発表ですね。楽しみだなぁ。そう言えば報告が一つ。教会が建設されたようです。まぁ私は寮生活なので見に行けないのですが……」
そんな時、夏油は元気に生配信していた。
「お、もう順位自体は出てますね。あ、その前に質問が。『今後も動画投稿、配信はするんですか?』いい質問ですね。私は本業ヒーロー、副業教祖で動画投稿はそのための手段だと考えています。既に雄星教を広めることは出来たので動画投稿は何かあった時しかしない予定です。配信もねぇ……考えたんですが、被害者を映すわけにはいかないのでヒーロー活動中の撮影は難しいなと思っていたんですよ。だからこれからはほとんどしないかもしれません」
夏油が言ったことは本心ではあるが、それが全てではない。ヒーロー活動中に配信すると、気軽に志村と話せないのが理由として大きい。
「で、肝心のビルボードチャートはナンバー10がリューキュウ。彼女の個性はカッコいいですよね。私の虹龍と見比べてみたい。
ナンバー9はヨロイムシャですか。老齢なのに凄いですね。ただ時運による誤差というのは間違いですね。活動の結果が出てるだけじゃないですか?
ナンバー8はウォッシュ。彼は子供に人気と聞いたことがあります。え?歌はマスト?私も覚えなければ……
期待の若手シンリンカムイがナンバー7ですか。私の必殺技も彼にあやかっているものあるんですよね。尊敬してます。
ナンバー6がクラストでナンバー5がミルコ、ナンバー4がエッジショットですか。ここら辺は常連らしいですね。強そうでワクワクするなぁ……
あぁすみません。ナンバー3は欠席のベストジーニストですね。彼の技術は素晴らしいようで見習わなければ。
ナンバー2は我らが師匠、ホークスですね!いやー流石はホークスだ。私でも本気のホークスに付いて行くのは疲れますからね。この若さでナンバー2は凄まじい。
ナンバー1はもちろんエンデヴァーですね。アンチもいるようですが私は彼のストイックな所好きですよ。オールマイトの後はこの人しかいないでしょう!」
ここまで発表された順位に応じて話していく夏油だったが、ヒーローのそれぞれのコメントを聞いていくうちに難しい顔になる。
「何だか普通のことしか言わない方が多いですねぇ……いやね、別に過激な発言しろとは言わないですが、ヴィランの活動が活発化してきている中で、もう少し印象に残る言葉があってもいいのかなーとは思いますね」
そんな中、ホークスが生意気な発言をする。もっとヒーローらしいことを言えというのは夏油も同意するところだった。
「流石ですね、ホークス!普通じゃ言えないことを平然と言ってのけた。私もこうして布教しているので支持率の大事さは感じます。ただ軽薄さが出ているのはマイナスですかね?私はそういう所も好ましいと思うのですが。で、これを受けてナンバー1が何を言うか……」
エンデヴァーの発言は少なかった。「俺を見ていてくれ」というメッセージだった。
「いいですねぇ。やっぱエンデヴァーが今のナンバー1に相応しい。こういう頼れるヒーローが今必要だと思うんですよね。強さで言えば現役プロヒーローでトップかな?相性はあるとは思いますが。そんなわけで私はエンデヴァーのことも応援してますよ。ではこの辺で今日は終わりますか。皆さん、ご視聴ありがとうございました」
夏油は配信を切る。
「明日はまた福岡か……休日なのが救いかな?」
補講はめんどくさい夏油であった。
翌日、夏油はホークスに言われた高級な焼き鳥屋で注文をしていた。
「じゃあこれが3人前、あとこれとこれと……これも。とりあえずこれで。追加するときは呼びますね」
夏油が注文し終わったところでホークスがエンデヴァーを連れてやって来た。
「おいホークス、インターン生がいるとは聞いてないぞ」
「そりゃ言ってませんから。でも彼にも聞かせたいんですよ、戦力として」
エンデヴァーとホークスが言い争っている。夏油が座るように言ったところで二人とも席に着く。
「言われた通り適当に注文しておきました」
「ありがとう!流石は出来る男」
「下らん茶番をしてないで本題を話せ」
「全くせっかちだなー、ナンバー1は」
ホークスは本題を話し始める。どうやら神野で捕獲した脳無とは似たものが出没しているとの噂があるとのこと。そしてナンバー1をプロデュースしたいらしい。
