【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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全面戦争②

※※※

 

 夏油がギガントマキアに攻撃を仕掛け討伐した直後。眩い閃光が辺りを照らし落ち着いたとき、雄英のインターン生たちも混乱していた。

 

「なぁ、今のってさっきいきなり退避しろって通信来たけど夏油の呪霊の……だよな?」

「だろうね。皆無事⁉あの巨人で包囲に穴が開いているみたいだから索敵できる個性は注意して!」

 

 鉄哲の問いに答えながら拳藤は仲間に警戒を促す。本来はヒーローにより完全に包囲しているはずだったのに抜け出してきているヴィランがいるようだった。

 

「むっ!まずいですぞ!こちらに複数のヴィランが向かってきておりますぞ!しかもすぐそこに!」

 

 宍田がそう言った時、彼らの前にスピナー、Mr.コンプレスが姿を現す。

 ギガントマキアに乗っていたはずの二人は、夏油の呪霊、クイーンがギガントマキアへの攻撃をしようとしたタイミングで退避していた。

 嫌な気配を感じ取ったようだ。流石はヴィランなだけはあると言っていいだろう。

 

「ヴィラン連合の⁉トカゲっぽい個性のヴィラン、スピナーには宍田と鉄哲で当たって!もう一人は触れて発動する個性だから触らないように遠距離個性で対処を!」

「おいおい、雄英生がこんなところに……」

「やっぱ個性バレてんのね」

 

 ヴィラン二人の姿を見てすぐに対処を指示する拳藤。そしてそれに従ってスピードに優れる宍田がスピナーに襲い掛かり、遅れて鉄哲も仕掛ける。

 

「うおっ!」

 

 スピナーは逃げる暇もなくあっさり宍田に吹き飛ばされ木に叩きつけられ、ヴィラン二人は分断された。それを見て流石に分が悪いと考えたコンプレスは逃げようとするが、そこに柳の個性で操った物体が襲う。

 

「唯!」

「大」

 

 しかも小大が物体のサイズを大きくして威力を上げる。それに対しコンプレスは手持ちの圧縮した物で応戦する。華麗な身のこなしもあってギリギリ回避した。だがそれも囮であった。

 

「上鳴くん、今!」

「オッケー!!」

 

 サイズを大きくした物体に紛れさせて、上鳴のサポートアイテムのポインターをコンプレスの体に張り付けていた。そこへ目掛けて上鳴の電撃がピンポイントで流れた。

 

「ぐあ⁉」

 

 コンプレスは黒煙を上げながら倒れ込む。ピクリとも動かない。

 

「ナイス!レイ子、唯、上鳴!拘束は茨、頼める?」

「承知しました」

 

 拳藤の指示に従って塩崎がコンプレスをグルグル巻きにして拘束した。

 そしてそこに鉄哲とスピナーを担いだ宍田がやって来る。スピナーは既に気絶しているのかうめき声一つあげない。

 

「ついでにこいつの拘束も頼まあ!」

「そっちも上手くいったみたいだね。怪我は?」

「ないですぞ!余裕でしたな!」

「なんか思い切りボコボコに殴ってたら気絶したぞ」

 

 拳藤の心配もよそにスピナーをあっさり倒していた鉄哲と宍田であった。

 

「……ハハッ、なら良かったけど。じゃあ指示があるまで私たちは引き続きここで警戒を……」

 

 そう拳藤が言いかけたところで通信が入る。

 

『カースキングがヴィランを再び包囲し直して、そのまま縮小・殲滅する!包囲の内側にいるヒーローは各自注意するように!』

 

 一瞬インターン生全体が『カースキングって誰だ?』という雰囲気で満ちるが夏油のことだと気付く。普段からあまりヒーロー名で呼ばれることはなく、本名の方が浸透しているために起きた混乱である。

 拳藤たちインターン生はそのまま警戒を続けることになるが、夏油が何かすると聞き安心するのだった。

 

 

 

※※※

 

 時は遡り、夏油がギガントマキアを倒した頃。エイに乗って空に浮きながら夏油は次の一手をどうするか考えていた。

 

(とりあえずこのデカブツで開いた包囲の穴を埋めるのが先決か?ただこいつの進撃でかなりの呪霊が祓われたし損害が大きい……ストックを全て放出する勢いになるかもしれないね。それにエッジショットが戦っているヴィランや氷使いも危険だ)

 

 夏油が思考を纏めているところに下から志村がやって来る。志村がわざわざこちらに来る用事があるのかと夏油が訝しんでいると、背中にホークスを背負っているようであった。

 

