【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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年末年始

 対抗戦の翌日、志村はグラントリノと再会していた。グラントリノにとっては寝耳に水だったようでたいそう驚いていたようだ。しかも、あんまり感動の再会という感じではなく嬉しそうではあったがどうにも納得がいかない様子でもあった。夏油はグラントリノと知り合いでもないし授業もあったのでその場にいなかったから後で聞いた話だが。

 

 12月に入っても夏油は精力的に活動している。授業、訓練、インターンというサイクルでとても忙しい。仮免補講が終わった日に轟と爆豪がヴィラン退治をしてニュースになっていて物間は不満そうだった。

 

 そんなこんなで12月も中旬となり、驚きのニュースが飛び込んできた。泥花市が壊滅したというニュースだ。これに対して市民はヒーローを叱咤激励する声がありそれはまだ良かった。ただ市民が自発的に戦ったのを称賛する声があったのを夏油は問題視した。

 

 夏油は久しぶりの動画で市民が個性を使って戦闘するなど言語道断だと言い切った。ヒーローの心を持ち尊崇することは大切だが、それは直接戦うことを意味しない。

 ヒーローが選ばれし神の代弁者であって一般市民が個性で戦闘を行うことは問題である。それはヴィランの行動と同じであると発言した。

 

 なおこの発言は議論を呼び、信者や支持者は夏油に賛同したが、泥花で戦った者を称える声もあってそちら側の意見の者からは夏油は批判された。ただ福岡の脳無の一件から夏油はプロを含めて最強格と見なされており反論しづらい空気もある。

 

 

 そんな批判も気にせず、夏油は日常生活を続けている。12月も下旬になり、今日はメディア演習が行われるとのことでグラウンドに集合させられた。Mt.レディが特別講師をしてくれるようだ。

 

「さぁ!ヒーローインタビューの練習を始めるわよ!」

 

 緩い雰囲気で授業が始まった。皆がヒーローインタビュー?それ練習いるのか?と首を傾げていると、早速夏油が呼ばれ練習させられる。

 

「凄い活躍でしたね!」

「ありがとうございます。しかしこれも避難指示に従って下さった市民の皆様や、協力して対処したプロヒーローたちのおかげです。一人の成果ではありませんよ。そこの子供たちも良く堪えてたね」

 

 いきなりだったがそれっぽい状況でインタビューに答える夏油。

 

流石ね……強敵だわ……ところで将来はどのようなヒーローを目指しているのでしょう?」

「人々に悲しい顔をさせない、常に笑顔を届けるヒーローですね。昨今ヴィラン犯罪が増えていますが、この私がいるからにはどんな小さな犯罪だろうと見逃すつもりはありません。誰よりも強いヒーローというのを示して見せましょう」

 

 夏油は自信満々に言い切った。前半部分は若干脚色があるが概ねそういうことだ。

 

「力強いお言葉ですね。やはりご自身の力に自信はおありで?」

「それはもちろん。むしろ自信のないヒーローなどいないでしょう。ヒーローは誰しも自信に満ち溢れていなければその背中を頼ることが出来ませんからね」

 

 夏油は持論を語る。これは割と本心から思っていることだ。

 

「では……どのような必殺技をお持ちで?」

「うーん……私の必殺技は大袈裟なモノや見た目が分かりづらいものが多いので呪霊を見せましょう。こちらです」

 

 夏油はそのままクイーンや虹龍、明王に口裂け女などを呼び出す。

 

「す、すごい威圧感ですね……!……ちびりそう

「彼らは私の活動のパートナーですからね。実力は折り紙付きですよ」

 

 Mt.レディが若干ビビっているのに気づきながら出しっぱなしにしてニコニコ楽しんでいる夏油。やはりクズである。

 

「あ、ありがとうございました。という感じでやっていくわ。夏油くん、もういいわよ」

「そうですか?じゃあここら辺で」

 