「これ、私必要ありました?」
「そうだ、わざわざ学生を呼んで話す必要ないだろうが!ついでに俺もだ!」
「いやいや、エンデヴァーさんは必要でしょう?夏油くんは……保険かな」
「保険……なるほど」
夏油としては何のために呼ばれたのか分からなかったが、ホークスの仕事ぶりを知っている人間としては何か考えがあると判断していた。
「エンデヴァーさん、夏油くん」
異変にいち早く気が付いたホークスが真剣な声で呼ぶ。
「はーい、お会計ですねー」
「下がって、お姉さん!」
店員が会計のためにやって来た時、突如飛来した黒い何かが窓ガラスを突き破ってきた。
「どレが一番強イ?」
「キャアアア!!」
怪物が喋り、店員の叫び声が響き渡る。それはさっきまで話していた脳無だった。
「ホークス、夏油、避難誘導を!」
エンデヴァーはそう言って脳無を吹き飛ばした。
「ホークス、このビルの避難誘導はあなたに任せます。私は地上に降ります」
「了解!」
夏油は早速エイを呼び出して地上付近に降りた。そして何事かと集まっている市民に対し呼びかける夏油。
「皆さん!ヴィランが暴れており、エンデヴァー・ホークスと交戦しております!被害が出るかもしれませんので避難してください!くれぐれも落ち着いてください!」
夏油はガンちゃんを出して周囲を観察するが人がかなり多い。虫で被害が出そうな範囲を囲って、市民を避難させる。
「手荒になりますが許してくださいね!」
そして上空を見ると、エンデヴァーと怪物が激しく争っており、ビルの上部が崩れてきそうだった。
「エンデヴァーでもこれか……」
ホークスがビルから人を救出し、ビル自体はエンデヴァーが焼き切った。
「破片は私がやります!」
夏油はイカの弾幕を張り、細切れになった瓦礫を破壊した。
「助かるよ、夏油くん!」
そこで周辺のヒーローが到着し加勢してくれるが、脳無から白い何かが飛び出てくる。それは白い脳無であった。
「こっちは任せてください!出番ですよ、お願いします」
そこで志村が出てきて白い脳無を片っ端から焼いて行く。ついでに夏油は三節棍を出して装備し、脳無の頭を吹き飛ばす。
「こっちは何とかなりそうだが……」
上空で眩しいほどに発火して脳無を焼き尽くした……かに見えたが、首をちぎって投げていたようで、そこから再生しエンデヴァーの腹部を掠っていた。頭にも当たりそうだったがそれはホークスの羽で何とか回避していた。
「こりゃまずそうだ。私も上に行きます。あなたは地上をお願いします」
「わかった」
夏油は志村に地上を任せ、エイに乗って上空に上がる。その前に拘束用にゾンバと市民の盾として一つ目を呼び出しておくのを忘れない。
「エンデヴァー、治療必要ですか?」
「要らん!こいつはもう生け捕りは考えなくていい!やる気あるなら力を貸せ、夏油!」
「せっかく気を使ったのに……でも生け捕り不要なんて嬉しいね。加減しなくて済む」
夏油は早速、三節棍で殴りにいく。
「お前、モ強い?」
「この手応え、かなり固いな。ここまで沢山出すのはリスクがあるからやりたくないが仕方ない。クイーン」
夏油はクイーンを呼び出して周辺に漂わせる。
「エンデヴァー、ホークス、奴は私が倒してもいいですよね?」
「できるならな!」
「正直俺役に立たないんですけどね!」
そう言ってエンデヴァーとホークスも攻撃を仕掛けるが、脳無の回復力が高くてあまり効果がない。
夏油はそのまま接近し、三節棍でフルパワーで殴る。そしてクイーンも操って連携しながら一人と一体で殴り続ける。
「……やるな」
「もうこれ教えることなくないですかね……?」
プロヒーロー二人が呆れている中、夏油は感覚の高まりを感じていた。脳無の攻撃を回避しながら攻撃を加えていく。その連続。躱して打撃を叩き込むたびに研ぎ澄まされていった。そしてその感覚の高まりが頂点に達した時、夏油はやれると確信していた。
(黒閃‼)
黒く光った呪力が稲妻の如く迸った。そしてそれが当たった脳無は腹を貫かれ四肢が捥げて吹き飛んでいく。そのまま夏油はクイーンと共に追撃を開始した。
(楽しい!これが黒閃か!感覚が澄んでいくのがわかる……!この感覚があれば私はもっと強くなれる!)
