【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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始業からの誕生日

 冬休みが明け始業日、一年次はあと3カ月で終わる。新年初授業は何をするのかと横の宍田と話していたら、拳藤から説明がされる。

 

「今日の授業はインターンの実践報告会だよ。冬休みの間に得た成果・課題なんかを共有する。だからコスチュームを着てグラウンドに集合ね。わかった?」

 

 拳藤からの指示に従い移動するタイミングでブラドキングがやって来る。

 

「皆おはよう!それぞれインターン頑張ってきたようだな。今日はその成果を見せてくれ!」

 

 朝から熱い男である。だがそんなブラドキングが夏油は好きである。

 

「おはようございます、ブラド先生。先生を見ているとこちらまで元気になりますよ」

「お、そうか?今日から授業が始まると思うとどうもな。気合が入ってたまらん」

「それでは私は着替えに行ってきます」

 

 人気者になっても、力を持っても変わらない夏油の姿に安心するブラドキング。

 

「まぁあの夏油に心配など無用か。来年あたり下級生への指導とかしてくれないかと校長とも話してみよう」

 

 ブラドキングは夏油の仕事が増える計画を企んでいた。

 

 

 グラウンドに集まった生徒たちはそれぞれのインターンで学んだことを披露する。

 

「へえ、皆必殺技だったり、連携面や決定力がしっかり育ってるね。インターン行かせて良かったな」

 

 夏油が偉そうにコメントしていると拳藤からツッコミが入る。

 

「いやお前に行かされたんじゃなくて、学校に行かされたんだけど。もう目線が教師なんだよな」

「だが強ち間違ってないぞ。夏油はこのクラスの底上げに大きく寄与してくれたしな。で、次は夏油の番だ」

 

 夏油は何をしようか考えていたが、いいことを思いついた。

 

「ウチのエースが面白い物を覚えまして。さぁクイーンお楽しみの時間だ」

 

 夏油が言った通りクイーンが出てくる。そこにいるだけで威圧感が半端ない。

 

「3割……いや1割……うん1割ならいいだろう。1割で呪力砲撃ってくれあの仮想ヴィランに。あ、皆はもっと離れたほうがいいよ。結構強いから」

 

 夏油が何かやると察したクラスメイト達は一目散に駆け出した。

 そして準備ができたクイーンは呪力をエネルギーとして解き放つ。それはビームのようで、仮想ヴィランに当たって瞬間から蒸発させていった。そのまま全ての仮想ヴィランを破壊したかと思えば、その周りの器具なんかも破壊している。そしてその衝撃は凄まじいもので夏油のいたところはもちろん、B組のいるところまで突風が吹いていた。

 

「1割ならこんなもんかな?いやー福岡の市街地でこれをぶっ放すわけにいかなかったので雄英は最高ですね」

 

 夏油はやっとクイーンが身に着けた呪力砲の威力に満足していた。志村がグラントリノからヴィラン連合にはとんでもない隠し玉があると言われていたのでこれが身に着いたのは大きい。

 

(これに過呪増強をすれば街一つ消し飛ばせるのでは?猿を殺すことも容易くなって……いかん、いかん。私はヒーロー、私はヒーロー。菜奈さんが悲しむことはしないと決めたのだ。殺しはなしで四肢欠損までだ。危ない、前世の私に戻りそうだった。テンションが上がりすぎたのかな?)

 

 夏油は少し息を整えて周りを見る。すると衝撃の影響か静かになっている。

 

「ん?皆どうしたのかな?今のは呪力砲、クイーンが身に着けた新たな武器さ。これで私の呪霊は完成したと言えるかな?いや、まだか」

「いや、そんなことよりあれいつ使うんだよ。威力高すぎだろ!」

 

 拳藤がなんか言っているが夏油にはどこ吹く風だ。

 

「いや、1割に抑えさせたはずだ。それにこれからは必要になる時代が来るよ。きっとね」

 

 夏油は確信はなかったが、昨今の不安定な情勢から使いどころは来ると考えていた。まぁ来なければ来ないでもいいが。夏油は用意周到な男なのである。

 

「正直あれをぶっ放すような事態にはなって欲しくないが……それはともかく夏油、あれは学内では基本的に禁止な」

「……何故です?」

「危ないからに決まっているだろうが。1割でここまで余波が来るなら出力上げたら収拾が付かんぞ。それにそもそも撃つ必要あるか?」

 