 大人しく壇上から下りる夏油。引き際をわきまえている。

 

 その後それぞれ夏油と同じようにやっていくが、夏油と仲がいい面子はクセが強い。物間は目立ちたい欲が出ているし、鉄哲は暑苦しい。宍田は個性を全開で使いMt.レディを少し怖がらせていた。

 反対に拳藤は武道の型でアピール、柳は物を操ってアピールとそれぞれ特徴を出せていて良さそうである。

 それぞれ得意なことをアピールするためこの授業は中々に盛り上がった。

 

 

 

 メディア演習から数日が過ぎ、クリスマスがやって来た。B組も当然のようにクリスマスパーティーを開催する。飾りつけをし、ご馳走を作ってテーブルに並べていく。ブラドキングが来るのを待ってから食べ始める予定だ。

 

「それにしてもインターン行けってどういう事なんだろうね?」

 

 物間が食器を並べながらそう言った。

 

「まぁ裏がありそうだね。でも私たちは従うしかないよ。それにインターンに行けるのはいい機会だ。最近B組の実力も停滞気味だったしね。新しいことに挑戦するのはいい事さ」

 

 夏油はそう言うが、停滞気味とは言ってもそれは夏油基準である。

 

「夏油の意見も分かるけどね、いきなり言われると準備が大変だよ」

「そうですな。私はシシドのところで受け入れてくださりますが……」

 

 宍田は以前も行っていたシシドのところでインターンらしい。

 

「俺はファットガムの所に決まりそうだぜ!切島が紹介してくれたんだ!」

 

 夏油たちがインターンの話をしている間にブラドキングが来てクリスマスパーティーが始まる。あらかじめ出ていて女子たちと準備していた志村も加わり楽しく過ごした。

 夏油は今世で初めてまともなクリスマスパーティーを過ごした。去年は受験勉強もありそんな空気でもなかったのだ。息子の件で悲しい思いをしているはずの志村が笑っているのを見て夏油も安心した。

 

「どうしたんだ?じっと私の顔を見て。え、ソースとか付いてる?」

 

 夏油は志村の顔を見つめていたらしい。

 

「いえ、何でもないですよ。それ一口貰ってもいいですか?」

「何だ、これが欲しかったのか。はい」

 

 志村は夏油の皿に取り分けてくれる。

 

「そこは食べさせてくれるところだと思いますが……クラスの前ということで許しましょう」

 

 冗談を言いながらも満足な聖夜を過ごすのだった。

 

 

 

 それからまた数日後、大晦日の日。その日B組の寮には夏油と志村しかいなかった。他の皆は帰省している。夏油はどうせ帰っても誰もいないので帰らなかった。

 

「こうして二人だと昔を思い出しますね。とは言ってもここ1年ちょっとの話ですけど」

 

 夏油はソファに座って志村に話しかける。

 

「あの頃はずっと二人きりだったからなぁ……そんなに前じゃないのに懐かしいね」

 

 志村も夏油と二人で過ごした日々を懐かしむ。子供だった彼を支えようとしたが逆に自分がお世話になってしまっていた。家事能力は夏油の方が上だったのだ。

 

「そうだ!今日は私が夜ご飯を作るよ」

 

 志村が突然思いついたのか立ち上がりながら言う。

 

「……まだ死ねないのですが……」

「そんなに不味くはないでしょ!」

「やだなぁ、冗談ですよ。でも本当に大丈夫です?流石に寮を焼いたらB組の皆に申し訳が立たないですよ?」

「だからそんなに酷くないって……私を何だと思っているんだ?」

 

 夏油は志村があんまり家事が得意でないことを弄る。

 

「楽しみにしていますね」

 

 質問には答えずに夏油はそれだけ言って席を立った。ズルいと思いながらも夏油にあまり強く出れない志村だった。

 

 

 その日の夜、夏油がキッチンに様子を見に行くと、志村が夕食の支度が出来ようとしていた。

 