夏油はハイになっていた。夏油たちは脳無をタコ殴りにしながら人のいない交差点の上空に来た。
「これを使うことはないかと思っていたが出番があるとはね」
夏油は三節棍を周囲で振り回し始め、風切り音がどんどんと強くなっていく。周囲に風の流れが生まれビルの天井に被害が出そうなところで必殺技が放たれた。
「呪滅砕震!」
夏油の渾身の一撃が脳無に突き刺さり、地面に向かって急落下した。轟音を立てて地面に激突したが脳無はまだ動いていた。
「も、もっと、強い、ヤツ」
「ねえ、わた、わタ、わたし、きれい?」
「お、お前、ダレ、?」
そこで鋏で切るような音がした。その習慣、かろうじて再生中だった脳無の四肢は綺麗に切断され、首も切り取られた。
「よくやった口裂け女。で、この生首をどうするか……あっ、必死に再生しようとしてるところ悪いけど、彼女の再生妨害の個性で切られてるから意味ないよ。でも生け捕りはしなくていいって方針だったしこの効果も長く続くわけじゃない。どうしたもんか……」
夏油がここで這いつくばっている脳無をどう処理すべきか迷っていると、デルフィニウム、空を飛んだりスピードを上げる技で志村がやって来た。
「何か問題か?こちらは白いやつは掃討し避難民も落ち着いてきたから地元のヒーローに任せてきた」
「丁度良かった。ではお手をどうぞ」
「は?」
「だから、お手をどうぞ」
夏油が諦めないので従う志村。夏油の手の上に志村の手が重なり、そのままエイは発進する。この前の茶番でもずっと夏油に踏まれたままだったエイ。
「クイーンはそこの体を見張っといてね」
夏油たちはエイに乗って上空に上がっていく。
「おい、どこに行く!もう倒したのか!」
夏油が戦い始めてからは関わらなかった二人がやって来た。
「この頭部が問題ですよね?弱点のくせして頑丈。なので破壊しようかなと思いまして。なので離れててください。ホークスは羽焼けちゃうかもなんで」
夏油も呪霊装術・明王転身をして防御力を上げた。
「じゃあ特大の一発お願いします!」
「傑、君楽しくなってるだろう?まぁいいか」
志村は呆れながらも必殺技を準備する。右腕に青白い炎を限界まで凝縮する。それだけで周囲の温度は上昇し、空気が歪む。志村の腕にはまるで薔薇の花が咲いたような炎が渦巻いていた。そしてその炎の塊を脳無の頭に叩き込んだ。
「青薔薇」
志村は一撃で脳無の頭部を跡形もなく吹き飛ばした。
「ではこれで一見落着ですね。他のヒーローもいるので警察と連携してこの場を……」
「待て、夏油。お前のその力はなんなんだ?」
「何だと言われても私の個性です。それ以上は聞かない方がいいですよ。お互いのためにね。じゃあそういうことで。ホークス、また今度ご馳走してくださいね!」
夏油は地上に飛んでいく。後ろの二人の悩んでいるような顔を知っていながら。
(これで私の力は世間に示せたはず。本当は呪力砲が完成していればインパクトは大きかったんだけどね。こればっかりは仕方ない)
「あれほっといて良かったの?二人とも難しい顔で黙り込んじゃってたけど」
「いいですよ。私は力を示し、思想を広める。彼らは力を見て扱いに悩む。単純でしょう?それに私の力に頼るときがきっと来ますよ。こんな程度に手こずるナンバー1とかまずいでしょうに。だから皆が祈る。ヒーローよ来てくれ!と。そこで私が天から流れ星のように降って来るのです。ますます私に頼るでしょうねぇ……」
夏油は久しぶりにゲス顔で笑っていた。
「それにしてもタイミングがいい。これはまさか私が神に愛されている証なのでは?」
「はいはい、もうわかったよ。今日は嫌にテンションが高いな」
脳無の死体の所に戻ると、警察官や地元ヒーローたちが集まっていた。
「皆さんお疲れ様です」
夏油が若輩者として先に声を掛ける。すると、
「お!今回の功労者がきたぞ!」
「流石だったなぁ!」
「あの空中でのさばき方見たか?」
「最後の一撃もすごかったな。足から振動が伝わって来た」
「上空で燃やした時の光は綺麗だった。付いて行きたくなるような妖しい光だった……」
「というか怪我一つないってどういう事やねん」
夏油は散りばめられた呪霊を問題ない所は引き上げさせて収納していた。そこに警察がやって来る。
「後はこっちでやっておきますので、カースキングさんはもう帰って結構ですよ」
「そうですか?確かにここはあなた方の管轄だ。無暗に立ち入ってはいけないですね。あとはお任せします」
夏油はそのまま雄英まで帰ることにした。今からなら今日中に着けるはず。だがそこに待ったの声がかかる。
「すみません!テレビの者なんですけども!一言貰いたいんですがいいでしょうか?」
メディアはあまり好きではないが、未だに力を持っていて侮れない。それに観衆がこの周辺を囲んで期待しているようだった。仕方なくテレビカメラに映る。
「正体不明の強力なヴィランでしたが、あれは何だったのでしょうか?」
「私から言えることは多くありませんが、あれは生きているものではありませんでした。それはともかく、見ましたか?見ましたか?エンデヴァーとホークスと私カースキングの活躍。どうです?今のヒーローも捨てたもんじゃないでしょう?もうヒーローは終わった!これからは我々ヴィランの時代!とか言ってる人もいるらしいじゃないですか。今日しっかり見たことを覚えておいてください。今のヒーローたちも十分信頼できます。旧時代にしがみ付く者どもよ、新たな時代を前に己の愚かさを知るがいい!これからはヒーローを信奉する社会がやってきます。皆さんも雄星教を一度調べてみてください。そこで人生観が変わるはずです。長くなりましたが私の言いたいことは、ヒーローを信じろ!ということです。では皆さんまた今度」
夏油はいつもの動画投稿のように言いたいことだけ言って去って行った。呆気に取られていたリポーターが慌てて追いかけるも見つからず、ニュース番組ではこの映像が使いまわされることになった。
これも夏油の計画通りなのである!()
ちなみに荼毘は夏油たちの強さにビビッて帰ろうとしましたが、呆れたドクターがワープを使ってくれませんでした……可哀そうな燈矢くん……もっと可哀そうな目に合わせたい。