三月下旬、夏油を含めヒーロー科の生徒が何人か会議室に集められていた。
「一体何の用事なんだろうな?俺と常闇と夏油に骨抜、小森。共通点あるか?」
集められた一人である上鳴が疑問を口にする。
「たしかに。俺と夏油ならばホークス繋がりとも考えられるが、他の皆はな……」
常闇も何事なのか分かっていないようだ。
「まぁいいじゃん。せっかくだし交流といこうや」
「あんまりクラス間で関わることないノコ」
骨抜は彼らしく柔軟だ。小森もお喋りに乗り気だった。
一方夏油はこのメンツに少し考えるところがあった。
(小森と骨抜、上鳴は範囲攻撃が得意という共通点があるが、常闇は暗い所ならという感じだし……これは面倒事の臭いがするね)
彼らがそうして待っていると、扉が開き各クラスの担任である相澤とブラドキング、それに加えてミッドナイト、オールマイトが入って来る。
「待たせてすまんな。早速だが本題に入らせてもらう」
相澤は真面目な顔をして話し始める。
「明日、まだ詳細は言えないが大量のヴィランが集まるところを襲撃する大規模な作戦がある。それにお前たちの力を貸してほしい」
教師たちの話はヴィランの掃討作戦への参加要請という事だった。
「それで骨抜たちですか。範囲攻撃の為ってことですよね?私も対多数は得意ですし」
「夏油の言う通りだ。とは言っても最初だけ力を貸して欲しいだけだ。出鼻をくじければすぐに後方に下がってもらう」
ブラドキングが補足して説明した。
「俺はあまり範囲攻撃には向かないと思うのですが……」
「お、俺も無差別攻撃ならできるけど味方に当てちまいますよ!」
常闇と上鳴は自分が呼ばれているのに疑問があるようだ。上鳴はビビっていそうだが。
「上鳴は相手の電気系個性の無力化、常闇には地下通路の破壊を頼みたい」
「そういう事ならば」
「マジかぁ……でもそれならできるか……?」
相澤の説明に納得した常闇とまだ困惑気味な上鳴。そこにミッドナイトも言う。
「安心して。私も参加して近くにいるし、出番は最初だけだから。だからお願いできない?」
「俺は大丈夫です」
「私も頑張るノコ!」
「承知」
「え、えー頑張ります……」
ミッドナイトのお願いにそれぞれ参加を表明する。
「すみません、参加するのは構わないのですが、一つ確認いいですか?今回の作戦って死柄木弔はいますか?」
夏油は参加するが一応聞いておくことにした。
「……どうしてだ?」
「ちょっと因縁が出来ましてね。彼がいるなら是非とも参加したいと思って」
これだけ大規模な作戦だ。ヴィラン連合が関わっている可能性も否定できないと夏油は考えていた。
教師たちは顔を見合わせるがオールマイトが口を開く。
「死柄木は君たちの配置されるところにはいないはずだ。まだその時ではないと、私は思うよ」
オールマイトの言葉の後半は他の人にはわからなかったが夏油とついでに志村は理解した。まだ夏油たちの出番ではないということのようだ。
「わかりました。ただ、私は後方に下がらなくて構いませんよ。私の実力は知っているでしょう?むしろ私が下がれば要らぬ犠牲が増えるかもしれません」
「そうは言ってもお前もまだ学生だしな……いや今更か。わかった、ミッドナイト、夏油のことお願い出来るか?」
「もちろん。じゃあ皆、しっかり準備して明日に臨むようにね」
ミッドナイトがそう締めくくり今日は解散となった。
次の日は良く晴れた日だった。作戦を説明され、夏油たち学生の前線組も前衛として襲撃に向けて待機している。
「私たちここにいて大丈夫?ヴィラン連合って雄英狙ってたノコ?」
「彼らは大きくなり過ぎた……」
「ミッナイ先生」
小森が不安がっておりミッドナイトが落ち着かせる。
「強大な力を手にした今、死柄木は最短で目的を達成するつもりよ。危ないのはあなた達だけじゃない。大丈夫よ!初動で少し力を借りたいだけだから!」
「不安がることはないよ、小森。私が前線に出るんだ、相手の心配をしてあげてくれ」
夏油も小森を励ます。夏油は自信をにじませて言い、その様子を見て小森も少し安心したみたいだ。
そしていよいよヒーローたちの攻勢が始まった。ヒーローたちは一斉に森を駆け抜け、山荘に向かう。夏油は横で上鳴が喚いているのを聞きながら走っている。
そして山荘に着くや否や、セメントスが山荘を割り、ついにヒーローと超常解放戦線との戦闘が始まった。
「一人たりとも逃がすな!彼らは訓練されている!全員が目的成就に命を懸ける!一人逃がせばどこかで誰かを脅かす!守る為に攻めろ!」