「夏油くん!!よくあれを倒してくれたよ。あれが街に降りていたら被害はとんでもないことになっていただろう」

「そんなことより怪我大丈夫ですか?」

「そんなことって……羽と背中が少し焼けた程度で大したことないよ。それも彼女を送ってくれおかげだ。ありがとう」

「どういたしまして。でも無理はしない方がいいですよ。動けないほどではないかもしれませんが、戦闘ができる怪我ではないでしょう」

 

 夏油としてはホークスがまだ戦えるようには思えなかった。その証拠に普段なら軽口叩きながら飛んでくるはずなのに大人しく志村に背負われている。

 

「やっぱ夏油くんには分かるか。じゃあ本題に入るよ。まずはあの巨人、ギガントマキアは本来動かないはずだった。蛇腔にいる死柄木が目覚めなければ、その指示が無ければマキアは動けないはずだったんだ。でもそれが動いた。つまり蛇腔が失敗したってことになる。しかも詳細不明だがとんでもない被害が出たって話だ。分かってなかった死柄木の強化内容に関係すると俺は考えてる」

 

 そこでホークスは言葉を切った。夏油はホークスの言いたいことが何となく分かっていた。

 

「つまり、それを止めるための戦力が必要。そして今すぐ向かえるようなのは私ぐらい、ってことで合ってますか?」

「なるほど……それはプロヒーローとしての要請と捉えていいですか?」

「もちろん。問題になっても俺が全部責任を取る」

 

 ヴィランたちの内情をある程度知っているホークスがここまで言っているということは、それほど危機なのだろう。

 ここで夏油には知る由もないことだが、ホークスが夏油を頼ったのは公安に連絡しようとしても繋がらないことも大きい。この時、公安委員長が殺害されて混乱していた。

 ホークスに要請されたということでオールマイトにできる限り戦うなと言われた件も問題ないはずだ。夏油はよく考えたうえで了承しようとしたところで志村が声を上げる。

 

「駄目だ!!行くなら私が行く!!」

 

 ここまでは黙ってホークスの話を聞いていた志村だったが、夏油が死柄木の下へ向かうと聞いてついに黙っていられなくなったのだ。

 

「いや、あなたは……」

「ホークス、あなたは少し黙っててください」

「いや、でも」

「死柄木は私の孫なんだ。私が止めなきゃいけない。だから私が行く!!」

 

 志村は涙ながらに感情的になって叫ぶ。ホークスが口を挟む間もない。

 

「孫……?一体どういう……」

「菜奈さん、あなたの孫の存在を知った時、言いましたよね?私もあなたと一緒に戦うと。あなたを一人で戦わせるわけにはいかない。菜奈さんの問題は私の問題でもあるのですよ」

「しかし……」

「私たちは家族だ。家族は助け合わなくちゃ。そうでしょう?」

「……わかった。そこまで言うなら一緒に戦ってくれるか?」

「その言葉を待っていました」

 

 夏油と志村の会話が済んだところでホークスが口を挟む。

 

「色々気になるし良く分からないけど、もういいのかな?学生相手にこんなこと頼むのは間違ってるのは分かってる。でも事態はそれだけ悪化しているはずだ。死柄木の状態さえ分からない。それでも頼む……!」

「頼まれました。それに過去に決着をつけるいい機会かもしれませんしね」

「覚悟は決まった。私の全て、傑に賭けるよ。元は拾った命なんだ、好きに使って欲しい」

 

 夏油と志村が決意を固めたところで、すぐに蛇腔に向かうことが出来ない理由があった。

 

「まずは随分減ったとはいえ、まだまだいるヴィランたちの対処が先か……とりあえず雑魚呪霊で包囲は敷いたが、このままだと時間が掛かりすぎるな。ホークス、多少の滅茶苦茶くらいなんとかなりますよね?そっちがお願いしたんですから」

「ちょっと傑、どうするつもりだ?」

「夏油くん。君、僕に押し付ければ面倒事片付くと思ってない?いや、いいんだけどさ」

 

 山荘のヴィランたちをどうするかという問題は夏油は力技で何とかするつもりのようであった。志村とホークスの問いには無視である。

 

「さあ、百鬼夜行の再臨だ。蹂躙せよ、呪霊全開放・呪獄顕現」

 

 夏油は自身の持つ全ての呪霊を解き放ち、ヴィランに向かわせた。そして呪霊たちは雪崩を打って片っ端から襲い掛かる。

 一応夏油が操作しているのもあって味方に攻撃することはないが、これほどの量の呪霊の操作により頭痛を感じ始める。キャパを超えているのかもしれない。

 

「大丈夫かい、傑?流石にこの量はいくら君でも無茶なんじゃ……」

「そうも言っていられないでしょう。ここを片付けないで死柄木の所に行くわけには行きません。これが最短です。それに……菜奈さんの障害は私が取り除く。あなたに共に生きると決めた瞬間から私の考えは変わりません」