 ブラドキングが夏油に真っ当なことを言う。

 

「せっかくプルスウルトラしたのですがね。まぁたしかに……鉄哲に撃ってみようかと思ったのですが、まだ時期尚早ですか。残念ながら来年度に持ち越しですかね」

 

 夏油は肩を落としてそう言った。

 

「お前に関してはプルスウルトラしなくていい」

「俺あれ食らうのか……マジか……いや、もっと硬くなんないとな!」

 

 ついに教師からプルスウルトラを否定される夏油。ついでに戦々恐々としていた鉄哲だが持ち前のポジティブさでやる気に溢れている。

 

「一部おかしいのもあったが新年あけて一発目の授業、皆いい成長を遂げていたようで何よりだ。このまま気を抜かずに訓練していくように」

 

 ブラドキングがそう締めくくってこの授業は終わった。

 

 

 

※※※

 

 2月3日、今日は夏油の誕生日であった。放課後、彼は体育館を借りて新たな呪霊を生み出そうとしていた。挑戦的なことをしようとしているのでここには夏油と志村だけだ。

 

「ところで菜奈さん、緑谷の浮遊の習得はどうですか?」

 

 夏油は手順を確認しながらも志村に尋ねる。志村はオールマイトに頼まれて、彼女のかつての個性である浮遊の使い方を緑谷に伝授していた。

 

「うーん……教え方が悪いのか、私ではあまり力になれそうもない。俊典は全部感覚でできてしまってあまり教えることがなかったからなぁ……」

 

 どうやら志村が教えるのはあまり上手くいっていないみたいだった。

 

「最近菜奈さんが構ってくれないので寂しいですよ。これが倦怠期というやつか?」

「いや毎日会ってるし喋ってるじゃないか」

 

 夏油の愚痴に志村は呆れをにじませる。

 

「それでも寂しいものは寂しいのですよ。しかも私がいない所で男と会っているなんて……この私という恋人がいるのに」

 

 夏油は拗ねたような顔をして見せる。

 

「わかったよ……もう少し一緒の時間を作るから。それに今日だって傑の為に時間空けてるんだぞ?」

「うーん……まぁいいでしょう。もう一声欲しかったですが許します。さて、呪力の準備もできたし、三節棍もあるしこれで用意が整いました」

「いや、だから毎日会ってるって……まぁいいいや、ところで準備なんて必要なのか?前はそんなに準備とかしてなかった気がするけど」

 

 志村は一年前のことを思い出しながらそう言った。

 

「確認してるだけですよ。前回ほどのは作る気ないので倒れるような事にはならないでしょうが」

 

 前回の創造では夏油は意識を失い倒れることになった。

 

「あれからもう1年か……あの時は心配したよ。まさかそんなリスクがあるとは思っていなかったから……今回は大丈夫なんだよね?」

「心配ないですよ。前回はイレギュラーですから。ではそろそろ始めます」

 

 夏油は呪霊の創造を始めた。それはあっさり成功し、新たな特級呪霊が誕生した。そしてその呪霊玉を飲み込み取り込んだ。

 

「成功したのか?何事もなくて良かったよ」

 

 志村は安心したように言った。

 

「まだ終わってないですよ」

「え?でももう飲み込んでるんじゃ……」

「融合の時間ですよ」

 

 夏油はそう言うが志村には何のことだか分からなかった。

 

「融合って私みたいに?一体何と?」

「私を構成する要素で、唯一呪力と関係ないものがあります。何だと思います?」

 

 夏油は質問に質問で返す。

 

「えっと、コスチュームとか?」

「惜しいですね。コスチュームもそうですが、呪霊装術でそこは補えます。正解はこれ、三節棍ですよ」

 

 夏油はさっきから近くに置いていた三節棍を見せる。

 

「でも呪力を流して使ってるんだろう?なら問題なさそうだけど」

「そう見えるかもしれませんが、普通の武器であるこれには大きな弱点があります。呪力を流しすぎると壊れるという点です。それを解決してくれると期待しているのが今回の呪霊なのですよ。じゃあ早速ですが始めますね」

 

 夏油は志村と玉藻前にやったように、今日作った呪霊と三節棍を融合し始めた。呪霊が分解され、それが光となって三節棍に吸収されていく。

 志村の例が特殊だっただけで、今回は無理矢理であったため時間が掛かった上に苦労したがなんとか形になる。

 