エッジショットの激励を耳に入れ、夏油はガンちゃんと虫とムカデを大量に出して山荘を取り囲むように配置していく。特に虫は万単位で持っている呪霊をほとんど出す。ついでに一つ目も出して骸骨軍団を召喚させた。
それと同時に二代目游雲を取り出し掛けた縛りの通りの行動を行う。その間に骨抜たちは仕事を終えたようだ。
「やはりこの縛りは面倒だね。やることが多くて時間が掛かる」
夏油はそのまま游雲で攻撃を仕掛けていく。夏油の周りだけヴィランが紙のように飛んで行ってしまう。その光景にヴィランは足が止まる。
「なんだよこいつ……」
「強え……誰か止めろ!」
「こいつ、あいつだ!夏油だ!」
「無理だ!パワーが違いすぎる!」
夏油は解放軍を蹂躙したまま、ガンちゃんで隅々まで様子を見ることも忘れない。
「ヴィラン連合……今は何とか戦線だったっけ?社会のゴミが群れて何するのかと思えばくだらない、個性使いたかったらヒーローにでもなるか、個性使える職業に就きなよ。まぁ社会のゴミに何言っても無駄か」
思うままに游雲を振るい蹂躙していた夏油だが、そこでガンちゃんが蒼い炎を視界に捉える。
「ん?あの部屋、今炎が見えたような……確認お願いします。判断は一任するので」
夏油はそう言って志村を出し向かわせた。ここで戦線の幹部らしきヴィランたちが現れる。
「随分暴れてくれたな」
「夏油傑……このヒーロー社会の中でも我々戦線にとって一番の障害となり得る」
「ここで始末できるのは都合が良かったな」
「一人突出していて助かった」
「死んでくれ、夏と……」
幹部は5人いた。だが一瞬で一人減った。夏油の放ったイカに手足を貫かれたのだ。
「ダメじゃないか、しっかり避けないと。私を始末?まぁ出来るならすればいいが……今までみたいな雑魚ではないのかな?」
夏油はそのまま幹部との戦闘に入った。
※※※
一方その頃、志村は夏油に言われた通り蒼い炎の様子を見に来た。荼毘がいるかもしれないという事だろう。
志村がそこにたどり着くとホークスが荼毘と対峙していた。そしてホークスは羽がだいぶ燃やされている。
「これは一体……大丈夫かホークス?って荼毘がいたのか」
「あなたは……夏油くんの!」
「チッ!お前も来てんのかよ」
ホークスは志村がいることに素直に驚き、荼毘はイラついている。志村は自分が荼毘に知られているのを不思議に思ったが、そのまま荼毘との戦闘に入る。
「ホークス!あなたはあなたのすべきことをしてくれ。ここは私が」
「助かる!」
ホークスはそのままトゥワイスの下へ。志村は荼毘から炎を食らうが効果なし。
「私に炎は効かないよ。君とは面識ないはずなんだけどなっ!」
志村は炎を無視して殴りにかかる。荼毘は避けようとするが志村のスピードに付いて行けない。まともに腹に拳を食らい吹き飛ばされる。志村はそのまま追撃し、足で踏みつけ手足を折った。
「申し訳ないけど君の個性は強い。荒っぽい拘束をさせてもらうよ」
「あぁ……俺はこんなところで……エンデヴァー……お父さん……」
「何言ってんだかわかんないけど、さようなら」
志村は荼毘をぶん殴り意識を刈り取った。荼毘を担いで部屋から出ると、羽と背中に火傷をして座り込んでいるホークスと血だまりに倒れるトゥワイスがいた。
「……殺したのか」
「あぁ、言い訳はしないよ」
「責めるつもりはないさ。それより早く治療したほうがいい。動ける?」
「強がりたいけどちょっと無理かもね……」
志村はホークスが動けなそうと見て肩を貸す。
「はぁ……はぁ……夏油くんも来てるんだ?」
「常闇くんも来てるよ」
「そうか……彼もか……」
志村の様子を見ていた夏油から、ホークスを連れて下がるようにとガンちゃんの動きでサインが送られたので志村はホークスを連れて行く。ホークスはまともに動けなそうなので志村も一旦戦線離脱した。
※※※
「ホークスを燃やそうとするなんて……これでも私は師を大切にするんだよ?……っておい、私が喋ってるんだから返事をしなさい」
夏油は人の山に腰かけて、掴んでいる男に喋りかける。だが返事はない。意識を失っているようだ。しかも全身血だらけである。
夏油にとってホークスは最初は胡散臭いヒーローだとしか思っていなかったが、好きにやらせてくれた恩がある。夏油の中での優先順位は割と高い。
「大口叩いた幹部も私の呪霊たちにやられてるし……このまま我々の勝利かな?」
