【完結】ヒロアカ世界でも猿が嫌いな夏油傑   作:カワニ

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今更ですが、『』は声に出さずに会話してます。夏油の体内にいるときに可能です。


入学

 ついに雄英に入学する日がやって来た。中学校で夏油が雄英に合格したことを伝えたら、教師は喜んでいた。

 それは当たり前だった。この中学から雄英のヒーロー科に入学した生徒はこれまでいなかったからだ。

 

 夏油がおぞましいと思ったのは散々嫌がらせや無視をしてきた同級生たちもすり寄ってきたことである。

 それらの経験は夏油に人間不信の種を植え付けていた。それが芽吹かなかったのは志村が常に共にいたからである。

 

『傑、雄英ではきっと仲間ができるよ。あそこは特別な場所だって聞いた。それに俊典も教師になったらしいし何かあったら相談してみるんだ。中学とは全く違うはずだよ』

 

 雄英へ通学中に物思いにふけっていた夏油に志村は話しかけた。

 

『わかってますよ。雄英は全国からヒーローを目指す生徒が集まる場所。高潔な心の持ち主が多いんでしょうね。でも私の個性は人を恐れさせ遠ざける。危険視する声も理解できる』

『傑…………心配するな。何があっても私は側にいるぞ!』

『それは心強いですね。一人きりになることはなさそうだ』

『そうそう。気楽に行け。君は少し考えすぎるところがある』

『そうですかね……?そろそろ着きますよ』

 

 夏油は雄英に到着した。そのまま教室まで向かう。夏油のクラスはB組であった。

 

『首席の私がB組ってことは成績で分けたわけではないんですかね?』

『わからないが個性の相性とかで決めたりするのでは?あとは学力とか?そんなことよりもう教室だ。私はしばらく話さないからクラスメイトと交流するんだぞ!』

『あなたは私の保護者ですか…………って返事しないし』

 

 とうとう教室の前にたどり着いた夏油は扉を開ける。そこには多くの生徒が既に集まっていた。とりあえず夏油は自分の席を探す。そこへ声を掛ける者がいた。

 

「おはよう!そこに座席表貼ってあるぞ」

 

 それはオレンジ色の髪をサイドテールにした女子生徒だった。

 

「これはご丁寧にありがとう。夏油傑だ。よろしく」

「拳藤一佳だ。よろしくな」

「あれっ?そこにいるのは夏油じゃないか?」

 

 またも夏油に声を掛ける者が現れた。入試の時に出会った物間だ。

 

「おや、物間じゃないか。君も合格していたんだね」

「君のおかげである部分も大きいけどね」

「二人は知り合いなのか?」

 

 拳藤が問いかけた。

 

「実技試験の時に出会ってね。物間に少し助力しただけさ」

「いやいや、少しじゃないだろう。君がいなかったら僕は最終手段をとるしかなったよ」

「君なら私が協力しなくても何とかしただろうね。それも含めて君の実力だよ」

「二人は認めあってるんだな。いいな!そういう関係!」

「認めるしかないだろ。こいつ、試験会場の仮想ヴィランがなくなるまで破壊し続けたんだぜ?」

「なくなるまで⁉お前ちょっとおかしくないか?」

「失礼だな。私は全力を尽くしたまでさ。むしろ周りに配慮して切り札は切らなかったほどだよ」

「やっぱり君は少しずれてるな。でもそんなことが頼もしくある。同じクラスになったんだ。これからよろしく」

「よろしく、物間。君はおもしろいね」

 

(クイーンは不完全。コピー能力がない。物間の個性はコピー。これも巡り合わせかな)

 

 夏油がそんなことを考えているうちに教室の扉が開く。

 

「おーい、席に着けー。入学式の案内するぞー」

 

 入ってきたのはこのクラスの担任と思しき男だ。彼はヒーローのコスチュームを着ており、プロヒーローであることがうかがえる。

 

「俺はこのクラス、1年B組の担任、ブラドキングだ。1年間よろしくな。早速だが入学式があるから体育館に移動するぞ。出席番号順に並んでついてこい」

 

 そう言って再び廊下に出た。指示に従って出席番号順に列を作って移動する。

 

「また会ったな、夏油。夏油と拳藤だから連続してるのか」

「そうだね。気づかなかったが教室じゃ丁度列の切れ目だったのか。君が後ろにいなくて残念だよ。いや、美人が後ろにいたら集中できなくなっていたかもしれないから良かったのか?」

「ちょっ、そういう冗談言うなよ」

「冗談だと思う?」

「え?」

「さあ、どっちだろうね」

「おちょくってるだろ、夏油」

「君はいじり甲斐があるよ」

「全く……」

 

 拳藤と話していると体育館に到着した。続々と他のクラスも到着するが隣のA組だけ来ていない。

 

「イレイザーめ、またやったな……!」

 

 ブラドキングはなにやら事情を察している様子である。

 

「A組どうしたんだろうな」

「気になるね。ちょっと覗いてこようか」

「覗く?」

 

 夏油は眼球呪霊、呼称ガンちゃんをA組の教室まで飛ばす。A組の生徒はなにやら困惑した様子だった。

 