「分かった。無理はするなよ。ホークスを救護所に置いて私も参戦しよう」

 

 志村はそう言って飛んで行った。そして夏油はそのまま山荘の戦況を見る。

 ほとんどのヴィランが虫とムカデ、イカの大群に群がれてまともに身動きも取れずに意識を失っている。腕や足を齧られている者もいた。

 一方で、腕に自信がある者は雑魚呪霊をものともせずに戦っていた。特に厄介なリ・デストロには口裂け女を、外典にはとりあえず玄武を当て、戻ってきたら志村に頼む。こうして夏油によるヴィラン狩りが始まった。

 

 

 

「ヴィランの軍隊……呆気ないものだな」

 

 数分後には、思わず夏油がそう呟くようにヴィランたちは全滅していた。文字通り全滅である。怪我のないヴィランは一人もいない、というよりそもそも立っているヴィランが見当たらなかった。

 気絶しているだけならまだマシなようで、四肢がなくなってたり顔のパーツがなくなってたりも多い。辺り一面血の海である。

 

 この光景には敵としてヴィランと戦っていたはずのヒーローたちも絶句する始末。夏油によるヴィラン狩りは数分と持たずに終わってしまったのである。

 夏油はそのまま呪霊を回収した。雑魚呪霊はこの戦いで随分と数が減ってしまったが、強力な呪霊はクイーンを除いて無事なので問題ないと判断する。

 

「前座はここまで。これで憂いなく死柄木に向かえる。菜奈さん、本当に良いんですね?今ならまだ行かないという選択肢もありますが」

 

 夏油の最後の問いかけにも志村は動じない。外典を丸焼きにした志村が夏油の側に立ち答える。

 

「くどいぞ。覚悟ならとっくに決まっていたさ。責任を果たす時が来たってことだよ。私が逃げるわけにはいかない」

「では行きましょうか。あなたと私の力があれば蛇腔まであっという間だ」

 

 夏油と志村は蛇腔へと移動を開始した。

 

 

 

※※※

 

 ここは蛇腔病院周辺。覚醒した死柄木は崩壊の個性によって辺り一面を更地へと変えてしまった。そして改造手術により超人へと変貌した死柄木とエンデヴァーを中心としたヒーローたちとの戦闘が激化している。

 

 数多くのヒーローがその身を削りながら戦ったが、それでもなお死柄木を打倒するには至らない。死柄木の個性を封じていた相澤が倒れた今、再度死柄木に崩壊を使われたらヒーローの敗北は必至だった。

 

 緑谷によって死柄木を空中に留めているがそれも限界があり、一見圧倒しているように見えても、個性をフルパワーで使う緑谷も決定打にはなりようがなかったのである。

 

「す……凄すぎない……?」

「駄目だ、このままじゃ負ける」

 

 緑谷の力に驚くプロヒーロー・マニュアルに対して、爆豪はこのままでは数分後には力を奪われて粉々にされると言う。

 

「轟、処置は済んだな⁉」

「ああ、何を……」

「うるせー、俺に掴まれ!エンデヴァー⁉上昇する熱は俺が肩代わりする!轟はギリギリまでエンデヴァーを冷やし続けろ!」

「俺の最高火力を以て……一撃で仕留めろという事か……任せろ」

 

 エンデヴァーは爆豪の提案を了承し、限界の体に鞭を打つ。

 爆豪、轟、エンデヴァーの三人は一塊となって緑谷と死柄木の戦っている所まで上昇していった。

 

「今だ!!」

 

 黒鞭が伸びきったところでエンデヴァーが死柄木を後ろから羽交い絞めにして拘束した。

 

「エン……」

「離れろ!!」

「てめぇ……!」

 

 エンデヴァーは機を逃さず最大火力でプロミネンスバーンを放つ。それは死柄木にゼロ距離から直撃し、倒したかに思えた。

 しかしそんな状況になっても死柄木は動き続ける。死柄木から飛び出た黒い何かがエンデヴァーを貫いたのだった。それは個性・鋲突によるものだった。

 

「エンデヴァー!!」

「な……ぜ……死なん……!」

 

 そしてエンデヴァーを貫いた攻撃が緑谷に向かう。それは反射的な行動。気づけば爆豪は緑谷を庇いその身が貫かれようとしていた。と、その時爆豪の前に入る影があった。それは爆豪を死柄木の攻撃から守る。

 

「一体全体、これはどういうことなのかな?死柄木がいると聞いていたのに焦げ焦げじゃないか。それとヒーローの皆さん、これから大事な家族会議なんだ。部外者にはご退場願いたい」

 

 そこにはエイに乗ってやって来た夏油の姿があった。

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