夏油を仕留めに行った戦線の幹部たちは、久しぶりに出した巨大亀呪霊の玄武に足を齧られたり、口裂け女に四肢の腱を切られたりしている。
「メディアがいるとやり過ぎるわけにはいかないけど、ここなら問題なさそうだ。後で怒られるかもしれないが……まぁ緊急事態だから仕方ないということにしておこう」
今からヴィランに過剰に痛めつけたことを怒られることを想定して言い訳を考える夏油。あとは数が減って来たヴィランを仕留めに行こうかと思ったその時、地響きが鳴る。
「何事だ……?」
夏油も不思議に思っていたが、近くの地面から腕が生え、そのまま巨大な人影が飛び出してきた。そしてその巨人は地面から這い出て進み始める。デカいだけあって進行スピードも速い。
夏油はエイを出して飛び乗り、巨人を追いかける。すぐにプロヒーローたちが対処しようとしているのが見えるが圧倒的パワーと硬さの前になすすべもなく突破される。
「この方向は……インターン生の方向か。それに救護所もある。行かせるわけにはいかないね」
巨人にはMt.レディが一人で対処していた。だが押し負けておりそのまま投げ飛ばされる。この時には夏油が用意していた呪霊による包囲も破られ穴が開けられていた。呪霊の数には余裕があるので穴埋めは問題ないがこれ以上好きにやらせるわけにはいかない。
「好きに暴れてくれるじゃないか……でもそれもここまでだ」
夏油はクイーンと鎧武者呪霊の明王を同時に出し巨人を止めようとする。二人がかりならばなんとか止められそうであった。そして夏油は巨人の顔面を游雲で殴り続ける。だが硬すぎてあまり効いている様子はない。しかも息で吹き飛ばされる。
「こんな厄介なやつがいるとは……インターン生にも言っておいて欲しかったね。お陰で対処が遅れた」
夏油はこの巨人をどう対処しようか考えていた。生け捕りは調節が難しい。毒なんかもこの巨体には相当量が必要か強力なものが必要になるだろう。
その時、夏油と同じく巨人を追いかけていたシンリンカムイとそれに乗ったミッドナイトが、巨人に乗ったヴィランの連合から攻撃を受ける。だがそれは夏油が虹龍を出してガードさせる。
「危ない、危ない。私たちの先生はやらせない。悲しむ人が大勢いるのでね」
「夏油くん!助かったわ!」
ミッドナイトはお礼を言いつつ何とか巨人の顔付近に近付こうとするが、連合のコンプレスが投げる瓦礫で邪魔されて近付けない。
「ミッドナイト先生、奴の息で吹き飛ばされてあなたの個性でも生け捕りは無理そうです。殺してもいいですか?」
夏油は何でもないかのように尋ねた。
「え……?その選択は…………わかりました。何かあっても私が責任を取ります。やれる?」
「おい、ミッドナイト!子供にやらせるのか⁉」
逡巡したようだがミッドナイトから許可は出た。シンリンカムイは反対のようだったが、やるなら大人の責任でやるべきだという考えのようだ。もちろん夏油はミッドナイトに責任を被せる気はない。最悪はホークスか雄星教の支援者に頼めば何とかしてくれるだろうと思っている。
「じゃあやるので離れていてください。いつの間にか足に縋り付いているMt.レディやその他近くにヒーローたちにも退避するよう伝達お願いします」
夏油はそう言って巨人の正面から少し距離を取ったところに位置取る。そして巨人の足止めは明王 に任せ、クイーンは夏油の側にいる。そのため巨人はまたじりじりと進み始めた。明王だけではサイズもパワーも負けている。
「これだけの妨害を受けても進み続けることしか頭にないとは、イカれた忠誠心だ。でもそれもここで終わり」
夏油はクイーンに呪力砲を放つ準備をさせる。クイーンの呪力のエネルギーが高まって行った。夏油は明王を体に戻す。障害物のなくなった巨人が夏油の方に向かってきた。
「主のために…………」
「ならばこちらは大義だ。大義の為に死んでくれ」
クイーンはフルパワーで呪力砲を放つ。光線が一直線に巨人に向かい、眩い光が辺りを照らした。その威力は想像を絶するもので、退避していたヒーローたちもその衝撃波で吹き飛ばされそうになるほどだった。
光が収まって目が慣れた時、そこに映っていたのは巨人の片手が消し飛ばされ胸に大穴が貫通している姿だった。というか上半身かなりの部分が消し飛んでいる。
「殺すしかなくて悪いね。でも君のせいなんだよ、名も知らない巨人」
夏油がそう呟いた時、巨人はうつ伏せに倒れた。それを確認して一安心する夏油。
「さて、後は残った雑魚の掃討か」
夏油は未だに抵抗しているヴィランたちに照準を定めたのだった。