「入学式には来ないみたいだな。ぞろぞろ移動しているが別の場所に向かってる」

「えっ、入学式サボるのか?問題児ばっかなのか?」

「それはわからないが困惑していそうだ。担任に何か指示されたのかもね」

「なるほど。ってお前の個性便利だな。でもここでは使っちゃダメだぞ」

「これは失敬。つい癖でね」

「気をつけろよ。ばれたら入学初日から怒られるぞ」

 

 そこで入学式が始まる。雄英の入学式ということで身構えていた夏油であったが、始まってみれば普通の入学式だった。校長が小動物だったのには驚いたが。

 夏油は暇だったのでA組の様子を見ていたが、いきなり体力測定のようなことを始めて驚いた。初日にやることではないはずである。

 

 入学式は教師の紹介に移っていた。B組の担任、ブラドキングも紹介されていたが何より盛り上がったのはオールマイトの登場だ。

 

「ハーハッハッハ!私が来た!!」

 

 オールマイトがいつもの決め台詞と共に壇上に上がるとそれだけで歓声が上がった。

 

(あれがOFAを持つオールマイト……凄まじい存在感だ……だが思っていたほどではない。悟や乙骨ほどではない。誰かに継承させた?私の先入観がそう思わせるだけか?)

 

 そう考える夏油に志村の想いが流れ込んでくる。

 

『俊典……!立派になったな……!』

 

 流石の夏油もここは志村をそっとしておいた。

 あっさり入学式が終わり教室に戻る。担任のブラドキングから今後の話をされる。その時にはA組はボール投げをしていた。

 夏油は気になる生徒がいた。その生徒は指一本でボールを取んでもない距離飛ばした。ただその反動で指を怪我していたが。

 しかもその生徒を心配そうに見守るオールマイトの姿を発見した。隠れてみているようだが隠れられていない。

 

(思っていたより存在感が強くないオールマイト。入学してきた自壊するほどの超パワーを持つ生徒。果たして結び付けていいものか……OFAを継承するとしてもちょっと前まで中学生だった子供に継承させるか?いや、乙骨の例もある。年齢は関係ないな。これは注視する必要がありそうだね)

 

 夏油が内心で思考を巡らせているうちに今日は解散となったらしく、ブラドキングが教室を出て行った。夏油も帰ろうとしたところにさっきまで喋っていた声が聞こえる。

 

「皆、ちょっといいか?せっかく同じクラスになったんだし自己紹介しないか?軽くでいいから」

 

 それは拳藤の声だった。

 

「いいんじゃないか」

「思ったより早く終わったしな」

 

 そんな声もあり順番に自己紹介することになった。出席番号順のおかげで夏油の番は比較的すぐ回ってきた。

 

「夏油傑です。個性は呪霊創操術で呪霊という生き物を作って操れます。趣味は格闘技、好きな食べ物はざるそばです。これからよろしくお願いします」

 

 夏油は爽やかな笑顔で挨拶した。概ね好印象を与えられたようだ。さっきからかった拳藤は胡散臭げに夏油を見ていたが。

 

『傑、やればできるじゃないか!皆いい子そうだし上手くやれそうだ。私の言ったとおりだろ?』

『そうですね。ただ私の個性の本性を知ればどうなるかわかりませんが……』

『またそう捻くれて……』

『冗談ですよ。いい奴が多そうです。上手くやれそうな予感がしますよ』

 

 それは夏油の本心だった。環境が変わると人の質もここまで変わるのかと驚愕した。

 

 その後もB組生徒の自己紹介が続き、夏油は全ての生徒の顔、名前、個性は覚えた。前世で大量の呪霊を記憶していたのに比べれば簡単だった。

 自己紹介が終わり解散することになった。一人で帰るつもりだったがなぜか物間が付いてきた。どうしてか夏油が聞くと、なぜそんなことも聞くのかと不思議そうに答えた。

 

「だって僕ら友達だろう?駅までは一緒だろうし」

「私の個性が怖くないのか?君の前で思いっきり見せたが」

「怖い?むしろカッコいいじゃないか。憧れるね」

「そうか……」

 

 夏油は不思議な気分だった。この世界に生まれてから個性を褒められたことは殆どない。恐れられたことなら山ほどあるが……

 

「それよりA組だよ!入学式をサボって何やってたんだろうね?僕らより先んじようとしていたじゃないか?」

「私の個性で見たが体力テストのようなことをしていたな」

「やっぱり!僕らより先に進もうとしていたんだ……!明日ブラドキング先生に抗議しよう。うん、それがいい」

「いいじゃないか。全員強制なら今度やるんだろうし」

「そうか?いやしかし…………」

 

 物間は何やら考え込んでいる様子だ。入学式に参加せず先に物を進めていたのが気に入らない様子の物間。

 

『やっぱり受け入れられてるじゃないか』

『……彼が特殊なだけかもしれないでしょう?』

『ふふ、ヒーロー目指す奴らなんだ。皆こんな奴さ』

『だといいですね』

 

 下校する夏油の心は登校した時より晴れやかだった。

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