「丁度良かった。今呼びに行こうと思っていたんだ」

「ぴったりでしたね。流石は私たちの仲。ところでそれは蕎麦と……焼きおにぎりですか?」

 

 夏油は調理してあるものを見て何かすぐに分かった。

 

「うん、私の実家では年末これなんだ」

「へぇ……いいですね。具沢山で美味しそうです。早速食べてもいいですか?」

「もちろん。今用意する」

 

 夏油と志村は盛り付けをして席に着いた。食べてみると、しっかり濃い味で美味しい。具沢山なおかげで食べ応えもばっちりだ。焼きおにぎりはシンプルな味付けでこれも美味しい。夏油はお腹が空いていたのもあり味わいながらも夢中で食べてしまった。

 

「ごちそうさまでした。いやー美味しかったですね。菜奈さんにこんな隠し玉があったとは」

「実家で作るように母親にしつこく言われてたから」

 

 寂しげな顔で志村は言う。その表情から夏油はとうに志村の母親が亡くなっていることを察する。

 

「菜奈さん、どうせなので一晩中映画でも見ませんか?」

「え?突然どうしたんだ?」

「たまにはいいじゃないですか。こんな誰もいない機会滅多にないですし」

「そうか……?じゃあ今夜は楽しむか」

「その意気ですよ。柳にお勧めされたホラー映画とポニーに絶対見てと言われてたアニメ映画があるんですがどっちからがいいですか?」

「うーん……じゃあ時間的にアニメからかな。ホラーはもっと遅い時間に見たい」

 

 というわけで一晩中映画を見続ける夏油と志村だった。

 

 

 

 年が明けて全員強制のインターンが始まる。だが夏油は前から継続してやっていたのでやることは変わらないのだが、ホークスが不在気味なので夏油の仕事が増えていた。

 今日も次から次へと事件が舞い込む。

 

「次は……大通りか。それにしても仕事が多い。ねぇ菜奈さん」

「喋りながらでも仕事できるのは立派だけど、そのヴィランそろそろまずいよ」

「おっと失敬、雑魚が私の管轄で暴れるのが悪いんだよ」

 

 夏油は手に持っていたヴィランと思われるボロボロのものを放り捨てる。

 

「全くこの忙しい時期にホークスは何をしてるんだか……」

「私たちの推測が正しければ探るべきではないね」

 

 夏油たちは以前からホークスは公安と繋がりがあるのではないかと考えていた。公安と繋がりがあるのならわざわざ職場体験で指名し、インターンで延長してきたのにも説明がつく。

 

「常闇もいるし、サイドキックさんたちもいるのにこれって……福岡ってもしかして治安悪いのかな?」

 

 ホークスがいないために増えた仕事はそのまま夏油の人気にも直結していった。

 

「ホークス最近見ないけど、夏油くんがいれば安心だね」

「こりゃ次世代も心配ないな!」

「次世代心配するほどホークス歳行ってないよ」

「カースキングは卒業そのまま東京とか行くんじゃないか?」

「ツクヨミだっけ?あの子も有望株だし福岡はあの子が継ぐのかな?」

「教祖様♡」

「今日も最強~♪教祖最高~♪夏油様~♪」

「雄星教を崇めよー!ヒーローを崇めよー!お前も信者にならないか?」

「夏油様、ペロペロしたい……」

「ぶっちゃけエンデヴァーより強そう」

「鎧みたいの身に纏うのカッコいいよね」

 

 夏油は市民から人気であった。一部ヤバい奴もいたが……

 

 そんな声援を受けつつ活動していくが、組織的なヴィランも目立つ。グループで徒党を組んでいるようだ。だがそんな寄せ集めは夏油の敵ではなく瞬時に鎮圧していく。

 

「私の誕生日まであと一月か。そろそろ準備を始めようかな」

 

 夏油は何か企んでいるような顔で笑っていた。

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