「ふう。疲れましたが何とか成功かな?」

 

 夏油は疲れた顔をしながらも嬉しそうであった。

 

「へえ、融合するつもりだったのか。でもそれができるならもっと早くやっても良かったんじゃ?」

 

 志村は単純に疑問に思ったことを口に出す。

 

「それはですね、三節棍もただの三節棍では成功しないだろうなと思ったのですよ。私の呪力に馴染ませる必要があったと私は予想しています。ただ実際のところは分かりませんが。何しろこういうことは菜奈さん以外では例がないので」

 

 夏油は夏油なりに色々と考えていたようだが、確証はなかったようだ。

 

「しかしあれだな……感覚的にこれは満足のいくものではなさそうですね」

 

 前世の游雲の感覚を知っている夏油からすれば、それはそこまでの性能には全く届く代物ではなかった。

 

「じゃあ失敗ってことか?」

「いえ、むしろこれは想定通り。ここからさらにやることがあります。縛りです」

 

 夏油は呪霊が融合した三節棍を縛ることで前世の游雲に近づけようと企んでいた。

 

「縛りって確か前に教えてもらったやつか。条件をつけて強化するってこと?」

「まぁ簡単に言えばそう言うことですね。あらかじめ考えてきたのでどんどんやっていきます」

 

 夏油はそこから縛りを掛けて行った。

 

・使用者が死んだら消滅する。

・夏油以外使用不可(譲渡も含めて)

・呪霊でもあるため復活できるはずだが復活不可。

・呪霊の術式の消失。

・呪霊の自律行動不可。

・使用者による操作不可。

・名前を呼ばないと呼び出せない。

・呼び出しの前に手印が必要。

・使用時、血で穢す必要あり。

・使用時、詠唱が必要。

・使用時、呪霊を一体祓う必要あり。

・重さが倍になる。

・呪力を吸われる。

 

 以上13の縛りを掛けた。それぞれはあまり強い縛りではないが、こうすることで前世の游雲並みの威力になると予想していた。名前は安直に『二代目游雲』と名付けた。

 手印は毘沙門天印が必要とのことがわかる。毘沙門天印は人差し指と中指を伸ばし中指だけ合わせ、親指・薬指・小指は曲げて絡ませる印だ。

 

 ただ夏油にとっても予想外だったことがある。それは詠唱が指定されていたのだが、その内容が内容だったのだ。

 

「これを言うのか……まるで中二病だな。黒色や常闇は喜びそうだが……」

 

 そう、二代目游雲の使用時に必要な詠唱は中二病の塊みたいな内容だったのだ。夏油は必要だからやるが少し嫌だった。

 

「二代目游雲、お前中二病だったのか……」

 

 夏油は仕方がないので詠唱を始める。

 

「我、呪魂の王にして眷属に命ず。三節に宿りし破滅の権化、我が敵を悉く薙ぎ払え」

 

 詠唱を終え、他の使用時の縛りの条件も行い、いざ二代目游雲を使ってみる。

 

「菜奈さん、相手してもらっていいですか?」

「もちろん。強化した游雲だっけ?の力も見てみたいし」

 

 そこからしばらくの時間、夏油と志村は模擬戦を繰り返す。

 

「うん、いい感じだ。想像していた通りの出来になっているね」

 

 夏油は二代目游雲の出来に満足のようだ。前世の游雲の使い心地に近いのかもしれない。

 

「それ威力どうなってんのさ。風圧で吹き飛ばされそうになったんだけど」

「多くの縛りの成果ですね」

 

 夏油は機嫌がいいのかニコニコしながら話す。

 

「ふーん、縛りか……なるほど。それは考えていなかった」

「どうかしましたか?」

「いや、私も縛りを掛ければもっと強くなれるかと思って」

 

 志村は十分強いはずだが、夏油が新たな力をつけて少し焦っているようだった。

 

「うーん……どうなんでしょうね。私もそこまで詳しくないので断言できないのですが、今はやる必要ないと思いますよ」

「そうか?傑がそう言うなら。それよりそろそろ遅いし帰ろうか。皆傑が誕生日だから祝ってくれるみたいだし」

「……それ私に言っていいんです?」

「…………あ。忘れてくれ」

「ふふ、わかりました、忘れます。呪霊たちも完成したことですしね」

 

 こうして夏油は新たな力を手に入れた。それが役立つ時は近い。

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